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耕耘機(こううんき)とは、田や畑の耕耘を目的とした農業機械の1つである。トレーラを連結して運搬用に使用したため耕運機とも表記され、日本新聞協会用語懇談会が定めた代用表記となっている。耕うん機という表記も一般的である。日本では当初、米国メリー・ティラー(Merry Tiller、"tiller"は英語で「耕耘機」を意味する)社と技術提携した「メリーテーラー」が広く普及したため、テーラーとも呼称される。また、圃場で様々な作業を行うために、各種作業機の連結を前提としたものは管理機(かんりき)と呼ばれる。
● 概要
一般的には、エンジンを載せたフレームに耕耘のためのロータリーを連結し、人が後部からついて歩く形態の機械である。同じく内燃機関(エンジン)を動力とし、比較的大型で汎用的な目的で使われるトラクターと違い、耕耘機は専ら耕耘するための専用機であり、より車体が小さく、車重も軽くできている。
日本において普及が進んだのは第二次世界大戦後のことで、普及に伴い牛や馬に犂を引かせて田畑を耕す古来の方法は廃れてしまった。エンジンやロータリーの構造の改良によって、当初よりは相当小型で高性能を有するようになっている。
しかし、1960年代以降、作業能率の優れたトラクターが本格的に導入されるようになり、耕耘作業の中心はトラクターへと移行し、耕運機は小区画の耕地や家庭菜園、あるいは中山間地の耕地で良く利用される。
なお、その構造上の特徴から、歩行型トラクターという名称で呼ばれることもあるが、本来のトラクターとは全く別の種類の農業機械に位置付けされる。
● 耕耘機の歴史
◎ 耕耘機の発明
耕耘機を発明したのはオーストラリアのアーサー・クリフォード・ハワード(Arthur Clifford Howard)といわれている。ハワードはニューサウスウェールズ州の父親の農場で蒸気トラクターを動力とした動力耕耘機の研究を行う中で、L字型の金具の回転により通常の犂と同様な土壌の耕起が可能であることを発見した。
1920年にハワードは内燃機関を内蔵した耕耘機の特許を取得し、1922年、シドニー郊外のノースミード(Northmead)にオーストラリア自動耕耘機製造会社(Austral Auto Cultivators Pty Ltd)を立ち上げる。この会社は後の1927年にハワード自動耕耘機会社(Howard Auto Cultivators)と名前を変えるが、世界的な需要に対しオーストラリアが地理的に不利であったことから、ハワードは1938年、イギリス・エセックス州イーストホーンドン(East Horndon)に新会社・ロータリーホー社(Rotary Hoes Ltd.)を設立した。この会社は世界中に支店を設立し、後にハワードロータベーター社(Howard Rotavator Co. Ltd.)としてグループ統括を行うこととなった、電動式はコードで受電するものと蓄電池で動くものとがある。ただし天候が不安定な場合や、電線の長さによって移動できる範囲が限定されるため、用途をよく見極める必要がある。
◎ ロータリーの構造
ロータリーの回転部分は、泥の飛び跳ねあるいは運転者の巻き込み事故を防ぐ目的から、金属や樹脂製のカバーで覆われている。
ロータリーの構造としては、次の種類がある。
・ センタードライブ方式
・ サイドドライブ方式
さらに、耕耘刃の回転方向による区別から次の仕様にわかれる。
・ ストレート仕様
・ クロス仕様
◎ 連結部(ヒッチ)
耕耘機の連結部は、トラクターで広く採用されている三点ヒッチとは異なって、メーカー独自の規格を採用していることが多い。右図はその一例である。
メーカーよりアタッチメントが供給されている場合には、簡易トレーラー(荷台前部に簡単な座席の付いたリアカーのようなもの)をセットし、運搬作業用として利用することも可能となる。スピードが遅い(最高15 km/h)こともあって、日本では軽トラックに運搬用の役目を譲り、2000年現在あまり見かけることがなくなったが、中国やタイなど東南アジア諸国では活躍している。牽引作業を可能とするために、耕耘機の変速機構には副変速機(高速走行用ギヤ)が装備される。
◎ バランス・ウエイト
機体の重心位置を変更し、バランスを取るために、耕耘機の前部にはバランス・ウエイトが装着可能な仕様となっていることが多い。ロータリー部の重量は、機種によっては40 - 50 kg以上に及ぶことがある。そのため、ロータリー部が必要以上に沈み込むことを抑え、耕耘作業が円滑に行えるようにするために耕耘機の前部に重し(ウエイト)を装着する場合がある。バランス・ウエイトは、耕耘機の操縦安定性に極めて重要な要素を占める。
◎ タイヤシャフト部
原動機によって直接駆動する2つの車輪は、シャフトに接続される。シャフトとタイヤは、フランジ(あるいはハブ)と呼ばれる部品を介して、それぞれの六角または丸状の切れ込みに合わせることで連結されている。車輪がずれないようにするため、割りピンを装着している。
シャフトの寸法(直径)は、メーカーごとにその規格が統一されていることが多い。標準仕様はゴム製のラグタイヤであるが、水田稲作における代掻作業ではこれを鉄車輪(鉄車)に交換することで対応する。
◎ PTO外部シャフト
メーカー仕様によっては、PTO(パワーテイクオフ)シャフトを付属し、脱穀機や籾すり機など他の農業機械用の動力を容易に取り出し可能としているものもある。
● 耕耘機を用いる作業
耕耘機を活用すれば、耕耘作業以外にも様々な農作業を行うことが可能である。耕耘機には、オプションで多くのアタッチメントが用意されているのが通例である。
・ 耕耘作業 ‥ 耕耘機本来の機能。
・ 代掻作業 ‥ 水田稲作における代掻作業
・ 管理作業 ‥ 畦立て・中耕作業・除草作業など、畑の様々な管理作業
● 取扱い時の注意点
農業作業において、耕耘機(もちろん管理機も)による事故は、トラクターに次いで発生件数が多い。したがって、安全に作業を行うためにはその取扱いに十分注意を払う必要がある。
耕耘機での作業は前進で行うこと。後退(バック)操作をすると、ロータリー部分が容易に浮き上がり、負傷事故に遭うので絶対しないこと。
「耕耘機」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』(https://ja.wikipedia.org/)
2024年4月26日9時(日本時間)現在での最新版を取得
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