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トサカがかっこいい
アロサウルス(学名 Allosaurus、“異なるトカゲ”の意)は、アロサウルス科に属する恐竜の一属である。和名は異竜 (いりゅう)。
● 概要
中生代ジュラ紀後期(約1億5,500万 - 1億4,500万年前)の北アメリカに生息していた大型肉食獣脚類である。1877年にアメリカ合衆国の古生物学者オスニエル・チャールズ・マーシュがこの種を定義づける化石を初めて報告した。肉食恐竜としてはティラノサウルスと共に恐竜研究の興隆期からよく知られたものの1つであり、一般にも図鑑や学習書籍などを通して広く浸透している。また日本では、国内で最初の恐竜の骨格標本展示として1964年に国立科学博物館で標本が公開された。のち、2015年7月の地球館展示リニューアルに伴って1階に常設展示が始まった。
アロサウルスは二足歩行性で、鋭く大きな歯を多数備えた巨大な頭骨を持つ捕食者であった。平均的な全長(頭から尻尾の先端までの長さ)は8.5mで、12mに達したと推定される個体の化石の断片も発見されている。大きく強力な後肢(脚)と、それに比して小さな3本指を備えた前肢(腕)を持ち、長く重厚な尻尾で体のバランスを取っていた。
「アロサウルス」という名称は分類学的には属名と科名(上科を含む)に現れるが、特に断りがない場合は属名を示す(ちなみにアルファベットでの綴りは科名がAllosauridae、上科名がAllosauroidea)。いわゆる恐竜の中でも竜盤目・獣脚亜目(以下、獣脚類)・テタヌラ下目・カルノサウルス類のアロサウルス科に属し、マーシュの命名した最も著名な種はアロサウルス・フラギリス(A. fragilis、ラテン語で“脆いもの”の意)である。この他にもアロサウルス科には数種が属するとされるが、分類の妥当性に関して議論中のものが多く、正確な数は一概には言えない。アロサウルスの化石の多くは北アメリカ大陸のモリソン層(:en:Morrison Formation)産だが、ヨーロッパ大陸のポルトガルからも産出している。またアロサウルスの一種である可能性のある化石がアフリカ大陸のタンザニアでも発見されている。20世紀にはアントロデムス(Antrodemus)という学名で呼ばれた時期もあったが、クリーブランド・ロイド発掘地(:en:Cleveland Lloyd Dinosaur Quarry)で発見された大量の化石の研究により、アロサウルスの学名が妥当であることが認められ、著名な恐竜の一つとして一般に知られることになった。
この「Allosaurus」の読み方であるが、多くは子音を一つ省いてアロサウルスと読まれる。また子音を発音してアルロサウルス、ll にアクセントを置きアッロサウルスとされる場合もある。
アロサウルスはかつてモリソン層が形成された時代の食物連鎖の頂点であり、同時代に存在していた草食恐竜(ステゴサウルス等の鳥盤類、アパトサウルス等の竜脚類)を捕食していたと考えられている。しかし、狩猟方法に関しては解明されていない点が多く、研究が続けられている。竜脚類の大型草食恐竜を集団で狩猟していたかのような想像図が描かれることがあるが、一方で共食いしていた跡が見つかっており、アロサウルスが社会性を持っていたかどうかは議論の焦点となっている。狩猟における襲撃方法の通説は、茂みで待ち伏せし、その大きな上顎を振りかぶって奇襲を行っていたというものである。
● 特徴
アロサウルスは大きな頭、短く太い首、長く重厚な尾、後肢に比べて短い上肢といった特徴を持つ典型的な大型獣脚類である。最も著名な種であるアロサウルス・フラギリスの平均的な全長は8.5mで、最大級のアロサウルスの標本 (標本番号:AMNH 680)の推定全長は9.7mと考えられている。アロサウルスの権威ともいえる古生物学者ジェームズ・マドセン(James Madsen)が1976年にまとめたモノグラフでは、骨の大きさの範囲から考えて体長は最大12m〜13mになったのではないかと推測されている。体重に関しては様々な意見があるが、1980年頃より出された見解はいずれもおよそ1トン〜4トンの範囲内に位置しており、2トン前後としている文献が多い。
