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僧(そう)は、サンガを音写した「僧伽」の略で仏教の戒律を守る男性の出家修行者である「比丘(びく)」と女性の出家修行者である「比丘尼(びくに)」の集団のこと。仏教の三宝の一つ。在家信者を含めた教団を僧(サンガ)とは呼ばず、出家者が四人以上集まったとき僧となる。男性の出家修行者の集団を比丘僧といい、女性の場合は比丘尼僧という。衆あるいは和合衆と訳される。
「僧伽に属する人々」の意である僧侶(そうりょ)が転じて個人を僧と呼ぶことが多くなっていったが、原義として僧とは戒師により親しく具足戒(波羅提木叉)を授けられ(=受戒)、これを守る出家修行者たちの集団そのものを集合的に指す。
元々の意味は集団や集会であり、仏教以前の時代の古代インドでは、自治組織をもつ同業者組合や、貴族による共和政体などもサンガと呼んだ。
◎ 比丘・比丘尼
比丘・比丘尼は、出家者における男女の区別によるが、いずれも具足戒をうけた出家修行者を指す。比丘(Bhikkhu)の原義は「乞食」(こつじき)を意味している。出家者として全く生産に従事しない比丘・比丘尼は、他者から布施されるものによって、生活を維持している。衣は糞掃衣を着し、食は「托鉢」によって得たものを食し、住は森林や園林に生活したのが、これら出家者であり、現在でも比較的これらに近い生活形態は、東南アジアの上座部仏教圏で見られる。少数ながら大乗仏教圏でも見られることがある。
これら比丘・比丘尼は女犯戒によって結婚はおろか接触もできないのが伝統的姿勢であるが、チベット主流であるゲルク派以外の宗派や日本(当初は各派「沙弥、比丘のいずれにしても妻帯は全く問題外のこと」としていたが、時代が下ると共に許容するようになる)等では妻帯による世襲を行っており、タイやミャンマーでは儀礼として一時出家した僧侶がすぐに還俗して子を成すことが珍しくない。
◎ 沙弥・沙弥尼
僧伽に属してはいるが、具足戒(波羅提木叉)をまだ授けられておらず、僧伽の正式なメンバーとなっていない「見習い僧・小僧」は、男性(少年)であれば「沙弥」(しゃみ)、女性(少女)であれば「沙弥尼」(しゃみに)と呼ばれる。
仏教の在家信徒は、「三帰依」を誓い、通常は「五戒」、「八斎戒」の二種類の戒を守ることが求められるが、この沙弥・沙弥尼には、代わりに「三帰依」を誓った後、沙弥の「十戒」や、沙弥尼の「十八戒」が授けられる。彼らは通常、20歳になって、具足戒(波羅提木叉)を授けられることで、正式な僧伽のメンバーである「比丘」や「比丘尼」となることができる。
◎ 現代において
しかしながら、日本仏教とチベット仏教において妻帯を認めるニンマ派とカギュ派は、実態に於いても、教義上からも、これらの宗派では具足戒が完全に守られているとは言えず、定義上は僧伽ではないと見る向きもある。日本の影響下にある、韓国仏教の少数派太古宗でも同じである。しかし、チベット仏教の主流派であるゲルク派、および韓国仏教の最大宗派曹渓宗は妻帯を認めていない。
日本やネパールにおけるネワール仏教のグバジュ(Gubhaju)など、世襲の仏教特権階級から具足戒を(破戒によって失われない戒体として)形式的にのみ受けるケースも見られるが、儀礼的なもので実践されるものではない。
● 歴史
◎ 初期仏教
釈迦の布教によって彼の教えに帰依する出家修行者は増加していき、それぞれ5人から20人程度の小単位に分かれて活動を行うようになった。このような集団を現前僧伽と呼ぶ。ところが、現前僧伽の活動が活発になると、僧伽自身の統制、さらに相互の連絡等の必要が生じ、やがて四方僧伽と呼ばれるような僧伽全体の組織が必要となってきた。これが今日の一般的な意味における僧伽である。明治政府が明治5年4月25日公布の太政官布告第133号「[ 僧侶肉食妻帯蓄髪等差許ノ事」を布告、僧侶の妻帯(女犯)・肉食・蓄髪・法要以外での平服着用等を公的に許可した。こうして僧職者に対する国法による他律的縛りはなくなり、職業化したり世襲化した者が僧侶として公然と存在することができるようになった。
