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トリケラトプス(学名:Triceratops)は、中生代後期白亜紀(マーストリヒチアン期)の、現在の北米大陸に生息した植物食恐竜の一属。既知の非鳥類型恐竜の最後の属の一つで、6,600万年前のK/Pg絶滅イベントで絶滅した。

● 呼称
トリケラトプスという名は「三本の角を持つ顔」を意味し、古代ギリシャ語のτρί- (tri-) が「三つ」、κέρας (kéras) が「角」、ὤψ (ōps) が「顔」を意味することに由来している。 中国語名は「三角龍」(サンジャオロン)、または「三觭龍」(サンチーロン)。

● 概要
トリケラトプスはオスニエル・チャールズ・マーシュによって1889年に不思議な何かに元々記載されて以来、完全な骨格は発見されていないものの、多数の化石標本が記録されてきた。孵化幼体から成体までの各成長段階を代表する標本が発見されている。典型的なケラトプス類として、最も人気のある恐竜の一つであり、映画や切手など多くのメディアに登場している。 口先は鳥類のくちばしのように尖っている。頭骨には大きな骨質のフリルと3本の角があり、大きな4本足の体は現代のサイに似ていることで最もよく知られている恐竜の1つである。また、全長9メートル、体重12トンという最大級の角竜でもあった。この動物は被食者だったと考えられているが、博物館の展示や一般的なイメージでよく描かれているような捕食者との戦いをしていたかどうかは定かではない。フリルと3本の特徴的な角の機能については長い間議論の的となってきた。伝統的には、これらは捕食者から身を守るための武器と考えられてきた。最近の解釈では、これらの特徴は現代の偶蹄類の角と同様に、主に種内競争のために使われていた可能性が高いと考えられている。ただし、これは護身用の武器として使われた可能性を否定するものではない。 トリケラトプスは伝統的には短いフリルをもつセントロサウルス亜科に分類されていたが、現代の系統学的研究では、一般的に長いフリルを持つカスモサウルス亜科のメンバーであることが示されている。これまでに17種が命名されてきたが、現在ではそのうちT・ホリドゥス (T. horridus) とT・プロルスス (T. prorsus) の2つの種だけが有効であると考えられている。

● 形態
最も多く発見されている標本は、巨大な頭骨である。成体の頭骨の長さは約2.5メートルで、その半分弱がフリルである。他のカスモサウルス亜科と同様に1本の鼻角と2本の上眼窩角を備える。上眼窩角の長さは1.8メートルと言われる。強力な四肢で重い体を支持していた。トリケラトプスのようなケラトプス類の前肢の姿勢は、長い間物議を醸していた。肢は直立していたという考えは後肢に関しては議論の余地なくあてはまる。 一方で、角竜の骨格に基づく研究では、ゾウのように手の甲を前にした直立状態で前肢の骨を組みたてると前肢の関節が脱臼してしまうため、前肢の肘を横に張り出して「這い歩き」するような姿勢であったという説があった。しかし、これはトリケラトプスの足跡化石には合致しないものであった。最近の研究では、トリケラトプスは前肢を鰭脚類のように、手の甲を外側に向けて(人間で言うと小さく前に倣えをした様な形で)直立して立っていたということになっている。 2002年にレインと呼ばれるトリケラトプスの標本が発見され、発掘後のクリーニングでは体の各部位から6種類の外皮が発見された。最大の外皮片は面積が3平方フィート、すなわち約0.28平方メートルを超えるものもあったほか、棘状の原始的な羽毛の跡と思われる痕跡も発見されている。

● 発見の経緯
標本はオスニエル・チャールズ・マーシュのもとへ送られた。彼は、この角は鮮新世のものと考え、異常に巨大なバイソンのものであるとした。そのため、標本にはBison alticornisという学名が与えられた。マーシュは、その翌年までに角竜という分類群の存在を知った。 1888年にワイオミング州ランス累層でジョン・ベル・ハッチャーによって採集された、全体の3分の1以上が保存されている頭骨が、彼の考えを変えた。頑丈な性質をもつ頭骨は、化石として保存されやすく、種と個体の間の変化を研究するのに役立っている。

● 分岐学での使用
分岐学における恐竜の定義として、「現生鳥類とトリケラトプスを含むグループの最も近い共通祖先より分岐したすべての子孫」が頻繁に用いられる。ただしこの場合はあくまで、代表的で誰もが知っている動物であるという理由で使用されているのであって、鳥盤類のクラウングループならば、他の種を挙げたところで分岐学的意味合いは変化しない。

