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アルビノ(albino)は、動物学においては、メラニンの生合成に関わる遺伝情報の欠損により先天的にメラニンが欠乏する遺伝子疾患がある個体である。
この遺伝子疾患に起因する症状は先天性白皮症(せんてんせいはくひしょう)、先天性色素欠乏症、白子症などの呼称がある。また、この症状を伴う個体のことを白化個体、白子(しらこ・しろこ) などとも呼ぶ。さらに、アルビノの個体を生じることは白化(はくか・はっか)、あるいは白化現象という。
一方、植物学では、光合成色素を合成できない突然変異個体のことである。このような個体は独立栄養が営めないため、種子中の栄養を使い切ってしまった時点で枯死することになる。
本稿では、主として動物学用語としてのアルビノについて解説する。
● 概要
先天的なメラニンの欠乏により体毛や皮膚は白く、虹彩は淡い青や灰色、紫を呈する。「毛細血管の透過によって赤い瞳孔、虹彩となる」ということはあり得るが、動物個体によく見られ、人間の患者には少ない。アルビノ患者は素人の写真では瞳孔、虹彩が赤くなることが多いが、これは「赤目」と呼ばれる撮影時に起こる現象であり、本人の瞳孔、虹彩は必ずしも赤くない。劣性遺伝や突然変異によって発現する。広く動物全般に見られ、シロウサギやシロヘビが有名である。ほとんどの場合、視覚的な障害を伴い、日光(特に紫外線)による皮膚の損傷や皮膚がんのリスクが非常に高い。また外部から発見されやすく自然界での生存は極めてまれである。そのため、しばしば神聖なものやあるいは逆に凶兆とされ、信仰の対象として畏れられる。また、観賞用としても人気がある。なおアルビノは、正常な遺伝情報により白化した白変種とは異なる。
ヒトのアルビノは医学的に先天性白皮症と呼ばれる。チェディアック・東症候群 (CHS) 、ヘルマンスキー・プドラック症候群 (HPS) 、グリシェリ症候群 (GS) の合併症として起こる色素欠乏を白皮症に含める場合もある。
アフリカ南東部(サブサハラ)では、「アルビノ」の体には特別な力が宿る、その肉を食べると特別な力を与えられるという迷信から、臓器や体の一部など売却や食用とする目的で、アルビノの人々をターゲットにした殺人や誘拐が後を絶たない。
● 先天性白皮症
◎ 症状
先天性白皮症は、メラニンの生合成に支障をきたす遺伝子疾患であり、その結果、メラニン沈着組織の色素欠乏およびそれに付随する、下記のような症状を先天的にきたす。ただしこれらには大きな個人差がある
。
・ 本来メラニン色素を有するはずの組織(体毛・皮膚・虹彩・脈絡膜・網膜色素上皮)にメラニン色素欠乏をきたす。
・ 体毛はメラニンの量によりプラチナブロンド(白金)からブロンド(金髪)である。メラニンがほとんどない場合、日光により黄変していることもある。
・ 皮膚は乳白色である。あるいは皮下の血液により薄紅色を呈する。
・ 虹彩はメラニンの量により無色・淡青色・淡褐色などである。メラニンのない場合は無色半透明で、眼底の血液の色が透け、瞳孔とともに淡紅色となる。
・ 脈絡膜のメラニン欠乏により、瞳孔は眼底部の血管の色が透け、淡紅色となる。脈絡膜に少量のメラニンを持つ場合はぶどう色となる。
・ 脈絡膜および網膜色素上皮における色素欠乏のため網膜上での光の受容が不十分で、視力が弱い。眼球振盪・斜視・乱視・近視・遠視を伴うこともある。一般に、色素量の多い人ほど視覚症状は軽い。
・ 虹彩に色素がない(少ない)ため遮光性が不十分で、光を非常に眩しく感じる(羞明という)。
・ 皮膚で紫外線を遮断できず、紫外線に対する耐性が極めて低い。
これらは全て先天的症状で、非進行性である。これら以外の点は、アルビノでない人と同じである。
◎ 治療・対策
先天性白皮症の治療法は現在のところ見つかっていないため、処置は以下の対症療法となる。全身に色素欠乏が起き、乳白色の皮膚に、プラチナブロンド(あるいはブロンド)、虹彩は無色(あるいは青や紫)である。OCA1はさらにOCA1A、OCA1B、OCA1-TSの3種類に分類される
。
◇ OCA1A : チロシナーゼ陰性型 (Tyrosinase Negative) とも呼ばれ、チロシナーゼの活性が全くなく、メラニンを全く生成することができない。毛髪は白金で、虹彩にも色素がなく、淡青色や紫の目をしている。一般にアルビノと認知されている人の多くが、この型である。
◇ OCA1B : チロシナーゼの活性はわずかにあるが、それが極めて低く、充分な量のメラニンの生成はできない。生まれた直後はメラニンを持たず、外見的にはOCA1Aと同じであるが、成長と共に少しずつメラニンが沈着してくる。毛髪はブロンドで、目は淡青色の場合が多い。メラニンを持つため、わずかに日焼け(サンタン)もすることができる。
◇ OCA1-TS : temperature sensitive(温度感受性型)は、35℃以上でチロシナーゼが失活するもので、部位の温度によってメラニンの沈着量が左右される。つまり、温度の高い部分は白く、低い部分には色が付く。シャムネコ(:en:Siamese cat)の独特の模様が生じるのは、これと同じメカニズムである。
