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ネコ(猫)は、狭義には食肉目ネコ科ネコ属に分類されるリビアヤマネコ(ヨーロッパヤマネコ)が家畜化されたイエネコ(家猫)に対する通称である。イヌ(犬)と並ぶ代表的なペットとして、世界中で飼われている。広義的には、ヤマネコやネコ科動物全般を指すこともある(後述)。
● 定義
イエネコの起源は、ネズミを捕獲させる目的で飼われ始めたリビアヤマネコの家畜化である。リビアヤマネコは独立種 とされることもあるが、ヨーロッパヤマネコの亜種 ともされる。その場合イエネコを含むヨーロッパヤマネコの学名は、記載が古い となるのが命名法上の原則である。しかしこれを原則通りに運用すると様々な支障が出ることから、2003年にICZNの強権により をイエネコを含むヨーロッパヤマネコの学名として使用できることが認められた(Opinion 2027)。つまりヨーロッパヤマネコの亜種としてのイエネコの学名は、 とすることができる。なおイエネコをヨーロッパヤマネコと別種として扱う場合には、イエネコの学名はが正しい。
一方、広義の「ネコ」は、ネコ類(ネコ科動物)の一部、あるいはその全ての包括的分類を指し、家畜種のイエネコに加えて広義のヤマネコ類を含む。特に学術用語としては、英語の「cat」と同様、トラやライオンなどといった大型種を含む全てのネコ科動物を指すことがある。
以下、本項では特記なき限りネコ=イエネコとして解説する。
● 起源
イエネコは、形態学的分析を主とする伝統的な生物学的知見によって、以前からヨーロッパヤマネコの亜種リビアヤマネコ が原種とされてきた。20世紀後半から発展した分子系統学(遺伝子研究)などによる新たな知見も従来説を裏付ける形となった。米英独などの国際チームによる2007年6月29日の『サイエンス』誌(電子版)への発表では、世界のイエネコ計979匹をサンプルとしたミトコンドリアDNAの解析結果により、イエネコの祖先は約13万1000年前(更新世末期〈〉)に中東の砂漠などに生息していた亜種リビアヤマネコであることが判明し、従来からの形態学的分析が裏付けられた。
愛玩用家畜として同じく一般的なイヌ に比して、ネコは飼育開始の時期が遅いが、これは家畜化の経緯の相違による。イヌは狩猟採集民に猟犬や番犬として必要とされ、早くから人の社会に組み込まれたが、ネコは、農耕の開始に伴い鼠害(ネズミの害)が深刻にならない限り有用性がなく、むしろ狩猟者としては競合相手ですらあった。その競合的捕食動物が人のパートナーとなり得たのは、穀物という「一定期間の保管を要する食害を受けやすい財産」を人類が保有するようになり、財産の番人としてのネコの役割が登場したことによる。また、伝染病を媒介する鼠を駆除することは、結果的に疫病の予防にもなった。さらに、記録媒体として紙など食害されやすい材料が現れると、これを守ることも期待された。
日本には平安時代に倉庫の穀物や経典類の番人として輸入されたことにより渡来してきたものと考えられてきたが、2000年代ごろから見野古墳群の須恵器に足形が見られるなどの痕跡から移入期が紀元前2世紀の弥生時代までさかのぼる可能性が出てきた。縄文時代に該当する出土骨も存在するが、家畜としてのネコなのかは不明瞭である。
農耕が開始され集落が出現した時期の中東周辺で、山野でネズミやノウサギを追っていたネコがネズミが数多く集まる穀物の貯蔵場所に現れ、棲みついたのが始まりと考えられている(リビアヤマネコの生息地と農耕文化圏が重なった地域で、複数回起こっていたと考えられる)。穀物には手を出さず、それを食害する害獣、害虫のみを捕食することから双方の利益が一致し、穀物を守るネコは益獣として大切にされるようになり、やがて家畜化に繋がった。
初めて人に飼われたネコから現在のイエネコに直接血統が連続しているかどうかは不明確。最古の飼育例は、2004年4月に報告されたキプロス島の約9,500年前の遺跡のものである、その大半が子ネコの内に死亡する。ネコの年齢をヒトに換算すると、室内ネコの場合は例として1歳で人間でいう17 - 20歳、2歳で23 - 25歳、以降は1年ごとに4、5歳ずつ比例していく計算となるが、成熟期が短く中年期が長いため単純な比較はできない。
A
アグーティ(縞模様)
a
ノン・アグーティ(単色)
B
黒
b
茶色(チョコレート)
b
薄茶(シナモン)
C
単色(濃淡なし)
c
セピア(バーミーズ)
c
ポインテッド(シャム模様)
D
濃暗色
d
淡明色(ダイリュート)
I
抑圧(銀化)
i
基底に及ぶ色素沈着
L
短毛
l
長毛
O
オレンジ(または伴性遺伝の赤)
o
黒味を帯びた非赤色
S
白の斑
s
ソリッドカラー(体全体)
T
縞(マッカレルタビー)
t
アビシニアン(ティックドタビー)
t
ブロッチド(クラシック)タビー
W
体全体が白
w
白以外
これらの遺伝子の組み合わせによって、複雑な模様を形作る。これら以外にも毛色を決定する遺伝子もあり、解明されていない遺伝子も多数存在する。
O遺伝子および対立遺伝子o遺伝子はX染色体上にあることが分かっており、このため両方の遺伝子を持つネコは通常メスであり、オスでは染色体異常(X染色体過剰、ヒトでいうクラインフェルター症候群相当)またはモザイク染色体の場合、そして遺伝子乗り換えによりO遺伝子がY染色体に乗り移ったネコだけである。両方の遺伝子を持つネコはトーティシェル(べっ甲を意味するトータスシェルの略で、いわゆる錆び猫〈さびねこ〉)あるいはトーティ・アンド・ホワイトまたはキャリコ(いわゆる三毛猫)と呼ばれるが、これらのネコにオスネコが珍しいのは、染色体異常のネコが非常に少ないためである。
ノン・アグーティ遺伝子はタビー遺伝子よりも上位であるため、ノン・アグーティを2つ (aa) 持つネコ(黒猫など)には通常、縞模様は見られない。タビー遺伝子を持つネコには、仔猫のときなどにうっすらと縞模様が現れることがあり、ゴースト・マーキングといわれる。
c遺伝子(サイアミーズ)は独特の遺伝子で、本来は色素の出現を抑える役割を持つが、温度が低いとその働きが抑制される。そのため、これを持つネコは温度の低い体の末端部(鼻、耳、足先など)のみに色素が出現し、シャムネコのようなポイント模様が現れる。温度が低い環境でも色素が出現し、色が濃くなる。
