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茨城弁(いばらきべん)は、茨城県で話される日本語の方言である。茨城県は常陸国と下総国北部(千葉県より移管)で構成されており、古くより統一的な方言として扱われていたわけでなく、現在の茨城県が構成されて以降の分類である。方言学では茨城方言とも称される。

● 概要
茨城弁は、栃木弁とともに東関東方言に分類される。一方で東北方言や東京方言(江戸言葉)との共通も多い。東北地方南部の福島県や、同じく北関東の隣県である栃木県の方言に通じる共通点を持っている。もうひとつは「イとエの区別が無い」というものがあり、エがイの発声に近いイとエの中間音で発音され(もしくは、イとエの発音が逆転する)、特定の語に適用されることなくイとエを含む言葉すべてに適用される。
・ (例2)「そうだ、あのときは雨が降っていたなぁ」→「んだ、あんとき雨降ってッケな」「そうだ、あんときは雨降ってタッケな」
・ (例3)「それは本当なのか?」→「それは本当なのケ?」「それは本当なのゲ?」
・ (例4)「そうなのかい」→「そッケ」「そうゲ」 また、格助詞については、茨城弁の会話の中では一般に省略されて使われることの方が多い。
・ (例5)「雨が降っている」→「雨降ってる」
・ (例6)「水を飲む」→「水飲む」

◎ 敬語
茨城方言では、一般に敬語の用法が少なく、特に第三者に対しての用法が非常に少ない。本来の助動詞「れる」「られる」を使うことは極めてまれで、「せられる」「させられる」はほとんど使われない。(2) アブラツノザメ。
・ しが:(1) つらら。(2) 薄氷。(2) は特に川を流れる薄氷を言い県北の方言。
・ しゃでー:弟。舎弟。「シャデーのほうは、今何やってんの?」→(弟さんは、今何をやっているの?)
・ じゃんぼ・じゃぼ:葬式。県西地域では「じゃんぼ」が多い。
・ ちぐ・ちぐ(鼻濁音)・ちく・ちぐらぐ・ちくらぐ・ちくらく・ちぐらっぺ・ちくらっぺ・ちぐらっぽ・ちくらっぽ:嘘。「ちぐ・ちく」は茨城・栃木を中心に広域で使われる。
・ ちぐたぐ:(1) ちぐはぐ。(2) 互い違い。「ぐ」は鼻濁音。
・ どどめいろ:濃い紫色。プールに入った後の唇などの色を言う。全域ではない。
・ とーみぎ・とーむぎ:トウモロコシ。
・ にんこ:おにぎり。「おにんこ」とも言う。全域ではない。
・ へだかす・へだっかす:下手なこと。下手な人。
・ まっつら:稲を束ねる藁。「まるきつる」(束ねる紐)の意味。全域ではない。
・ やげっぱだ・やげっぺだ・やげっぽだ・やげばだ・やげぱだ・やげぽた:火傷。全域ではない。
・ やせころげ・やせっころげ・やせっぴ:痩せっぽち。
・ やっちゃごっちゃ:でたらめの状態。めちゃくちゃ。
・ やま:林、森、山の三つにあたる。茨城弁では、「ハヤシ」「モリ」といった単語は無い。
・ ゆーべかた・ゆんべかた・ゆんべ:昨夜。
・ よひて・よひてー・よぴて・よぴてー:よっぴて。一晩中。
・ よわっかし・よわっかす・よわっぴ:弱虫。
・ らいさま・らいさん:雷。雷様。

◎ 動詞(複合語を含む)