○ 眼皮膚白皮症II型
(OCA2
◇ Oculocutaneous Albinism Type 2) 第15常染色体上のP遺伝子 (P gene) の変異により起こる。チロシナーゼの活性はあるが、メラノソーム膜タンパク質の異常により、チロシン(メラニンの原料)がメラノソーム内に取り込まれず、メラニンを生成できない。白皮症ではこのタイプが最も多い。OCA1と比べてメラニンが多く、毛髪はブロンドやブラウンなど、虹彩は淡青色や灰色などであるが、OCA1Bのように日焼けをすることはできない
。
○ 眼皮膚白皮症III型
(OCA3
◇ Oculocutaneous Albinism Type 3) 第9常染色体上のチロシナーゼ関連タンパク質-1遺伝子 (TRP-1
◇ Tyrosinase Related Protein gene) の変異により起こる。チロシナーゼによって生成されたドーパキノンをメラニンに変換する、チロシナーゼ関連タンパク質-1の異常によるもの。Rufous(=Red) Albinism とも呼ばれ、毛髪は赤毛で、赤みがかった皮膚をしており、虹彩は褐色である。アフリカ南部やニューギニアで報告されており、白人やアジア系の人種からは今のところ見つかっていない
。
○ 眼皮膚白皮症IV型
(OCA4
◇ Oculocutaneous Albinism Type 4) 第5常染色体上の膜関連輸送タンパク質遺伝子 (MATP gene
◇ Membrane-Associated Transporter Protein gene) の変異により起こる。少量のメラニンを持ち、人によって色素沈着の度合いは様々である。ほとんどの人種では極めてまれであるが、日本人では白皮症の4人に1人がこの型であり、日本人に特徴的な型である
。
○ 先天性部分性白皮症
髪や眉だけなど部分的にのみアルビノの症候を示す珍しい希少疾患。
生まれつき髪や眉など一部分のみが白から薄い白金もしくは白い肌だが、それ以外は普通の色をしている。人により生まれつき毛量が多めである場合もある。
アメリカでジェシカ・スミスさんの娘・デヴィナちゃんがこの症例で髪・眉のみがアルビノ症候で産まれ、話題になっている。
● アフリカにおける迷信
アフリカではアルビノへの偏見が著しく、アルビノが命の危機にさらされるほどである。アルビノの人々の身体が切断され、殺害されることがある。また、切り取られた身体は闇マーケットにおいて高値で取引される。アルビノの身体を呪術に用いることで、幸福をもたらすとの迷信が信じられているからだ。サブサハラではアルビノの人体は迷信的な呪術の道具に使用される。その用途は富や豊穣、選挙に勝つ事だったり、病気の治療だったりと多岐にわたる。アルビノの女性と性交するとエイズが治ると信じられている地域もあり、それによるレイプ被害も深刻である。
先述のサブサハラにおける呪術に使用されるために殺される他にも、その外見などからアルビノの人に対し様々な差別や迷信を持つ地域や人が多い。2014年11月18日、国連総会は6月13日を「国際アルビニズム(白皮症)啓発デー」と定めた。2018年11月9日には、日本で「東京アルビニズム会議」(日本財団主催)が開かれた。国連によると、2018年時点の集計で過去10年間にアフリカ28カ国で約700件のアルビノへの襲撃があった。
タンザニアの呪術ではアルビノの人体の一部を煮出したものが使われることからアルビノへの暴行や殺害が多発し、その遺体が高額で取引されている。選挙で勝利するためなど、政治家の関与も疑われている」との記述がある。
・ エドワード懺悔王 - イングランドの王。アルビノだったとされる。
・ ジョニー・ウィンター、エドガー・ウィンター - 兄弟ともアルビノのブルース・ロックミュージシャン。
・ サリフ・ケイタ - アルビノのミュージシャン。マリ帝国の王スンジャータ・ケイタの末裔。
・ イエローマン - アルビノのレゲエミュージシャン。アルビノであることが芸名の由来である。
・ - 世界初のアルビノ男性モデルで、アフリカ系のアルビノ。ケイティ・ペリーの楽曲『』のPVにも出演している。
・ ナスチャ・ジジョコヴァ - ロシア出身のアルビノモデル。「エルフの女王」という異名を持つ。
・ 粕谷幸司 - アルビノの日本人タレント。
● 植物
植物のアルビノでは、光合成色素以外の色素の合成が可能な個体では紅葉と同じ原理で、それらの色が呈される。
よく知られる事例では球状サボテンのアルビノ個体である緋牡丹がある。緋牡丹も、単独では枯死に至るが、柱サボテン台などに接ぎ木することで、台の光合成産物を受け、枯死することなく成長する。
なお、光合成色素を部分的に合成できない場合は斑入りとよばれ、これは単独でも独立栄養で成長する。
「アルビノ」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』(https://ja.wikipedia.org/)
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