白毛を発現させる遺伝子のうちの『白色遺伝子』は全ての色に対して優性であるため、これを持つネコは他の遺伝子にかかわらず、白猫になる。
・ 黒猫 - 全身の毛が黒色の猫。
・ 白猫 - 全身の毛が白色の猫。聴覚障害の割合が多い。
・ トラネコ(タビー) - トラのような縞模様がある猫。茶トラ猫、キジ猫、サバ猫など。
・ 三毛猫 - 3色(一般的に白・茶色・黒)の猫。
・ 錆び猫 - 黒と茶色の2色の猫。
・ はちわれ - 顔面が鼻筋を境にした八の字形の2色になっている猫。
◎ 眼・視覚
顔の大きさの割に、かなり大きな眼を持っている。他の動物における幼獣の眼の大きさの比率に近く、これがネコを可愛いと思わせる一因にもなっている。正対視するのに有利な前面に眼窩(がんか)が開いている。このことはネコとヒトに共通の身体的特徴で、眼による感情表現が豊かであることも意味し、これがヒトがネコに対して抱く親近感の理由ではないかとも考えられている。
視覚については、特に対象の動きを捉えることを得意とする。8m位の距離ならば人間の顔を識別することが可能である。20m以内のものであれば、じっと見ることによって距離感をかなり正確に測ることができる。シャム系のネコの場合、立体視力に問題がある場合があるが、品種改良の結果、このようなネコは多くない。瞳孔は人間と異なり縦に細長くなっており、これは瞬時に瞳孔の大きさを変えることに有利という説や、野生状態で草むらのような縦長の視界で視覚を働かせるのに有利と考える説がある。瞳孔は調整の範囲が広く、明るい所では細長く、暗い所では目一杯開いて光の入る量を多くすることが可能なため、暗所での視力はよい。時計が一般的でなかった時代、猫の眼の瞳孔の広さは時間帯によって変わり、時間が真昼に近づけば近づくほど瞳孔の広さは狭くなり、逆に真夜中に近づくほど広くなることを利用して時間を知ることが行われていた。これとは別に、獲物などに狙いを定めてから飛びかかるまでの間も非常に大きく開く。
他の多くの夜行性動物と同様、ネコの眼には輝板(タペタム)と呼ばれる層が網膜の下に備わっている。この層が光を反射するため、入射光と反射光の両方の光が網膜を通過することになり、わずかな光でも物を見ることができる。この反射光のため、暗所で観察者側から照明を当てたとき眼が光って見えることがある。この現象はシカなどの野生動物でも同様であり、ライトで照らして光って見えた眼の数で個体数を割り出す「ライトセンサス」にも利用されている。夜でもよく見えるネコの眼は非常に敏感で、フラッシュ撮影をしたりすると嫌がったりストレスを与えることとなり、目を痛めてしまう可能性もあることが指摘されており、プロカメラマンは猫の撮影の際にはフラッシュを控えるか、外付フラッシュで猫ではなく天井に向けて光らせるなどの方法を薦めている。
2色型色覚だが、色(波長)の識別は困難である。三色型色覚の青と緑と赤を一応は認識できるが、赤の場合薄いピンクにしか認識できない。
瞬膜が、わりと大きく、体調の悪い時などに眼球の前に出てくることがある(チェリーアイ)。
目が開いてから授乳期後半頃までの幼猫は、やや外斜視である。
○ 眼の色
虹彩が大きな割合を占めており、人間でいう白目(球結膜)は面積が非常に狭く、通常見られない。ネコの眼の色、といった場合、虹彩の色を指す。眼の色は、色の濃淡などの違いがあるものの、おおむね以下の4種類に分けられる。
・ カッパー(銅) - cf. 色名としては、en:Copper (color)
・ ヘーゼル(薄茶) - cf. 色としては、榛色に近い。
・ 緑
・ 青
青い眼は白猫とシャム系のネコ(ポイントのあるネコ)に多く、白猫の場合は高い割合で聴覚障害を持っている。白猫の場合はオッドアイと言われる、左右の眼の色が違う場合も多い。この場合、青い眼の側の耳に聴覚障害を抱えることがある。一方が黄色で、もう一方が黄味のない淡銀灰色/あるいは淡青色というオッドアイは、日本では『金目銀目』と呼ばれ、縁起が良いものとして珍重されてきた。
これらの眼の色の違いは、虹彩におけるメラニン色素の量で決まり、色素が多い順にカッパー、ヘーゼル、緑、青となる。人間など他の哺乳類の眼でも同様である。色素の量の違いは、元々生息していた地域の日光量の違いに由来するといわれる(日光量が多い地域では色素が多くなる)が、交雑の結果、現在では地域による違いはほとんどなくなっている。シャムネコの青い眼は北アジア由来といわれ、熱帯のタイ原産のシャムネコであるが、先祖の眼の色に由来するという。
生まれて間もない仔猫の場合、品種に関わらず、虹彩に色素が沈着していない場合が多く、青目に見えることが多い。これを「キトゥン・ブルー」(Kitten Blue、「仔猫の青」の意)という。生後7週間くらいから虹彩に色素がつき始め、徐々に本来の眼の色になっていく。
◎ 耳・聴覚
ネコの五感で最も優れているのは聴覚である。可聴周波数は60Hz - 65kHzとされ、イヌの40Hz - 47kHz、ヒトの20Hz - 20kHz に比べて高音域に強い。これはネズミなどが発する高音に反応するよう適応したためといわれている。白猫は聴覚障害の割合が多い。耳は片方ずつ別々に動かすことができ、異なる方向の音を聞き分けることができる。そのため、指向性が強く、音源の場所をかなり正確に特定することができる。音の聞き分けの能力も高く、例えば飼い主が帰ってきた足音を判別することは簡単にできる。これらの能力は、夜間に待ち伏せ型の狩りをするのに適応し発達したものと考えられている。耳の動きは感情にも左右され、特にネコがおびえているときや不満を感じているときなどは、耳はうしろ向きに伏せられる。スコティッシュフォールドという折れ耳が特徴の品種もある。
◎ 鼻・嗅覚
鼻は、他の動物に比べてそれほど優れているわけでもないが、それでもヒトと比べれば数万から数十万倍と言われる嗅覚を持つ。体のバランスに比べて小さくできているが、鼻腔内部は凹凸に富み、大きな表面積を生み出しているため、小さな鼻の外観だけからは予想できない優れた嗅覚がある。
また、ネコの鼻は個体によって異なる紋様を持っており、これは鼻紋と呼ばれ、人でいうところの指紋と同じものであり、個体の識別に用いることが可能である。