・ あぎれる:飽きる。「飽きっぽい」の意味の形容詞は「アギレッペ」。
・ あるってく:歩いて行く。「行く」→「行って」の促音便変化と同じように「歩く」→「歩って」となる。
・ いじやげる・いじゃげる:(1) いらいらする、じれったい、もどかしい。(2) 腹が立つ。
・ いしゃる:退く。
・ いっける:載せる。
・ おじる:降りる。主に県北地域に多い。
・ おっかく・おっかぐ・おっちょる:折る。
・ おっちぬ:死ぬ。強意の接頭語がついたもの。
・ おっぴしゃぐ・おっぺす:(1) へこます。(2) 押しつぶす。全域ではない。
・ おんのまる:(ぬかるみなどに)埋まる。はまる。のめり込む。全域ではない。
・ かせる:食べさせる。全域ではない。
・ かっこぽす:こぼす。強意の接頭語がついたもの。
・ かっぱぐ:剥ぐ、掻き回す、寄せ集める、削ぐ。強意の接頭語がついたもの。
・ かっぽる:捨てるの意。「放る」に強意の接頭語「かっ」が付いたもの。「そんないしけーの、カッポッちめー」→(そんなボロい物、捨ててしまえ)
・ かんまーす・かんまわす:掻き回す。
・ きる:来る。カ行上一段活用。
・ くんのむ:飲み込む。
・ しぐ:死ぬ。
・ しる:する、為る。
・ せーる:仲間に入れる。
・ そべる・そべーる:甘える。じゃれる。「戯える(そばえる)」。
・ だす:遣る。県西地域を除く。
・ ちゃぶす:潰す。千葉県と共通。ひっちゃぶす。自動詞はちゃぶれる。
・ つこでる・つっこでる:落ちる。「突き落ちる」意味。他動詞は、つこどす・つっこどす。
・ つっぺーる・つっぺる:水溜まりにはまる。たんぼや川などにはまる。
・ でっこじゃす・でっこじゃれる:間違って作る。出来そこないをつくる。
・ とっぱずす:取り外す。失敗する。
・ のざぐ:喉に食べ物がつかえる。喉につかえてむせる。「エそいで食べでノザグな」→(急いで食べて喉につかえてむせかえるな)
・ はぎる:(毛先や枝先などを)切ること。「アダマ短くハギッテこー」→(髪の毛を短く刈って来い)
・ びだける・びだげる:甘える。
・ びだばる・びだまる:(1) 動けなくなる。病気等で伏せてしまうこと。(2) 死ぬ。(3) 挫折する。(4) 損をする。(5) 疲れる
・ ひやす:(水に)ひたす。
・ ぶっかす:壊す。「ぶ」は強意の接頭語であるが、本来の意味は薄れている。
・ ぶっくらす・ぷっくらす・ぶっくらせる・ぶっくらーせる・ぷっくらせる:殴る。ぶん殴る。
・ ぷっころす:ぶっ殺す。他と広く共通。
・ ぶっつぁぐ・ぷっつぁぐ:裂く。破く。
・ ぶっちめる:指を挟まれる。
・ ぶどげる・ぶどける・ぶとける:ふやける
・ ふんぐらげーす・ふんぐらけーす・ふんぐりげーす・ふんぐるげーす・ふんげりげーす・ふんぐりげーる・ふんげるげーす:(1) 踏み違える。(2) 足を捻る。
・ ふんぢゃす・ふんぢゃぶす・ふんじゃぶる:踏み潰す
・ ぶんぬぐ・ぶんぬく:(1) 抜く。(2) 穴を開ける。(3) 底蓋を開けて流す。(4) 追い抜く。(5) 除名する。
・ ぽぎだす・ぽきだす:吐き出す。死語となった「ほきだす」が訛ったもの。
・ ほぎる・ほきる:(1) 植物などが育つ。繁茂する。(2) 植物が芽を吹く。生える。萌える。(3) (火が)起きる。燃える。
・ ぽげる:(1) 風化する。(2) 湿気で木材が腐る。
・ ぼでる・ぼてる:餅などがふやけでどろどろになる。
・ ぼなる:(1) うなる。(2) 声を立てて泣く。
・ ほーろぐ:払い落す。「外でほごりホーロイでがら中さ入れ」→(外で埃を払い落してから家の中に入りなさい)
・ まるぐ・まるく・まーるぐ:束ねる。
・ まちる:混じる。清音化。
・ まびらかす・まぶらがす・まぶらせる:見せびらかす。
・ むすぐる:くすぐる。
・ むっくりげーす・むっくるけーす:繰り返す。
・ めっかさる:見つかる。見つけられる。
・ めっける:見つける。
・ やずす:略す。「約す」が訛ったもの。
・ やっちめる:やっつける。こらしめる。とっちめる。
・ やーぶ:歩く。
・ やれる・やーれる:(1) 言われる。(2) やられる。(3) 叱られる。(4) できる。
・ ゆごぐ:動く。
・ よろばる・よろぼる:よろける。
・ わっかく・わっかぐ・わっつぁぐ:割る。
・ わっかげる・わっつぁげる:割れる。

