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モササウルス(学名:)は、絶滅した水生有鱗目のモササウルス科の属。約7,000 - 6,600万年前にあたる後期白亜紀の頂点捕食者で、マーストリヒチアンの間に生息し、ヨーロッパ西部と北アメリカに分布した。日本やニュージーランドに生息した可能性もある。属名は「マース川のトカゲ」を意味するが、これは最初の標本がマース川の付近で発見されたことに由来する。
● 特徴
モササウルスはモササウルス科の最後の属の1つで、最大の属の1つでもあった。大半のモササウルス科爬虫類と同様に、モササウルスの四肢はヒレ足へ進化し、前肢のヒレは後肢のヒレよりも大型であった。最大の種はモササウルス・ホフマニであり、近縁なティロサウルスやハイノサウルスを上回る大きさを誇る。全長はかつて17.6メートルに達したとされたが、これは頭部:全長の比を1:10とする推測に基づくものであり、実際にはこの比は1:7ほどであったとされるようになった。モササウルスは近縁な他のモササウルス科より頑強でもあり、下顎は頭骨に固く附随していた。体型は上下に深い樽型で、目は顕著に大きい。モササウルスは浅海に生息し大型魚類・ウミガメ・アンモナイト・海棲爬虫類・鳥類・翼竜・恐竜・首長竜を捕食していたと専門家は考えている。
化石には傷を負い、治癒した痕跡を持つものが少なくなく、闘争が絶えなかったことを示している。頭骨はワニを思わせる形態で、頑丈で吻は細長く伸び、後方に湾曲した多数の歯を持つ。また、先の丸い砕くのに適した歯を持つものもいた。これらの歯で獲物を捕らえ、砕き、切り刻んでいたとされる。学術的に知られた最初の化石は、1764年にジェーン・バプティスト・ドローウィンが発見して1766年に記載したものであり、オランダのマーストリヒト付近の丘である聖ピーター山の白亜産地から産出した頭骨断片である。ハールレムのテイラーズ博物館初代館長マーティン・ヴァン・マルムは1784年にこの標本を自館に持ち込み、1790年に記載を発表した。彼はこの標本をクジラの一種と考えた。この標本は TM 7424 としてコレクションの一つとされている。
第二の標本が発見された時期には諸説あり、1770年、1770年ごろ、1780年ごろとするものがある。いずれにせよ、この頃に第二の部分的な頭骨が発掘されている。これは律修司祭テオドルス・ジョアネス・ゴディングが所有する土地で発見されており、彼は標本を丘の上の斜面に立つ自身のカントリーハウスに展示した。退役したドイツ軍医ヨハン・レオナルド・ホフマン(1710-1782)もまた、同じ断片を収集し、ドイツ人の医者兼博物学者ペトルス・カンパーとともに頭骨を組み立てた。ホフマンはこの動物をワニと推測したが、1786年にカンパーはこれに反対し、標本を未知の歯クジラと結論付けた。
マーストリヒトは重要な要塞都市であり、1794年の末にフランス革命軍に占領された。地質学者バルテルミー・フォジャ・ド・サン=フォンは都市陥落2ヶ月後のマーストリヒトで生き延びており、芸術的・科学的に価値ある物をフランスへ輸送していた政治将校 Augustin-Lucie de Frécine (1751–1804) とともに、標本を持ってフランス騎兵と同行した。別荘から要塞へ標本が移動されたことを悟った Frécine は、最初に頭蓋骨の所在を突き止めて持ってきた者に上等のワインを瓶で600本与えることを打診し、すぐに数十人の兵士が頭骨を回収して報酬を受け取った。1974年12月に標本は戦争の戦利品として略奪されてパリへ運ばれ、国の遺産に指定されて新しい国立自然史博物館のコレクションに加えられた。
1798年にバルテルミー・フォジャ・ド・サン=フォンは Histoire naturelle de la montagne de Saint-Pierre de Maestricht [Tome 1 を発表し、ここに発見の道のりを綴った。彼によると、化石発見の折には通知するようホフマンは採石場の職員に金を支払っており、頭骨が1770年に発見された際に知らせを受けた彼は発掘の指揮を執ったという。後にゴディングが地主としての権利を主張し、法廷に圧力をかけてホフマンに勝訴し、所有権の放棄を彼に迫った。1795年にド・サン=フォンは標本を保護し、ゴディングに過失の補償を約束させた。しかしながら、ドイツ人の歴史学者ペギー・ロンペンはこの物語に一切の証拠がないと指摘しており、実際に他の情報源により実証が不可能である。ゴディングが本来の化石所有者であり、ホフマンは化石を手にしたことがなく、ド・サン=フォンが何かを支払ったこともおそらくなく、軍事力による化石の没収を正当化するためのカバーストーリーであると考えられている。
◎ 絶滅した爬虫類
ド・サン=フォンは標本をワニのものと推測した。1798年にペトルス・カンパーの息子エイドリアン・ギレス・カンパーは、父親の記載論文を読むことで間接的に研究を再開した。彼はまず、これが巨大なオオトカゲ科の化石であるという結論を導き、1799年にジョルジュ・キュヴィエに賛同されるに至った。
