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ソメイヨシノ


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ソメイヨシノ(染井吉野、学名: Cerasus × yedoensis ‘Somei-yoshino’)は、母をエドヒガン、父を日本固有種のオオシマザクラの雑種とする自然交雑もしくは人為的な交配で生まれた日本産の栽培品種のサクラ。 日本では、サクラは固有種を含んだ10もしくは11の基本の野生種を基に、これらの変種を合わせて100種以上の自生種がある。さらに古来から改良開発されてきた栽培品種が少なくとも200種以上あり、分類によっては600種以上、または800種とも言われる品種が確認されている。 これら多品種のサクラのうち、ソメイヨシノは江戸時代後期に開発され、昭和の高度経済成長期にかけて日本全国で圧倒的に多く植えられた。このため今日では気象庁が鹿児島県種子島から札幌までの各地のサクラの開花・満開を判断する「標本木」としているなど、現代の観賞用のサクラの代表種となっており、単に「サクラ」と言えばこの品種を指す事が多い。 なお、ソメイヨシノという表記は、一般的にはエドヒガンとオオシマザクラの種間雑種から生み出された特定の一つの栽培品種(本ページの主題)を指すが、便宜的にエドヒガンとオオシマザクラの種間雑種のサクラ全てを指している場合もある。その場合には、その2種による種間雑種の中から生み出された特定の一つの栽培品種(本ページの主題)については、漢字をシングルクォーテーションで囲んだ '染井吉野' と表記して、両者が混同されないように区別して表記されることが望ましい。(名称参照)

● 名称


◎ 分類による学名表記
ソメイヨシノに限らず、サクラの属名はスモモ属(Prunus)とする分類と、サクラ属(Cerasus)とするものがある。日本ではスモモ属(Prunus)のサクラ亜属 (subg. Cerasus) とするものが多かったが、1992年の大場秀章の論文をきっかけに近年は後者のサクラ属(Cerasus)が主流となっており、ロシアと中国も同様である。しかしCerasusとすることで決着した訳ではなく、西欧と北米では現在もPrunusに分類するのが主流であり、両方の分類が並存している。 栽培品種であるソメイヨシノの学名が栽培品種名の‘Somei-yoshino’の表記が無しで、単にC.(もしくは P.)× yedoensisと表記されることがある。

◎ 命名の由来
和名ソメイヨシノの由来は、幕末のころに、江戸の染井村で植木職人らによって売り出され、全国に広がったことにちなむ。 江戸時代末期から明治初期に染井村(現在の東京都豊島区駒込・巣鴨付近)に集落を作っていた造園師や植木職人達によって育成された。初め、サクラの名所として古来名高く、西行法師の和歌にも度々詠まれた大和の吉野山(奈良県山岳部)にちなんで、「吉野」「吉野桜」として売られ、広まったが、藤野寄命による上野公園のサクラの調査によって、ヤマザクラとは異なる種のサクラであることが分かり(1900年)、この名称では吉野山に多いヤマザクラと混同される恐れがあった。このため、『日本園芸雑誌』において染井村の名を取り「染井吉野」と命名したという。翌年(1901年)、松村任三が学名「Prunus × yedoensis」(読み方はプルヌス・エドエンシス)と付けた。