◎ 形容詞(複合語を含む)
茨城には形容詞のカリ活用が今でも日常語に残っている。
・ あぎれっぺ:飽きっぽい。「飽きる」の意味の動詞は「アギレル」。
・ あつこい:厚みがある。
・ いしこい・いしけー:(1) 醜い。見た目が悪い。(2) 粗末な様。(3) 出来が悪い。(4) 良くない。
・ うっとせー・うっとおし:(1) うるさい。(2) 鬱陶しい。主に天気についてのあいさつに使うことば。
・ えがい:大きいの意。「イカイ」とも。茨城弁では標準語の「大きい」と「でかい」の両方に対応し、ニュアンス使い分けは行われない。たまに「デガエ」が使われる。
・ おがし:
 ・(1) おかしい。「あの漫画、オガシかったど」→(あの漫画、おかしかったよ)
 ・(2) 恥ずかしい。「ハツカシイ」より普通に使われる。「シトのメエで喋んのオガシくてやだオラ」→(人の前で喋るのが恥ずかしくて嫌だ俺)
・ おもしー:面白い。
・ きかね:乱暴な性格の人のこと。荒々しい性格の人を指す。「あのガキメは、キカネな」→(あの子供は、乱暴な性格だな)
・ こきたね:小汚い。
・ こっぺくせー:でしゃばりな様。小生意気な様。
・ こわい:疲れた・くたびれたの意。「疲れる」は「コワグ ナル」。「あー、コワイコワイ」→(あー、疲れた疲れた)。
・ しょっぺ:塩辛いの意。茨城弁では標準語の「塩辛い」と「しょっぱい」の両方に対応する。「味噌汁がショッペ」など。
・ すっかい・すっけ:酸っぱい。「スッカイ」は県西の一部地域を除く。
・ すっこい:ずるい。こすい。
・ せずね・せづない:
 ・(1)「貧しい・貧乏な」の同意語だが茨城弁では日常語的に扱われる。形態的には標準語の「せつない」にあたる。
 ・(2) 悲しい。
・ せまこい・せまっこい:狭い。
・ ちっちぇ・ちんこい・ちんちゃい:小さいの意。茨城弁では標準語の「小さい」と「ちっちゃい」の両方に対応し、ニュアンスの使い分けは行われない。
・ つらっぱじねー:厚かましい。恥知らずの様。
・ とほーずもねー:途方も無い.
・ なめこい・なめっこい・なめっけ:滑らかな。
・ なんちゃない・なんちゃねー:何と言うことは無い。
・ ぬるっこい:温い。
・ ひらべって・びたっこい:平べったい。
・ ぶでない・ぶでねー・ぶてーねー・ぶてねー:(1) 気が利かない。(2) 役に立たない。
・ へづまんねー:つまらない。
・ まじっぺ・まじっぽい・まじぽい・まじらっぽい・まずらっぽい・まちぽい:眩しい。
・ まぶたい・まぶったい:眩しい。
・ みぐさい・みぐせー:見苦しい。醜い。
・ むじゃっぺねー:物を粗末にすること。
・ むすい・むせー・むそい:長持ちする。食べ物の減り方が遅いこと。くちがむすい・くちがむそい:余計なことを言う。減らず口をたたく。
・ むすぐったい:くすぐったい。
・ めごい・めんごい:可愛い。めんこい。
・ めじらっぽい:眩しい。
・ もそい:長持ちする。食べ物の減り方が遅いこと。
・ やーこい・やーっこい・やっこい・やっけ:柔らかい。柔らかな。
・ やすぽい:安っぽい。「易い」意味でも使われることがある。
・ よおな〜:必要な〜。いり用な〜の意。「ヨオナ物」→(必要な物)
・ わぎゃね:(楽だから)訳はない。なんてことない。

