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マツ属(マツぞく、学名:)は、マツ科の属の一つ。マツ科のタイプ属である。約100種が北半球の各地域に分布し、針葉樹で針のような形態の葉と、松かさ(松ぼっくり)とよばれる実がなるのが特徴である。人との関わりも深く、さまざまに利用されたり、文化や信仰の対象にもされている。
● 分布
マツ属の天然分布は、赤道直下のインドネシアから、北はロシアやカナダの北極圏に至り、ほぼ北半球に限られるといってよい。これは針葉樹としては最も広い範囲に当たる。温度の適性が広いことが一因として挙げられており、亜熱帯や熱帯に分布する種でも−10℃程度の低温・組織の凍結には堪えて生存する。
人間による植栽の結果、南半球でも見られ、オーストラリアやニュージーランド、アフリカ大陸で大規模に植栽されているラジアータマツ (P. radiata) が特に有名。
化石の研究によれば、マツ属は比較的古い時代に登場したとされ、現生種の多様性は、進化してきた年月の長さによるものとされている。
● 形態
マツ属に含まれるものはいずれも木本であり、草本は含まれない。樹高は10m未満のものから、大きいものでは40ないしは50mに達する種もある。アメリカ合衆国西部に分布するサトウマツ (Pinus lambertiana) やポンデローサマツ (P. ponderosa) では樹高80 mを超える個体も報告されている。
樹木の樹形は環境に左右されるが、マツ属の樹形は同じマツ科に属するモミ属やトウヒ属のそれに比べるとより環境の影響を受けやすく不定である。苗木のうちは綺麗なクリスマスツリー状の円錐形だが、大きくなるにつれて先端は鈍く丸まり広葉樹の様な外観になるものも多い。高山に生育する種では上に伸びず匍匐状に横に広がるものも知られる。日本ではマツの樹形を整えるテクニックとして春先に新芽を摘み取る「みどり摘み」や秋に行う「もみ上げ」と呼ばれる方法が知られる。
枝は同じ高さから四方八方に伸びる(輪生)、これは苗木でも成木でも変わらないが、前述のように樹形が崩れた老木の太い枝ではよく分からないことがある。主軸(幹として上に伸びる枝)、枝(横に延びる枝)共に先端に数個の冬芽を付け、夏から秋にかけて膨らんでよく目立つ。翌年の春にはこれらの内の一つが幹に他が枝になる。冬芽の大きさ、色や毛の生え具合は種を区別する上で大切な情報である。
成木の樹皮は他の針葉樹に比べて厚く発達し、亀甲状に大きく割れるものが多い。しかし、多くの種の幼木時代、また一部の種では成木でも滑らかであるか、モミやトウヒの様に薄く鱗状にはがれるに留まる。色は一般に褐色で、黒っぽいもの、赤っぽいもの、灰色っぽいものなど様々である。
◎ 葉
マツの葉は子葉、初生葉、鱗片葉、尋常葉(針葉)の4種類に分けることができる。このうち、私たちが普段目にするのは尋常葉(針葉)と鱗片葉のみであり、子葉と初生葉は発芽直後のみ見られる。鱗片葉は葉に見えず、以下、「葉」といった場合には特に断りのない限り、私たちが普段使う通りの尋常葉(針葉)を指す。
◇ 子葉
: 胚において形成されており発芽後に最初に開く葉。後述のようにマツの葉は種類によって葉中の維管束の数が違うことが知られているが、子葉においてはいずれの種でも維管束は一つだという。他のマツ科植物と同じく子葉は3枚以上出てくる多子葉植物である。
◇ 初生葉
: 子葉の次に出現する葉であり、縁には鋸歯を有する。
◇ 鱗片葉
: 枝(長枝)を埋め尽くすように生えている三角形の鱗のようなもの、一見すると葉に見えないが葉の一種だという。マツ属を表す特徴の一つ。
◇ 尋常葉
: 短枝と呼ばれる枝の一種に数枚が束生する。いくつかの例外を除き1本の短枝に束生する葉を全部集めると断面は円形になる。すなわち2葉のマツならば個々の葉の断面は中心角が180度の扇形、5葉のマツのそれは中心角72度の扇形になる。これは葉という構造物が茎から分化した名残と説明される場合がある。