● 特徴


◎ 外見的特徴と花期
落葉広葉樹の高木。樹高はおおよそ10 - 15メートル (m)。樹形は横に大きく広がる傘状になる。老木になると太い幹が下からねじれるように横に広がる。樹皮は灰褐色で、皮目が横筋状に並ぶ。一年枝は灰褐色や紫褐色で、皮目が多く無毛、あるいは毛が残る。葉は互生。葉身は楕円形で葉縁には浅い重鋸歯がある。葉柄はまばらな毛が生えており、葉身との境目にイボのような蜜腺がある。秋に紅葉するが、砂地などでは夏ごろから中途半端に紅葉して早々と散ってしまうこともある。紅葉は濃い赤色から橙色に染まり、部分的に黄色が混じる葉も多い。 開花期は全体的には3 - 4月。国内では早い、九州・四国地方や東京で、3月下旬頃に咲き始める。花弁は5枚で葉が出る前に花が開き、満開となる。花色は蕾では萼等も含めて濃い赤に見えるが、咲き始めは淡紅色で、満開になると白色に近づく。原種の一方であるエドヒガン系統と同じく満開時には花だけが密生して樹体全体を覆うが、エドヒガンよりも花が大きく、派手である。エドヒガン系統の花が葉より先に咲く性質とオオシマザクラの大きくて整った花形を併せ持った品種である。萼片は先端が尖り、萼筒は紅色で壺のような形をして、毛が生えている。花柄にも毛がある。 ソメイヨシノ誕生以前に花見の主流だった野生種のヤマザクラより開花してから散るまでが速いと誤解されることも多いが、これはヤマザクラが野生種であり同地であっても花期に前後の幅があるのに対し、ソメイヨシノは栽培品種のクローンであり花期が同地では統一されていることから起きた誤解であり、単一の木で見れば、むしろソメイヨシノの方がヤマザクラより花期は長い。 果期は5 - 6月。実(サクランボ)は黒紫色でごく小さく、わずかに甘みもあるが、苦みと酸味が強いため、食用には向かない。また、他のサクラに比べて自家和合性が高く、単一ではほとんど結実しないが、他個体の花粉を人工授粉するとタネが採取できる。 冬芽は、枝先の頂芽と小枝に互生する側芽があり、濃い褐色の長卵形で、12 - 16枚ほどある多数の芽鱗に覆われて軟毛がある。はじめは葉芽と花芽の区別がはっきりしないが、1月ごろになると花芽のほうが卵形で丸みが出てくる。花芽の中には数個の花蕾が入っている。葉芽は紡錘形または長楕円形で先がやや尖る。葉痕は半円形で維管束痕が3個つく。

◎ 繁殖
森林総合研究所などによる遺伝子マーカーを用いた研究で、各地から収集されていたソメイヨシノが同一クローンであることが確認されるなどして、ソメイヨシノはクローンであることが判明しており(遺伝子解析の結果)、各地にある樹は全て人の手で接ぎ木や挿し木で増やしたものである。ソメイヨシノは発根性に問題があり、挿し木より接ぎ木の方が繁殖の成功率が高いことから、接ぎ木を主流として増殖されたと考えられている。なお栽培品種においては、その特質を維持したまま効率よく増殖させるために接ぎ木などでクローン増殖させることは一般的なことであり、平安時代から行われてきたことである。 サクラなどのバラ科の多くのゲノム構成はヘテロ接合性が高く、自家不和合性が強く、自分の花粉では発芽能力のある種子ができないことが多い。よって遺伝子が同一であるソメイヨシノ同士では結実しても種子が発芽に至ることはまずないが、ソメイヨシノ以外のサクラとの間での交配は可能であり、実をつけその種子が発芽することもあり不稔性ではない。こうして誕生したサクラはソメイヨシノとは別品種になる。ソメイヨシノとその他の園芸品種や野生種の桜の実生子孫としては、ミズタマザクラやウスゲオオシマ、ショウワザクラ、ソメイニオイ、ソトオリヒメなど100種近くの品種が確認されている。このようなソメイヨシノの実生種から、ソメイヨシノに似て、より病害などに強い品種を作ろうという試みも存在する。