◎ 形容動詞

・ あっぱとっぱ:あためふためく様。「アッパトッパしちゃったよ」→(慌ててしまったよ)
・ ちょーろぐ:まともであること。まっとうなこと。「年で新聞もチョーログに読めねーよ」→(年だから新聞もまともに読めないよ)

◎ 副詞
茨城方言には、副詞方言がなぜか少ない。
・ しみじみ:しっかり。きちんと。しゃきっと。ちゃんと。「シミジミする」→(しゃきっとする)
・ なじ・なじー・なじゃ:なぜ。
・ なじょ・なじょー:なんとして。どうして。(死語となった古い言葉。)
・ はー:
 ・(1) もう。「はー終わったのけ」→(もう終わったのかい)
 ・(2) 関心や驚きの声。感嘆詞。「はー、大したもんだ」→(まぁ、立派なことだ)
・ ほどんと:ほとんど。
・ まーちんと:もうちょっと。
・ まっと:もっと。
・ よっぱら:さんざん。十分。よほど。

◎ 助動詞(複合語を含む)
茨城方言の助動詞は、主に近世語に由来すると考えられる。
・ け・けー・げ・げー:~かい。話の相づちで、「そうなの」の意で「そっけ」の使用頻度が高い。他県民にはそっけなく感じるが、まったく悪意は無い。
・ さる:~される。主に自発・可能・受身の助動詞。「れる」とほぼ同じ。やらさる:遣らされる。かがさる:書ける。めっかさる:見つかる。現代標準語に至る過程の言葉が残っていると考えられる。
・ しけ・すけ:~(だ)そうだ。「ちけ」とも言う。
・ だっぺ:~だろう。茨城方言の代表的な言い回し。古い関東方言の「だべい・だべえ」に当たる。「だっへ」と言う地域がある。
・ ちけ:~(だ)そうだ。「しけ」とも言う。
・ なんしょ・なんしょー:~なさい。主に女言葉。
・ らさる:自発・可能・受身の助動詞。
・ らる:自発・尊敬・可能・受身の古い助動詞「らる」そのもの。茨城では終止形を使うことは少なく、促音便を伴うことが多い。やらっか:出来るかい。
・ れる:自発・可能・尊敬・受身の助動詞。このうち可能形については、標準語は可能動詞を使うことが大半だが、茨城では古い言い方が残っている。書ける:かがれる。行ける:いがれる。喋れない:しゃべらんねー。

