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コイ(鯉、学名:Cyprinus carpio)は、コイ科に分類される魚の一種。比較的流れが緩やかな川や池、沼、湖、用水路などにも広く生息する大型の淡水魚。
コイの語源は体が肥えていることまたは味が肥えていることに由来するという。
● 分類
2亜種が存在する。
・ 'はヨーロッパの大半(特にドナウ川とヴォルガ川)原産である。
・ C. c. yilmaz (Deniz carp) はアナトリア(特にチョルム周辺)原産である。
東アジア原産の3つ目の亜種C. c. haematopterus(Amur carp)は過去に認められていたが。純粋な型のヨーロッパのコイと様々なアジアの近縁種は、によって分類できるが、それらは異種交配できる。ヨーロッパのコイはキンギョとも異種交配可能である。日本においてもと呼ばれる雑種が確認されている。
名称が似ているニゴイはコイ亜科ではなくカマツカ亜科であり同科異亜科の関係である。
● 生態
コイは外見が同亜科異属のフナに似るが頭や目は体に対して小さい。吻はフナよりも長く伸出させることができる。
産卵期は春から初夏にかけてで、この時期になると大きなコイが浅瀬に集まり、バシャバシャと水音を立てながら水草に産卵・放精をおこなう。一度の産卵数は20万-60万ほどもある。それによると、外来の体高の高いコイとノゴイは種レベルに相当する遺伝子の差があることが報告され、日本列島在来の別種として新種記載の必要性も指摘されている。
◎ 分布
○ コイ本来の分布
もともとはユーラシア大陸が自然分布域だったが、移植によって世界の温帯・亜熱帯域に広く分布している。日本でも全国的に分布、学術的にさほど注目もされず今日に至っている。
欧米でもドイツなどでは盛んに養殖され、食用の飼育品種も生み出されている。
● コイによる生態系の破壊問題
コイは都市河川などで川をきれいにする目的で河川の環境保護の一環として放流される種でもある、当事者には全く意識されていないのが現状である。また、ニシキゴイの放流が原因と推測されるコイヘルペスウイルスによる感染症が地元のコイに蔓延し大量死する事件もある。
また、コイは底生生物や水生植物などを根こそぎ食べてしまうという影響もある。
● 保全状態
野生種本来の分布域に生息する個体群は、河川の改修にともなう生態系の破壊や、他地方からの移入個体との交雑による遺伝子汚染による在来個体群の絶滅が危惧されており、2008年に国際自然保護連合により危急(Vulnerable)に指定されている。
● 文化
◎ 食材
項目 分量(g)
脂肪 5.6
飽和脂肪酸 1.083
一価不飽和脂肪酸 2.328
16:1(パルミトレイン酸) 0.655
18:1(オレイン酸) 1.15
20:1 0.071
22:1 0.402
多価不飽和脂肪酸 1.431
18:2(リノール酸) 0.517
18:3(α-リノレン酸) 0.27
18:4(ステアリドン酸) 0.058
20:4(未同定) 0.152
20:5 n-3(エイコサペンタエン酸(EPA)) 0.238
22:5 n-3(ドコサペンタエン酸(DPA)) 0.082
22:6 n-3(ドコサヘキサエン酸(DHA)) 0.114
コイは漁・養殖が共に盛んで、世界中の多くの地域で食べられている。
○ 日本
食材としての鯉は、福島県からの出荷量が最多で、鯉こく(血抜きをしない味噌仕立ての汁)、うま煮(切り身を砂糖醤油で甘辛く煮付けたもの)、甘露煮にする。稀に鱗を唐揚げし、スナック菓子のように食べることもある。また、洗いにして酢味噌や山葵醤油を付けて食べる例もある。しかし、生食や加熱不完全な調理状態の物を摂食すると、肝吸虫や有棘顎口虫 による寄生虫病を発症する可能性がある。捕獲した鯉は、調理に際しきれいな水を入れたバケツの中に半日-数日程入れて泥の臭いを抜く。さばくときは濡れた布巾等で目を塞ぐとおとなしくなる。