● 用途と人気
日本では、サクラの中でも最も多く植栽されている樹種であり、最も馴染みが深いサクラである。花の美しさや華やかさは抜き出て広く認められ、明治以降に花見の用途で他のサクラを圧倒する人気の品種であり、公園、河川敷、街路、学校などに広く植栽されている。その起源がクローンのため全ての個体が同一に近い特徴を持ち、その数も非常に多いため「さくらの開花予想」(桜前線)に主に使われるのもソメイヨシノである。日本各地にはソメイヨシノが植えられた名所が多い。植栽の北限は、北海道の札幌市周辺地域といわれている。 4月上旬の小学校の入学シーズン中にソメイヨシノが満開になる地域も多く、入学の記憶を校庭に植えられたソメイヨシノの満開の景色と重ね合わせて持っている人も多い。校門や校庭に植えられた満開のソメイヨシノの下で撮られた入学記念写真も多く、新聞やテレビのニュースでもそうした場面が取り上げられることが多い。 接ぎ木などのクローンで増殖された栽培品種であるため環境特性が同じ同地では同時に開花し満開になること、母種のエドヒガンの特徴を受け継いでいるため葉より先に花が咲き大量に花が付くことで開花が華やかであること、父種のオオシマザクラの特徴を受け継いでいるため成長が速く若木から花を咲かし、なかでも桜の中では圧倒的に成長が速く大木になりやすいことなどを理由として、桜の名所を作るのに適した品種と認識され、明治以来徐々に広まり第二次世界大戦後に爆発的な勢いで各地に植樹され日本で最も一般的な桜となった。 ソメイヨシノは街中で他種より目にする機会が圧倒的に多い人気の品種であることから、以前からその起源についてとともに、ソメイヨシノ一種ばかりが植えられている現状やソメイヨシノばかりが桜として取り上げられる状態を憂慮する声もあるなど、愛桜家の間で論争の絶えなかった栽培品種である。(起源について、遺伝子汚染も参照) 欧米には1902年にカンザン(‘関山’)と共に最初に渡っている。アメリカ、欧州、中国、韓国など世界各地に多くのソメイヨシノが寄贈されており、ワシントンのポトマック川のタイダルベイスンで毎年春に行われる全米桜祭りでのソメイヨシノが有名である。 さらに秋の紅葉も美しい種である。 歴史的に見て、かつて『万葉集』が編纂された時代から、日本で和歌で詠まれたり歌われた「サクラ」は、大部分はヤマザクラであったが、明治時代に入ってからはソメイヨシノに取って代わられたところが多い。

◎ 切手の図案
ソメイヨシノは、次のように普通切手・記念切手・ふるさと切手の図案となっている。
・ 10円、普通切手、発行日1961年4月1日
・ 50円、普通切手、発行日1980年10月1日
・ 52円、普通切手、発行日2014年3月3日 販売終了日2017年5月31日
・ 62円、普通切手、発行日2017年5月15日
・ 63円、普通切手、発行日2019年8月20日。

◎ 遺伝子解析の結果
以下にソメイヨシノの遺伝子解析の研究成果をあげる。 1995年にはDNAフィンガープリント法で遺伝子の解析が試みられ、ソメイヨシノがクローンであること、遺伝的にエドヒガンとオオシマザクラを親に持つことが明らかとなった。 2007年3月、千葉大学の中村郁郎・静岡大学の太田智などの研究グループは、ソメイヨシノが「コマツオトメのようなエドヒガン系品種を母親に、オオシマザクラを父親として起源したことを示唆している」と発表した。(関連論文)。 2012年に千葉大の研究チームは、北関東のエドヒガンがソメイヨシノの母親と推定され、コマツオトメはソメイヨシノの母親ではなく近縁にとどまることを園芸学会で発表した。これは、千葉大学園芸学部の国分尚准や安藤敏夫の研究チームが、江戸時代から生えているエドヒガン系の天然記念物級の古木を青森県から鹿児島県まで523本探して、新たに葉緑体DNAを解析したところ、ソメイヨシノのDNAと一致する古木が、群馬県で4本、栃木県、山梨県、長野県、兵庫県、徳島県の各県で1本ずつ見つかったことを受けてである。また国分は、各地から桜の苗が染井村の植木屋に集まりソメイヨシノができた可能性を話した。 加藤の共同研究者である勝木俊雄(森林総合研究所)は、ソメイヨシノの起源として、ソメイヨシノの片方の親はエドヒガン、もう片方の親はオオシマザクラとヤマザクラが交雑したものではないかと推測している。つまり、ソメイヨシノ = (オオシマザクラ×ヤマザクラ) × エドヒガンとの推測である。なお、オオシマザクラとヤマザクラの交雑種は人里でよく見られるので、ソメイヨシノは全くの自然から生まれたものではないとも推測している。 2017年1月には森林総合研究所と岡山理科大学の共同研究により、改めてソメイヨシノ等の4種の種間雑種のサクラの遺伝情報と学名が整理され、エドヒガンとオオシマザクラを親とするソメイヨシノは、エドヒガンとオオヤマザクラを親とする王桜(エイシュウザクラ)とは異なる種であることが発表され(後述)、この詳細は2016年12月にTaxon誌でオンライン公開された。さらに、2017年に森林総合研究所と岐阜大学の共同研究によりソメイヨシノは1回の種間交雑による雑種では無く、より複雑な交雑に由来するとの説が発表された。 2019年4月1日、かずさDNA研究所、島根大学、京都府立大学が共同でソメイヨシノのゲノム情報(全遺伝情報)の解読を完了したことを発表し、通説通りソメイヨシノはエドヒガンとオオシマザクラを祖先に持つことが判明した。またこの祖先の2種は552万年前に異種に分かれ、百数十年前に交雑してソメイヨシノが誕生したと考えられるという。