イヌとは狩りの方法が異なり、嗅覚を狩りに利用することはほとんどなく、ネコの嗅覚は食物の峻別や縄張りの確認に主に使うと考えられている。ネコは頬腺や肛門腺から出る分泌物や尿などによって自分の臭いを付け、縄張り、あるいは仲間同士のコミュニケーションのために臭い付けをする行動を、飼い主やほかのネコに対して行う場合がある。例えば、ネコが飼い主の足に顔をすり寄せるのは、頬腺などから出る分泌物を付け、「自分の物」というマーキングをしているわけである。
○ フレーメン反応
フェロモンを感じる器官が口内の上顎にあり、ヤコブソン器官(鋤鼻〈じょび〉器官)という。
フェロモンを感じると口を半開きにし、目を半分閉じて笑っているような表情を示す場合があり、これをフレーメン反応といい、フェロモンを分析している行動である。これにより、主に相手のネコがどういう状態にあるかを分析する。また毛づくろいで自分の肛門の周囲をなめたときにもこの反応を示すことがある。マタタビの果実やイヌハッカ、オリーブの匂いを嗅ぐと、ネコは恍惚として身悶えるような反応を示す。これはこれらの植物に含まれるマタタビラクトンやネペタラクトンなどの物質にヤコブソン器官が反応し、ネコに陶酔感をもたらすためといわれており、これはネコ科全般の動物に起こる反応である。
◎ 舌・味覚
舌は薄く締まっており、表の面には多数の鉤状突起があってザラザラしているが、これは骨に付いた肉をしゃぶりとるのに適応したものである。この突起は毛づくろいや水を飲む際にも役立つ。この特質と形状を模してパソコンのポインティング・スティックには猫の舌状のものが製品化されている。
また、掃除機のゴミ圧縮ブレードにも応用されている。この糸状乳頭と呼ばれる突起の形状は管を半分に割ったような形をしており、そこに唾液などを含むことができることが解明された。
熱い食べ物が苦手な人を「猫舌」と俗称するが、ネコのみが特に熱いものを嫌うというわけではない。野生動物は山火事などの後に屍肉を漁るくらいしか熱を持った食物を口にする機会がなく、全般的に熱いものに慣れていないためである。
ネコ科の動物に共通する特徴であるが、味蕾が他の哺乳類とは異なっており、甘味を認識することができない。アメリカのMonell Chemical Senses CenterとイギリスのWaltham Centre for Pet Nutritionの両所の科学者達が行った研究において、砂糖を含んだ水と普通の水を数十匹のネコに与えたところ、どちらの水も同程度飲んだことが確認された。それ以前の研究で、ネコが砂糖に関心を持たないことは示されていた。彼らはネコのDNAを調べ、甘味を受容する器官を構成する二つのたんぱく質の内の一つであるT1R2に対応する遺伝子の欠陥により、その器官をもはや作ることができないことを見いだした。一匹のライオンと一匹のチーターのDNAでも同じ結果を確認した。また極端な肉食性が砂糖に対する味覚を無関係のものとし、甘味の受容器官に変異を生じさせることを許したということを提唱している。猫のような肉食動物は、糖新生の酵素活性が高く、タンパク質から分解されて得られた糖原性アミノ酸から糖新生を行って体内で必要な糖分を生成している。
アミノ酸に対する反応が強く、特に苦味を認識する味蕾は多くある。これはアミノ酸が腐敗したときの苦味を強く感じることによって、腐肉を食べることを避ける役割を担っていると考えられている。ネコの食物に対する嗜好は、これらの味蕾の構成の違いが要因の一つと考えられている。
◎ 牙
猫の牙は生後2ヶ月 - 8ヶ月で乳歯の脇から永久歯が生え始め、やがて乳歯が抜け落ちる。
◎ ひげ・洞毛
◎ 尾
尾はおおむねその胴体ほどの長さであるが、ジャパニーズボブテイルやクリルアイランドボブテイルのように極端に短いものや、マンクスのように尾がない個体もある。尾の役割は、感情を表すほか、走行時や跳躍・着地の際に体のバランスを取る役割がある。イエネコについては尾がなくても行動にほとんど支障はないと考えられている。
従来の日本産のネコは、世界に現存するほとんどのネコに比べ、ジャパニーズボブテイルのように尾は半分以下もないことが普通であったが、戦後(太平洋戦争終了後)以来日本在来のネコに海外のネコの血統が混入し続けた結果、一部地域を除くほとんどの場所で尾の長い個体が大半を占めるようになっている。
長崎県を中心とした九州地方全域において、尾が極端に曲がった個体の存在が報告されている。尾骨が極端に湾曲した個体は東南アジアの個体に顕著に見られる特徴であり、長崎県を中心とした尾曲がりネコは明治以前の出島交易時に東南アジアの個体が長崎に持ち込まれ混血した結果であると見られている、人間とのコミュニケーションもかなりできることが、イヌと並ぶ愛玩動物の地位を獲得した要因となっている。
ネコは飼い主の声と知らない人間の声を聞き分けていることをはじめ、飼い主がネコ自身に話しかける時の声までも聞き分けていることが最近の研究で明らかにされており、根気よく繰り返して教えれば「ごはん」「おやつ」「遊ぶ?」のような簡単な言葉を聞き分け、意味を理解できるようになる個体も存在する。俗に「ネコは頭が良い、イヌは賢い」とよくいわれるが、これは知能というよりも人間の都合からみた従順さである。またメインクーンなどに代表される、体長1m前後に達する大型種は、人間に従順で時にイヌのようにふるまう。これはネコと共通の祖先を持つイヌにも見られる傾向だが、大型種自体が少ないうえにイヌの種別間ほどはっきりした体格差はないことから、一般、特に日本では大型種の存在とその性格についての認知度が低い。
● 繁殖
種類および地域により差はあるが、だいたい春ならびに夏の初めに発情、交尾を行う。
◎ 発情
○ メスの発情
個体差もあるが、おおむね生後6か月から12か月で性的に成熟し、その後、定期的に発情する。発情の周期についてはいくつかの説がある。
ネコは長日繁殖動物のため、暖かい時期と日照時間が14時間程度になる時期に発情がくる。日本では2月から4月と、6月から8月に相当する。人工灯も発情に影響するため、完全室内飼育の場合などは発情期間が長めになることもあり、季節に関わらず年に3回から4回ほどの発情がくることもある、求愛行動として「さかり声」と呼ばれるけたたましい鳴き声を上げる。この習性は、その声を騒音と感じて迷惑に思う人間も多く、飼い主との間で問題に発展することもある。