● トロサウルスとの関係
トロサウルス属 (Torosaurus) がトリケラトプス属 (Triceratops) のシノニムである可能性は、両者の発見当初から長年議論されてきた。両者とも同じ地層から発掘される上、フリルなどを除いて形態的な差異がほとんど見られないためである。またトロサウルスは完全に成長しきったと見られる不完全な標本が数個体分しか発掘されないにも係わらず、トリケラトプスは成長段階などをも含んだ50以上もの化石が次々と発掘されてきた。 こうした中、2010年にトリケラトプスの頭蓋骨の形態を、成長段階に従い数十個体に渡って観察しなおし、トロサウルスと比較した論文が発表された。それによると、トリケラトプスのフリルの一部(後頭骨-鱗状骨の境界部分)は成長に従って薄くなり、開口に向かうこと。そしてそうした形態がトロサウルスに非常によく似ることが示された。 トリケラトプスの知名度の高さも手伝ってか、この研究は2010年8月当時、比較的大きな話題となった。しかし中には「トリケラトプスが消えてトロサウルスに纏められるのでは」という、本来の論文の趣旨とは全く相反する報道もなされ、これがツイッターなどを通じて拡散され混乱を招く事態が起こった。だがそもそも論文の題名にもある通り、「トロサウルスが消えてトリケラトプスに纏められることになる」のが元々の情報であって、上記のような報道は全くの曲解と言える。そもそも国際動物命名規約では、基本的には時系列上先に記載された方を有効名とする規定になっており、この場合、最初に記載された方であるトリケラトプスが有効名として認められる。またこの件に関しては論文の著者であるジャック・ホーナーらはその後も公式に「トリケラトプスが残る」ことを強調している。もっとも、トロサウルスとトリケラトプスが同一種である事に関しては2011年現在までにもいくつか反論は出ており、そのまま一般論として定着しているわけではない。 その後、スキャネラとホーナーは、すべてが仮説によって容易に説明されたわけではないことを認識した。反論の余地に対して、彼らはさらなる仮説を立てた。 1つの問題は、トロサウルスがトリケラトプスの正常な最後の成熟段階であった場合(彼らが "toromorph"と呼んだ段階)にしても、トロサウルスの化石の産出量が少なすぎることだ。これは成体の死亡率が高いことと、老齢のトリケラトプスは高所に好んで住み、侵食が化石化を防ぐという可能性によって説明された。第2の問題は、トロサウルス亜成体の存在を示唆していると思われるトロサウルス標本のサイズ範囲であった。これらのうち、彼らは骨の構造が完全に成熟した年齢を示したものと主張し、大きさの違いは明らかな個体差であると主張した。第3の想定される異論は、開口部の有無にかかわらず、個体間の移行形態を表す標本が知られていないことであった。既知の全てのトロサウルスの開口部は完全な形態で、他のカスモサウルス亜科の亜成体に見られるような初期の穿孔(中途半端な穴)とは異なる。それに対抗するために、彼らは、そのような過渡的形態の例として、論争の深いネドケラトプス(トリケラトプスでもトロサウルスでもない)のホロタイプ USNM 2412がまさにそれであると述べた ネドケラトプスにおいて問題とされる形質(フリルに小さな開口部があり、鼻角が非常に低い隆起になっている)は、単に「toromorph」に変換する第一段階にその存在を反映するだけであるとした。最後の問題は、縁頭頂骨の数の違いである。トリケラトプスには、典型的には正中線の縁頭頂骨を含む5対のホーンレットがあり、トロサウルスには10ないし12のそれがあり、正中線のものは欠けている。また、フリルの側縁には、トリケラトプスが5対、トロサウルスが6または7対の縁鱗状骨をもっている。これは、成長中にその数が増加したと仮定して説明した。ホーンレットの数と位置はトリケラトプスとされている個体間でもバリエーションがあり、MOR2923に示されているように、トリケラトプスでも6つの縁頭頂骨を有するが、正中線のものが欠如しているものもあることが指摘されている。 スキャネラとホーナーの結論は満場一致では受け入れられていない。いくつかの専門家は、 "toromorph"仮説が正しいという可能性を認めているが、否定の余地が十分すぎるほど存在している。この仮説は、アンドリュー・ファルケの2011年の論文とニコラス・ロングリッチの2012年の論文によって直接対抗を受けた。ファルケは、トリケラトプスとの同定を主張していたスキャネラとホーナーに対して、ネドケラトプスという問題のある属をトリケラトプス属の成体または病気の個体として再記載した。ファルケは、ネドケラトプスのフリルの不規則な穴の様子は、薄い骨が穿孔されたという状態とはほど遠く、厚い骨の腫瘍に囲まれていると指摘した。ファルケはさらに、提唱されたようなトリケラトプスからトロサウルスへの移行といくつかの事実を調和させることは無理があると結論付けた。一般的に、ケラトプス科では、フリルが成長しきると縁頭頂骨の数は増減しない。縁鱗状骨の数は変動することもあるが、幼体の段階で最大数に至るため、サイズとは関係がない。明らかに、これは個体差ではなく種差あるいは属差である。同様に、ケラトプス科では一般に、フリルの穴の形成は年齢に関係なく、新生の個体でもその穴をもっている。ファルケは、トリケラトプスのフリル上の薄い骨の領域(初期の穴の位置が判明している)は筋肉の付着部として説明した。開口部とフリルの骨構造との間に一貫した関係はない。トリケラトプスの多くの標本にはフリル表面に深い静脈の跡があり、すでにかなりの高齢であることを示している。トリケラトプスのフリルに途中で穴が空くとすれば、彼らは若返らなければならず、その後、再びその穴を広げるために成長する必要がある。