なお、戦前に戒律・僧伽復興運動を行った人物としては、真言宗の釈雲照、更には、その甥でスリランカに留学し、日本人初の上座部仏教徒となって日本で「釈尊正風会」を組織した釈興然がいる。
近年では、『日本テーラワーダ仏教協会』や『龍蔵院デプン・ゴマン学堂日本別院』のように、上座部仏教やチベット仏教系の僧院も輸入・移植され、その僧伽の構成員である比丘や比丘尼もいる。このように、現在は上座部仏教やチベット仏教系の僧伽が日本に存在し、それらの僧の指導に基づく各種の正式な戒律を学ぶことができる。また、事実として既成の伝統仏教を離れ、上座部仏教やチベット仏教に基づく日本人の正式な受戒者の僧侶や仏教徒が、正統な戒律を新たに受け継ぎ活動している。
一方で、日本仏教においては、平安時代の最澄以降、戒律(具足戒:波羅提木叉)の戒脈や、それを基にした僧伽の伝統は、基本的に途絶えており、具足戒を受持する出家者・修行者は、他国の僧伽で受戒したごく少数者を除いて、現代の日本仏教各宗派には存在しない。
しかしながら現状を肯定する新しい解釈によって、職業として儀式のみを行い、具足戒を遵守しない、伝統の宗派におけるこれらの僧職者と檀信徒のみで構成される「在家教団」を僧伽(サンガ)と見做すべきであるという意見もある。だが、この場合かつては私度僧に分類されたであろう自称僧侶の宗教家や祈祷師、仏教系新宗教の出家者や教団職員との区別基準が既得権益のみである事にもなりかねない。
● 四分律
上座部仏教において、歴史的に広く用いられてきた律である。比丘は二百五十戒を遵守する。正式な戒師が居ない等の理由で自国での授戒が難しい場合、国外から戒師を招来する必要がある。
戒律の条項は以下の通りである。
・波羅夷法[四ヶ条(これを犯した場合、全ての資格と財産を剥奪された上、僧伽とあらゆる仏教教団から追放され、2年間一切の宗教活動を禁止された上、二度と僧侶となることは出来ないもの;「波羅夷罪」ともいう)
・婬戒 : いかなる性行為も行なってはならない。
・盗戒 : 盗心をもって与えられていないものを取ってはならない。
・殺人戒 : 殺人を犯してはならない。
・大妄語戒 : 未だその境地を得ていないのに悟りを得たなどと嘘をついてはならない。ただし自信過剰による思い上がりの場合は除く。また、仏教教団としての僧伽の調和を著しく乱すようなことや、そのあり方を変えてはならない。
・僧残法 [十三ヶ条
・不定法 [二ヶ条
・尼薩耆波逸提法 [三十ヶ条
・波逸提法 [九十ヶ条
・波羅提提舎尼法 [四ヶ条
・衆学法 [百ヶ条
・滅諍法 [七ヶ条
◎ 剃髪
僧侶の規律として剃髪がある。また、剃髪した僧侶が、還俗して髪を伸ばすことは蓄髪(ちくはつ)という。
ちなみに、『小事犍度』には、螺髻梵志(バラモン教の僧侶)は頭髪を伸ばして、それを頭の上で輪にして留めていた。しかし仏教では「僧は長髪を持すべからず。二カ月もしくは二指間は許す」と伝え、『四分律』では、「応に鬚髪を剃るべし。極長は長さ両指、もしくは二カ月に一剃する。これは極長なり」と記し、『十誦律』は、「六群比丘が髪を留めて捲かしめ、留めて長くしていた時に、髪を留めて長からしめるべからず」と説いた。ただし、人気のない静かな場所で独住して修行する林住比丘の場合、長さ二寸(約6cm)までは無罪であるとする。
大衆部の律には、釈尊は「四カ月に一度、剃髪をされた」と伝承されている。
「僧」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』(https://ja.wikipedia.org/)
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