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群馬弁(ぐんまべん)は、群馬県で話されている日本語の方言である。群馬県はかつての上州であることから上州弁(じょうしゅうべん)とも呼ばれる。
● 概要
房総弁や埼玉弁、多摩弁や神奈川弁と同じ西関東方言に属する。同じ北関東の茨城弁や栃木弁(足利市周辺を除く)は東関東方言に属しており、群馬弁とは大きく異なる。群馬県で話される方言をまとめて群馬弁や上州弁というが、群馬県内でも地域によって変化し、北部・西部の山間部、中部の平野部、東南部の3方言に分けられる。東南部の邑楽郡地方は西関東方言と東関東方言の中間的要素を持つ。
埼玉弁と同じくガ行鼻濁音はない。また、江戸言葉のべらんめえ調のような母音の転訛が存在する。
● 代表的な表現
◎ 助動詞
○ 否定
否定の助動詞「ない」は、「来る」に付く場合は「きない」「きねえ」となる。ただし吾妻郡では「こない」「こねえ」。
○ べえ類
関東方言で広く用いる意志・勧誘・推量の「べえ」は、動詞には以下のように接続する(推量とは、共通語の「…だろう」にあたる表現である)。古くは意志・勧誘表現と推量表現はどちらも「べえ」で表現されていたと考えられているが、共通語の「う」と「だろう」の区別の影響を受け、昭和中期までには意志・勧誘を「べえ」、推量を「だんべえ」とする使い分けが群馬県・埼玉県などで生じた。意志の「べえ」は五段活用動詞の終止形、一段活用動詞の未然形に付き、カ変・サ変動詞には古語の終止形に付く場合と未然形(「ない」が付くときの形)に付く場合とある。「来る」の否定形に「こない」を使う吾妻郡では「きべえ」ではなく「こべえ」である。このような「ぺえ」は関東では他に栃木県・茨城県で使われるものである。
◎ 動詞
・ 「あるって」→歩いて
・ 「いきあう」→(たまたま)会う
・ 「いぐ」→行く カ行の活用が「ガ」行に変化する。
・ 「いごく」→動く
・ 「える」→炒る(吾妻西部地域)
・ 「えんで」 →歩いて(吾妻西部地域)
・ 「おしこくる」→(強めに)押し込む
・ 「おっかく」→折る、割る
・ 「かさる」、「かざる」→触れる、かする
・ 「かたす」→片付ける
・ 「かんます」→かき回す、かき混ぜる
・ 「けえる」→帰る
・ 「たかる」→便乗する、付着する
・ 「どっくむ」→飲み込む(一部地域のみ)
・ 「とんます」→ひっくり返す(吾妻西部地域。「この肉(の片面は焼けたから)とんませ!」等)
・ 「はねる」 →爆発する、暴発する、吹き出す。また、火山が噴火すること。(吾妻地域)
・ 「ふてる」→捨てる(東毛地域)
・ 「ぶちゃる」→捨てる(高崎、渋川、富岡、吾妻地域)
・ 「へずる」→減らす、削除する(桐生地域)
・ 「ぼっこす」→こわす
・ 「ゆだる」→のぼせる(桐生、太田地域)
・ 「おっぱなす」→放す
・ 「つっとす」→つきとおす(一部地域のみ)
・ 「もす」→燃やす
・ 「とぶ」→走る(西毛地域)
・ 「ぶつ」→打つ、当てる、殴る(吾妻西部地域)
・ 「ぶっつく」→ぶつかる、衝突する
・ 「はたく」→叩く
・ 「おっぺす」→押す(一部地域のみ)
・ 「おいた」→終わった(一部地域のみ)
◎ 形容詞
・ 「おやげない(おやげねえ)」→かわいそう(一部地域のみ)
・ 「おおいい」→多い
・ 「かっこぶ」「かっこむ」→急いで(ご飯)を口に入れる
・ 「(虫に)くわれる」→(虫に)刺される