最終的に、ファルケは、その巨大なサイズにもかかわらず、トロサウルスの標本YPM 1831は、その癒合の進んでいない骨組織によって示されているように、まだ完全には成長しておらず、したがって真のトロサウルスの亜成体であると指摘した ロングリッチは2012年に、改竄の原則を適用して問題を調査した。スキャネラらの仮説の中から科学的に有効な試験が可能な3つを選び、調査を行った。ロングリッチは、 "toromorph"仮説は複数の点であり得ないと主張した。第一に、トロサウルスがトリケラトプスと同一種であった場合、両者の化石は同じロケーションで見つかるはずである。実際には、その地理的範囲は一部しか一致してしない。北部ではトリケラトプスのみが見つかり、トロサウルスの化石は見つかっていない。逆に南部からはトロサウルスだけが知られている。しかしこのような状況はトロサウルスの化石が比較的少なく、サンプリングが不完全であるという弊害によるものである可能性もある。したがって、ロングリッチはこの点による否定は完全にはできないが、証明することもできないと結論づけた。第二に、すべてのトロサウルス標本は成体であり、全てのトリケラトプス標本は非常に若いものであるという仮定に対して次のように反論した。ロングリッチによると、この最後の点はまだ確立されていない。確かに、2011年にホーナーは解剖学的研究を発表し、調査されたトリケラトプスのすべての標本が亜成体の骨構造を保有していたことを示していたが、標本が少なすぎてすべてのトリケラトプスの化石に有効な一般化ができていなかった。仮説をよりよく評価するために、ロングリッチは24個の頭骨外部形質のリストを提案し、頭骨要素の癒合および成熟のレベルに関して検体を検査した。これらの基準を適用して36点の標本を調査した。癒合は典型的には特定の順序で行われており、年齢に関する追加情報がわかった。実際これらの基準によって大半のトロサウルス標本は成体であるとわかった。しかし2つの例外があった。小さい個体であるANSP 15192は、成体ではあるが、鼻骨の癒合が進んでいない事によって示されるように、比較的若い。最も若い標本はYPM 1831で、鼻骨、頬骨、上眼窩角の癒合が進んでいなかった。さらに、フリルの縁は成長している若い骨の外見を持っていたにもかかわらず、そのホーンレットをすべて失ってしまっていた。一方、ロングリッチは、調査されたトリケラトプスの頭骨のうち10点が、最も高齢のトロサウルス標本と同じレベルの成熟に至っていることを突き止めた。ロングリッチは、この分析はスキャネラらの仮説を完全に否定したと結論付けた。3番目の仮定は、トロサウルスとトリケラトプスの間に移行型が見いだされる可能性があるというものだった。ロングリッチは、「トリケラトプスのフリルの薄い領域が、移行期の最も強力な証拠として、開口部の前駆体であった」というスキャネラらの主張を検討した。しかし、これらの構造は位置が完全に異なっていた。トリケラトプスの窪みはフリルの下の方に位置し、トロサウルスの穴は壁面に完全に囲まれている。さらに、窪みははるかに厚い骨に接し、トロサウルスの穴は細い骨で囲まれており、それとは別にトリケラトプスに見られる窪みも有している。ロングリッチは、仮説が第3の予測に関しても破綻していることを突き止めた。 3つの仮説のうち、1つでも破綻するところ、2つで反証されているので、この仮説は否定されるべきである。 ロングリッチはまた、「toromorph」仮説にいくつかの追加の反対を示唆した。縁頭頂骨の数に関して、既知の遷移形は存在しない。また縁頭頂骨は完全にフリルの縁を占めていたので、その数が増加する余地はなく、通常の成長プロセスではフリル本体と一緒に大きくなるだけである。スキャネラらの提案した縁頭頂骨の侵食による分裂は、縁鱗状骨でのみ起こることであり、縁頭頂骨では決して確認されていない。トロサウルスの鱗状骨は内側が肥厚し、外側が凹面であり、トリケラトプスのそれは、内側が窪んでおり、外側が平坦である。中間型は知られていない。トロサウルスの鱗状骨はまた、絶対サイズとは無関係に、より細長い。ロングリッチは、トロサウルス標本とトリケラトプス標本を組み合わせて1つの成長シーケンスを作成すると、ANSP 15192とYPM 1831は回帰直線と比べて完全な異常値を示すと指摘した。 ロングリッチは、ホーナーが解剖学的研究でトリケラトプスが幼弱形質であるという事実を示唆したことには肯定的であったが、トリケラトプスは他のカスモサウルス亜科と異なりネオテニー(成熟しても幼形形質を保つ)であるという代替的な説を提示した。ロングリッチは、再び個体差を根拠としてスキャネラとホーナーが反論してくるだろうと予想していた。しかしロングリッチによれば、個体差というのは説得力が弱い。トロサウルスのANSP 15192とYPM 1831のサイズの違いは、性的二形によって説明された方がまだよく、前者は若いメス成体、後者はオス幼体である可能性がある。 これらの反論以降しばらく自説に触れてこなかったスキャネラであったが、2015年のトリケラトプスの属内進化に関する論文中で、以下のように述べている。トリケラトプスとトロサウルスが、異なるが近縁の分類群だった場合、古い時代のトリケラトプス・ホリドゥスは成長途中でより原始的な頭頂骨の特徴(フリルの開口部)を発現するかもしれない。同時に、癒合していない縁鼻角をもつトロサウルス(MOR 3005)を記載している。縁鼻角の癒合は角竜の成長において重要な要素のひとつで、亜成体の時期に癒合すると考えられる。これは toromorph仮説を自ら否定したようなものであるが、明言は避けられている。

