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識(しき、 ヴィニャーナ, ヴィジュニャーナ)とは、意識、生命力、心、洞察力との意味の仏教用語である。認識対象を区別して知覚する精神作用を言う。 この語は、vi(分析・分割)+√jñā(知)の合成語であって、対象を分析し分類して認識する作用のことである。釈迦在世当時から、この認識作用に関する研究が行われ、さまざまな論証や考え方が広まっており、それぞれの考え方は互いに批判し合いながら、より煩瑣な体系を作り上げた。 しかし、大乗仏教全般で言うならば、分析的に認識する「識」ではなく、観法によるより直接的な認識である般若(はんにゃ、プラジュニャー(prajñā)、パンニャー(paññā))が得られることで成仏するのだと考えられるようになって重要視された。

● パーリ仏典において
パーリ経蔵においては、識は少なくとも3種の意味合いで登場する。 :(1) 感覚器としての 処(āyatana)の派生として。 経験的に網羅される 全(sabba) の一部である。 :(2) 苦につながる五蘊取の一つとして。 :(3) 縁起を構成する十二因縁のひとつとして。業(kamma)の発見と再生について示される。

◎ 五蘊の識
人間の構成要素を五蘊(ごうん)と分析する際には、識蘊(しきうん, vijñāna skandha)としてその一つに数えられる。この識は、色・受・想・行の四つの構成要素の作用を統一する意識作用をいい、六根(眼・耳・鼻・舌・身・意)によって、六境(色・声・香・味・触・法)を認識する働きを総称する。事物を了知・識別する人間の意識に属する。例えば、桜を見てそれが「桜」だと認識すること。 また古い経典には、識住(vijñānasthiti)と言われて、「色受想行」の四識住が識の働くよりどころであるとする。この場合、分別意識が、色にかかわり、受にかかわり、想にかかわり、行にかかわりながら、分別的煩悩の生活を人間は展開しているとする。 しかしながらいずれも、人間は「五蘊仮和合」といわれるように、物質的肉体的なものと精神的なものが、仮に和合し結合して形成されたものだと考えられており、固定的に人間という存在がある、とは考えられていない。

◎ 十二因縁の識
十二因縁では、無明・行・識・名色・六処・触・受・愛・取・有・生・老死とあるので、行(サンカーラ)に条件付けられた識である。

◎ アビダルマでの識
おおよそ、我々が心という意味とほぼ同義である。心(citta)、意(mano)、識と区分して呼ばれたとしても、それぞれ働きとしては別であっても、総括的には心と呼んで差し支えない。心意識として別々の働きがあるが、心の作用の区別に過ぎないと考える。 アビダルマ(阿毘達磨、abhidharma)では、五位の中で心(しん、心として働く主体)と心所(しんじょ、心の働く作用)と区分するときには、識は心(心王)にあたる。 識には、眼識・耳識・鼻識・舌識・身識・意識の六つあり、別のものであるようだが、識としての物柄(体)は一つであるとする。六識はそれぞれ色・声・香・味・触・法と別の対象をとるから、別々の認識であり、境(きょう、外界の対象)を写し取るようなものと考える。

● 識の数
ほとんどの仏教の宗派は、それぞれの処(āyatana)に一つずつ、合わせて六識として挙げているが、一部の宗派はさらなる識を挙げている。

◎ 六識
パーリ仏典では、以下6つの識が挙げられている。 眼識(cakkhu-vijñāna) 耳識(sota-vijñāna) 鼻識(ghāṇa-vijñāna) 舌識(jivhā-vijñāna) 身識(kāya-vijñāna) 意識(mamo-vijnana) 眼識、耳識、鼻識、舌識、身識を五識(ごしき)もしくは前五識(ぜんごしき)とよび、それに対して意識を第六識とよぶ。 前五識は現在の対象に向かってしかはたらかず、過去や未来の対象にははたらかない。それに対して意識は過去・現在・未来の対象に向かってはたらく。すなわち過去を追憶し、未来を予想することができる。 前五識の対象は、眼識ならば色、耳識ならば、に限られるが、意識の対象は(狭義の)法のみならず、すべての法(ダルマ)にわたる。なお、意識は前五識を統括するものではない。

◎ 八識
瑜伽行唯識学派では六識に加え、さらに2つを追加している。 末那識 (まなしき、manas-vijñāna) 阿頼耶識 (あらやしき、ālaya-vijñāna) 心(citta)は阿頼耶識、意(manas)は末那識、識(vijnana))は眼耳鼻舌身意の六識を表す。説一切有部とは異なり、唯識派では識の認識する対象は自識の中にあると考える。したがって、識には、認識するものと認識されるものの二つが内在しているとする。しかも、この八識は識体が別であり、同時に働くことが出来るとする。 ことに、「識」とされる前六識は、事物に対して、もしくは存在として認識される対象として、認識するものとされるものとの関係において、認識作用を行うというのである。

◎ 九識
大乗仏教ではさらに以下を加え、九識としている。 阿摩羅識(あまらしき、amala-vijñāna)

● 密教の識
密教の場合は、すべてのものの存在に遍在しているものとして、純粋意識のように捉えられた。

「識」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』(https://ja.wikipedia.org/
2024年7月16日9時(日本時間)現在での最新版を取得

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