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富山弁(とやまべん)は、富山県で話されている日本語の方言である。北陸方言の一種。旧国名の越中から越中方言(えっちゅうほうげん)などとも呼ばれる。
● 概説
富山県は北を日本海に面し、東には天然の要害である親不知や飛騨山脈が交通を遮っているため、富山弁は西日本方言の東限にあたる方言である。文化圏も西日本に属する。富山県は大きく三つの地域に分けられ、県の中央を走る呉羽丘陵を境に、東を呉東(ごとう)、西を呉西(ごせい)と呼ぶ。また、呉西の南部にある急峻な庄川の上流域を五箇山(ごかやま)と呼ぶ。これにより、富山弁も呉東方言・呉西方言・五箇山方言の三つに分けられる。さらにこれを、呉東東部方言(下新川郡・魚津市・黒部市)・呉東西部方言(滑川市・中新川郡・富山市)・呉西北部方言(氷見市)・呉西南部方言(射水市・高岡市・小矢部市・砺波市・南砺市)・五箇山方言(南砺市五箇山)に分ける場合もある。
県内の主流アクセントでは、二拍名詞のうち、第1類(顔、風など)と第4類(糸、稲など)は平板型に発音される。また、第2類(音、紙など)、第3類(池、足など)、第5類(雨、春など)は二拍目の母音が広母音(a、e、o)なのか狭母音(i、u)なのかによって変化が起きる。第2、3、5類のうち、二拍目の母音が広母音のもの(音、池、雨など)は尾高型であり、二拍目が高く、後に続く助詞が低く発音される。二拍目の母音が狭母音のもの(紙、足、春など)は頭高型であり、一拍目が高く二拍目は低くなる、知らんがだわ)。
尊敬語表現には、全県で「〜おられる」「〜しとられる」「〜おられた」「〜しとられた」を使うが、特に呉東で多用される。
対して呉西では近畿方言と同じく「〜はる」「〜はった」を多用する。高岡市・氷見市周辺では丹波弁や播州弁などと同じように「〜てや」「〜たった」を多用する。新川地方、砺波地方、射水市では「〜しゃる」「〜しゃった」「〜しゃい」も多用される。さらに砺波地方では「~(して)おいでる」も使われる。
◇ しゃい
: 「〜しなさい」「〜しなよ」の意。砺波地方や射水市、魚津市で多用される。
: 例: こっしゃい / こらっしゃい(来なさい) / しっしゃい(しなさい)
◇ まいけ
: 勧誘の助動詞「う」「よう」にあたる。東海東山方言などにも似た用法がある。呉西では「〜まいけ」、呉東では「〜んまいけ」が使われる。この接尾辞のバリエーションとして、否定の勧誘には「〜んとこまいけ」「〜んとかんまいけ」が用いられる。富山県の広い地域で用いられ県内全域ほぼ共通である。入善町のコミュニティバスの愛称「のらんマイ・カー」、富山地方鉄道のICカード乗車券「Ecomyca(えこまいか)」などにこの表現に由来する名前がみられる。
: 例: 行こまいけ((一緒に)行こう)or 行かんまいけ((一緒に)行こう) / 行かんとこまいけ(行かないでおこう)or 行かんとかんまいけ(行かないでおこう)
◇ られ
: 「〜しなさい」「〜しろ」「〜してください」の意。上記の「まいけ」と同じように富山県の広い地域で用いられる。比較的自分に近い人(知り合いの同等または目下の人)に対して使う。
: 例: 富山にこられ(富山に来てください)
◇ ろー
: 推量を表す。
: 例: 起きろー / 寝ろー。じっとするや正座を意味する「ちんと」からきている。魚津市、黒部市、下新川郡など県東部で使われるが「ちんちん掻く」と同音のため珍しい方言としてテレビ番組でも度々取り上げられることがある。
: 例: ちんちんかかれんか(正座しなさい)
◇ ちんとする
: 「じっとする」「おとなしくする」の意。
: 例: ちんとしとられ(おとなしくしていなさい)
◇ ねまる
: 「座る」の意。
◇ はいる
: 以下の例のような用法の場合においては「(テレビやラジオの番組が)放送される・放映される」の意であり、「電波が受信できる・できない」の意味ではない。
: 例: きょう、テレビで巨人戦はいるがやろ?(今日、テレビで巨人戦やる(放送される)んだよね?)
