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秋田犬(あきたいぬ、あきたけん)は、秋田県原産の日本犬の一種。国の天然記念物に指定されている。地元では「大館犬(おおだていぬ)」とも呼ばれていたが、1931年(昭和6年)7月に国の天然記念物に指定された際に「秋田犬」として指定されたことから以後この名称が一般化した。
明治期に洋犬との交配による品種改良により大型化している。秋田犬協会(1948年-2016年)からヤマザキ学園大学に寄贈された1950年代の昭和25年頃から昭和末期の1980年代にかけて秋田犬を撮影した8ミリフィルム動画438本によると、かつては耳が折れ曲がっていたり、体毛にブチ模様があったりする洋犬の特徴を持った秋田犬がいたことが分かる。このように歴史的に他犬種の影響を受けてきた犬種ではあるが、2004年にアメリカ合衆国の研究チームが犬とオオカミでのDNAを比較した調査によると、調査対象になった世界の85種類の犬種の中で、秋田犬はシャー・ペイ、柴犬とチャウチャウに次いでオオカミに近い犬種であることが判明している。
● 特徴
◎ 身体的特徴
・ 体高は58-70cmであるが、オス67cm、メス61cmを理想体高としている。
・ 大型犬で、胴体、肢、吻は、がっしりとしている。
・ 体長は、体高に比べやや長め。
・ 体毛は下毛と上毛の2層構造で、耐寒能力に優れる。
・ 虎は黒虎、赤虎、霜降り虎と分けられている。
・ 闘犬として改良・飼育された経緯から、高い身体能力を備え、力も強い。
・ 股関節形成不全、鼓腸症にかかりやすい。また、ホヒトー小柳ー原田病が他の犬種に比べて出現頻度が多いと言われる。
◎ 性格
・ 飼い主に忠実で、番犬としての適性に優れる。
・ 見知らぬ人間や他の犬に対する攻撃性が強く、威圧的な態度をとることもある。
・ 1972年、秋田犬がポメラニアンを噛み殺した事件で「秋田犬は一般にどう猛で人や動物を襲いやすく飼育が困難」として賠償を認める判決が東京地方裁判所であった。判決に対し秋田犬保存会は、裁判官は秋田犬を誤解しているとして抗議文を送っている。
● 歴史
◎ 闘犬としての利用
古来、東北地方にはマタギ犬と呼ばれる狩猟犬が飼われていた。秋田地方でも「秋田マタギ犬」と呼ばれるマタギ犬がいたが、これは中型犬で秋田犬とは区別される。秋田犬の直接の祖先犬は大館地方で武士や豪農によって番犬や闘犬として飼われていた犬で、古くから大館犬とよばれていた。昭和6年(1931年)に当時の大館町で開催された「古老犬座談会」によると、江戸時代末期、大館の浄応寺、通称「中の寺」に「モク」という名の名犬が飼われていた。モクは安政末の生まれで、戊辰戦争の戦火をくぐり抜け、明治4、5年(1871、72年)まで生きたが、肩丈2尺8寸位(約85cm)あり、大人を乗せても潰れないほどの大型犬だったという。モクは立耳、巻尾の純和犬で、色はゴマ、毛は長かった。
明治に入ると各地を巡業していた土佐闘犬の興行が大館町を訪れて、大館犬と戦った。しかし、当時の土佐闘犬は七・八貫(約26.3kg-30kg)で大館犬は十二貫(約45kg)だったため、大館犬が直ぐに噛み倒してしまった。
◎ 再作出への取り組みと天然記念物指定
大正年間に入る頃から、学識者や関係者によって、「秋田犬を保存すべし」という世論が高まりを見せた。保存運動の中心となったのは、雑化を危惧した当時の大館町長(泉茂家)らである。このような動きは秋田犬に限ったことではなく、明治期の舶来文物偏重や交通の自由化等による洋犬等との雑化と、その反動としての保存運動は、全国の日本犬に関する共通の動きだった。
このような流れの中、1919年(大正8年)には、種族保護に関する法律、すなわち史蹟名勝天然紀念物保存法が発布された。同法の制定に向けて中心となって動いた渡瀬庄三郎は、当時の「日本犬保守運動」の中心人物でもある。渡瀬らは翌1920年(大正9年)、内務省の視察団として、秋田犬の調査のために大館町(現・大館市)を訪れたが、この時はタイプの雑化が甚だしく、天然記念物への指定には至らなかった。渡瀬は1922年(大正11年)の動物学会において 「日本犬の起源に就いて」と題する発表を行ったが、一番の議論の焦点は秋田犬であったという。
これ以後、同好者による秋田犬の繁殖改良・再作出への取り組みはいっそう勢いを増し、大舘町長は自身が所有していた純血の秋田犬雄1匹と、周辺の純血の雌犬4匹を交配させ、さらにかつて町長が山形県知事に贈った雄犬の元にも雌犬を連れて行き交配させるなどした。
