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ラピスラズリ (lapis lazuli) は、方ソーダ石グループの鉱物である青金石(ラズライト)を主成分とし、同グループの方ソーダ石・藍方石・など複数の鉱物が加わった類質同像の固溶体の半貴石である。和名ではといい、サンスクリット語のヴァイドゥーリャないしパーリ語のヴェルーリヤの音訳とされる。深い青色から藍色を持ち、しばしば黄鉄鉱の粒を含んで夜空のような輝きを持つ。
● 概要
人類に認知され、利用された鉱物として最古のものとされている。エジプト、シュメール、バビロニアなどの古代から、宝石として、また、顔料ウルトラマリンの原料として珍重されてきた。日本ではトルコ石と共に12月のほかに9月の誕生石とされる。主成分にもラピスラズリとは異なる日付が誕生石として設定されている。
ラピスラズリ (lapis lazuli) は、ラテン語で「lazhwardの石 (lapis)」を意味する。ラピスはラテン語で「石」 (Lapis)、ラズリはトルキスタンにあるペルシア語地名 "lazhward"(、現在のアフガニスタン・イスラム共和国バダフシャーン州:en:Kuran wa Munjan DistrictにあるSar-i Sang鉱山の古名)が起源。
それがアラビア語圏でペルシア語由来の外来語として取り入れられ لَازَوَرْد(lāzaward, ラーザワルド, 「瑠璃(石)」の意)となり、アラブ世界を経由しヨーロッパへと伝わりアジュールの語源となった。
古代ギリシャでサプフィールといったのは、今のサファイアではなく、ラピスラズリであったという説もある。(古代ローマの大プリニウスが著した博物誌には、サッフィール(サッピルス)の名でラピスラズリが記載されており、「金が点になって光っている」、「最良のものはペルシャで発見される」等と記述されている。)
旧約聖書『出エジプト記』の、祭司の装飾品のひとつである胸当てにはめ込む石として青い石(sappir)は、ラピスラズリだといわれている。また新約聖書『ヨハネ黙示録』では、世界が終末を迎えた後現れるとされる新エルサレムの都の神殿の東西南北12の礎にはそれぞれ12種類の石で飾られ、そのうちの2番目がサファイア、11番目が青玉と記述されているが、青玉は現在ではサファイアのことを指すので、もしそうであれば2番目のサファイアはラピスラズリのことを指している可能性がある。この他にも旧約聖書でモーセがシナイ山にて、神より授かったとされるモーゼの十戒が刻まれた石版はサファイアとされていたが、これもラピスラズリであったといわれている。(1927年、1964年出版の邦訳では「第二は瑠璃」とされている。)
日本では、ラピスラズリは瑠璃と呼ばれ、仏教の七宝のひとつとされ、仏典『無量寿経』や『法華経』に瑠璃の記述がある。奈良の正倉院の宝物庫には、紺玉帯と呼ばれるラピスラズリで飾られた黒漆塗の牛革製ベルトが収められている。
● 性質・特徴
方ソーダ石グループの数種類の鉱物間の固溶体である。青金石・方ソーダ石・藍方石・黝方石の4つに限っては、同じ方ソーダ石鉱物グループであり、類質同像の多結晶体をなしうる。方解石、黄鉄鉱は「混合」または「混入」するのみである。
時折ラピスラズリが、複数の鉱物の混合物(岩石)であるとの説明を見かけることがあるが、あくまでラピスラズリは固溶体(solid solution)であって混合物/集合体(mixture)ではない。もしラピスラズリが混合物(岩石)であれば結晶が出来るはずはないが、ラピスラズリは十二面体の結晶でしばしば産出する。
固溶体(solid solution)は結晶構造を持つが、混合物/集合体(mixture)は化学的結合をせずに混じりあっているだけなので構造を持たない。従って結晶をなさない。
市場で流通しているラピスラズリの大部分は塊状のものであるが、最近では母岩付きの結晶体のものもかなり見られるようになった。
・ モース硬度: 5 - 5.5。
・ 比重: 2.38 - 2.45。
・ 屈折率: 1.50。
・ 透明度: 半透明 - 不透明。
・ 色: 群青色、瑠璃色、時に白色、金斑色。
