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ホテイアオイ


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ホテイアオイ(布袋葵、学名:Eichhornia crassipes)は、単子葉植物ミズアオイ科に属する水草である。南アメリカ原産で、水面に浮かんで生育する。花が青く美しいので観賞用に栽培される。別名ホテイソウ、ウォーターヒヤシンス。

● 分布
南アメリカを原産地とする。 北アメリカ、ヨーロッパ、オセアニア、ハワイ、日本、台湾、韓国、東南アジアなどの広い地域で外来種として移入分布している。こうなると葉柄はもはや細長く伸びて浮袋状では無くなる。なお、この状態で水中に浮かせておくと、しばらくして葉柄は再び膨らむ。 夏に花が咲く。花茎が葉の間から高く伸び、大きな花を数個~十数個つける。花は青紫で、花びらは六枚、上に向いた花びらが幅広く、真ん中に黄色の斑紋があり、周りを紫の模様が囲んでいる。花が咲き終わると花茎は曲がって先端を水中につっこむ形となり、果実は水中で成長する。 熟した果実は水中で裂開し、水中に種子をばら撒く。種子から発芽した実生は最初から浮き草状の生活型をとるのではなく、浅い水中や水辺の泥の上で土中に根を下ろして成長し、株が大きくなると葉柄に浮袋を生じて水面に生活の場を広げていく。また、茎から水平に枝を伸ばし、その先端に芽が生じて新しい株を作る。これによって素早く数を増やし、大きな集団になる。集団がさらに大きくなり、水面を埋め尽くすようになると、互いにより掛かり合って背が高くなり、分厚い緑の絨毯を水面に作り上げる。 日照量の高い環境で最もよく繁茂し、室内など光量の低い環境では次第に衰弱して枯死する。

● 利用


◎ 観賞用
花が美しい水草なので、日本には明治時代に観賞用に持ち込まれた。1884年、原産地のブラジルから米国経由で持ち込まれたというのが通説であるが、これより以前に遡るという考証もされている(後述)。 庭池の装飾用水草としたり、路地での金魚飼育でも鑑賞・水質浄化のほか、陶磁器のスイレン鉢(や火鉢)にも浮かべる。

◎ 吸着剤・水質浄化
またホテイアオイの繁殖力を生かして、水中の窒素分などをこの植物に吸収させることを目指して、水質浄化のために利用しようとの試みもあるが、多くの場合、繁殖した植物体をかき集めて処理する手間がかかるために永続性に欠け、水域に投入しただけで環境に良い事をしたつもりになって放置しているケースも目立つ。むしろ、いくら閉じこめたつもりでも、少しでも外に出れば大きな問題を引き起こすような外来種を、水質浄化など、環境対策として用いることは環境浄化の方法として好ましくないと、多くの専門家が批判している。

◎ その他
メタンガスなどバイオ燃料の資源としての活用が研究され、期待もされている。 海外各地では、蔓を編み込んで再生紙、家具、ランプシェード、籠やバッグ、ロープなどに利用など、起業者やNGO等がビジネスとしての成立を試みている。のみならず、このように肥料分が多くなると、個体の大型化もみられる。 結果、水の流れを滞らせ、水上輸送の妨げとなり、また漁業にも影響を与えるなど日本のみならず世界中で問題となっている。 この植物の大繁殖によってインドの西ベンガル州の漁業は大打撃を受けた(1950年代に推計45,000トン)。そのためベンガル地方では「(美しき)青い悪魔」と恐れられ、インドの他所では「ベンガルの」と忌み嫌われた。バングラデシュでは第一次世界大戦のはじめにドイツが意図的に移植させたという俗信からと呼ばれ、スリランカでは日本軍の軍用機を危険な着地に誘い込むためイギリスが植えたという噂から「日本のトラブル」と呼ばれた。南アフリカや南米の一部での異名は「フロリダの悪魔」である。 冬季に大量に生じる枯死植物体も、腐敗して環境に悪影響を与える。さらに、水面を覆い尽くすことから、在来の水草を競争で排除する事態や水生動物への影響も懸念される に選ばれている。ただし、日本ではホテイアオイは特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律において、特定外来生物には指定されていない。これには後述の通り、見解がまとめられていないことが挙げられている(ただし要注意外来生物には指定されている)。

◎ 生物的防除
世界各地では侵略的外来種とされるがゆえ、生物的防除法も試みられており、防除用生物としては二種のゾウムシ(Neochetina bruchi、Neochetina eichhorniae)やの一種(Niphograpta albiguttalis、=Sameodes albiguttalis)がよく知られる。 の一種(Megamelus scutellaris)は、2010年には米農務省によりホテイアオイの防除用生物として放虫され、食草選好性も確認されてホテイアオイ駆除への期待が持たれている。 ミズアオイ科の在来種への懸念から米国では使用が保留されている一例が、南米原産の半翅目 Eccritotarsus catarinensis である。このカスミカメムシは南アフリカや中国ではホテイアオイ対策としてすでに放たれているが、それはこのカメムシが害する他のミズアオイ科がこれらの国では外来種だったり、稲作の害種扱いだったりしたためである。 南アフリカで生物防除剤として半水棲のバッタ (Cornops aquaticum)の可能性が試されている、実際にはこれより前に日本に渡来していたことが指摘されている。歌川国貞 (三世豊国、1865年没)の作に、ホテイアオイと金魚、美女を題材にした浮世絵があり、1855年の作と鑑定されている。

◎ アメリカ合衆国
米国の南部では日本以上にこの植物によるハザードが問題になっている。
○ 渡来の各説

◇ 1884年万博説 米国へのホテイアオイの侵入については諸説あるが、1884年、米ルイジアナ州ニューオーリンズ市の万国博覧会で展示されていた事例が確たる最古例とされ、通説のようになっている。しかしこれを根拠に乏しい地元伝説と捉える向きもある。いずれかの時期において(傍証がまったく示されずに)日本人の関与が主張されるようになった。 1940年付の軍部工兵(military engineer)向けの雑誌の記事においても、特に日本人による行為とはしていないが。
○ 弊害と対策
初期の駆除例としては、1890年頃、ルイジアナ州の材木業がピッチフォークを突き刺して河岸にすくい上げる方法で機械的な駆除を試みている。 ホテイアオイの密生は、河川に閉塞しボートや貨物船の交通の便をさまたげ、魚類が死滅するなどの害を及ぼす。ルイジアナ州でも、それらの弊害をもたらし、19世紀末か20世紀初頭には顕著な問題と化していた、やがて推定50 kg/m2の量のホテイアオイが水路を覆いつくしたといわれる。そしてセントジョンズ川の閉塞など事態の深刻化に至り、1897年、中央政府から軍部工兵(アメリカ陸軍工兵司令部)の対策班が募られ、フロリダ・ルイジアナなどメキシコ湾岸各州に派遣されてホテイアオイ駆除に当たるはこびとなった。 1910年、当時社会問題となっていた食肉不足とこのホテイアオイ問題を一挙に解決しようという法案がだされた。フロリダ州でも、Neochetina属2種のや、ツトガ科Niphograpta albiguttalisの幼虫が1970年代に導入されたが、追跡調査では野外でN. eichorniae 種ゾウムシの生存が主に確認されておりガの痕跡はなかった。そしてバイオマス半減や、開花(種子)の98%減など一定の効果が見られたと評価された。しかし表面積の減少でみると16.8%減にとどまるため、生物防除への全面的な政策方針転換を政府機関にうながすには至っていないと指摘される。

「ホテイアオイ」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』(https://ja.wikipedia.org/
2024年10月14日21時(日本時間)現在での最新版を取得

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