◎ 異説

○ 王桜起源説
鎮海の桜に見られるように、韓国には日本統治中にソメイヨシノが導入されたが、韓国ではソメイヨシノの正体は韓国固有種の王桜(エイシュウザクラ)であるとする韓国起源説がしばしば主張される。そのため朝鮮語においても両者を区分せず、どちらも「왕벚나무(ワンボンナム)」と呼称されている。このため現在においても王桜の名所を作るという名目で韓国内でソメイヨシノの大量植樹が行われている。しかし上記の通り様々な遺伝子解析によってソメイヨシノの片親は日本固有種のオオシマザクラであり、ソメイヨシノと王桜は遺伝的に異なることが明らかにされている。2017年には改めて森林総合研究所(チーム長 勝木俊雄)と岡山理科大学の池谷祐幸がサクラの種間雑種について分類体系を整理し、韓国済州島の王桜(エイシュウザクラ)はエドヒガンとオオヤマザクラの種間雑種であり、ソメイヨシノと異なることを明らかにして、新たな王桜の学名(Cerasus × nudiflora (Koehne) T.Katsuki et Iketani, 2016)を確立させて、国際的な周知が行われた、確かにこの4種は遺伝的に比較的近い存在である。そして韓国にはエドヒガン(済州島のみ)とオオヤマザクラとカスミザクラが自生している。このため、韓国でエドヒガンとオオヤマザクラもしくはカスミザクラが交雑したら、野生種の遺伝的多様性からソメイヨシノに類似した桜が生まれる可能性は有り得るが、この4種はDNA解析と形態学的にはっきりと区別でき、ソメイヨシノは伊豆諸島産の集団であるオオシマザクラが父親であることが確定しているため、仮に韓国にソメイヨシノに類似した桜が存在したとしても、それはソメイヨシノではない。 なお、王桜は韓国では韓国の固有種とされているが、現在の生物学では、独立した種(species)と見なされるためには、その種の中の個体に遺伝的多様性があり、個体が互いに交配して子孫を残すことができている一定規模の集団でなければならない。王桜は野生での個体数が野生種の集団としてはあまりにも少ないため、現在の生物学上の種の概念では独立した種とはいえず、あくまでも種間雑種である。 2022年に行われた調査によると、ソウルのサクラの名所である韓国国会と汝矣島周辺に植えられたサクラのうち9割以上が日本原産のソメイヨシノであり、韓国原産の王桜は1本も植えられていなかったことが判明した。また桜祭りが行われる桜の名所として有名な鎮海の女座川沿いの99.7%、慶和駅周辺の桜の木の91.1%が1960年代に日本から持ち込まれた日本産のソメイヨシノであり、残りも日本産のシダレザクラなどであり、王桜ではないことが判明している。 韓国の山林庁国立樹木園は、韓国原産の王桜の遺伝研究の結果、いったんは2018年に王桜(ワンボンナム)と日本の王桜(ソメイヨシノのこと)は別種だったとして「済州王桜(自生種)」と「王桜(栽培種)」と分離して国家標準植物リストに掲載したが、これに対し元国立森林科学院南大亜熱帯研究所所長のキム・チャンスや済州道選出の議員から「公式に王桜(ソメイヨシノのこと)の韓国固有種の地位を奪い、王桜が日本原産という日本の主張を受け入れ、結果的に王桜生物主権を日本に無償譲渡した」「山林庁が王桜が日本種であるという誤った認識拡大に責任がある」「根拠のない説」との非難の声が上がった。そのため2023年から山林庁は3年間かけて、2018年の研究で一度は別種とした王桜(ソメイヨシノのこと)についても新たに遺伝研究をしてその起源を明らかにするという。済州国際自由都市放送(JIBS)はこの研究について、2018年の研究を「修正」する後続研究であると報じている。
○ 伊豆半島における自然発生説
1916年、屋久島のウィルソン株にその名を残すアメリカのアーネスト・ヘンリー・ウィルソンによって、ソメイヨシノはオオシマザクラとエドヒガンの自然交雑による雑種であるという説が唱えられた。その後、国立遺伝学研究所の竹中要の交配実験により、オオシマザクラとエドヒガンの交雑種の中からソメイヨシノおよびソメイヨシノに近似の亜種「イズヨシノ」が得られることが分かり、1965年に発表された。この発表によって自然交雑説の研究が行われ、この立場をとる場合、オオシマザクラとエドヒガンは伊豆半島に多く自生することから、伊豆半島付近で発生したとする伊豆半島発生説が唱えられた。一方で、岩崎文雄は、自身の伊豆半島における調査により、オオシマザクラとエドヒガンの分布域には差異があり伊豆半島で自然交雑によって生まれた可能性を否定的しているが、現実には伊豆半島の船原峠周辺にオオシマザクラとエドヒガンの自然雑種であると考えられる個体が発見されており、この個体とそれから生み出された栽培品種はフナバラヨシノ(船原吉野)としてしられている。 現在、ソメイヨシノが染井村から日本全国に、そして世界中に広がったことは確認されているが、ソメイヨシノの最初の一本がどこで生まれたかは確定していない。
○ 独立種説
20世紀初頭、アメリカの植物学者アーネスト・ヘンリー・ウィルソンは、ソメイヨシノはオオシマザクラとエドヒガンの雑種ではなく独立した種であるとの説を唱えていた。この説を実験的に検証するため竹中要博士が様々な交配を行ない、その中から広い意味で形質が基本的に「ソメイヨシノ」と差異のないイズヨシノを生み出した。これが、ソメイヨシノの起源探究の原点にもなっている。現在、ソメイヨシノはオオシマザクラとエドヒガンのサクラの交雑種であることが確実となっており、ウィルソンの、この別説が唱えられることはない。

