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慣性モーメント(かんせいモーメント)あるいは慣性能率(かんせいのうりつ)、イナーシャ とは、物体の角運動量 と角速度 との間の関係を示す量である。

● 定義
質点系がある回転軸まわりに一様な角速度ベクトル で回転するとき、質点系の持つ角運動量ベクトル は次のように書ける。 ここで は 番目の質点の質量、 は回転軸上の原点との相対座標でありはその大きさである。この式からわかるように、 は と向きは必ずしも一致しないが、 を線形変換したものになっている。つまり、その線形変換をとすると、 と表せる。この変換 は2階のテンソルであり、との各成分は :\begin{align} L_{j} &= \sum_{k = 1}^3 I_{j k} \omega_k \\ I_{j k} &= \sum_i m_i \left( r_i^2 \delta_{j k} - r_{i, j} r_{i, k} \right) \end{align} という形に表される。ここに はクロネッカーのデルタ、 はベクトル の 成分である。 を行列表示すると {{Indent \boldsymbol{I} = \sum_i \begin{pmatrix} m_i (r_i^2-x_i^2) &- m_i x_i y_i & - m_i x_i z_i \\ - m_i y_i x_i & m_i (r_i^2-y_i^2) & - m_i y_i z_i \\ - m_i z_i x_i & - m_i z_i y_i & m_i (r_i^2-z_i^2)\end{pmatrix}}} となる。この定義から は対称テンソルである。この2階のテンソル を慣性モーメントテンソル、または簡単に慣性テンソルと呼ぶ。 なお、質量分布が連続的に広がっている場合には、その物体の慣性テンソルは密度 を用いて {{Indent I_{j k} = \int \rho ( \boldsymbol{x} ) \left(   \boldsymbol{x}  ^2 \delta_{j k} - x_j x_k \right) d^3 x}} となる。

◎ ある軸まわりの慣性モーメント
物体をある回転軸まわりに回転させたとき、と同じ向きをもつ単位ベクトルをもちいると、回転軸にそった角運動量成分は次のように与えられる。 ここで、は角速度の大きさである。 ここに与えられたスカラー量 I = \boldsymbol n \cdot (\boldsymbol I \boldsymbol n) = \sum_i m_i(r_i^2 - (\boldsymbol r_i \cdot \boldsymbol n)^2) をその軸まわりの慣性モーメントと呼ぶ。

◎ 慣性主軸と主慣性モーメント
慣性テンソル行列は実対称行列なので、適当な直交座標系 {{Math { , , } }}を選ぶことで対角化(すなわち と)することができ、そのときの座標軸を慣性主軸、慣性モーメント {{Math { , , } }}を主慣性モーメントと呼ぶ。慣性主軸座標系では角運動量は :\begin{pmatrix}L_1\\L_2\\L_3\end{pmatrix} = \begin{pmatrix}I_1&0&0\\0&I_2&0\\0&0&I_3\end{pmatrix} \begin{pmatrix}\omega_1\\ \omega_2\\ \omega_3\end{pmatrix} と単純に表すことができる。

● 計算例


◎ 棒の両端の質量
重さの無視できる長さ の棒の両端に、質量 、 の物体がくっついたものを考える。棒の適当な位置に回転の中心となる点を定め、そこから両端までの腕の長さをそれぞれ 、 とする。このとき、中心に対する慣性モーメント は、 :I = m a^2 + M (L-a)^2 = (m+M)\left(a-\frac{M}{m+M}L\right)^2+\frac{mM}{m+M}L^2 と、計算される。この式から分かるように、慣性モーメントは、中心(回転軸)のとり方によってその値が変わる。中心として系の重心をとったとき、慣性モーメントは最小となる。すなわちもっとも回しやすい。

◎ 円板
半径 、全質量 の、一様な密度 をもつ円板の、中心軸まわりの慣性モーメントは {{Indent I=\frac{1}{2}a^2 M}} となる。 これは中心から半径 、幅 のリングの質量 を考えると より、このリングの慣性モーメント が だから {{Indent I = \int_0^a \mathrm dI = 2\pi\rho \int_0^a r^3 \mathrm dr = \frac{1}{2}\rho\pi a^4}} より求めることができる。

◎ リング状円板
円板外半径 、くり抜き内半径 、全質量 のリング状円板では、前出の を用いて {{Indent I=\int^a_b \mathrm dI=2\pi\rho \frac 1 4 (a^4-b^4) = \frac 1 2 \pi\rho(a^2-b^2)(a^2+b^2)=\frac{1}{2}(a^2+b^2)M}} となる。

● 性質
一般に、剛体の慣性モーメントは、剛体の質量に比例し、質量が軸から遠くに分布しているほど大きくなる。 また、回転軸が重心を通るとき慣性モーメントは最小値 をとり、軸が重心から距離 だけ離れている場合、その軸の周りの慣性モーメント は {{Indent I_h = I_\mathrm{G}+Mh^2}} となる。 慣性テンソル の物体が角速度 で回転しているとき、その回転に伴う運動エネルギー は {{Indent T = \frac{ 1 }{ 2 } \sum_{j k} I_{jk}\omega_j \omega_k}} と表示できる。

● 関連する物理量

◇回転半径 : 慣性モーメント は物体の質量 に比例するから、 ::I = M\kappa^2 : と書くことができる。この は長さの次元を持ち、回転半径と呼ばれる。 :
・国際単位系では、剛体の質量 [kgと直径 [m を用いた量 をはずみ車効果と呼び、単位は [kg m2 である。慣性モーメント と、 で換算する。

● 応用
工学での応用として、回転軸に慣性モーメントの大きい回転体を取り付けた装置をフライホイール(はずみ車)という。これは、回転速度の急激な変化を抑止したり、回転によるエネルギーを保存する目的で使用される。

「慣性モーメント」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』(https://ja.wikipedia.org/
2024年7月26日0時(日本時間)現在での最新版を取得

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