葉はベトナムに分布するP. krempfii(イヌマキのような扁平な葉を持つ)という例外を除いて、細く針のようになっている。葉の長さにも色々あり、僅か3-4cmのバンクスマツ P. banksianaから40cmを超えるようなダイオウマツ (P. palustris) やヒマラヤマツ (P. roxburghii) に至るまで様々なものがある。一般に温暖な地域に分布するものの方が葉の成長期間が長く、長い葉を持つ傾向にあるという。
マツ属の葉は短枝と呼ばれる枝の一種に数枚が束になってつく。その数は個体内での多少の差はあるものの2枚、3枚ないしは5枚が束になって生えていることが多く、種によってその数は決まっている。
日本では二葉松はアカマツ (P. densiflora)、クロマツ (P. thunbergii)、リュウキュウマツ。
五葉松はゴヨウマツ、ヒメコマツ、ハイマツ、チョウセンゴヨウ (P. koraiensis)、ヤツタネゴヨウが知られている。
三葉松は、アメリカ大陸を中心に分布しテーダマツ (P. taeda) やダイオウマツ (P. palustris) などが知られている。日本には3葉のマツは自生していないものの、化石の研究からオオミツバマツ (P. trifolia) と名付けられた種が分布していたことが確認されている。
葉の数による分類は直感的で非常に分かりやすい方法であり、両者には葉の数以外にも多数の違いがあること、遺伝的にも交雑できないことから、分類学的にも古くから認められていた方法である。
さらに、葉の断面を顕微鏡で観察すると維管束が見える。その数は2葉・3葉のマツと5葉のマツで異なるという特徴もよく知られており、一般に2葉・3葉のマツは2つの維管束を持つことから複維管束亜属 (Dipxylon)、5葉のマツは1つの維管束しかないことから単維管束亜属 (Hapxylon) とされてきた。しかしながら、北米やアジアに分布する一部の種は維管束は1つであるが、葉の数は2枚ないしは3枚であり、両者の中庸の形態を持つ。
◎ 花
マツの花は雌雄同株である。雌花は枝の先端に作られて、小さな球果の形をしている。雄花は枝の根元に作られ、小さなラグビーボールが多数集まった様相を呈すものが多く、色は黄色から赤色までさまざまである。
風媒花であり雄花で作られた花粉は風で、雌花に運ばれて受粉する。花粉は杉などと異なり、二つの風船状の気嚢が付いており風に乗りやすい形状をしている。
雌花は毬花などとも呼ばれ、概ね成熟した球果の縮小形をしている。色は赤っぽいものが多い。
◎ 実
実は松かさや松ぼっくりと呼ばれる。裸子植物のうちでマツを含む針葉樹類の実は植物学的には球果と呼ばれるので、以下では特に断りのない限り球果と呼ぶ。
マツの球果は鱗片状のもの(種鱗)が集まった形状である。鱗片に突起が現れるのが他のマツ科各属との違いの一つである。この球果についても形や大きさ、個々の鱗片状の凹凸の状態、表面の棘の有無、熟した時の色合いなどに違いが見られる。形や硬さについても色々あり、2葉・3葉のマツの多くの球果は卵型で硬く種鱗を剥がすのは素手では困難であるが、5葉のマツの球果は細長い円筒形(カプセル型)で比較的柔らかく素手でも容易に分解できるものが多い。ただし、例外もある。樹から落ちるときは球果ごと落ちるタイプである。(マツ科でもモミ属やヒマラヤスギ属は樹上で鱗片ごとに分解してしまう。)マツ属内で見た場合。球果と枝とを結ぶ柄(果柄)についても長いものから短いものまで種類は様々である。球果が樹上から落ちる際には果柄と球果実の間、もしくは枝と果柄の間に離層が形成されることが条件であるが、どちらに形成されるのかという違いもある。前者の場合、さらに一部の種では球果の種鱗数枚を果柄に残したまま落果するものもあるという。なお、種類によっては離層が形成されにくく、樹上に何年にもわたって球果が残るものもある。また、球果が開く条件は乾燥によるものが多いが、中には火災による高温や動物による摂食や球果の腐敗が条件の種もある。