明確な同定を行えないいくつかの大型化石がアロサウルスのものとされてきたことがあり、それらを含めると体の大きさに関する見解は少し複雑になる。例えばアロサウルスの近縁種と見られるサウロファガナクス(標本番号:OMNH 1708)は体長が10.9mに達し、アロサウルス・マキシマス(A. maximus、“最大のアロサウルス”の意)としてアロサウルス属に含められることがある。ただし20世紀末の研究ではアロサウルスとサウロファガナクスは互いに別属であることが支持されている。また、体長が12.1mに達するエパンテリアス(標本番号:AMNH 5767)もアロサウルス属の一種と考えている研究者がいる。
◎ 頭骨
アロサウルスの頭骨と歯は同サイズの獣脚類に比すると控え目な大きさであった。古生物学者グレゴリー・S・ポールの報告によると、体長7.9mと推定される化石の頭骨長が845mmであった。頭骨に穿たれた各孔は広く、大きさの割に軽量であったと考えられる。各前上顎骨(上顎口端を形成する一組の骨)はD字形断面の5本の歯を持ち、各上顎骨からは14本〜17本の歯が生えていた(歯の数は骨の大きさと必ずしも一致しない)。一方、各下顎骨には14本〜17本、平均16本の歯が生えていた。歯は口内にいくほど狭小でより湾曲したものになっており、歯の縁にはティラノサウルス等の獣脚類でも確認されている鋸歯状の凹凸があった。歯単体の化石がよく見つかるが、これは歯が頻繁に抜け落ち、新しいものと生え替わっていたからだと説明される。上顎洞(鼻腔と繋がり空気を滞留させる空間)はより原始的な獣脚類であるケラトサウルスやマルショサウルス(:en:Marshosaurus)に比べると発達していた。上顎洞の発達はすなわち鋤鼻器(ヤコブソン器官)のような嗅覚と関連する器官の発達を意味する。脳を収める頭蓋上部の殻は薄くなっているが、これは脳の温度調節を容易にするためだと考えられている。頭蓋(頭骨後部)と前頭骨もおそらく同様の結合部を有していたであろうと考えられている。尾部の椎骨の数ははっきりせず、個体によっても異なるようである。ジェームズ・マドセンは50個。
肋骨の広がりは大きく、ケラトサウルスのようなより原始的な獣脚類よりも太い胴体を持っていた。
また標本数は少ないが腹肋骨(腹側を覆う骨)を持っていたと考えられており。腰部を形成する腸骨は強固で、恥骨は竜盤目特有の体前下方へ大きく突出する構造であったが、それは筋肉の接着部であると同時に地上へ体を下ろして休息する際の支えとして働いた。マドセンはクリーブランド・ロイド発掘地で見つかった約半数の個体の恥骨先端が、体の大きさに関わらず融着していないことを発見した。マドセンはこれを性差を示すものとし、恥骨先端が分離しているのは雌で、産卵しやすい骨格構造になっていると主張した。手にはそれぞれ3本の指があり、その先には湾曲した大きな爪が付いていた。手首の手根骨は半月状であり、これは鳥類を含む小型獣脚類グループ(マニラプトル類)に見られるものと同様であった。3指は親指に当るものが最も太くて大きい。
● 分類学的研究
◎ アロサウルス科の歴史
アロサウルス(属)は、分類学的には大型獣脚類カルノサウルス類に属するアロサウルス科の一つに位置付けられている。アロサウルス科は1878年にオスニエル・チャールズ・マーシュによって創設されたが、1970年代まではメガロサウルス科(:en:Megalosaurid)(メガロサウルスをはじめとする獣脚類が属するとされた旧分類)というタクソンの方が好んで使用された。また1930年頃〜1980年頃には属名としてアロサウルスの代わりにアントロデムスが使用され、アロサウルスという学名を復権した1976年のジェームズ・マドセンのモノグラフ以前の出版物を読む場合は注意が必要である。アロサウルス科の代わりにメガロサウルス科を記載している著名な刊行物はチャールズ・W・ギルモアの1920年の論文、アルフレッド・シャーウッド・ローマーの1956年と1966年の論文、R・スティール(R. Steel)の1970年の論文、アリック・ウォーカー(:en:Alick Walker)の1964年の論文である。