◎ 助詞(複合語を含む)
茨城方言の助詞は、主に近世語に由来すると考えられる。
・ が・がー:詠嘆・疑問・問い・反語・同意等の意味の「か」に相当。
・ が:格助詞。(1) ~の。(2) 体言の省略形。~の(~)。~のもの。(3) 体言の省略形。~分。現代口語では死語となった言葉。茨城では受け継がれている。鼻濁音。
・ がい:~に。「がへ」がさらに訛ったもの。
・ がへ:~に。格助詞「が」に「へ」がついたもの。
・ け・けー・げ・げー:~かい。「が・がー」より丁寧な言い回しに当たる。多く目上の人に使う。詠嘆を示す終助詞「か」に近世多く遊女・町娘などが用い、親しみの意を表す終助詞「え」がついた「かえ」が転じた可能性が高い。江戸でも「~けい」が使われた。
・ げ・げー:~に。下の体言が省かれた格助詞「が」に所・方角を指定する格助詞「に」または「へ」がついた「がに・がへ」の逆行同化したもの。「がに・がへ」は国語辞書には無い。長塚節の小説「土」に頻繁に出て来る。鼻濁音。
・ げ:~の家。主格を示す格助詞「が」に「家」のついた「~が家」の逆行同化。
・ けっと:【助・接】~(だ)けれど。
・ けんと:【助・接】けれど。
・ さ:方向を表す古語の「様」が転じたもので室町時代の言葉。格助詞。~へ。~に。まれに、目的を示す格助詞(~を)として使うこともある。栃木・千葉の一部でも使われる。
・ だら:(1) ~な。~なら。(2) ~とやら。~だとか。~とかいうことだ。(3)(体言について)~なら。(4) ~だと(すると)。~(する)のなら。
・ だり:~だの。物事列挙する時の言葉。標準語では、撥音化した動詞について並立を示すが、名詞の列挙には使われない。「~なり」。
・ ち・ちぇ:~て。
・ ちゃ:過去や完了を表す終助詞「~た」に相当。やっちゃがー:遣ったかい。
・ ど・どー:(1) ~ぞ。(2) ~と。~そうだ。
・ なや:(1) ~な。(2) ~なあ。(1) 禁止の終助詞「な」に感動詠嘆・反語の終助詞「や」がついたもの。はーやんなや:もう遣るなよ。(2) 感嘆の終助詞「なあ」に感動詠嘆・反語の終助詞「や」がついたもの。いがいなや:大きいね。
・ なんちゃ・なんちゃー:~など。~なんて。「~なぞは」が訛ったもの。
・ に・にー・にぇ・にぇー:否定の終助詞「ない」にあたるもの。しんにぇ:知らない。
・ べ・べー:(1) ~だろう(推量)。(2) ~しよう(確実な推量)。(3) ~しよう(意思・勧誘)。
・ ぺ・ぺー:同上。茨城方言の代表語。足音便を伴う動詞と組み合わされる。
・ へ・へー:同上。茨城でもまだ使用地域は狭く、霞ヶ浦周辺地域で使われる。
・ め・めー:~まい。否定の推量の助詞。
・ や・やー:(1) 命令・勧誘・希望表現。(2) 感動詠嘆をしめす。(3) 反語・反問。(4) 反語。単音形は方言ではないが、現代口語では死語。茨城では今でも使われる。

◎ 指示代名詞
指示代名詞の語幹「そ」が、「ほ」になるのは西国方言でもある。これは、「それは」が訛った感嘆詞「そら」を「ほら」と言うのは標準語にもあるが、なぜかそれ以外は使われない。 数ある指示代名詞の中で、「そ」「ほ」はどうやら感嘆詞に近いようで、類似の表現は世界中にある。
・ したっけ:そうしたら。
・ ほご:そこ。
・ ほしたら:そうしたら。
・ ほれ:それ。
・ ほった:そんな。
・ ほんで:それで。