種子は一般に風散布型で翼を持つが一部持たないものがある。また、翼のあるものであってもその大きさは色々である。特に種子に付く翼の付き方で分類する方法も古くから知られており、葉の維管束だけでなくこれでも2・3葉のマツと5葉のマツをほぼ綺麗に分けられることが知られている。一般に2・3葉のマツは翼と種子を綺麗に分離できるが、5葉のマツは翼の組織が種子内部に入り込んでおり綺麗に分離できない。
● 生態
アカマツやクロマツなどといった温帯地域のマツは一般に春から初夏にかけて主軸と枝が一節ずつ伸びて(俗に「みどり」といわれる部分)、夏には成長を止める成長様式を見せるものが多い。しかしながら、特に亜熱帯や熱帯に分布する種類では1年間に多節成長するものがある。マツ類は雌花において受粉した後に、胚珠が受精完了するまでの期間が長く、翌年の春から夏になって受精に至る。受精後に球果は急激に成長し同年の秋には熟すというパターンが多い。例外的にメキシコに分布するP. nelsoniiは受粉後に年内に受精し球果が成長を始める他、イタリアカサマツ (P. pinea) のようにさらに1年かかり、受粉後3年目の秋に球果の成熟を迎える種もある。球果が開くタイミングは種によって異なる。アカマツやクロマツは種子が成熟すると、すぐに種鱗が開くようになり湿度に応じて開閉を繰り返す。一方で成熟後数年間開かない、もしくは好適な条件下にならないと開かない(晩生球果、serotinous coneなどと呼ばれる)仕組みを持つものもあり、特に火災時に種を散らす仕組みを持つものが多い。また、チョウセンゴヨウやP. cembraなどのように樹上からは落果するものの自然には決して開かず、動物による摂食、もしくは球果が腐敗することによって種子の散布、発芽へとつながる種もある。
陽樹であり、遷移が未発達の厳しい場所に生えるというイメージが強いが、チョウセンゴヨウ (P. koraiensis) のように動物による種子散布を期待する種は実際に動物が生息するようなある程度遷移の進んだ森林においても苗が成長する。一方で火災によって種子を散布するような種は極めて耐陰性や耐病性が低く、遷移の進んだ状態では更新できないものが多い。厳しい環境下でも生育できるようにマツ属は自身の根に菌類の菌糸を侵入させた、特別な根である菌根を形成する。マツは菌類を通じて土壌中の栄養分や水分の吸収を助けてもらっており、逆に菌類に対しては光合成によって得られた同化産物を分け与えているという共生関係にある。マツと共生して菌根を形成する菌類は多数知られている。「キノコ」として我々が利用できる種も多く、日本ではマツタケ(松茸)、ショウロ(松露)、アミタケなどが特に有名。
マツは様々な動物に利用される。昆虫に対しては餌や隠れ家を提供する。葉は蛾の幼虫やハバチ、樹液はアブラムシやカイガラムシ、木材はカミキリムシ、ゾウムシ、キクイムシやキバチなどの餌として利用される。球果に侵入して中の種子を食べる昆虫もいる。これらのマツに集まる昆虫を目当てにサシガメなどの肉食性昆虫、アリや寄生蜂なども集まってくる。鳥や獣に対しては営巣場所を提供する。カートランドアメリカムシクイ (Setophaga kirtlandii) とバンクスマツ (P. banksiana) のように密接な関係を持つものから、何種もの木の中からマツ類を営巣場所に選ぶといった程度のものまで様々である。また、種子は餌として利用され、特に一部のマツでは顕著である。マツの方でも動物を利用して種子の散布を図ろうとするものが知られている。