1976年のマドセンのモノグラフの影響により、獣脚類恐竜をアロサウルス科へ再分類する動きが生じた。この再分類は必ずしも厳密な検証を行っていない場合もあり、定義そのものにも曖昧さがあるが、結果的に科名として一般化的に使用されるようになった。再分類の過程でアロサウルスとの系統的な関連が考えられた属としてインドサウルス、ピアトニツキーサウルス、ピヴェテアウサウルス、ヤンチュアノサウルス、アクロカントサウルス、キランタイサウルス、コンプソスクス(:en:Compsosuchus)、ストケソサウルス(:en:Stokesosaurus)、スゼチュアノサウルス(:en:Szechuanosaurus)が挙げられる。しかし、21世紀初頭の獣脚類の進化・系統に関する研究によれば、上記の属はいずれもアロサウルス科には含まれていない。ただしアクロカントサウルスやヤンチュアノサウルス等はアロサウルスの近縁属であると考えられている。しかし、1990年代にはその説は否定され、ティラノサウルス科はコエルロサウルス類に属するものとされた。
◇21世紀初頭の通説を基にした上科から属までの分類のまとめ
◎ アロサウルス属の種
アロサウルス属にいくつの種が属すのかははっきりしていない。1988年以来アロサウルス属としてある程度の妥当性が認められてきたものには、フラギリス(A. fragilis 基準標本)。前述のように21世紀初頭ではそれらは同一種であるとする見方が一般的。
エウロパエウスはジュラ紀後期キメリジアン期に形成されたポルトガルのロウリニャン層(:en:Lourinhã Formation)に属する発掘地から1999年に見つかった新しい標本だが、フラギリスと同種であろうという意見も存在している。テンダグレンシスはタンザニアムトワラ州のキメリジアン期の層から発見された。21世紀初頭のレビューではテンダグレンシスをアロサウルスの一種として認めている。後の研究によるとその一部は感染症の跡。21世紀初頭ではこの標本はフラギリスのものとみなされている、シベリア、スイス。彼は後年、それをアントロデムスとして独立した属を創設することになる。
アロサウルス・フラギリスという学名はオスニエル・チャールズ・マーシュが1877年に付与したものである。学名創設の論拠とされたのは標本 YPM 1930 で、3個の椎骨、1個の肋骨片、1本の歯、1個の足先の骨、右前肢の上腕骨を含んでいた。「アロサウルス」のアロはギリシア語で“奇妙な”または“異なった”を表すallos/αλλοςから来ており、サウルスは同語でトカゲを意味するsaurus/σαυροςで、全体で“異なったトカゲ”の意である。これは化石の椎骨がそれまで発見されたどの恐竜のものとも異なっていたことから付けられた名称である。「フラギリス」という種名はラテン語で“壊れやすいもの”を意味するが、これは椎骨に空洞が多かったことにちなんでいる(ただし他の恐竜に比べて特に空洞が多いわけではないことが後年判明する)。これらの化石はコロラド州ガーデン・パーク(:en:Garden Park, Colorado)、カノン・シティー(:en:Canon City, Colorado)北のモリソン層から発見されたものであった、コープのエパンテリアスがある。
