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モルモット(豚鼠、、学名:)は、テンジクネズミ属の一種。南米に生息するテンジクネズミ科の野生種が古代インディオのもとで家畜化された種である。
また、英語やオランダ語でいう「marmot(マーモット)」は、山に生息する他の齧歯(げっし)動物、リス科マーモット属、山鼠またはウッドチャックを意味する。
● 形態
頭長が大きく無尾。古代インディオのもとで野生種が家畜化された種である。
◎ 食用として
ウシやブタに比べて場所をとらず、都会の住宅でも飼育が容易で、繁殖力が強く成長が速いモルモットは、南アメリカのアンデス地方ではクイ、クイェまたはクリと呼ばれ、現在でも食肉用として、野菜くずなどを与えて台所の周りなどで飼育されている。味はウサギや鶏のもも肉に似ているといわれる。かつてはアンデス高地の先住民によって祝い事の際のみに供されるご馳走だったが、1960年代から日常的にも食べられるようになった。ペルーでは、年間6500万匹のモルモットが消費される。
調理法は主に揚げ物、焼き物、ローストなどで、都会のレストランではキャセロールやフリカセにもする。エクアドルではロクロ・デ・クイ(locro de cuy)というスープにする。野菜と一緒に地中に埋めて焼き石を使って蒸し焼きにする(パチャマンカ)こともある。
◎ 実験動物として
かつてモルモットは病理学の実験動物としてよく用いられており、ジフテリアの病原体はモルモットを用いた研究によって解明された。また病理学以外の分野でも使われることがあり、例えば日本海軍の戦艦・武蔵が、爆風の影響を調べるために、モルモットの入った篭を甲板上に置いて主砲射撃実験を行ったという逸話もある。
その後、実験動物の主役はマウスやラットなど、より小型の齧歯類に取って代わられたものの、その生理学的な特性によってアレルギーに関する実験などには欠くことのできない動物種として存在している。モルモットが特に実験動物として優れている点として、ヒトと同様にL-グロノラクトンオキシダーゼと呼ばれるブドウ糖をビタミンCに変換する酵素を持っていないため、ビタミンCを体内で生成できないこと、薬物に対する感度が高いことが挙げられる。
なお、現在のパプリカやピーマンは、食用化されたものが一般化しているため、飼育用の餌として与えることは一切問題無い。
以上の理由から、肉体的・心理的に試される(実験される)人間を表す比喩として、「モルモット(にする/される)」という表現が使われる。日本では戦前まで医学関係者の一部によってドイツ語の名称の直訳である海猽(かいめい、かいべい、猽は子豚の意)と呼ばれていたこともある。だが戦後はわずかな論文の中に見られる程度となり、現在は死語となっている。日本でのモルモットという言葉の由来は、1843年にオランダ人が長崎にモルモットを伝えたとき、この動物を「マルモット」 (Marmot) と呼んでおり、これを音写したモルモットという呼び方が定着したようである。
学名の種小名 も「小ブタ」を意味するが、この「ブタ」の由来は不詳である。割合的に大きい頭部や尻尾がなく丸い尻の造形がブタのようだからという説、テンジクネズミの肉の味が豚肉に似ているためという説、ドイツ語の名「メーアシュヴァインヒェン」(Meerschweinchen)は「海の小さなブタ」を意味するが、新大陸を経由する航海中に新鮮な肉を食べられるようにモルモットが船に積み込まれていたことに由来するという説、といった風に様々な説が語られている。
スペイン語圏ではケチュア語の quwi に由来するクイ(cuy)や各種の別形(cuyi, cuyo, cuye, cuilo, cuis, acure, curí, curío, cury...)、またトゥピ語の sabúia に由来するコバヤ(コバジャ、cobaya)といった現地語系の名が一般化しているが、他のラテン諸国同様に「コネヒージョ・デ・インディアス(conejillo de indias)「チャンチート・デ・インディアス(chanchito de Indias)」といった「インドの子ブタ」を表わす俗称も存在する。
英語圏では属名から「ケィビィ」 (Cavy) とも呼ばれている。
● 品種一覧
野生の他種のテンジクネズミの体色は褐色または灰色だが、モルモットには白、黒、黄褐色、縞や斑点など、様々な体色のものがいる。1200年頃からインカ帝国の征服までに様々な系統が作り出され、今日の品種群の元となった。
・イングリッシュ(直毛短毛種・最も一般的な品種)
・アビシニアン(中毛種・全身にロゼットと呼ばれるつむじを持つ)
・シェルティ(直毛長毛種・頭部と脇が長くなる)
・ペルビアン(直毛長毛種・頭部と背の毛が長くなる)
・テディ(ティディとも。縮れ毛の短毛種)
・レックス(縮れ毛の短毛種だが、テディとは違う遺伝子で生じる)
・テッセル(縮れ毛長毛種)
・クレステッド(クレスト、梵天とも。頭部につむじを持つ短毛種)
・スキニーギニアピッグ(スキニーとも。無毛か、頭部や手足に少量の縮れ毛を持つ)
なお、日本に流通しているモルモットの多くはミックス(俗にいう「雑種」)で、ペットショップ等でも単にその個体にもっとも形質の近い品種名が割り当てられる場合が多い。
「モルモット」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』(https://ja.wikipedia.org/)
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