◎ 交尾
通常、交尾はオスがメスの背中に乗り、オスがメスの首筋を噛んでメスが逃げないようにして行う。ネコの交尾は相手が1匹に限定されるものではなく、機会があればオス・メス共に複数の異性と行う。そのため、同時に生まれた仔猫の父猫が別のネコであることはよくあることである。オスの陰茎には棘(とげ)状の突起が備わっており、この刺激によってメスの排卵を誘発するため、妊娠率は比較的高い。去勢したオスではこの突起が消滅する。
北九州市立自然史・歴史博物館の学芸員、山根明弘によると30年以上調査が継続している相島の野良子猫のDNAを調べた結果、同じ集団で1番メスに近い所にいる強いオスよりも、他の集団から来たオスの子猫の方が多いことが分かった。
◎ 妊娠・出産
メスネコは、おおむね2 - 6匹程度の子を妊娠する。乳房は4対8個あるのが一般的(個体により6 - 12個と差がある)。妊娠期間は65日程度である。
出産は一般的に軽く、人や獣医師が手を貸す必要のないケースがほとんどである。仔猫は出産直後は羊水で濡れているが、母猫がなめて乾かし、数時間でふわっとした毛並みになる。母猫は出産当日は授乳に専念し、食事はあまり摂らないようである。代わりに後産で出た胎盤を栄養分として食べることが多い。
メスネコは年3 - 4回の出産が可能であり、年2回の出産は珍しくない。授乳期間中であっても交尾・妊娠する。
◎ 子猫の性別の見分け方
生後間もない子猫の性別の判断は非常に難しく、獣医であっても80%しか判別できないとされる。生後4週でほぼ確実に判断できるようになる。一般にオス・メスの区別は、肛門と尿の出口の距離によって判別する。オスは長く、メスは短い。また、オスの場合には将来陰嚢として大きくなる前の小さな膨らみがある。生後2か月にもなれば明らかに睾丸と判断できるほどになる。メスではこの部分が平坦になっている。オス・メス双方を比較すると分かりやすいが1匹だけの場合は判別が難しい。
◎ 子猫の排泄
生後間もない子猫は自ら排泄はできず、親ネコが排泄器を舐めることで刺激し、便や尿を排泄させ親ネコが食べている。このため親から離れた子ネコを人間が飼う場合には、排せつの補助をしなければならない。ぬるま湯を含んだガーゼで尻を刺激したり指で軽く叩くようにすると排泄を行う。または流し台などでぬるま湯を流しながら濡れた指でお尻を刺激するようにすると清潔に洗浄ができる。特に人工乳を与えている子ネコは排泄量が多いため、こまめに行う必要がある。生後1 - 1か月半でトイレでの排泄の練習を始める。
● 食性
ネコの本来の食性は肉食性である。たんぱく質や脂質を必要とし、半野生的な生活を送っているネコは、生きた小獣(ネズミ・ウサギ・鳥類など)といった小動物を捕食し、また飼育下に置かれているネコは与えられた獣肉・魚肉や、人工飼料(キャットフードなど)からそれらの栄養素を摂取する。
ネズミやスズメなどの獲物を捕まえた際、その場で食べずに安全な場所まで運んでから食べる習性がある。母猫の場合は仔猫に獲物を与えることで何が食べられるのかを教える。特に生きたまま与えることで狩りの訓練をさせるという側面がある。飼い猫や地域猫の場合も、よく懐いた人の元に獲物を持ち帰ったところを発見されることがある。
また、ネコはエンバクなど背の低い草を食べる習性があり、その理由は未だ明らかでないが、毛づくろいのときにどうしても呑み込んでしまって蓄積した体毛を、草の繊維に引っかけて、まとめて排泄するためとする説や、植物性のビタミンや葉酸を草から直接摂取しているなどの説がある。どのネコにも共通しているのが、イネ科植物を好んで食べるということである。そのほかオリヅルランやテーブルヤシなどの単子葉植物の葉を食べることがある。また、キャベツやハクサイなどの葉物野菜やダイコン、カブといった根菜類の葉に興味を示して食べようとする個体もいる。ペットショップでは飼い猫用に「猫草」としてエンバクの芽ばえや種や栽培キットなどが売られている。
与えればドッグフードも食べないことはないが、ネコにとっての必須栄養素であるタウリンはドッグフードにはあまり多く配合されていない。ネコはタウリンの生合成能力が極めて低いため、タウリンを摂取しないとタウリン欠乏をおこし、失明したり心筋症を発症することがある。タウリンの安定的摂取を望めない状況が続く場合には、獣医と相談し、タウリンを含有する猫用栄養補給剤を処方、猫に服用させる必要がある。他、ビール酵母サプリメントやノンアルコールビールが好物であり、おやつ代わりに与えている例も多い。当然、アルコールが入っている通常のビールを猫に与えるのは厳禁である。
乾燥した地域を進化上の故郷とすると思われるネコ科は元来、飲水量が少ない動物で、体内で水を有効に使うために尿の濃縮率が高く、濃い尿を出す。そのため、腎臓への負荷が高く、ネコの病気の7- 8割は腎臓の病気である。特に塩分の摂りすぎには注意が必要である。また、水は水道水が最も理想的(日本のほとんどの地域では、水道水はミネラル含有量が少ない軟水)である。一部ミネラルウォーターの硬水に含まれるマグネシウムは猫に対して高濃度に当たるため、腎臓などへの影響からも極力飲ませないようにするべきである。
◎ 一日に成猫が必要とする栄養素
あくまで必要なのはバランスであり、過剰給餌は健康を害する恐れがある。
餌の28%以上。仔猫の場合はその2倍。 9%以上 40%以下 1g 0.8g 0.2g 0.4g 0.05g 10mg 0.5mg
マンガン亜鉛ヨードビタミンAビタミンBビタミンBビタミンBパントテン酸葉酸ニコチン酸
1.0mg 4.0mg 0.1mg 550国際単位 0.5mg 0.5mg 0.4mg 1.0mg 0.1mg 4.5mg
ビタミンBコリンタウリンビタミンCビタミンDビタミンEビタミンK水分
0.02mg 200mg 100mg 必要量無し 100国際単位 8.0mg 必要量無し 1kgあたり50-70ml
◎ 一日の食餌必要量
妊娠した場合には5週頃から徐々に食餌の量を増やし、場合によっては専用の食餌を与える。
3週 粉ミルク・缶詰・母乳 4-6回