藍藻はゲオスミンや2-メチルイソボルネオールを作り、これが魚の皮膚や血合肉に濃縮される。このゲオスミンが、鯉やナマズなど水底に棲む淡水魚が持つ泥臭いにおいのもとでもある。ゲオスミンは酸性条件で分解するので、酢など酸性の調味料を調理に使えば泥臭さを抑えることができる。
海から離れた地域では古くから貴重な動物性タンパク源として重用され、将軍や天皇に出される正式な饗応料理や日常的にも慶事・祝事の席などでも利用されてきた。卵をもつ真子持ちのうま煮やあらいの切り身の見た目から雌のほうが重宝される。現在の養殖では、主に農業用の溜め池が利用されるほか、長野県佐久地域では稲作用水田も利用されている。食生活の変化から需要の減少と共に全国の生産額は年々減少し、1998年には3億6000万円ほどであったが2008年には1億5000万円余りまで減少している。
○ 中華人民共和国
中華料理では、山東省に鯉1尾を丸ごとから揚げにして甘酢あんをかけた料理「糖醋鯉魚」(タンツウリイユィ)があり、日本でも代表的な宴会メニューの1つとなっている。
中国では年始の供え物や食べ物として川魚を用いることが多く、最もポピュラーな魚が鯉である。
○ ヨーロッパ
鯉は中欧や東欧では、古くからよく食べられている。特にスラヴ人にとっては鯉は聖なる食材とされ、ウクライナ・ポーランド・チェコ・スロバキア・ドイツ・ベラルーシなどでは伝統的なクリスマス・イヴの夕食には欠かせないものである。東欧系ユダヤ教徒が安息日に食べる魚料理「ゲフィルテ・フィッシュ」の素材としても、鯉がよく用いられた。しかし北米では、鯉は水底でえさをあさるために泥臭いとして敬遠されており、釣り(遊漁)の対象魚とはされても食材として扱われることは極めてまれである。ヨーロッパでは、鏡鯉から食用に品種改良され家畜化された鱗のない鯉、革鯉(Leather carp)と呼ばれる鯉が使われる。
○ 食中毒
コイの胆嚢(苦玉)は苦く、解体時にこれをつぶすと身に苦味が回る。胆嚢にはコイ毒(毒性物質は胆汁酸の5-αチブリノールとスルフェノール)が含まれている場合があり、摂食により下痢や嘔吐、腎不全、肝機能障害、痙攣、麻痺、意識不明を引き起こすほか、まれに死亡例もある。その反面、視力低下やかすみ目などに効果があるとされ、鯉胆(りたん)という生薬名で錠剤にしたものが販売されている。
◎ 釣り
◎ 観賞魚・錦鯉
◎ 伝承
中国では、鯉が滝を登りきると龍になる登龍門という言い伝えがあり、古来尊ばれた。その概念が日本にも伝わり、江戸時代に武家では子弟の立身出世のため、武士の庭先で端午の節句(旧暦5月5日)あたりの梅雨期の雨の日に鯉を模したこいのぼりを飾る風習があった。明治に入って四民平等政策により武家身分が廃止され、こいのぼりは一般に普及した。現在では、グレゴリオ暦(新暦)5月5日に引き続き行なわれている。
また比喩的表現として、将来、有能・有名な政治家・芸術家・役者になるため最初に通るべき関門を登龍門と指して言うこともしばしばある。
『日本書紀』第七巻には、景行天皇が美濃(岐阜)に行幸した時、美女を見そめて求婚したが、彼女が恥じて隠れてしまったため、鯉を池に放して彼女が鯉を見に出てくるのを待った、という説話が出てくる。
日本では古くから女性が健康(体力作り)のために鯉を食したと言う伝説や伝承があり、妊婦が酸っぱい鯉を食べて健康になり、無事、安産できたと言う伝説もある。また、御産の後に鯉を食べると母乳がよく出ると言う伝承も見られる。こうした話は東西を問わず内陸地には多い伝承である。
「コイ」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』(https://ja.wikipedia.org/)
2024年10月12日15時(日本時間)現在での最新版を取得
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