◎ 接尾語

・ か・かー・が・がー:側(がわ・かわ)。多く促音化した言葉に付く。そっちっかー:そっち側。
・ かい・けー・こい:促音化した名詞・形容詞に付き状態を表す体言を作る。「けー」は「かい」の逆行同化形。いずれも標準語にある表現だが、茨城では使用範囲が広く独特の言葉を形成する。
・ がし・かし:端。側。あっちがし:向こうの端・向こう側。「~が尻」の意味の可能性もある。
・ かだ・けだ:方。~の方。ひがしっかだ:東の方。
・ くさい・くせー:状態を示す接尾語で、「怪しい」「...らしい」の意。「にクサイ・にクセー」→(似ているっぽいらしい)、「ちっぽクサイ・ちっぽクセー」→(小さいっぽいらしい)
・ ぐし:~ごと。~を含めて全部。上代上方語の「共(ぐち)」にあたる。グは鼻濁音。「この魚、骨グシ食えっと」→(この魚は骨ごと食べられるよ)
・ こ:標準語にもわずかにある接尾語。東北方言に特に顕著な接尾語。(1) 小さなものや子供を示す。あまっこ・おんなこ・おんなっこ・むすめっこ:女の子。(2) 愛称。よめっこ:嫁。(3) 場所を表す。すまっこ:隅。(4) 体言等が約されているもの。ひざっこ:膝っ小僧。(5) 意味を持たない接尾語。きれっこ:布切れ。ぜにっこ:銭。あなこ・あなっこ:穴。
・ だ・た:指示の連体詞の語尾の「な」に当たるが国語辞書には単独での定義は無い。助動詞の「だ」の連体形は「な」だが、標準語には「それだのに」のような変則的な言葉も残る。一方文語形容動詞にはカリ・タリ・ナリ活用があるように、標準語の「な」と「た」はかつて二手に分かれていたが、その後「な」に移行し、茨城では「た」に移行したと考えられる。いずれも連体形の「なる」「たる」の変化したものと考えられるが、「な」と「た」の大系的な関係は一般の国語辞書からは読み取れない。こーた:こんな。あーた:あんな。どーた:どんな。
・ てーら:~の人たち。「てーら」は、「て」の複数形。「あそこのテ」(あそこの人)、「若けぇーテーラ」→(若い衆)。
・ ぱだ・ぱた・ぺだ・ぺた:~端。~の表面。「べた・ぺた」は標準語で「尻臀」があるが、茨城では多用する。
・ ぱな:~端(はな)。
・ め:動物や昆虫、子供の俗称としてつける接尾語。イヌメ(犬)、ネゴメ(猫)、ウシメ(牛)、ハチメ(蜂)、カンメ(蚊)、ガギメ(子供)など。県西の一部地域を除くが、栃木でも使われる。
・ ぼ・ぼー・ぽ・ぽー:人の性(さが)を示す接尾語。「坊・法師」。
・ ぽい:体言・動詞の連用形に付いて形容詞を作る。茨城では標準語に比べ使用範囲が遥かに広い。まるっぽい:丸い。ふとっぽい:太い。かぐっぽい・かくっぽい:四角っぽい。

◎ 接続詞

・ そんだがら:だから。
・ そんだけんと:そうだけれど。
・ そんで:それで。
・ ほんだがら:だから。そうだから。
・ ほんで:それで。
・ んだが:だが。
・ んだがら:だから。そうだから。
・ んだけんと:だけれど。