4週 粉ミルク・缶詰・母乳 4-6回
5週 缶詰・母乳 4-5回
6-8週 おかゆ状にした上記の餌 3-4回
8週以上 離乳させる 3-4回
2-4ヶ月 250-425kcal 3-4回
4-5ヶ月 425-500kcal 3-4回
5-6ヶ月 500-600kcal 2-3回
6-12ヶ月 600-700kcal 1-2回
成猫 300-550kcal 1-2回 ドライフード・缶詰
妊娠後期 通常の3割増し 2-4回
哺乳期 通常の3倍 2-4回
老齢猫 吸収力の低下のため若干増やす 1-2回
● ネコにとって危険な物質
人間が日常において嗜好・摂取する物の中で、ネコに対して有毒性を示す物品や物質や成分。基本的には市販のキャットフードなどを与えるのが好ましい。また、盗み食いにも注意が必要。
◎ ネコに与えてはいけない食べ物
◇ ユリ・タマネギなどのヒガンバナ科またはユリ科の植物
: ネコやイヌにとってネギやタマネギ、ニンニク、ラッキョウなどといったヒガンバナ科の植物は極めて有毒とされている。ネギ類に含まれるアリルプロピルジスルフィドが、ネコやイヌの赤血球を破壊してしまい、貧血・食欲不振・呼吸困難・血尿・嘔吐を引き起こす。また、ユリ属の植物は特に有害であり、全ての部位に毒性があり、体毛に付着した花粉をなめただけで死亡した例や、チューリップの生花を挿していた花瓶の水を摂取したことで重篤となり、安楽死を選択せざるを得なかった事例も報告されており、アメリカの愛猫団体であるは、これらの植物をネコに近づけないように勧告している。ヒヤシンスも同様に危険である。
: また、ゆで汁やエキスなども有害であり、ハンバーグなどの練り製品、人間用のビーフジャーキー、すき焼き(の肉)、牛丼や茶碗蒸し、カップ麺などにも含まれることがあり、これらを口にすると中毒を起こすことがある。
◇ アルカロイド類
: アルカロイドを含む多くの植物は中毒の原因となる。また、種子類・球根は全て有害と考えられている。カフェインを含む、コーヒーや紅茶なども有害とされている。
: なお、魚には基本的にビタミンB1が含まれていないため、肉を与えず魚だけで育てた場合も、寿命が短縮する。市販のキャットフードなどはビタミンB1を添加してあるため、魚が主原料であっても気にする必要はない。
◇ アワビ、サザエ、ノリ
: 死亡する危険はないが、春先のアワビのツノワタ(内臓)を食べさせるとネコの耳が腐れ落ちると東北地方でいわれている。春先のアワビやサザエは餌としている海藻に含まれるクロロフィルをピロフェオホルバイド a という毒成分に変質させて、動物の体内に摂り込まれた状態で日光に当たると光過敏症を起こすことに基づいている。アワビなどは春先に 「ピロフェオホルバイド a」という成分を内臓にためこんでいるので、これを食べると成分も体内に入る。ネコの体は被毛で覆われているため、たとえ日に当たっても光は皮膚までは届かず問題ない。しかし、耳だけは被毛が薄く、毛細血管にまで日光が届く。そのため、光過敏症で炎症を起こして激しいかゆみを生じる。ネコは耳を激しくかきむしり、取れるまでそれを続けてしまう。あるいは、毒成分によって耳の組織が壊死してしまい、取れてしまう。味付けされないノリは与えても構わないがミネラルが多いため量を制限(日量3g程度)する必要がある。過剰に摂取した場合尿路結石症などに罹る恐れがある。味付け海苔はナトリウム過剰摂取の可能性があるので与えない方が良い。
◇ ブドウ、レーズン
:アメリカの動物毒性コントロールセンターの調査・研究によると、原因物質は解明されていないが、ネコやイヌが摂取すると2-3時間後に嘔吐・下痢・食欲不振・腰痛が引き起こされ、3-5日後に腎不全の症状が発現し、最悪の場合は死に至るケースもあるとしている。
◇ カカオ(チョコレート、ココア)
: カカオに含まれるテオブロミンを代謝する能力がとても低いことから、大量に摂取した場合、下痢、嘔吐、興奮、痙攣、脈の乱れ、血尿などの中毒症状が現れ、最悪の場合、突然死することもある。
◇ 青酸配糖体を含む食物
:リンゴ、アンズ、モモ、プラム、スモモ、サクランボ、アーモンドなどの枝、葉、種に含有される青酸配糖体が体内で青酸に変化し、呼吸困難、虚脱、痙攣、チック症状に陥り、最悪の場合は死に至る場合がある。
◇ ソラニンを含む食物
:ナス、トマト、ジャガイモ、ピーマン、ホオズキなどのナス科のほとんどの植物にネコに有毒なソラニンが含まれている。個体差があるが、ネコの場合は2-10mgが摂取量の上限であり、それを超えると過流涎、食欲不振、胃腸障害、下痢、中枢神経系の抑制、虚脱、散瞳、心拍数低下などに陥る場合がある。最悪の場合は、心筋梗塞を起こし死に至る。
◇ 家庭薬など
: 人が飲用・服用する経口薬を素人がペットに与えるべきではなく、ネコの体を舐める習性により、頭髪や皮膚に塗布する外用薬にも注意が必要である。
:
◇ 鎮痛剤・解熱剤・感冒剤・サプリメント
:: グルクロン酸抱合能力が低いことなど、ヒトとネコの違いゆえに、鎮痛解熱剤として用いられるアセトアミノフェンは肝障害などを起こすためイヌやネコへの使用は厳禁であり、風邪薬に代表されるヒト用の家庭薬も同様である。
:: また、ダイエット目的のサプリメントとして用いられるα-リポ酸も、ネコにとっては肝機能障害を引き起こすなど身近な薬品での中毒事故が起こりうる。
:
◇ 養毛剤
:: 壮年性脱毛に有効な外用薬ミノキシジルが付着した頭部をネコがなめるだけでも心機能に問題が起こり得るとされる。
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◇ 湿布薬
:: 非ステロイド性消炎鎮痛剤の一種で、筋肉痛や関節痛を和らげる効果の湿布や軟膏に含まれていることがある成分フルルビプロフェンをネコが摂取してしまうと、腸や腎臓に中毒症状が現れ、食欲不振、倦怠感、嘔吐、下血などを起こし、死亡に至るケースも複数件あったことに関しての報告と注意が、2015年4月にアメリカ食料医薬品局(FDA)から発表されている。摂取する経路は、薬剤を使用した飼い主の皮膚や、そこから薬剤が付着した衣服・家具・ネコの身体からの経口であろうとみられている。
● 病気・障害
ネコの死因は1位が悪性腫瘍、2位が腎臓病とされるが、特に遺伝的障害である腎臓病は100%罹患しているとされる。