◇ またいする
: 「しまう」「片づける」の意。
◎ 形容詞
◇ いじくらしい
: 「うっとうしい」「面倒くさい」のような意味。面倒なことや自分の思い通りにならないことがあるときに使う。標準語では表現しにくい微妙な意味合いがある。「はがやしい」も類義語だが、微妙に異なる。金沢弁では「いじっかしい」と言う。
◇ かたい(賢い)
: 「賢い」「礼儀正しい」「行儀がいい」の意。主に子供に対して用いる。
◇ こちょがしい、こちょわしい
: 「くすぐったい」の意。
◇ しょわしない
: 「せわしない」「落ち着きがない」などの意。主に子供に対して用いる。
◇ だやい
: 「だるい」「かったるい」「面倒くさい」の意。身体的、精神的両面での疲れを表現する言葉。標準語では表現しにくい微妙な意味合いがある。
◇ 支えん(つかえん)
: 「差し支えない」「構わない」の意。大阪弁の「かまへん」に近い。「使えない」の意の「使えん」と同音のため注意が必要であるが、こちらは「使(つこ)われん」と区別することも多い。
: 例: こ、使(つこ)ていいがけ?(これ、使っていいですか?) - なーん、支えんよ(ああ、構わないよ) / なーん、使えんよ(いや、使えないよ)
◇ はがやしい
: 「はがゆい」「うっとうしい」のような意味。自分の思い通りにならないときなどに使う。標準語では表現しにくい微妙な意味合いがある。「いじくらしい」も同義語だが、やや違いがある。金沢弁では「はんげー」となる。
◇ はしかい
: 「賢い」の意。
◎ 形容動詞
◇ かちゃかちゃ
: 「めちゃくちゃ」な状態の意。事柄についても言われる。
◇ きときと
: 「新鮮、生き生きとした、活気がある」の意。「きときとな魚」や「きときと市場」など、魚介類の売り場での成句によく使われる。富山県を舞台にした映画『キトキト』の題名に使われるなど、富山の方言として知られる言葉だが、金沢でも使われる。
: 例: きときとな魚やね(新鮮な魚だね)
◇ つくつく
: 「尖った」の意。
: 例: 鉛筆をつくつくにする(鉛筆を尖らせる)
◇ わやく、ばやく
: 「ぐちゃぐちゃ」「整理されていない」の意。「わやわや」「ばやばや」とも。
: 例: わやくな部屋(ぐちゃぐちゃな部屋)
: 例: ばやばやになっとる(ぐちゃぐちゃになっている)
◇ つるつる、つるつるいっぱい
グラスなどに注がれた飲み物がギリギリまで注がれた様を言う。石川県や福井県でも使用。
◎ 副詞
◇ でかいと
: 「たくさん」の意。微妙な違いとしては英語でいうmanyやmuchに相当する(しばしば大きさの違いも補う)。「でかい」は「大きい」の意味だが、「と」がつくと副詞の「たくさん」の意味になる。以下の例は、人ごみに驚いたときの常套句である。
: 例: か、なんちゅでかいと人おるがけ(これはなんとたくさん人がいるんだろう)
◇ なーん
: 「まったく」「全然」の意。「何にも」が転訛したもの。「いいえ」の意味の感動詞的用法(後述)もある。
: 例: なーん知らん(まったく知らない)/ なーん分からん(全然分からない)
◇ まっで
: 「まるで」「とても」「すごく」の意。
◇ やっとかっと
: 「やっとのことで」「どうにかこうにか」の意。
◇ やわやわ
: 「ゆっくり」の意。変化をして、「と」を付け加えた「やわやわと」も使われる。
: 例: やわやわ行かんまいけ(ゆっくり行こうよ)
◎ 感動詞
◇ 気の毒な(きのどくな)
: 「ありがとう」の意。文字通り「お気の毒に」という意味にもなりうる。公的な場面でも用いられる成句である。
◇ なーん
: もともとは否定の「いいえ」の意味だが、会話によっては相づちにもなる言葉。「何にも」が転訛したもの。否定か肯定かは会話の流れ、文脈や言動で判断しなくてはならない。「まったく」「全然」の意味の副詞的用法もある。軽い表現で、どちらかと言えば形式ばらない表現だが、公的な場面でも用いることがある成句である。
: 例: なーん、違(ちご)ちゃ(いいや、違うよ) / なーん、支えんよ(ああ、構わないよ)
◇ まいどはや
: 「こんにちは」「ごめんください」の意。富山市の自治体が運営するバスや和菓子会社月世界本舗の製造する菓子の名前になっている。上記の「気の毒な」と同じく、公的な場面でも用いられる。
◎ 助数詞
◇ 題目(だいめ)
: 歌(歌詞)の一番、二番、三番…のことを一題目、二題目、三題目…という。全国で富山県と石川県でしか通じない言葉であるが、学校の音楽の授業でも「○題目」と習うことが多いため、方言と気付かずに使っている人が多い。能の「題目」が由来の説と日蓮宗(法華宗)の「題目」が由来の説があるといわれている。
● 富山弁が登場する作品
・ 富山県人ビリッチ氏の動画作品。作者本人の吹込みにより富山弁が実用されている作品。
・ ほしのふるまち(原秀則の漫画。氷見市が主な舞台。)
・ 47都道府犬(声優バラエティー SAYYOUSAYME内で放映された短編動画。郷土の名産を題材にした犬たちが登場する。富山県はイカがモチーフの富山犬として登場し、「かわいい靴下買いに行くわよちゃぁ」などと話す。声優は、富山県出身の谷井あすかが担当している。)
・ ゆるゆり(なもりの漫画。高岡市が主な舞台。)
・ あいのかぜ(水越ユカの楽曲。射水市出身。富山弁のラブソングと応援歌がある。)
・ 月影ベイベ(小玉ユキの漫画。富山市八尾地区(旧 八尾町)が主な舞台。)
・ アイドルタイムプリパラ(本作の登場人物である『地獄ミミ子』が富山弁に近い喋り方をする。)
・ 北陸とらいあんぐる(本作の登場人物であり、富山県出身の『黒部りつ』が話す。)
・ クロムクロ (2016年のテレビアニメ、登場人物の一人であるホセ・カルロス・高須賀が富山弁で会話している。)
・ 大コメ騒動 (2021年の映画)
・ おちょやん(ヒロインが働く京都のカフェーで、富山弁の女給(吉川愛)が登場する)
「富山弁」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』(https://ja.wikipedia.org/)
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