・ 条痕色: 青色。
・ 光沢: 硝子状 - 脂肪状光沢。
・ 晶系: 主成分は等軸晶系。
・ 劈開: 不明瞭。
・ 断口: 粗面、不規則。
・ 塊状。
・ 傷つきやすく、薬品にも弱い
・ 塩酸と反応して硫化水素を出し、ゼラチン化する。
● 成分
主成分の4種類の鉱物に他のいくつかの微量鉱物が入り混じって固溶体をなしている。主成分となる4種類の鉱物はいずれも等軸晶系のテクト珪酸塩・準長石である方ソーダ石グループの鉱物である。化学組成は珪酸、アルミ、ソーダで、さらに硫黄や塩素を含む。そのため、ハンマーで叩くと硫化水素臭を発する。
◎ 主成分
◇ 青金石(lazurite、ラズライト)
: NaAlSiOS
◇ 方ソーダ石(方曹達石、sodalite、ソーダライト)
: NaAlSiOCl
◇ 藍方石(hauyne、アウイン)
: (Na,Ca)AlSiO(SO)
◇ 黝方石(nosean、ノゼアン、ノーゼライト)
: NaAlSiOSO
◎ 副成分
微量、含まれない場合もある。
◇ 方解石(カルサイト)
: 白い筋。
◇ 黄鉄鉱(パイライト)
: 金色の斑点状に入る場合もある。多く含まれる硫黄の内、過剰に余ったものが鉄と合わさって黄鉄鉱を形成する。
● 歴史
ラピスラズリは新石器時代からアフガニスタンで採掘され、地中海世界と南アジアに輸出された。パキスタンにある紀元前7千年期のインダス文明-アフガニスタン間の重要な交易路であった新石器時代の遺跡メヘルガルからはラピスラズリのビーズが発見されている。これらのビーズは紀元前4千年紀のメソポタミア文明北部の入植地などでも発見されている。
古代社会でラピスラズリを特に高く評価したのはエジプトで、ファラオ、王族、神官などの祭司階級しかこの石をつけられない時代もあったという。歴代のファラオに尊ばれ、黄金に匹敵するほどの価値を与えられることもあった。
このアフガニスタンのラピスラズリの鉱山をキリスト教徒として初めて訪問したのは、フビライ汗とローマ法王の親書をたずさえた1271年のマルコ・ポーロ一行であった。ここの採掘はバラシャン(バダフシャーンのこと)の王の直轄でなされており、外国人は入山禁止になっていて実際、潜入しようとして警備兵に殺された者もあった。史上に残るその後の外来訪問者はイギリスの地理学者ジョン・ウッドで、1838年のことであった。
● 用途
◎ 天然ウルトラマリン
ラピスラズリを原料とした青色顔料に天然ウルトラマリンがある。天然ウルトラマリンはラピスラズリを精製して製造する。ウルトラマリンとは「海(ラピスラズリの場合は地中海)を越えて」きたものという意味。なおウルトラマリンの内、青色のものをウルトラマリンブルーと呼ぶ。19世紀にはウルトラマリンは人工顔料として合成されるようになる。
また、フェルメールが天然ウルトラマリンを多用し傑作を残した事から「フェルメール・ブルー」として特に称される。
◎ 装飾品
・ ウルのスタンダード(大英博物館蔵)
・ ツタンカーメン王のマスク(エジプト考古学博物館蔵)
・ 紺玉帯(正倉院蔵)
・ 中尊寺金色堂の留め金具
・ メディチ家の紋章(ウフィツィ美術館蔵)
・ ルイ14世の塩入れ(ルーヴル美術館蔵)
● 民間信仰・呪術
パワーストーン信仰においてラピスラズリは世界でパワーを最初に認識された石、「最強の聖石」とされる。地面の属性で第6チャクラ(額)、第7チャクラ(頭部)を活性化させるとされ。
かつてラピスラズリがパワーストーンとしてブームと言えるほどの盛り上がりがあったことがあったが、その要因の一つにエドガーケイシーのラピスラズリについてのリーディングが引用されたことも大きかったと思われるが、後の研究によってエドガー・ケイシーの言ったラピスラズリとは、実はアズライトのことであると判明したということがあった。
「ラピスラズリ」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』(https://ja.wikipedia.org/)
2024年12月5日13時(日本時間)現在での最新版を取得
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