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別府温泉(べっぷおんせん)は、大分県別府市内各地に数百ある温泉の総称。広義には別府温泉郷。豊かな温泉資源は観光や、市民生活だけでなく、古くは明礬の生産から、地熱発電、医療、花き栽培、養魚業、最近では温泉泥美容まで、様々な産業に幅広く利用されている。

● 別府八湯
別府市内には古くから由来の異なる温泉郷が8つあり、「別府八湯」と呼ばれているが、これは1996年(平成8年)8月8日8時8分8秒に地元の観光産業研究会が「別府八湯勝手に独立宣言」を提唱して定着したものである。 戦後は、急傾斜の地熱地帯に別府石の石垣が築かれ湯の花小屋が建ち並び湯けむりの立ち込める明礬温泉の景観が評価され、鉄輪温泉とともに「別府の湯けむり・温泉地景観」の名称で国の重要文化的景観として選定されている。湯の花の採取施設である湯の花小屋は、一部見学が可能である。泉質は、酸性硫化水素泉、緑ばん泉で神経痛やリューマチ、皮膚病に効能があり、市営温泉「鶴寿泉」がある。コロイド硫黄を含んで白濁した温泉が多いが、別府温泉保養ランドでは美肌効果の高い「ドロ湯」が味わえる。また、別府湾や別府市の街並みを見渡せる地区の高台にはANAインターコンチネンタル別府リゾート&スパがある。 別府明礬温泉の湯の花製造技術は、国の重要無形民俗文化財に指定されている。

◎ 鉄輪温泉
鉄輪(かんなわ)温泉は、別府市街と明礬温泉との中間にあり、いまだに湯治場の雰囲気を残す温泉街。貸間旅館が建ち並び随所から湯けむりの立ち上る鉄輪温泉の景観は、明礬温泉とともに「別府の湯けむり・温泉地景観」の名称で国の重要文化的景観として選定されている、また、野菜・花きの温泉熱利用による栽培、育種の研究が行われている花き研究所がある。 開湯伝説によれば、鎌倉時代広大な地獄地帯であったこの地を一遍が火男火売神社祭神の導きで最初に整備したとされ、市営温泉「鉄輪むし湯」の向かいには、一遍が開いたとされる蒸し湯跡が今も残る。毎年9月には鉄輪湯あみ祭りが開催され、むし湯のそばの温泉山永福寺では、上人像を渋の湯などで洗い清める「湯あみ法要」が行われる。温泉街の山手の坂を登った先には温泉神社がある。

◎ 柴石温泉
柴石(しばせき)温泉は、血の池地獄や龍巻地獄の一帯にある由緒ある温泉で、895年に醍醐天皇、1044年に後冷泉天皇が入湯したといわれている。柴石川に沿った谷間に市営温泉「柴石温泉」がある。泉質は、含鉄泉、硫酸塩泉などである。

◎ 亀川温泉
亀川(かめがわ)温泉は、JR亀川駅すぐの海沿いにある温泉街で、泉質はナトリウム・塩化物泉である。大正時代に開院した海軍病院(現・国立病院機構別府医療センター)を中心に発展し、1950年には別府競輪場が開設された。亀川駅の近くには市営温泉「浜田温泉」と浜田温泉資料館がある。一遍が九州に上陸した地点と言い伝えられている上人ヶ浜(別府大学駅近く)に、市営温泉「別府海浜砂湯」がある。