● 分類 
トリケラトプスは最もよく知られたケラトプス科の属であり、同科最大かつ北米で最も豊富に見つかる角竜である。何年にも渡ってトリケラトプスを含む角竜の系統上の正確な位置付けが議論されてきた。トリケラトプスは、主にセントロサウルス亜科の特徴とされていた短いフリルと、カスモサウルス亜科の特徴とされていた長い上眼窩角の組み合わせが混乱を招いていた。リチャード・スワン・ルルによる最初の角竜のオーバービューの中で、角竜は大まかに二大系統に分類され、一つはモノクロニウス、セントロサウルス、そしてトリケラトプスから成り、もう一方はトロサウルスとカスモサウルスで構成されるとされた。前者は今日セントロサウルス亜科と呼ばれるタクサである。後々もこの見解は支持され続け、前者は短いフリルで特徴づけられるセントロサウルス亜科、後者は長いフリルのカスモサウルス亜科とされた。 1949年、チャールズ・モートラム・スタンバーグがこの事に初めて疑問を投げかけ、角の様子からしてトリケラトプスはアリノケラトプスやカスモサウルスにより近縁であると考え、トリケラトプスをケラトプス亜科(彼が用いたところのカスモサウルス亜科)の属であるとした。スタンバーグの見解はほぼ無視され、ジョン・オストロムや後のデビッド・ノーマンらはトリケラトプスをセントロサウルス亜科に分類し続けた。その後の発見と分析はスタンバーグによるトリケラトプスの分類をフォローするものだった。1990年のレーマンによる二つの亜科の再分類では、いくつかの形態的特徴に基づいてトリケラトプスはケラトプス亜科(カスモサウルス亜科)に内包された。実際、トリケラトプスは短いフリルという一つの特徴以外はケラトプス亜科によく適合する。1990年のドッドソンによるRFTAを用いた分岐分析でもトリケラトプスの頭骨はケラトプス亜科によく一致すると結論づけられた。 発見からかなりの年数が経っても、トリケラトプスの進化の起源は非常にあいまいであった。1922年に新しく発見されたプロトケラトプスはヘンリー・フェアフィールド・オズボーンによってトリケラトプスの祖先であると見なされた。しかし数十年が経ち追加の発見がもたらされ、事実がはっきりしてきた。近年トリケラトプスの祖先に関するいくつかの有益な発見がもたらされた。上眼窩角をもつ基盤的角竜ズニケラトプスが1990年に記載され、インロングがジュラ紀から知られる最初の角竜として2005年に記載された。