・ 「げぇに」 →強く(吾妻西部地域)
・ 「けちに」→古く、みすぼらしく、(吾妻地域。「この服、けちになってきちゃった」等)
・ 「しょうしい」→みっともない、はずかしい(吾妻西部地域)
・ 「せっちょう」→疲れる、若しくは世話
・ 「世話ねぇ」→全然問題ない事
・ 「ちっとんべぇ」→少し
・ 「なっから」「なから」→すごく、随分と、だいぶ
・ 「なんじゃねぇ(あんじゃぁねぇ=吾妻地域)」→問題ない
・ 「はぁ」→早く、もう、
・ 「ひずり」→まぶしい(一部地域のみ)
・ 「びっしょったない(びしょったねぇ)」→だらしない(東毛地域、吾妻地域)
・ 「みっとがない」→みっともない(桐生地域)
・ 「むぐたい」「もぐったい」→くすぐったい
・ 「もじっけぇ」 →かわいい(吾妻西部地域。特に嬬恋村)
・ 「やらかい」、「やらっかい」、「やっこい」、「やっけぇ」→やわらかい
・ 「んまい(うんまい)」→うまい、美味しい
・ 「きない」→来ない
・ 「こあい(こわい)」→硬い
・ 「めったに」(否定形と用いる)→あまり、それほどは、
・ 「あぁね」→なるほどね(相槌)
・ 「うんまか無い」→良く無い 「そらぁ、うんまか無かんべ」→「それは良くないな」
◎ 副詞
・ 「まあず」全く、本当に 「まあず、うんめぇんさ」→「本当に美味しいんだよ」
・ 「おおか」、「おおく」→大して、あまり
・ 「まっと」→もっと
◎ 助詞
・ 「〜かい?」「〜なん?」→〜なの?
・ 「〜きし」→〜だけ 「これっきし」→これだけ
・ 「〜けい」→〜なので
・ 「〜だら」→〜なら
・ 「〜っつ」→〜ずつ 「ちっとっつ」→少しずつ 「いっこっつ」→一個ずつ
・ 「〜きゃ?」→〜なの?(高崎市、前橋市)
・ 「〜なんさぁ」、「〜なんさねぇ」→〜なんだよ
・ 「〜のぉ」→〜だよね
・ 「〜だがね」「かだがんね」→〜だよ 「そうだがね」→そうだよ
・ 「〜べぇ」「〜ばい」→〜ばかり
◎ 名詞
valign=top
・ 「あんにゃ」 →兄または兄貴分を指す(吾妻西部地域)
・ 「いっこくもん」 →変わり者、頑固者(吾妻西部地域)
・ 「おくり」→奥
・ 「いっからかん」→いい加減(桐生地域)
・ 「いっからんぺー」→いい加減な人(東毛地域)
・ 「いっさき」→伊勢崎(中毛地域)
・ 「うら」 →私、自分(吾妻西部地域)
・ 「おおごと」→大変、苦しい。転じて努力、苦労という意にも使われる(彼は、今の地位を得るために、おおごとした)。
・ 「かかどん」→母さん、おふくろ
・ 「かくねんぼ」→かくれんぼ
・ 「がさっかぶ」→草むら
・ 「がしょうき」→乱暴、粗野なこと(東毛地域)
・ 「かどっこ」→角
・ 「じゃんぼん」→葬式(太田市、吾妻西部地域)
・ 「じんばら」→内臓、はらわた
・ 「せど」→裏(特に建築物や山や丘などの後ろ側を指す。吾妻地域)
・ 「せんひき(線引き)」→定規
・ 「そりめ」 → 坂の近くまたは坂の前(道の形状が反っている前の意、吾妻西部地域)
・ 「ちょべ」→うそ
・ 「つぐあさ」→翌朝
・ 「つぐひ」→翌日
・ 「てい」→連中
・ 「てばたき」→拍手
・ 「とっつけ」→角、ある方向に向かって最初の建築物等(吾妻西部地域)
・ 「とびっくら」→徒競走
・ 「なかんじょ」→中之条町(吾妻地域)
・ 「ののさま」、「のんのさま」→ご先祖様、仏様
valign=top
・ 「はぁて」→風花(西毛地域)
・ 「ばばんご」→おたまじゃくし(板倉町)