◎ 人獣共通感染症
人とネコで同じように感染する人畜共通感染症には代表的なものとして、狂犬病、トキソプラズマ症、パスツレラ症、結核、細菌性の腸炎、皮膚病、および、バルトネラ菌の感染症である猫ひっかき病がある。
◎ ネコに特有の感染症
◇ 猫免疫不全ウイルス感染症
: 猫免疫不全ウイルス (FIV) 感染を原因とする感染症。特別な治療法は無い。
: 猫後天性免疫不全症候群(猫エイズ)は上記感染症の病態の一つ。
◇ 猫白血病ウイルス感染症
: 猫白血病ウイルス (FeLV) を原因とする感染症。
◇ 猫伝染性腹膜炎
: 猫伝染性腹膜炎ウイルス (FIPV) を原因とする感染症。
◎ 口腔病・歯病
◇ 歯周病
: 3歳になるまでに約80%の猫が歯周病を起こすとされる。これは内臓疾患を起こす原因にもなりうる。歯周病予防のためには飼い主による定期的な歯のケア(歯磨きなど)が必要である。
◇ ネックリージョン(被歯細胞性吸収病巣、歯頸部吸収病巣)
: 4歳になるまでに約60%のネコに起こるといわれ、原因は不明。
◎ 聴覚障害
◎ 泌尿器の病気
◇ 慢性腎臓病(腎不全)
: 他のネコ科動物と同様に腎臓の病気になりやすいが、その原因は長らく不明だったが。宮崎はそれ以前に腎機能を維持するタンパク質(AIM)を発見しており、透析患者の負担を軽減する薬など人間用の薬の研究していたが、ネコが腎臓病になりやすいことを獣医から聞き、2013年からはネコ用の薬を先に作り、それを人間に応用するという通常の動物用医薬品とは逆の手法で研究を開始した。東京大学への寄付金は年間1000万円ほどであるが、この研究には単独で1000万円近い寄付もあり、領収書を求めないなど税控除を目的としない寄付も目立ったという。
:概ね5歳ごろに急性の腎障害となり、それが慢性腎不全へと進行し尿毒症で死ぬケースが多い。一般的には飼い主や懐いた人になでられるなどしてリラックスしている時にこの反応が見られるが、体調が悪い時や出産時(陣痛中)、死ぬ直前にも喉を鳴らすという。これらの行動の意味は未だにはっきり解明されていないが、普段から低周波の音を発生させることで骨格を丈夫にする、苦しいときに痛みを緩和し呼吸を楽にしている、などの説が存在する。
○ クラッキング(チャタリング)
ネコが「カカカ」のように歯を打ち鳴らしているような音を出す現象をクラッキング(英語圏などではチャタリング(chattering))といい、ネコ科の動物でもネコだけが発するものである。小声を出しながら行う個体もある。
◎ 睡眠
ネコの語源が「寝子」であるという説もあるほどにイエネコの睡眠時間は人間に比べて長い。一般的に、ネコは一日の大半を寝て過ごすといわれている。ネコの飼い方の本(獣医師による解説)などでは、一般に14時間程度とか16時間程度と解説されていることが多い。また「長いネコでは20時間程度眠る」といった解説も多い。なお、睡眠時間が長い傾向にあるのは、ネコ科の動物、肉食動物に共通して見られる傾向である。草食動物に比べて食物を得る機会に乏しい反面、その食物は草食動物の場合と比べて高カロリーであり、一度食物を得るとしばらくは食べる必要が無いため、何もしない時間帯は寝ることでカロリーの消費を抑えていると考えられる。
外からの訪問者が少ない住宅で、家族や近隣にかわいがられ、餌が十分に与えられている安心できる環境だと、ネコは長いものでは1日あたり20時間近くひたすら眠り続ける。ペットとして飼われているネコは餌を探しにいく必要がなく、安全な寝場所も確保されており、特に何をする必要もないため安心して眠り続ける。寝ている時に時折、痙攣したり鳴き声を漏らしたりするが、夢を見ているせいである。主に仔猫の頃の夢(母猫の乳首を吸っている場面)や、狩りをしているときの夢を見るといわれている。
人により屋内で飼われている仔猫はとくに睡眠時間が長く、書籍では20時間程度と解説されていることが多い。ほとんど眠っていて、たまに眼を覚ますと母猫の乳を吸い、その後ちょっと遊んでいたかと思うとまたすぐ眠ってしまう、というような状態である。また、仔猫ではほとんどがレム睡眠であるといわれている。そのため、呼びかけたり触れたりすると目を醒ます場合がある。
野良猫に限れば、外敵に対する警戒を怠ることができないため、睡眠時間は人に飼われているネコよりかなり短くなり、眠りも浅い。
日光東照宮の眠り猫は頭を地面につけず上げているが、
腹部を地に付け、四肢をたたみ、尾を身体側に引き付けたうえで、背を丸めてうずくまる、というネコの姿勢を『香箱を作る』(香箱座り)と表現する。香箱の蓋の丸く盛り上がった甲の形に由来している。
香箱座りは、前足を完全に折り畳んでいるため、特にリラックスした状態である。
一方で完全屋内飼育のネコの場合は、外敵に対する警戒の必要もないため、仰向けないしそれに近い姿勢でリラックスして寝る場合も見られる。同じネコ科の野生動物においても、同様の姿勢が生態系の頂点に位置し天敵が存在しないライオンにおいて見られる。
◎ 爪とぎ
放し飼いの地域猫や野良猫や野猫の場合は太い木の幹、飼い猫の場合は壁や柱などを引っかいたり、爪を噛んで引っ張って爪とぎをする。ネコに限らず、狩りをする動物の多くに見られる行動である。「研ぐ」のではなく「さや」を剥がして鋭くし、いつでも狩りに使えるようにしておく手入れの他、縄張りを他のネコに対して示す意味がある。転位行動として行うこともある。爪がないネコでも同じしぐさをすることがあり、何かを始める際の合図ともいわれている。飼い猫の場合、調度品や壁紙などの意図せぬ場所での爪とぎを防止するため、爪とぎ台や爪磨きの付属したキャットタワー(ネコタワー)などを用意しておくとよい。また、爪とぎする場所も教えておく必要がある。
爪を切る場合、ネコの鉤爪の根元側は肉・神経・血管が通っており、先端部分だけを丁寧に切らなければならない。ピンクがかった髄の部分を切除すると苦痛を訴えたり、場合によっては出血を伴う恐れがある。また、外科的に爪を除去してしまう手術があるが、本能と深く結びついた道具を失うことになり、ストレスや問題行動の原因となる可能性があるため、この手術を禁止している国は多い。
◎ 攻撃手段