◎ 代表的成句及び語法表現

・ あっと・あっど:有るぞ。
・ いかくなる:大きくなるの他、成長するの意味で使われる。大きいの意「イカイ」の連体形+動詞「〜になる」。「○○ちゃん、イカクナッタなー」など。
・ いぐべ・いんべ:行こう(「行くベ」)。茨城弁の独特な言い回しだが、出先から帰る際にも使用する。んじゃぁ、いってみっから:それじゃ、帰りますので。
・ いやっ、どーも:驚き・感嘆を表す。(1)御礼を言う場面で使う。標準語の「ありがとうございます」に似ている。(2)「参ったな。」「なんてこった。」のような困った場面で使う。英語の「オーマイゴット!」に近い。(3)世間話で使う。「そうなの?」「え?」みたいな反応をする時に使う。
・ うーでもつーでもねー:返事や音沙汰がない。「なんぼ言っても、ウーデモツーデモネー」→(いくら言っても返事が無い)
・ きーだ:困ること。「いや、キーダなー」→(いやぁ、困ったなぁ)
・ こでらんね・こでらんねー:(嬉しくて)こたえられない、たまらない。
・ ~ごど・~こと:~の事を。おら、おめごどきれーだ:俺はお前の事が嫌いだ。
・ ~しないちった・~しないちゃった・~しねーちった・~しねーちゃった:しないでしまった。
・ しもげる:寒さで(野菜などが)傷むこと。しもやけになってしまうこと。ゲは鼻濁音。
・ しゃーんめ・しゃーんめー:しょうがないだろう。
・ しんちった:死んでしまった。「死んじゃった」。
・ しんちまう・しんちまー:死んでしまう。「死んじゃう」。
・ しんちゃった:死んでしまった。「死んじゃった」。
・ そーたの:そんなもの。そんなの。
・ だっくれ・たっくれ:~(し)たなら。~(し)たらば。二つのルーツが考えられる方言。古語に由来する「~したりければ」、「~した位」の意味。
・ だんだ:誰だ。「だんじゃ」とも言う地域がある。
・ だんに:誰に。
・ ち・ちー:~という。
・ ちー・~ちぇ・~ちぇー:~(し)てしまえ。~(し)ちゃえ。
・ 〜ちった:~(して)しまった。~ちゃった。「ヨンチッタ」→(読んでしまった)
・ ちのに・ちーのに:~というのに。やだっちのに:嫌だと言うのに。
・ ちば:~というのに。~てば。
・ ちゃ・ちゃー:~とは。あしたいぐっちゃなんでだ:明日行くとは、どうしてだい。「ちゃあ」。
・ ちゃった:~(し)ちゃった。標準口語では、撥音便を伴う場合は「~じゃった」となるが、茨城弁では全て「ちゃった」となる。「しんちゃった」などと言う。
・ ちゅよ・ちゅーよ・ちよ・ちーよ:~(だって)よ。~(だ)そうだよ。
・ ちめ・ちめー:~(し)てしまえ。~ちまえ。しんちめ:死んでしまえ。
・ ちる・ちぇる:~(し)ている。「~てる」。
・ ちろ・ちぇろ:~(し)ていろ。「~てろ」。
・ ちんだ:~と言うのだ。「~てんだ」。
・ ちんで:~と言うので。「~てんで」。
・ っちゃった:~(して)しまった。~ちゃった。「たべっちゃった」などと言う。
・ ていめ・ていめー・てめ・てめー:~(し)ていないだろう。「~(し)ていまい」。
・ なじして・なして・なじょして・なちて:どうして。
・ なしたー・なじったー・なじょったー・なちたー。どうした。
・ なじに・なじょに・なじょーに:どのように。
・ なじにも・なじょにも・なじょーにも:どうにも。
・ なんちけ:何だって。何て言っていた。なんちけあれ:何と言うんだっけ、あれは。なんちけやざ:何て言っていた。あいつは。
・ はぐる・はごる:~(し)損なう。「逸る」は死語に近い標準語。
・ みたぐ・みたく:~みたいに。清音形は、近年都心の若人が使うようになってきている。「みたい」を形容詞として扱って、その連用形として使っていると考えられる。類似の語法に動詞の「違う」を形容詞として扱い、その連用形としての「ちがくなる」(間違える)がある。
・ やらっしょ・やらっしょー・やらっせ:おやりなさい。
・ やんだねーど:遣るんじゃないぞ。
・ 〜らっしょ・らっせ:敬語の「~なさい」の意。「食べラッショ」→(食べてください)
・ んだ:そうだ。
・ んだしけ・んだすけ・んだちけ:そうだって。だそうだ。
・ んだぺちか:そうだろうか。古語の「べし」には確実な推量を示す語法が有る。「べし」の反語。茨城方言の著名書には無く、かなり古い表現と思われる。

● 茨城弁を使う著名人

・ 赤プル
・ 磯山さやか
・ 梶山静六
・ カミナリ
・ 木内幸男
・ 白石美帆
・ 鈴木奈々
・ 中澤敦子:連続テレビ小説「ひよっこ」で茨城ことば指導を担当
・ マギー司郎
・ 松井直美

「茨城弁」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』(https://ja.wikipedia.org/
2024年12月8日17時(日本時間)現在での最新版を取得

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