● 健康と寿命
ソメイヨシノなどの桜が植栽された、いわゆる「花見の名所」とされる場所は、植栽後は、剪定などの管理が行き届かずに放置されて、害を受けているところも多いのも実情である。 サクラに存在する生物学的弱点はソメイヨシノにも同様である。ただし他の多くの栽培品種のサクラと同じく全個体が単一クローンであるため、突然変異以外に新しい耐性を獲得する可能性はない。またソメイヨシノは都市部の街路樹などに人為的に大量に集中的に植樹されていることが、より病害を広げ環境の悪影響を受ける要因となっているため、その点を本項目に記す。

◎ 菌類による病気
他のサクラよりてんぐ巣病(てんぐすびょう)に弱い。サクラてんぐ巣病は子嚢菌に属するタフリナ属の1種 Taphrina wiesneri の感染により起こる病気で、その上部では小枝が密生していわゆる「天狗の巣」を作る。さらに、開花時には小さい葉が開くので目障りとなったり、罹病部位は数年で枯死したりといった被害を与える。病除法としては、罹病した病枝は専門家に切り取ってもらうなどの措置に限られる。 また、コフキサルノコシカケなどの白色腐朽菌類が繁殖し、罹病した病木を切り取らなければならないケースが急増しており、特に、公園や街路樹として植えられている木が深刻な状況に陥っている。こうした症状は外からではわからないため、特別な機械を使わないと診断できない。京都府立植物園では2006年頃から衰弱するソメイヨシノが増え、調査のため、京都府立大学の共同研究員らと弱った木を掘り起こし調査したところ、「ナラタケモドキ」の白い菌糸が根を覆っていた。専門家は対策や観察の強化を呼びかけている。

◎ 害虫による食害
2012年(平成24年)に初めて中国や朝鮮半島由来の外来種のクビアカツヤカミキリによるサクラの食害が報告されて以来、日本各地で被害報告が相次いでいる。その被害の深刻さから、2018年(平成30年)1月にクビアカツヤカミキリが環境省より特定外来生物に指定された。このカミキリはサクラに穴をあけて卵を産み付けるが、その幼虫が大量発生して木の内部を食い散らかす事態が相次いでおり、特に大量に植樹されているソメイヨシノの被害が著しく、回復不能なダメージを受けて伐採される事例が相次いでいる。2017年5月にはクビアカツヤカミキリに対応可能な住友化学の薬剤「ロビンフッド」の適用範囲がサクラにも拡大され、対応策の一例となっている。