コープとマーシュは新種の発掘と発表に躍起になっていたため、発見した化石(特に弟子が発見したもの)の精査やその産出地の再調査をしないことがあった。例えばベンジャミン・フランクリン・マッジ(:en:Benjamin Franklin Mudge)がアロサウルスの基準標本を発見した後、マーシュはそれが出土したコロラド州ガーデン・パークではなく、ワイオミング州で発掘を行うことを決定している。ちなみに1883年になってガーデン・パークで発掘が再開された時、M・P・フェルヒ(M.P.Felch)がほぼ完全なアロサウルスの骨格といくつかの骨の化石を発見することになる。この際、画家チャールズ・R・ナイト(:en:Charles R. Knight)のアロサウルスがアパトサウルスの死肉を漁っている様子を描いた絵と同じ構図で骨格が組まれた。ちなみにこれは獣脚類恐竜の骨格展示として初めてのフリー・スタンド(骨格をつっかえ棒やワイヤーによる懸吊なしで支える)であったことに特徴があり、その様子は絵画や写真として多く残されているが、再現した光景に関する学術的・科学的な説明は特に残っていない。
初期の発見と研究でアロサウルスに多くの名称が与えられ、しかもマーシュとコープがそれら“新種”に与えた記述内容が貧弱であったことは後の研究の混乱の種となった。その当時でさえ、サミュエル・ウェンデル・ウィリストン(:en:Samuel Wendell Williston)をはじめとする専門家の間では同一種に複数の学名が付けられているという指摘があった。ウィリストンは1901年にマーシュはアロサウルスとクレオサウルスの違いを示す十分な証拠を持っていないと主張した。名称の重複を正すことに最も影響のあった研究は1920年にチャールズ・W・ギルモアが行ったものであった。彼はジョゼフ・ライディのアントロデムスとアロサウルスの尻尾の椎骨は同一のものであるという結論に至り、先に命名されたアントロデムスという学名を使用するべきだと主張し、結果的にアントロデムスが属名として有効なものとされた。
◎ クリーブランド・ロイド発掘地での発見
クリーブランド・ロイド発掘地として知られるようになるユタ州エメリー郡(:en:Emery County, Utah)の地層における発掘は1927年には始まり、化石産出地として1945年にウィリアム・J・ストークス(William J. Stokes)から紹介されているが、大規模な発掘作業が開始されるのは1960年になってからである。1960年〜1965年に40近い機関・組織が協力して行った発掘プロジェクトでは数千の恐竜の骨が発見された。いずれにせよ、この発掘地では保存状態の良い化石が多数見つかったため多角的な研究を行うことが可能になり、結果的にアロサウルスを最も解明の進んだ獣脚類の地位に押し上げた。発掘された標本に様々な年齢と大きさ(全長1m以下〜12m)の個体が含まれていたこと、また骨格がバラバラであったことで骨どうしの癒着が防がれて個々の部位が良く残っていたことは研究を進める上で有利に働いた、成長過程、頭骨の構成、狩猟方法、
脳、種族内での共生や子育ての可能性に関するもの がある。また、古い標本(特に大きな標本)の再分析、1999年のポルトガルにおけるアロサウルス化石(エウロパエウス)の新発見、さらに新しく発見された完全な標本“ビッグ・アル”もまた研究の拡大に貢献している。
○ ビッグ・アル -Big Al-
これまで収集された重要なアロサウルス標本の一つとして、1991年に発見された「ビッグ・アル」(標本番号:MOR 693)と呼ばれるものがある。この標本は骨格の95%が揃っているというほぼ完全なもので、体長は約8mであった。発見発掘については少々紆余曲折があり、最初の発見はワイオミング州シェル(:en:Shell, Wyoming)でスイスのカービー・シベル(Kirby Siber)に率いられたチームによってなされたが、彼らが正式に発掘権を所得していたにもかかわらず、過去の土地所有者の変動の混乱の中、Alの所有権はロッキー博物館(Museum of the Rockies)とワイオミング大学地質学博物館の合同チームが奪ってゆく形となった。意気消沈のシベルチームであったがしかし、彼らはそれにも負けず発掘に取り組み、後に2体目となるアロサウルスの発掘に成功する。こちらは「ビッグ・アル・ツー」(Big Al II)と命名され、これまで発見されたアロサウルスの中で最も保存状態が良いものであり、彼らの努力は報われた。