純系の優秀犬を得るためには大型同士よりも中型の純血種との交配の方が得られるのではないかと考え秋田マタギ犬が交配された。
1927年(昭和2年)5月には、町長らによって「秋田犬保存会」が設立された。日本犬保存会が東京に 設立されたのは、これより1年遅い1928年(昭和3年)6月のことである。
保存会の設立以降、秋田犬復興への取り組みはいよいよ本格的になり、1931年(昭和6年)春の、鏑木外岐雄らによる再調査を経て、同年7月31日、9頭の優秀犬が、「秋田犬(あきたいぬ)」として国の天然記念物としての指定を受けるに至った。これは日本犬としては初の天然記念物指定である、日本の犬種団体では唯一の博物館機能を持つ「秋田犬会館」が大館市に建設された。
秋田犬は、観光客誘致のシンボル的存在として扱われることもあり、2016年に大館市で発足した観光地域づくり法人(DMO)は「秋田犬ツーリズム」と命名された。
2018年4月には、飼い主の死去などで放棄された秋田犬の新しい飼い主探しなどの拠点「秋田犬ステーション」がエリアなかいち(秋田市)に開設された。
秋田犬は飼い主以外の市民や観光客にも人気がある。秋田県内の展示施設は2018年に7カ所増えて12カ所となった。公開されている犬の過労やストレスといった問題も起きており、施設の運営団体などが2018年10月に「秋田犬ネットワーク会議」を設立して、ノウハウの交換や、犬の負担が少ないふれあい方の情報発信などに取り組んでいる。
● 秋田犬をめぐる交流
◎ ヘレン・ケラー
1937年(昭和12年)、来日していたヘレン・ケラーが秋田を訪れ記念に秋田犬を所望した。
・ 2017年2月に、白鵬翔に贈られた。
・ 2018年5月に、平昌オリンピックフィギュアスケート女子金メダリストのアリーナ・ザギトワ(ロシア)に秋田犬保存会からメスの子犬「マサル (Масару)」が贈られた。
・ 2018年7月に、朝青龍明徳にオスの子犬の「マサオ」が贈呈された。前述の「マサル」のいとこである。
・ 日本維新の会の衆議院議員・遠藤敬は秋田犬のブリーダー(繁殖者)としても有名で、遠藤の「泉州高師浜荘」産の秋田犬は高い評価を受けている。2016年から公益社団法人「秋田犬保存会」の代表理事を務めている。遠藤は国会議員になって以降、大阪18区選挙区や重複立候補した近畿比例ブロックの有権者に秋田犬を無償で譲渡してきており、公職選挙法違反が指摘されている。
● 畜犬団体
秋田犬の畜犬団体は以下の通り。背景が灰色の団体は現在活動していない。
秋田犬保存会
秋保
秋田県大館市
秋田犬保存協会
秋保協
秋田県大館市
1961年に秋保と合併
・ 2005年(平成17年)11月15日発行 50円郵便切手
・ 北都銀行のマスコットキャラクター「ほっくん」、及び前身の「うぎんのコロちゃん」は秋田犬である。
・ 秋田朝日放送のマスコットキャラクター「ミーチュー」は秋田犬がモチーフである。
・ 国土交通省東北地方整備局能代河川国道事務所のマスコットキャラクター「たくすくん」「みらいちゃん」は秋田犬がモチーフである。
・ 秋田ふるさと村のマスコットキャラクター「ノブ」は秋田犬がモチーフである。
・ 秋田内陸縦貫鉄道AN-8800形気動車
・ ラッピング車両「秋田犬っこ列車」
・ もろこし - 秋田の銘菓秋田犬がデザインされている
・ 秋田県出身の漫画家高橋よしひろの漫画『白い戦士ヤマト』の主人公・ヤマト、『銀牙 -流れ星 銀-』の主人公・銀やその続編『銀牙伝説WEED』の主人公・ウィードは秋田犬である。
・ 「太陽の犬」 - 日本テレビ系列の秋田犬親子が主人公のドラマ
・「スノープリンス 禁じられた恋のメロディ」 - 秋田犬と主人公の少年の映画
・「HACHI 約束の犬」 - アメリカ版ハチ公
・ 平治 (犬) - 山のガイド犬として「奇跡の山 さよなら、名犬平治」で映画化された秋田犬
・ わさお - 実在した秋田犬。「ぶさかわ犬」として人気があり、テレビ番組に取り上げられたほか、映画の題材にもなった。
・ 秋田県のボランティアキャラ、「エイト」「エール」「エース」は秋田犬である。
・ 秋田ダイハツ販売のマスコットキャラクター「ダイハチ」は秋田犬である。
・ Jリーグジェフユナイテッド市原・千葉のマスコット「ジェフィ」「ユニティ」は秋田犬の兄弟である。
「秋田犬」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』(https://ja.wikipedia.org/)
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