猫は肉食動物が持つ狩りの武器をすべて持っているが、攻撃する際には、前足や後ろ足がよく用いられる。前足を前に差し出し、スナップを利かせて攻撃対象を招き寄せるかのように足裏で攻撃する攻撃方法は猫パンチと呼ばれる。また、前足で攻撃対象をしっかり抱き抱えて倒れこみ、後ろ両足で蹴りを繰り返して入れる攻撃方法は猫キックと呼ばれる。いずれの場合も、自由に出し入れできる鉤爪を出して攻撃することで、より高い攻撃力が得られ急所にとどめをさす。
噛み付きも、仔猫同士の取っ組み合いなどでよく用いられる攻撃方法である。また、濡れた毛を乾かす。舌の届かない部位(顔・首・頭など)は前肢に唾液を含ませて拭く。「猫が顔を洗うと雨が降る」というが、晴天でも顔を拭く。足をなめる際に爪を噛んで引っ張って爪とぎをする。
鳥類や毛皮を持つ哺乳類においては、皮膚から毛皮や羽根に皮脂を分泌し毛づくろいすることによって口からビタミンDを摂取しているとの説もある。
◎ 尾と感情との関係
尾からうかがえる感情としては以下のようなものが挙げられる。
◇ 立てている
: 比較的機嫌の良いとき。歩くときは立てていることが多い。個体によっては立てながらくねくねと動かしている場合もある。
◇ 横に振っている
: 速く大きく振っているときは不快なとき。
◇ 大きくふくらませている
: 威嚇しているとき、または、驚いたとき。威嚇しているときは全身の毛を逆立てることを伴う。
◇ 他のネコや、人間に巻きつける
: 相手に親愛の情を持っている。
◎ 捕食
待ち伏せ・忍び寄り型捕食者であるネコの特性は、様々な身体的特徴として見ることができる。長く追うことで疲弊させる、あるいは、組織的な罠によって追い詰める追跡型捕食者であるイヌ科動物とは対照的である。
尾で魚釣りをする。
動く物に興味を示し捕まえようとする傾向が強く、猫じゃらしなどの玩具がある。
狭い所に入る傾向があるが、餌のネズミなどを探す習性によるとされる。自動車のエンジンルームに入る事もあり、猫バンバンが提唱されている。
◎ 社会性
群れは作らないが、地域の野良猫の密度が多い場合などは独立した縄張りをもつことが困難で、ある程度の順位が存在する。そのようなネコ達は同一の場所に定期的に集まり、「猫の集会」などと呼ばれる。互いに安否確認などをしていると考えられている。複数飼いなどではじゃれ合ったり互いにグルーミングしたりといったコミュニケーションをする。また、初対面のネコ同士が鼻をつけ合う事があるが、相手を確認する挨拶とされる。
Kristyn R.Vitaleらの2019年の研究によれば、ネコは自分にとって見覚えのある人間よりも、自分に注意を向けてくる人間とより長く接触する傾向があった。齋藤慈子による2019年の研究によれば、犬ほど熱狂的な反応ではないが、ネコは人のジェスチャーを理解し、自分の名前を聞き分けているという。さらに一緒に暮らす人間のライフサイクルに適応できることも判明しており、「ネコが早朝に飼い主を起こす」理由についてはオーストラリア・アデレード大学獣医学部の上級講師を務めるスーザン・ヘイゼル(Susan Hazel)らは朝に給餌することに関連性がある点をその一つに挙げ「ネコにエサをあげることは行動に対して報酬を与えることであり、ネコがそれを繰り返す可能性を高めます」と述べている。その中でヘイゼルらは「エサをもらえると学習したネコが再び早朝に起こしに来るようになってしまう」と指摘。また「飼い主が旅行に行ったり、家具を移動したり、引っ越したり、別のペットを飼い始めたりする」ことによって定期的なルーチンを維持し切れずストレスを感じたり、ネコ自体がエネルギーを持て余していることから早朝に飼い主を起こしに来てしまうことがある点を指摘している。
○ けんか
長い威嚇行動を経たあとに双方引かない場合には衝突に発展し、威嚇には一方が低音で唸ると他方は高音で返すなどの特徴が窺える。通常は1対1のけんかであるため、人間がけんかの声に似せて横槍を入れると、気味悪がってけんかを中止することもある。けんか・格闘は、跳びかかりやすく有利な高所を制した側が優勢で、そのため、戦略的ポジションを探りながらの威嚇が長時間続く。格闘になるとほんの数秒で決着する。多くの場合、相手に痛手を負わすまでの闘いになるまでに勝敗が決する。
けんかをしている猫を抱き上げると、猛り立った猫は見さかいもなく主人にでも噛みつき、人がけがをする可能性がある。けんかをやめさせたければ、水をかけるのが最善の方法である。
◎ 暖かい場所
暖かい場所を好む習性があり、室内で日の当たる場所がない場合、パソコンやファクシミリなど排熱が大きい機器の近くに移動することが多い。この際排尿することもあり、電子機器の破損に繋がることもある。
◎ 死期の前兆にとる行動
ネコはこれまで“死期が近づくと姿を消す”との風説は、日本では遅くとも江戸時代にはみられ、江戸時代に貝原益軒がのこした生物学・農学書である『大和本草(やまとほんぞう)』の第十四巻には、「凡ソ猫ノ他獣ト異ルコト九アリ」(「猫には他の動物とは異なる点が9つある」)と書かれており「死ヌル時人ニカクレテ人ノ不見處ニテ死ス」(「死ぬ時は人から見えないところに隠れる」)と記述されている。また、民俗学者の柳田國男は随筆『どら猫観察記』の中で「第一に猫の終りというものが、いつの場合にも我々の知解の外に在った」と語っており、昭和時代には「死ぬ間際の猫を人は知らない。」という考え方が「我々」という「共通理解」の上にあることを前提としている。
○ 現代における見解
イギリスの動物行動学者であるデズモンド・モリスは、自著にて「なぜ、死ぬ時に独りになりたがるのか」という事について言及しており、彼はこの現象を「偶然ではなく、猫の行動の典型的な特徴である」と述べ、その理由を「『闘争・逃走反応』の一種ではないか」との推測を示している。1992年、アメリカのMcCuneは、「悪い環境に置かれた猫は、積極的に異常行動を示すというよりも、むしろ不活発になる」との調査結果を発表している。