ビッグ・アルは保存状態や骨格の完全さからその学術的価値を認められ固有の愛称まで与えられている。その体長はアロサウルス・フラギリスの平均を下回っており。ビッグ・アルの標本に関する研究報告は1996年にブレイサウプト(Breithaupt)が行っている。当時のモリソン層地域は雨季と乾季が交互にやってくるステップ気候であり、洪水の氾濫により形成された氾濫原であったと推定されている。植生は多様であり、河に沿って球果植物、木性シダ、シダ植物を中心とした森が広がり、その外は木性植物がほとんど見られず背の低いシダ植物が生えるだけのサバンナであった。
モリソン層は化石採取地としては有名な場所で、緑色植物、菌類、蘚類、トクサ、シダ植物、ソテツ類、イチョウ、球果植物等の植物化石をはじめ、二枚貝、カタツムリ、条鰭綱の魚類、カエル、有尾目の両生類、カメ、ムカシトカゲ、トカゲ、陸生または海生の主竜類、翼竜、そして数々の恐竜、また哺乳類として、ドコドント類(:en:docodonta)、多丘歯目、シンメトロドント類(:en:symmetrodonta)、トリコノドント類(:en:triconodonta)等、多くの動物種が発掘されている。
出土した恐竜の内、獣脚類にはケラトサウルス、オルニトレステス、トルヴォサウルス(:en:Torvosaurus)、竜脚類にはアパトサウルス、ブラキオサウルス、カマラサウルス、ディプロドクス、鳥脚類にはカンプトサウルス、ドリオサウルス、剣竜類ステゴサウルスが含まれている。アロサウルスが発見されているポルトガル地域もジュラ紀後期にはモリソン層と同様の生態系を有していたとされるが、そこでは海洋の影響がより大きかったと考えられている。産出する恐竜の多くはモリソン層とほぼ同じで、アロサウルス、ケラトサウルス、トルヴォサウルス、アパトサウルス、ブラキオサウルス、ルソティタン(:en:Lusotitan)、カンプトサウルス、ドラコニクス(:en:Draconyx)等を含んでいる。
前述のようにアメリカとポルトガルにはアロサウルスと同時期にケラトサウルスやトルボサウルスといった大型獣脚類が存在した。また、ケラトサウルスはアロサウルスと比べて頭骨の縦幅は大きいが横幅は逆に小さく、より巨大で幅広の歯を持っていた)。
● 生態
◎ 成長過程
アロサウルスの標本はほぼ全年齢の個体のものが揃っており、そのおかげで成長と寿命に関する学術的研究が進んでいる。さらにコロラド州ではアロサウルスの壊れた卵の化石まで見つかっている。
後肢の保存状態が良い幼体の標本でその計測を行ったところ、成体に比べ体の大きさの割に脚が長く、脛と足の部分は腿よりも長いことが判明した。この事実は幼体が比較的すばしこかったことを意味するが、幼年期には小動物を狩り、成長するにつれて大型の動物を奇襲するようになっていった狩猟方法の変化をも示唆している。例えば幼体のアロサウルスは、腸骨と後ろ脚の骨に基づく比較の結果、大人よりも3割ほど脚が長かった事が分かっている。
◎ 食性
現在の古生物学者はアロサウルスが大型恐竜を狙う活発な捕食者であったという説を受け入れている。捕食対象として同時代に生きていた竜脚類が最初に挙げられるが、これは実際に竜脚類恐竜の化石にアロサウルスの歯によって付けられたと考えられる傷跡や歯そのものが残っていたという事実に基づいている。また、アパトサウルスとアロサウルスの足跡が連続して残されている化石も発見されており、これは後者が前者を遠方から追跡していたものとみなされる場合もある。さらに、アロサウルスがステゴサウルスを襲っていたという事実を示す証拠も見つかっている。アロサウルスの尾部の椎骨にステゴサウルスの尻尾の棘先がちょうど貫通する穴状の傷跡があったり、ステゴサウルスの首部の背びれにアロサウルスの口形とよく一致するU字型の噛み跡が付いていたことがあり、それらは両者の命を懸けた闘いの場面を想像される。しかし、1998年にグレゴリー・ポールはこのような見解に疑問を投げかけており、アロサウルスが単体で竜脚類のような大型恐竜を襲うには頭骨や歯をはじめ全体的に骨格が軽量過ぎるという指摘を行っている。この他の意見として、アロサウルス等の獣脚類は大型恐竜の肉の一部を食料になるだけ削いでいき、その命まで取る必要はなかったのだというものがある。この方法ならば、削ぎ取った肉が回復すれば同じ獲物を何度も襲うことが可能だっただろう、鋭敏な爪には物をひっかけることも可能であったと見られている。