● 泉質
11種類の掲示用泉質のうち、以下の10種類が入浴用途に用いられている。なお、別府市は7種類が確認されているとしている。
・ 単純温泉 - 別府温泉、浜脇温泉、観海寺温泉、鉄輪温泉、亀川温泉
・ 二酸化炭素泉 - 別府温泉
・ 炭酸水素塩泉 - 別府温泉、浜脇温泉、観海寺温泉
・ 塩化物泉 - 別府温泉、浜脇温泉、鉄輪温泉、亀川温泉
・ 硫酸塩泉 - 鉄輪温泉、柴石温泉
・ 含鉄泉 - 明礬温泉、鉄輪温泉、柴石温泉
・ 含アルミニウム泉 - 明礬温泉
・ 含銅-鉄泉 - 明礬温泉
・ 硫黄泉 - 堀田温泉、明礬温泉
・ 酸性泉 - 堀田温泉、明礬温泉 : ※放射能泉(ラジウム温泉)も一部に湧出しているが、現在のところ入浴用途には用いられていない。 : ※掲示用泉質ではないが、別府温泉北浜地区の旅館群にある一部の源泉にはモール泉も湧出する。

● 歴史


◎ 神話や開湯伝説と温泉街の形成
現代の別府市にあたる豊後国速見郡の鶴見岳山麓に温泉が湧くことは古代より広く知られていたが、鶴見岳の活発な噴火活動で荒地や沼地になっており、整備されていなかった。『豊後国風土記』や『万葉集』には、現在の柴石温泉の血の池地獄にあたる「赤湯の泉」や、鉄輪温泉の地獄地帯にあたる「玖倍理(くべり)湯の井」等についての記載がある。瀬戸内海を挟んで向かい合う伊予国(現代の愛媛県)について記した『伊予国風土記』逸文には、大国主命が鶴見山麓から湧く「速見の湯」を海底に管を通して道後温泉へと導き、少彦名命の病を癒したという神話が載る。771年(宝亀2年)に創祀されたとされる火男火売神社は、鶴見岳の2つの山頂を、の男女二柱の神として祀っており、別府八湯の守り神として信仰を集めている。 柴石温泉は平安時代、別府温泉と鉄輪温泉は鎌倉時代には湯治場として利用されていた。浜脇温泉は八幡朝見神社の門前町として栄え、鎌倉中期には大友頼泰が日名子太郎左衛門尉清元を温泉奉行とし、朝見川、永石川、流川沿いなどに湧出する温泉が整備されていた。流川の近くにあった楠温泉には元寇の役の戦傷者が保養に来た記録が残っている。鉄輪温泉は一遍が開いたと伝わる(「開湯伝説一遍」参照)。 江戸時代には明礬温泉で明礬の生産が始まり、街道沿いの観海寺温泉や堀田温泉や亀川温泉が整備され、瀬戸内海沿岸各地から湯治舟が集まった。特に浜脇温泉と別府温泉は温泉番付では必ず上位に登場するなど、次第にそれぞれの温泉周辺に温泉街が形成され、庶民の湯治が一般的となった。これらの温泉街では湯治生活の必需品として炊事に用いる笊などの竹細工や、櫛などの柘植細工が盛んとなって現在も生産が続いており、工芸品としても発達した別府竹細工は国の伝統的工芸品にも指定されている。

◎ 山は富士 海は瀬戸内 湯は別府
明治時代に入り、別府では1882年(明治15年)に荒金猪六が「湯突き」と呼ばれる温泉掘削技術を導入し、自然湧出に依存していた温泉源を人為的に開発できるようになった。1873年(明治6年)には大阪開商社によって大阪航路が開かれ蒸気船「益丸」(18t)が就航し、2年後には他社の「満珠丸」「金刀比羅丸」「安全丸」「大西丸」「凌波丸」も就航して、大阪と別府を結ぶ瀬戸内航路は競争時代を迎えた。 しかしながら、これだけの多様な温泉群が密集する地区は全国的にも珍しく、平成になって韓国などの日本国外からの利用客が増加した。さらに、人口10万人あたりの留学生数が日本一の大分県の中でも、立命館アジア太平洋大学などを抱える別府市は特に留学生が多く、アジアのみならずヨーロッパやアフリカ各地からの留学生も、別府特有の共同温泉を中心とした地域コミュニティにも積極的に溶け込んで生活している。そしてこのような国際都市としてのメリットを活かして、欧米からの外国人個人旅行者の受け入れを本格化する取り組みを進めている。