◎ 植樹環境による光・水・養分の不足
ソメイヨシノは都市部に街路樹として植えられている場合が多いが、これがソメイヨシノの健康に悪影響を与え樹勢を削ぐことが多い。街路樹では新たな建物の建設や隣のサクラの成長により陰となってしまい十分な光が得られなくなる場合があるほか、根の近くまで舗装されていることで根への酸素と水と有機物の供給が滞りソメイヨシノの健康を害している。特に健全な土壌である程度生育してから再開発などで突然根の近くまで舗装されると、根が死んでいき生育した上部に必要な分だけの十分な酸素と水と養分が供給できなくなり、大きく健康を害する。また排気ガスに晒されることで健康に悪影響を与える可能性が指摘されている。花見に一番使われる木であることも病気の遠因といえ、根に近い土壌を過剰に踏みしめられることで舗装したのと同じような悪影響与え、花見客に枝を折られたりすることも健康に悪影響を与えると推測される。 ソメイヨシノに限らず、樹木はまわりの樹木との競合により、根が一定量を超えることができなくなると、樹木はできるだけ生長に勢いがある、下から出た若い枝に優先的に栄養分を配分するようになる。そうすると、樹木側の生き残り戦略のために、上の方から枝が枯れ始める。この進行を防止する策として、樹木側が残したいとする強い枝を剪定し、上方の古い枝にも最低限の養分が配分されるようにする必要がある。

◎ 地球温暖化
地球温暖化が進行すれば、将来的に九州南西部ではソメイヨシノの生育が不可能になる可能性が指摘されている。サクラの健全な成長と開花には冬季の低温刺激による休眠解除(休眠打破)が重要であり、5℃程度まで下がるのが望ましく低温時間の積算が重要と考えられているが、温暖化により冬季の気温が上昇して、九州南西部では十分な低温刺激が得られなくなる見込みからである。2010年代後半時点での日本におけるソメイヨシノが健全に生育できる南限は、低地では鹿児島県の屋久島や種子島、高地では鹿児島県の奄美大島であるが、既に現地のソメイヨシノでは開花異常が観測されている。なお温暖化すれば生育可能な地域では温暖化に比例して開花期が早まるという誤解があるが、冬の低温刺激が減ることは開花期が遅れる一つの要因となり、単純に温暖化に比例して開花期が早まるというわけではなく低温刺激の要素と全体の温暖化の要素のバランスで開花期が決まる。