● 古生物科学
トリケラトプスもまたよく群れる動物として描かれがちである。これにはわずかな根拠しかない。いくつかの他の角竜が数100から数1000個体分の骨で構成されるボーンベッドから知られている事はその一例である。現在のところトリケラトプスで占められたボーンベッドは2つだけ知られている。1つはモンタナ州南部のもので、3体の幼体の化石である。それは若いトリケラトプスだけで群れを作っていた可能性を示唆する。2012年にはワイオミング州ニューカッスル近郊で成体から幼体までのサイズの異なる三体のトリケラトプスが比較的完全な状態で発見された。その化石はブラックヒルズ地質学研究所のラーソンのチームによって発掘された。3頭は家族単位で行動していたと考えられているが、オスメスのペアとその子供なのか、あるいは同性の成体2頭が若い個体を保護していたのかは不明である。その化石にはティラノサウルスによる捕食または腐肉食の痕跡も見られる。特に最大の個体は前肢の骨がティラノサウルスの歯によって傷つけられている。長年、トリケラトプスの標本は一頭ずつ単独の個体だけで産出されていた。そうした化石はとても一般的である。ミネソタ科学博物館のエリクソンは、ヘルクリーク層から200個体分の標本を報告している。同じフィールドでバーナム・ブラウンは500点の頭骨を報告している。トリケラトプスの歯、角の破片、フリルの破片、その他の頭骨要素はアメリカ西部のランシアンの地層において非常に豊富であり、トリケラトプスは当時の最も支配的な植物食動物ではなかったとしても、その候補の一つに挙げられると見なされている。トリケラトプスは角竜最後の属の一つで、K/Pg絶滅イベントの直前まで存在していた。近縁なトロサウルスとより遠縁なレプトケラトプスも同時期同地域に存在していたが、トリケラトプスと共に化石が見つかった例はない。