◎ 温泉資源活用の歴史
江戸時代、幕府の専売品である明礬(湯の花)の生産をほぼ独占的に行っていた別府では、1923年(大正12年)に大分県と別府町の援助で京都大学が地球物理学研究所を設置。1925年(大正14年)には日本で最初の地熱発電が行われ、戦後になっても温泉資源の活用に多角的に取り組んできた。1952年(昭和27年)4月に設立された大分県温泉熱利用農業研究所(現・花き研究所)では、野菜・花きの温泉熱利用による栽培、育種の研究が行われ、その他にも温泉による魚の養殖や、杉乃井ホテルでは消費電力の約半分を敷地内の地熱発電で賄っている。 最近では別府の多彩な泉質の源泉から取れる色とりどりの温泉泥の利用を、大分大学医学部、広島大学、日本文理大学、パドヴァ大学(イタリア)、大分県産業科学技術センターなどが共同で研究し、温泉泥美容ファンゴティカが開発されるなどしている。 医療分野においては、1912年(明治45年)には陸軍病院が、1925年(大正14年)には海軍病院が開院して温泉療法の実践が始まると、1931年(昭和6年)には九州大学の温泉治療学研究所(現在の九州大学病院別府病院)が設置され、温泉治療の研究が行われてきた。また太平洋戦争後は原子爆弾被爆者別府温泉療養研究所が開設され、被爆者援護においても温泉療法の研究が行われた。 このように別府において温泉資源の利活用が広範囲に及ぶようになったのは、明治期の上総掘りによる源泉掘削「湯突き」の発達によるところが大きい。明治12年(1879年)頃にこの技術が導入された結果、明治9年(1876年)には全て自然湧出であった泉源が、明治44年(1911年)には、自然湧出泉が17ヶ所であったのに対し、掘削泉は76ヶ所となった。温泉都市となった現在、市内には各町内ごとに住民がお金を出し合って設けた共同温泉が数百あるといわれており、自家源泉を持っている個人宅も少なくない。今では上総掘りから掘削機械に置き換わっているが、現在も複数の温泉供給会社が源泉数、湧出量ともに日本一の別府温泉を支えている。

◎ 別府八湯の再活性化
別府温泉では1996年(平成8年)8月8日8時8分8秒に有志が「別府八湯独立宣言」を発表し、それぞれの温泉の魅力の発信に取り組んだ結果、「別府八湯」の名が広く知られるようになった。近年では、行政による老朽化していた市営温泉のリニューアルや街並み整備などの一方、別府アルゲリッチ音楽祭、別府八湯温泉道、別府八湯温泉泊覧会(オンパク)など地域の活性化を図るため、資源や人材を活用した新しい模索や試みも行われている。特に、オンパク的地域活性化の手法は、全国の同じような悩みを持つ観光地へと輸出され、各地で成果を上げつつある。 そんな中、2008年(平成20年)7月9日付で『別府市中心市街地活性化基本計画』が内閣総理大臣の認定を受けたことで、別府温泉(北浜)界隈では、空き店舗を改装した交流施設「platform」がいくつか整備され、一部には別府竹細工の職人工房(platform 07)、セレクトショップ(platform 04)などの観光交流拠点が誕生している。さらに、これらの「platform」をメイン会場に、2009年(平成21年)4月11日から6月14日までの間にトリエンナーレ形式で第1回の別府現代芸術フェスティバル 混浴温泉世界が開催されている。 温泉都市として発達し、戦災も免れた別府には、永瀬狂三設計の京都大学地球物理学研究所(現・京都大学大学院理学研究科附属地球熱学研究施設)本館や、吉田鉄郎設計の別府市公会堂、別府郵便局電話事務室(現・別府市児童館)など、良質な近代建築が今も残っている。観光ボランティアガイドが別府八湯の各エリアの街の魅力を紹介しながら案内する別府八湯ウォークが12コースあり、コースによっては毎日まち歩きツアーが開催されているものもある。 別府観光の歴史を伝える絵葉書、ポスター、レコードなど約2万点の資料が私設博物館「平野資料館」に所蔵されている。 また、1995年(平成7年)にコンベンション施設ビーコンプラザを整備している別府は国際会議観光都市の認定も受けており、2007年(平成19年)12月には第1回アジア太平洋水サミットが、2010年(平成22年)8月には 2010年日本APECの成長戦略ハイレベル会合が開催された。