◎ 寿命
大径になる木は理論上は寿命がないと考えられており、ヤマザクラやエドヒガンでは数百年、稀に千年以上の古木になることもある一方で、江戸時代に誕生したソメイヨシノは、野生種に比べて新しく誕生した種であることを割り引いても、高齢の木が少ない。老木の少なさの原因ははっきりしていないが、「ソメイヨシノは生長が早いので、その分老化も早い」という説があるほか、街路樹として多用されているソメイヨシノは、根の周辺まで舗装されていたり排気ガスなどで傷むことが多く、公園といった踏み荒らされやすい場所に植樹されているということが多いことも寿命を縮める原因となっているのではないかとの指摘がある。ソメイヨシノはクローンであるため、全ての株が同一に近い特性を持ち、病気や環境の変化に負ける場合には、多くの株が同じような影響を受け、植樹された時期が同時期ならば、同時期に樹勢の衰えを迎えると考えられている。一般的にソメイヨシノは植えてから20年から30年後に花付きの最盛期を迎え、その後は徐々に衰えていく傾向がある。21世紀に入り樹勢の衰えが目立つようになったため、戦後に大量に植えられた本種の寿命が到来しつつあると危惧されており、ソメイヨシノ60年寿命説が唱えられることもある。 一方、ソメイヨシノの老木が存在していることも事実である。現存するソメイヨシノのうち最も古いと言われる木はいくつかあり、小石川植物園に1775年に植えられたもの、小石川植物園に1875年ごろに植えられたもの、福島県の開成山公園に1878年に植えられたもの、青森県の弘前城(弘前公園)には1882年に植えられたものがあり、2019年時点で樹木医学会はこれらの最古級とされるソメイヨシノのうち、放射性炭素年代測定などの科学調査の結果から、1878年に植樹された開成山のものを現存する日本最古のソメイヨシノと認定した。また、神奈川県秦野市立南小学校には1892年に植樹された樹齢130年を超える2本の老木が存在し、東京都内の砧公園のソメイヨシノは1935年に植えられ、既に90年近くが経過している(2022年時点)。 他にも、桜の寿命については、世代交代が重要とする話もある。桜は古木になると幹の芯が劣化するが、樹皮の内側に水分を吸い上げるポンプの役割をする維管束があり、芯が腐っても木の命を支える。幹から徒長枝と呼ばれる若い枝が出ると、維管束と繋がり、分裂して不定根となる。腐った芯材は土壌のように生育基盤となって根を育てる。このようにして世代交代が上手くいったソメイヨシノは、累積樹齢が100年を超えるという。樹齢1000年とも言われる三春滝桜も、一木が成長した訳ではなく、何世代かの集合体だという。この世代交代の点でみれば、千葉県野田市慈光山能延寺金乗院にある「劫初の桜」(明治初年)は国内最古級のソメイヨシノになる。 青森県弘前市ではリンゴの剪定技術をソメイヨシノの剪定管理に応用するなどして樹勢回復に取り組んだ結果、多くのソメイヨシノの樹勢を回復することに成功している。ただし、紅葉・落葉直後にすぐ剪定することでC/N比(炭素/窒素比)を変えたり根回しや土壌交換による細根の発生をもたらすなど、管理に留意を要する。木が休眠している冬場、若い枝が育ちやすい箇所を選んで剪定を行い、切り口には墨汁を混ぜた殺菌剤を塗る。こうした工夫は「弘前方式」と呼ばれている。

● 遺伝子汚染
ソメイヨシノは極めて多く植えられているため、地域に自生する野生種のサクラと交雑してしまう遺伝子汚染が報告されている。これにより各地に自生する野生種の子孫の桜の花の形や耐候性、強健性などの性質が将来的に変わってしまう可能性があり、自生する野生種の保存の観点から、野生種の桜が自生する地域にソメイヨシノを植える際には、メジロやヒヨドリなどの鳥による花粉媒介の可能性を低くするために距離をとって植えるなど、注意が必要であるとされている 。この遺伝子汚染の問題はオオシマザクラの植樹でも懸念されている(参照)。

● 代替品種への植え替え
公益財団法人日本花の会は、桜の名所作りに適した品種として、樹勢が強健で鑑賞性が高い複数の品種を推奨して配布している。その対象は、2024年(令和6年)度はエドヒガン(向野)(富山県南砺市の選抜個体からの増殖)、タイリョウザクラ、ジンダイアケボノ、マイヒメ、ハナカガミ、イチヨウ、コウカ、カンザンの8品種である。またこれら8種に併せてカミヤマシダレザクラも桜の名所づくりに適した品種として量産していく方針である。 従来はソメイヨシノも、その人気から配布対象品種であり、日本花の会だけでも200万本以上の苗木を配布してきたが、上記のようにてんぐ巣病に弱いため、2005年(平成17年)度から苗木の配布を、2009年(平成21年)度からは販売も終了した。同会は桜の名所づくりの推奨品種として上記の通りいくつかの品種を列挙しているが、特にソメイヨシノから植え替えする場合の代替品種としては、花や開花時期がソメイヨシノと類似している上に、サクラ類てんぐ巣病にも強い、ジンダイアケボノかコマツオトメへの植え替えを推奨している。 また生長が速く、大木になりやすいソメイヨシノは、根が浅く広く張り、それに伴って街路や隣接敷地の舗装を変形させて破壊し、バリアフリーの面で障害となりやすい。大木になりやすい上に樹形が横に広がる傘状のため、狭い街路に街路樹として植えた場合は、車道からの見通しや隣接区域への障害になる可能性がある。このため特に都市部では、植え替え時にソメイヨシノより、小型のジンダイアケボノが選好されやすくなっている。

「ソメイヨシノ」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』(https://ja.wikipedia.org/
2024年4月24日15時(日本時間)現在での最新版を取得

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