● 歯列と食性
トリケラトプスは頭の低さから植物食であったと思われる。主なエサはおそらく下生えであっただろうが、より高い木を倒して葉を食べたかもしれない。下顎は先が尖っていて深い。クチバシは狭く、エサを選択的についばんだと信じられている。トリケラトプスは咀嚼動物であり、丈夫な歯の咬合面で植物をすり潰していたのだろう。磨り減った歯は定期的に更新され、デンタルバッテリーの使用部位が常に研がれている状態だった。36から40の歯列が下顎の両側にある。各歯列につき3から5本の予備の歯が収まっているが、個体のサイズによって増減する。432から800もの歯が生えていることになるが、一度に使用される歯は一列だけだった。歯の更新は一生に渡って続いていた。トリケラトプスの咬合面は歯列がほぼ垂直になっている。何人かの研究者たちはヤシやソテツ、別の研究者たちはプレーリーで育つタイプのシダが餌として該当すると主張している。

● 角とフリルの機能
トリケラトプスの頭の装飾の機能に関しては多くの意見がある。2つの主たる説は、種内競争とディスプレイに使われたというものだ。特に後者は最もあり得そうな機能であると考えられている。 トリケラトプスは長い間、ティラノサウルスの様な捕食者に対する防衛のために角とフリルを使用していたと考えられて来た。その考えは、1917年にスタンバーグによって最初に提唱され、70年後にもバッカーによって主張されている。 複数のトリケラトプスの上眼窩角や鱗状骨において部分的に治癒されたティラノサウルスによる噛み跡が確認されており、これはティラノサウルスが積極的にトリケラトプスと正面衝突した証拠とされている。また噛まれて折れた角がその後治癒した痕跡も見つかっている。その攻撃者が何者かは判明していない。そのトリケラトプスの怪我が治癒したという事は、トリケラトプスが襲って来た捕食者から生き延びた事を示唆する。 ピーター・ドッドソンは、もしティラノサウルスがオス成体のトリケラトプスを襲ったら、そのトリケラトプスは身を守るために反撃し、その鋭い角によってティラノサウルスに致命傷を与えただろうと推測している。またトリケラトプスの腸骨と仙骨に深い噛み跡があるものも知られていることから、ティラノサウルスがトリケラトプスを食べた事もわかっている。 捕食者に対して角を使っていたことに加え、トリケラトプスは互いに角を絡ませて同種間で争う様子もよく復元される。研究では、そういった事が実際にあり得たことが示唆されているが、現生動物と異なり、彼らがそうしたかどうかについては意見が分かれている。 トリケラトプスの頭骨と他のケラトプス類の頭骨の穿刺孔、病変、その他の損傷は、しばしば闘争における怪我に起因すると見なされるが、2006年の研究では、角突きによる怪我の証拠はないとされた。例えば、感染や治癒の痕跡がない。代わりに、非病的な骨吸収または未知の骨疾患が原因とされた。トリケラトプスとセントロサウルスにおける頭骨病変と骨膜反応の発症率を比較したより新しい研究では、トリケラトプスの傷は他の個体の角によって闘争で傷つけられた物であり、フリルは盾として適していたと示唆された。 組織学的研究では、トリケラトプスのフリルは創傷治癒に重要な役割を果たす線維芽細胞を含む繊維層板骨で構成されており、再生の際に迅速に沈着できる事が明らかにされている。ある頭骨は、頬骨に穿孔が見られる。治癒痕が確認できる事から、明らかにこの個体が生きている間につけられた穿刺傷であると思われる。この穴の直径はトリケラトプスの角の先端の直径に近い。 トリケラトプスの非致死的種内競争の論拠として、この標本や、明らかな治癒痕のある他の角竜の頭骨が挙げられる。 大きなフリルはまた体温調節に利用できる表面積を稼ぐのに役立っているかもしれない。似たような説がステゴサウルス類のプレートについても言われているが、この説だけではケラトプス類のフリルの多様性を説明できない。むしろそれは性的ディスプレイ説を支持する。 フリルが性選択に関係していると最初に述べたのは Davidacivili で、それ以来支持を集め続けている。性選択において、ないし他の社会性行動において視覚ディスプレイが重要である事がその根拠である。それはケラトプス類の種差が激しく、それぞれが特徴的である事からも見てとれる。また、現生動物もそのような装飾や角を同じ目的で用いている。2006年、最小のトリケラトプス頭骨(幼体)の研究により、フリルと角はかなり若い段階で発達し始める事がわかった。繁殖可能な年齢に達する前にこうした構造が発達するという事は、世代内で視覚的コミュニケーションと種の認識が重要であった事を示唆する。だが現生動物においてそのような構造に種の認識の用途をもつものが知られていないので、この説は疑問視されている また、三半規管の構造などを考えると角による護身や突進はできなかったとする見解も出されているが、ティラノサウルスによってフリルを折られたもののその後治癒した痕跡も見つかっていることから、この話は否定されることも多く、現在では突進と突き上げ攻撃を場合によって切り替えたとされているサイに類似した攻撃方法と推測されている。

● 成長と個体発生
2006年、トリケラトプスの個体発生に関する最初の研究論文が出版された。ホーナーとグッドウィンによるその研究は、トリケラトプスの個体が4つの成長段階に分けられる事を示唆した。孵化幼体 (babies)、幼体 (juveniles)、亜成体 (subadults)、成体 (adults) である。28個の頭骨が研究され、最も若いものは38 cmの長さだった。28うち10の頭骨は、各年齢を表す1つの成長系列で並べる事が可能とされた。4段階のそれぞれは、識別機能を有する事が判明した。縁後頭骨のサイズ縮小、眉角の発達および向きの変化、そして角の空洞化を含む複数の発生期の傾向が発見された

● 文化面
ティラノサウルスに次ぐ人気の恐竜で、様々なメディアにてキャラクター化や映像化をされている。
・ プレヒストリックパーク
 ・ 第一回の序盤にて、群れでまとまり行動する様子が描かれた。その後の騒動を経て主人公のナイジェル・マーヴェンが若いオスを保護して現代へ連れ帰り、セオと名付けた。その後パークにてナイジェルとスタッフのボブが、セオのストレス発散を兼ねた決闘に興じていた。
・ 恐竜再生
 ・ この作品でも群れで行動する植物食動物として描かれた。とりわけ白亜紀パートの序盤にて若いティラノサウルスと対決した際には、群れの力と頭部の武器を駆使して若者を寄せ付けなかった。

● 系統


◎ 系統
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「トリケラトプス」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』(https://ja.wikipedia.org/
2024年10月11日17時(日本時間)現在での最新版を取得

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