・ 「ばやっくら」→取り合い
・ 「半殺し」→ぼた餅
・ 「ひわるさ」→火遊び
・ 「ふっこし」→風花(北毛、勢多地域)
・ 「べっちょ」→女性器(北毛、西毛の一部)
・ 「まえばし」→前橋(東毛地区)
・ 「めかご」→ものもらい(吾妻、沼田、藤岡地域)
・ 「めかいご」→ものもらい(中毛、桐生、太田地域)
・ 「めけご」→ものもらい(館林地区)
・ 「めっぱ」→ものもらい(高崎、渋川、富岡、西毛地域)
・ 「めど」→穴
・ 「皆殺し」→餅
・ 「めんち」→前の家(館林地区)
・ 「もこぉ」→向こう
・ 「らいさま」→雷
・ 「のめし」→横着、怠け者(沼田・利根・吾妻地域)
・ 「われ」→あなた、君(吾妻地域)
・ 「おこんじょ」→意地悪
● アクセント
群馬弁のアクセントは、板倉町付近に一型アクセントまたはそれに近い曖昧アクセントの地域があるほかは、中輪東京式アクセントであり、東京との隔たりはそれほど大きくは無い。
◎ 名詞
三拍の名詞のうち、第5類と呼ばれるグループの語(朝日、命、キノコ、心、涙、柱、花火、火箸、火鉢、枕、まつ毛、メガネ、紅葉)は、東京や群馬県の市部では頭高型(あさひ)だが、郡部では中高型(あさひ)となる傾向がある。1984年頃の高崎での調査では「朝日」「心」「涙」「柱」は中高型であった(ただし「心」「柱」は東京でも中高型または尾高型)
苺 いちご(平板型) いちご。
赤城 あ\かぎ あかぎ ̄
吾妻 あがつま ̄ あが\つま(※)
伊勢崎 いせ\さき いせさき ̄(※)、いっさき ̄
太田 おおた ̄ お\おた(※)
軽井沢 かるい\ざわ かるいさ\わ
桐生 きりゅう ̄ き\りゅう(共通語としても許容範囲)
草津 く\さつ、くさ\つ くさづ ̄
新町 し\んまち しんまち ̄
館林 たてば\やし たてばやし ̄(※)
利根川 とねがわ ̄ とね\がわ
中之条 なかの\じょう なかのじょう ̄(※)
長野原 ながの\はら ながのはら ̄(※)
前橋 まえ\ばし、ま\えばし まえばし ̄(※)、まいばし ̄
妙義 みょ\うぎ みょうぎ ̄(※)
● 群馬弁に関連した作品など
・ 47都道府犬 - 声優バラエティー SAYYOUSAYME内で放映された短編アニメ。郷土の名産をモチーフにした犬たちが登場する。群馬県は、温泉饅頭がモチーフの群馬犬として登場し、「今は、温泉饅頭見習いなんさ」などと話す。声優は、群馬県出身の田中敦子が担当している。
・ 押見修造(桐生市市街地出身)作品には群馬弁が度々登場する。『惡の華』『ぼくは麻理のなか』『血の轍』など。
● 主な話者著名人
・中山秀征 - 藤岡市。かなり共通語教育されているため滅多に話さないが、草野球をやっている時に群馬弁的な言葉を話す様子がテレビで放送されたことがある。また、苺のアクセントは群馬弁のそれである。
・井森美幸
● 参考文献
・ 金田一春彦監修(2001)『新明解日本語アクセント辞典』(三省堂) - 標準語のアクセントはこの書籍に依った。
・ 杉村孝夫(1984)「群馬県の方言」飯豊毅一・日野資純・佐藤亮一編『講座方言学 5 関東地方の方言』(国書刊行会)
「群馬弁」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』(https://ja.wikipedia.org/)
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