1808年にキュヴィエはカンパーの結論を確定させた。化石は既に、動物種が絶滅へ向かう可能性についてのキュヴィエの最初の推論の一部に組み込まれていた。絶滅のアイデアは進化論の一つである彼の天変地異説に繋がることとなった。これに先立ち、かつて生息した動物に由来すると解釈された大半の化石爬虫類標本は、ワニ・魚類・鯨類・大型陸生哺乳類といった現存する動物と同様の形態として考えられた。しかしマーストリヒトの標本が現存するどの動物とも異なる大型動物であるとするキュヴィエの考えは、彼自身にも奇妙なものであった。彼は当時発展しつつあった比較解剖学における自身の技量を信じ、この考えを妥当とみなした。彼は既に巨大なバクやナマケモノの標本など、現代では絶滅して化石からしか知られていない大型動物を相手にしていた。
1854年には、ドイツの生物学者ヘルマン・シュレーゲルがモササウルスが普通の四肢ではなくヒレ足を持っていたと推測した。
◎ より近年の発見
2015年4月18日(土)に、オランダの北ブラバント州 Rijkevoort 村の40歳アマチュア古生物学者ラース・バーテンが、彼の父ジョス・バーテンとともに、マーストリヒトの近くでモササウルス・ホフマニの化石を発見した。この化石はラースと命名され、マーストリヒト自然史博物館に所蔵されている。
● 分類と種
モササウルス科は複数の亜科に分かれており、モササウルスはモササウルス亜科に属する。モササウルス亜科はさらに族に細分でき、モササウルスはクリダステス、リオドン、モアナサウルスとともにモササウルス族に分類される。
本属が命名されたのが19世紀前半であるため、北アメリカとヨーロッパから産出した数多くの種がモササウルス族に割り当てられている。不完全な標本が多く含まれているものの、ヨーロッパの種は実際にはアメリカの種のシノニムであると多くの研究者は提唱しており、どの種をシノニムとしてどの種を独立種とするかについては見解が割れている。例を挙げると、アメリカから産出した巨大な種モササウルス・マキシマスは大半の研究者がモササウルス・ホフマニのジュニアシノニムとみなしているが、頭骨の特徴により両者を区別できると主張する研究者もいる。
一般的には5種が有効であるとされており、その5種とはモササウルス・ホフマニ(タイプ種)、モササウルス・コノドン、モササウルス・レモニエリ、モササウルス・ベアウゲイ、モササウルス・ミズーリエンシスである。
以下のモササウルス類と近縁な分類群のクラドグラムは、D.V. Grigoriev(2013) に基づく。
{{clade style=font-size:85%
◇line-height:85%
label1=モササウルス亜科
1={{clade
1=Dallasaurus turneri
2={{clade
1=
2={{clade
1="Prognathodon" kianda
2={{clade
label1=グロビデンス
1=
2={{clade
1="Prognathodon" overtoni
2="Prognathodon" rapax
3="Prognathodon" waiparaensis
label4=プログナトドン
4=
label5=モササウルス族
5={{clade
1=Plesiotylosaurus crassidens
2= }} }} }} }} }} }} }}
◎ ジュニアシノニム、疑問名など
・M. copeanus Marsh, 1869 = Plioplatecarpus depressus
・M. crassidens Marsh, 1870
・M. dekayi Bronn, 1838 = M. hoffmanniルッセロサウルス類に位置付けられている。
・M. hardenponti Dupont, 1892 (?疑問名)
・M. horridus Williston, 1895 = Mosasaurus missouriensis
・M. iguanavus (Cope, 1868)
・M. ivoensis Persson, 1963 = Taniwhasaurus? ivoensis
・M. johnsoni (Mehl, 1930) = Amphekepubis johnsoni
・M. lonzeensis Dollo, 1904
・M. lundgreni (Schröder, 1885)
・M. mangahouangae (Wiffen, 1980) = Moanasaurus mangahouangae
・M. meirsii Marsh, 1869
・M. neovidii von Meyer, 1845
・M. scanicus (Schröder, 1885)
「モササウルス」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』(https://ja.wikipedia.org/)
2024年10月14日14時(日本時間)現在での最新版を取得
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