● アクセス

◇ 空路 :
・ 大分空港から空港連絡バス(大分交通エアライナー)で40分。 :
・ 北九州空港から高速バス(大分交通・亀の井バスBeppu Express)で90分。 :
・ 福岡空港国際線ターミナルから高速バス(とよのくに号)で2時間。
◇ 自動車 :
・ 福岡方面からは大分自動車道経由東九州自動車道別府IC・県道52号利用。 :
・ 北九州方面からは東九州自動車道別府IC・県道52号または国道10号利用。 :
・ 熊本方面からはやまなみハイウェイ(県道11号)利用。
◇ 海路 :
・ 別府国際観光港には、大阪南港からフェリーさんふらわあ、愛媛県八幡浜港から宇和島運輸のフェリーが就航。港から別府市中心部(北浜)まではバスで10分。
◇ 鉄道 :
・ 九州旅客鉄道(JR九州)日豊本線別府駅、亀川駅、別府大学駅、東別府駅下車。
◇ バス :
・ とよのくに号(福岡方面)、九州横断バス(由布院、黒川温泉、阿蘇、熊本方面)、サンライト号(長崎方面)、別府ゆけむり号(広島方面)、SORIN号(大阪・京都方面)。

● 指定・推薦項目


◎ 文化財
別府市指定文化財一覧、大分県指定文化財一覧、温泉関連の文化財一覧も参照のこと。
・ 登録有形文化財
 ・ 京都大学大学院理学研究科附属地球熱学研究施設本館(1997年6月12日登録)
 ・ 竹瓦温泉(2004年6月9日登録)
 ・ 浜田温泉資料館(2006年8月3日登録)
 ・ 冨士屋旅館主屋・石垣・石段・前門(2001年11月20日登録)
・ 登録有形民俗文化財
 ・ 別府の湯突き用具(2020年1月17日登録)
・ 重要無形民俗文化財
 ・ 別府明礬温泉の湯の花製造技術(2006年3月15日指定)
・ 名勝
 ・ 別府の地獄(2009年指定)
・ 重要文化的景観
 ・ 別府の湯けむり・温泉地景観 - 鉄輪温泉、明礬温泉(2012年9月19日選定)
・ 大分県指定天然記念物
 ・ 鶴見の坊主地獄(1959年3月20日指定)

◎ その他

・ 国際観光温泉文化都市
 ・ 国際観光文化都市の第1号。
・ 国民保養温泉地
 ・ 鉄輪温泉、明礬温泉、柴石温泉
・ 日本百名湯
 ・ 鉄輪温泉、明礬温泉
・ 名湯百選
 ・ 鉄輪温泉、明礬温泉、柴石温泉
・ 日本新八景
・ かおり風景100選
 ・ 別府八湯の湯けむり
・ 大分百景
 ・ 別府温泉、鉄輪地獄地帯、亀川温泉、観海寺温泉・乙原高台
・ おおいた遺産
 ・ 明礬温泉の湯の花小屋、鉄輪温泉の湯煙、竹瓦温泉
・ 近代化産業遺産
 ・ 近代化産業遺産群 続33(大衆観光旅行) - 竹瓦温泉、竹瓦小路アーケード(2009年2月6日認定)
・ ミシュランガイド
 ・ 鉄輪温泉にある「ひょうたん温泉」は、フランスの『ミシュラン実用旅行ガイド』で3つ星の評価を受けた。また、海浜砂湯も2つ星の評価を受けている。

「別府温泉」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』(https://ja.wikipedia.org/
2022年5月29日2時(日本時間)現在での最新版を取得

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