動物生態学博士の山根明弘は、屋外にて事故や襲撃にあったり体調を崩してしまっても動ける余力のある場合は、ネコにとっての安全な場所である人目につかない遮蔽物の多い狭い空間に本能的に身を隠すので、症状が深刻だと見つけることが出来る前にそのまま死に至るケースが多くなるため、人からは「死期が近づくと姿を消す」に見えてしまうことがあるとしている。往診専門動物病院の「わんにゃん保健室」院長を務める江本宏平によれば「猫は自分の死期を悟ると、飼い主にいつも以上に甘えたり、最後の力を振り絞って元気な姿を見せるなどの行動をとることが多い」という。また江本はその行動に対し「死期を悟った猫が飼い主に対し、感謝の気持ちを示しているのではないか」との見解を示している。
◎ 習性に関する参考画像
● 人間との関わり
人類と猫との歴史の記録は、ネコの家畜化が認められる古代エジプトから始まっており、関係する文化や風習、創作物、あるいは日常生活や社会における関わり合いについては、「ネコの文化」で解説する。
日本では、鳴き声の語呂合わせ(ニャン・ニャン・ニャン)から、ペットフード協会の制定により2月22日が猫の日とされている。
◎ 世界で飼育されているネコの数
イギリスやアメリカではイヌとネコの飼育頭数はほぼ同じであり、アメリカでは30%以上、ヨーロッパでは24%以上の家庭でネコが飼育されており、この数字はなおも増加傾向にある。この値はイヌの987.8万頭より若干少なかった。しかし、2017年時点の同調査で、ネコ952.6万頭、イヌ892.0万頭となり、同調査が開始されてから初めて逆転した。
この背景には、高齢化社会によって飼育のしやすさが考慮されたことや、2010年代に入り起こった、ネコノミクスと呼ばれるネコブームが挙げられる。
イスラム圏では、ムハンマドが猫を愛したというスンナが残っていることから、非常に尊ばれる生き物となっており、ペットとしても人気がある(「イスラームとネコ」も参照)。
600 170 160 110 220 500 840 690 6000 985 280 60 [万頭
◎ 人間とのコミュニケーション
ネコは自分の目線の高さより高く大きなものを「怖い」と感じ取る傾向がある。特に人間はネコからすればその要素を含む存在として見られているため、大抵はネコそのものが人間に対し警戒心を抱いて間隔を取ろうと動くことが多いが、ネコの個体の性格や人間との信頼関係によっては逃げないケースも存在する。また、ネコは人間とのコミュニケーションにおいて、自分の体を撫でられる際に触れてもいい個所と触れられたくない箇所を行動で示すことが確認されている。
イギリス・ノッティンガム・トレント大学で動物の行動と福祉を研究している大学教授のローレン・フィンカは、「すべてのネコは個性的で、多くのネコはどのように人間と接するかについて、特定の好みを持っています。しかし、すべてのネコができるだけ快適に過ごし、それぞれの特定のニーズが満たされていることを確認するために、従うべきいくつかの優れた一般原則もあります」と研究についての説明を行なっている。
◎ 飼い主の作業を邪魔する
ネコは、飼い主がパソコンなどを使って作業をしている際に、しばしば邪魔をする。これは、ネコが飼い主に依存をする側面があるため、飼い主の様子がいつもと違うと感じたり、自分のことを飼い主が忘れているのでは?と不安になるためだと説明される。あるいは、飼い主に注目されたいという気持ちから、邪魔をする。飼い主の視線の先に座り込んだり、作業の邪魔をイタズラにより飼い主の関心が自分に向けば、猫は安心する。また、飼い主が熱中しているものには、ネコも気になるという心理が働くともいわれる。特にパソコンの操作は、飼い主の指の動きに目を引かれたり、飼い主の作業を遊びだと勘違いして、じゃれつくことがある。ネコは、飼い主の行動をよく観察し、反応している。
● 自然生態系への影響
現代においてほぼ世界中に存在するイエネコであるが、これは人為的に広まったのであり、それぞれの地域の生態系にとっては外来種であるイエネコは国際自然保護連合がリストアップした「世界の侵略的外来種ワースト100」にもランクインしており、人間に持ち込まれた猫によって地域の固有種を含む生態系に影響を及ぼしている事例がある。
生物の絶滅の主原因は人間による生息域の破壊・環境汚染・乱獲だが。
イエネコは本来狩りをする生き物であるため、充分にエサを与えられていたとしても野生生物を捕殺してしまう。ジョージア大学のSonia Hernandezが行った研究によれば、毎日エサを与えられている31匹の野良猫にカメラを取り付けて追跡したところ、そのうち18匹が1日平均6.15匹の希少種ネズミを捕殺していた。
日本では、沖縄県のヤンバルクイナや鹿児島県奄美大島のアマミノクロウサギなどの希少種が野ネコに捕食され問題となっている。東京都の小笠原諸島では野ネコにより当該地域を繁殖地とするカツオドリや絶滅危惧種で当該地域にしか見られないアカガシラカラスバトなどが襲われていたが、野ネコを保護し当該地域から排除することでアカガシラカラスバトの生息数を回復させた。しかし一方で天敵のネコがいなくなったことで外来種のネズミが増え、固有種の植物が食害により数を減らしてしまうこととなった。ニュージーランドでも希少種の保護を目的としてネコのみを排除してしまったことで、同様に希少種の天敵であった外来種ネズミが増加し、希少種の保護につながらなかった事例があることから、対策に関しては個々の環境を精査に上、ネコだけでなく中位捕食種への対策も並行して行うなどの効果的なアプローチを選択する必要がある。
一方、沖縄県西表島では野ネコからイリオモテヤマネコへの猫エイズの感染が懸念されていたため、野ネコを捕獲したのちに里親を探し譲渡するという活動に取り組んでいる、マオリとともニュージーランドに到達していたナンヨウネズミによる捕食により、19世紀の時点ではスティーブンズ島においてイエネコが駆逐した15羽しか確認されていない。
また、スコットランドやハンガリーにも同様の問題があるが、捕殺や捕食による影響だけではなく、スイスのヤマネコとイエネコのように、近種との交雑による固有種絶滅も危惧されている。
「ネコ」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』(https://ja.wikipedia.org/)
2023年6月5日8時(日本時間)現在での最新版を取得











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