◎ 社会性
アロサウルスは仲間同士で意思疎通する能力を持ち、竜脚類のような大型恐竜を集団で狩っていたと考えられてきた。
21世紀初頭の研究によれば、アロサウルスを含む獣脚類は他の双弓類と同じように種内の別の個体と共同することはなく、大抵は互いにライバル関係にあったと推測されている。また、自分より大型の動物に対して仲間同士で狩りを行うことは脊椎動物全体を見渡しても稀なことで、実際にトカゲ・ワニ・鳥のような現生の双弓類が共同で狩りを行うことはほとんどないことを強調する論文もある。現生の双弓類はテリトリーを侵すものを殺すことさえあり、たとえそれが子供の個体であっても自分の餌場に侵入すれば同じように扱う。これはクリーブランド・ロイド発掘地でアロサウルスの個体が多く発見されたことの証左となりうる事実でもあり、活動できなくなったり死亡したりして空きとなったアロサウルスのテリトリーに餌を求めて他の個体が集まり、お互いに殺しあったというシナリオを想定することもできる。また現生のワニやコモドオオトカゲのようにテリトリー侵犯で死亡する幼体が多いとすれば、発見されたアロサウルスの化石に幼体や未成体のものが多かったことも説明できる。同様の解釈はバッカーの巣穴形成説の端緒となった発掘地(Bakker's lair sites)における出土状況にも適用されている。共食いが行われていた場合もあるようで、アロサウルスの肋骨から他の個体の歯の化石が発見されたり、肩甲骨に他の個体の歯の跡らしきものが残っていた例がある。またバッカーの発掘地からは共食いされたアロサウルスの骨が見つかっている。
◎ 脳と感覚
アロサウルスの頭蓋の石膏型をCTスキャンしたところ、主竜類の中でも鳥よりワニに近い脳を持つことが判明した。前庭器官(平衡状態を感知する三半規管を含む)の構造を解析した結果、頭はほぼ水平に保たれていたことがわかった。内耳の構造もワニに近いため、アロサウルスはおそらく低周波数の音を最も良く聞き取ることができただろうが、かすかな小さい音は聞き分けられなかったと考えられる。嗅球は大きく、臭いを検知することには長けていたが、臭いの判別を行う脳の部位は比較的小さかった。
● 国立科学博物館のアロサウルス
国立科学博物館にはアロサウルスの全身骨格が展示されているが、これはジェームズ・マドセンがクリーブランド・ロイド発掘地より収集した実物化石である(頭骨部のみレプリカ)。
化石の発掘を依頼、資金提供を行ったのは第二次世界大戦前および戦後にアメリカでホテル経営を行っていた日本人・小川勇吉であった。小川はモリソン層で産出する化石に強い興味を抱いており、その古生物学への情熱が日本の子供達のためにアロサウルスの全身骨格を入手するという目標に結びついた。結果的にマドセンのチームが発掘・復元に成功した骨格が国立科学博物館に寄贈された。費用捻出のためにホテルを売却したともいわれている。
この標本は1964年に公開され、日本初公開の恐竜全身復元骨格として注目を集めた。その後国立科学博物館上野本館(現・日本館)において常設展示されていたが、2004年以降、企画展示などを除いて収蔵品扱いとなっていた。2015年7月14日から地球館の1階でふたたび常設展示されている。
復元形態は若干古い説に基づき、尻尾は地面に付けられ胴体は水平ではなく斜め上方に持ち上げられているものだった。しかし、2011年に新しい学説に基づいて胴体を水平にしたものに改められた。骨格の大きさ自体はアロサウルスとしてほぼ平均的である。
「アロサウルス」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』(https://ja.wikipedia.org/)
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