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ヘチマ(糸瓜、天糸瓜、学名:)は、インド原産のウリ科の一年草。また、その果実のこと。日本には室町時代に中国から渡来した。別名、イトウリ、トウリ。
● 名前の由来
本来の名前は果実から繊維が得られることから付いた糸瓜(いとうり)で、漢名(中国植物名)で絲瓜(しか)と呼ぶ。若い実を食用にする鹿児島では「いとうり」とよばれて親しまれている。
和名ヘチマの由来は、一説にはイトウリが後に縮まって「とうり(と瓜)」と転訛し、「と」は『いろは歌』で「へ」と「ち」の間にあることから「へち間」の意で「へちま」と呼ばれるようになったとされている。今でも「糸瓜」と書いて「へちま」と訓じる。沖縄では「ナーベーラー」とよばれるが、これは果実の繊維を鍋洗い(なべあらい)に用いたことに由来するという。
なお、中国から渡来した黒胡麻、通称黒芝麻(hei zhima) がヘチマと聞こえること、沖縄にはゆでた糸瓜に黒芝麻(ヘチマ)をかけたナーベーラー田楽という料理があることなどから、呼称違いではないかという説もある。
また、耐病性へちま品種に「浜名」、「天竜」、「浜北」、「あきは」など、静岡県西部の地名にちなんだ名称がつけられているのは、同県浜松出身の織田利三郎が明治時代に輸出振興のためヘチマの生産力を上げる改良に尽力したことによる。
● 分布・栽培史
インドや東南アジアが原産といわれる熱帯アジア原産のつる性の一年生植物。インドや中国が原産の中枢とみられ、中南米、東南アジア、韓国、台湾など熱帯から亜熱帯にかけて広く分布している。現在各地で栽培されている。日本に入ってきたのは、中国を経由して1600年代と推定されており、『多識篇』(1630年)に記載が見られる。また江戸時代に貝原篤信が書いた『菜譜』(1714年)や、薩摩藩の農事指導書である『成形図説』(1804年)には食べ方についての記述があり、ヘチマが古くから食用にされていたことがわかる。
明治中期、浜松市内で雑貨店を営んでいた織田利三郎は貿易商の助言で農産物の輸出に目をつけ、前田正名の指導のもと、日本の輸出農産物であったヘチマ、落花生、ショウガなど特殊な農産物の生産向上に励んで静岡県内の生産額を劇的に増やし、とくにヘチマは1900年まで8万円だったものを1917年には4、5千万円に引き上げた。パリ万国博覧会 (1900年)では日本産ヘチマの宣伝のため、ヘチマで作ったゾウを展示したほか、1907年に「静岡県生姜、糸瓜、蕃椒、落花生同業組合」を設立、1909年のシアトル博覧会や1910年の日英博覧会など、多くの国内外の博覧会に出品し、受賞も多数獲得した、自家栽培したものなどを苦味を我慢して食べたことによる食中毒事例(嘔吐や下痢等)もある。
◎ へちま水
秋に実が完熟した頃、地上30 - 60 cmほどの所で蔓(茎)を切り、根側の切り口をビン容器に差し込んで、口元を綿栓で塞いでしばらく置くと、根から吸い上げられた水がビン容器に溜まり、この液体のことをへちま水(へちますい)という。根まわりに水を十分与えておくと、数日で500 - 2000 ccほどの液が採れる。
化粧水として用いるほか、民間薬としては飲み薬や塗り薬として用いられる。含有成分は、ヘチマサポニン、硝酸カリウム、ペクチン、タンパク質、糖分などである。カリウムイオンによる緩和な皮膚軟化作用と、わずかな量のサポニンによる浄化作用があり、またカリウムのアルカリ性とサポニンにより去痰作用があるといわれる。正岡子規の句「痰一斗糸瓜の水も間に合わず」はこの咳止めの効能に関わるものである。
化粧水として保存するときは、煮沸して冷ましたヘチマ水500 ccに対し、グリセリン100 ccと日本薬局方アルコール100 - 300 ccを加えて濾過し、香料が適量加えられる。
飲み薬としては咳止め、むくみ、利尿に効くとされ、塗るとあせも、ひび、あかぎれ、肌荒れ、にきび、日焼け後の手当てにも効くとされる。そのままでは防腐剤が入っていないため腐りやすいので煮沸、濾過をして冷蔵庫にしまい、使う時だけ取りだすと長持ちする。民間療法では、痰切り、咳止めにヘチマ水600 ccほどを半量になるまでとろ火で煮詰め、食間に3回に分けて服用するか、ヘチマ水でうがいする用法が知られている。妊婦への服用は禁忌とされる。
◎ たわし
晩秋に茶色くなった果実を、水にさらして軟部組織を腐敗させて除き、繊維だけにして、たわしを作る。果実の先端(雌しべのある方)を地面などに軽く叩きつけて、蓋のようになっている部分を開いて取り除いて水にさらす。他にも、完熟して乾燥した果実の皮を剥いて中身の種を取り出す方法のほか、煮て中身を溶かして作ったり、酵素剤を使って中身を溶かす方法で作ることができる。産地には、江戸時代から静岡県浜松市・袋井市がある。
また、繊維を加工して装飾用、靴の中敷き用などに用いる。静岡県は、イギリス、西ドイツ、フランス、アメリカなど二十数カ国に輸出してきた経緯があるが、化学製品に押されて栽培が減少した。
◎ 学習教材
1年で発芽、開花、受粉、結果、枯死し、雄花と雌花によって他家受粉することから、日本では小学校の理科教材として使用される。
● 近縁種
◇ トカドヘチマ
: トカドヘチマ(十角糸瓜、学名: )の果実には表面のしわと10本のとても硬い稜角があり、そこから名前が付けられた。日本での経済栽培はないが、インドや中国などでは野菜としての用途が主たる栽培目的である。トカドヘチマの葉と茎にはナッツ系の独特の臭気がある。タワシを作る場合は、完熟乾燥すると果実が硬く加工が難しくなるので、やや緑がかった状態が適している。繊維採取用の種類より幾分果実が小さく、長さ30 cm、直径9 cm程度の短果である。小さい果実であれば原型を活かしたままタワシにすることができる。染色体数 2 n=26。
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「ヘチマ」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』(https://ja.wikipedia.org/)
2024年10月12日16時(日本時間)現在での最新版を取得
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