微生物や菌類にもマツを利用して生きていく種は多い。前述のように菌類には菌根を形成してマツと共生関係を築くものもある。一方でマツに一方的に被害を与える微生物も多い。何種ものサビキン類やある種の線虫、菌類であってもマツノネクチタケ類、ツチクラゲやナラタケ類 (Armillaria sp.) などは一方的にマツの生体を攻撃して時に枯死させる。
マツを利用する菌類や微生物の中には、移動能力に乏しく動物を利用するものが知られている。逆に菌類や微生物によって衰弱したマツを昆虫が利用するということも知られており、両者は共生関係にあるとも言える。例えば我が国のマツに大きな被害を与えているマツ材線虫病はマツノザイセンチュウによって引き起こされる病気である。この病原の媒介者であるマツノマダラカミキリは、健全なマツよりも衰弱しているマツに好んで産卵する。線虫の感染によって材線虫病を発症し、衰弱したマツにカミキリは産卵、センチュウはカミキリが羽化する際にカミキリと共に次のマツへと移る。カミキリは線虫の病原性によって産卵場所の増加が、線虫はカミキリによって分布の拡大が利益になる。オーストラリアやニュージーランドで大きな被害を出したノクチリオキバチ (Sirex noctilio) の場合も同様の関係があるが、共生菌はマツを衰弱させるだけでなく、キバチの幼虫の餌としても利用される。キクイムシの仲間も同様の関係を持つものが多い。
更新は一般に実生による。萌芽更新や伏条更新といった栄養繁殖は多くの種類では一般に行わない。ただし、火災が頻発するような地域に分布する一部の種は萌芽力が発達しており、火災で焼損しても枯死せずに萌芽で再生することがある。また、ハイマツ (P. pumila) のように伏条更新を行うものも知られている。
人工的に繁殖させる場合、挿し木や接ぎ木による繁殖も考えられる。しかし、マツ類は接ぎ木はともかく、挿し木が困難なグループとして昔から知られている。特に挿し穂を採取する母樹の樹齢が高い場合は極めて発根しにくいという報告が多い。挿し木の一種として、挿し穂として長枝ではなく、短枝を使う方法もありハタバザシ(葉束挿し)と呼ばれる。発根はするものの、地上部が成長せずに結局枯れるなどという報告もあるが、地上部の成長に成功している場合もある。
マツは五葉マツ類発疹さび病やマツ材線虫病といった世界的に流行している病害への対策や、他の優良形質の固定も含めて、接ぎ木よりも効率的なクローン技術である挿し木の研究が古くから研究されてきた。前述のように若い個体は発根率が良いことが知られている。しかしながら、若い個体は挿し穂にできる枝が少ないことから優良個体を量産するには課題があった。近年、植物ホルモンの一種、サイトカイニンを投与することでマツの不定芽を活性化され、若い個体でも多数の挿し穂を確保できる技術が開発され、これを利用した挿し木量産技術が確立されつつある。日本ではこれをマツ材線虫病の抵抗性育種に応用することが考えられており、抵抗性の親木から得られた実生苗に病原であるマツノザイセンチュウを接種、接種試験によって枯死しなかった苗にサイトカイニンを投与して、材線虫病抵抗性の挿し穂・挿し木苗を量産することが考えられている。
● 名前・方言名
マツ(松)の由来は、「(神を)待つ」、「(神を)祀る」や「(緑を)保つ」が転じて出来たものであるなど諸説ある。後述のように東アジア圏では神の下りてくる樹や不老不死の象徴として珍重されることを考えると「待つ」から転じたという説がいかにもそれらしい。英語ではpineと呼ばれ、これはラテン語のpinus(この属の名前としても使われている)に由来する。ラテン語のpinusの由来はタール状のものを指すという。さらにラテン語pinusの由来はギリシア神話に出てくる妖精ピテュス (Πιτυς, Pitys) が由来という説もある。ピテュスは牧羊神パーンから追われた時、松に変身して逃げたという。
針葉樹を代表する樹木としてマツ属で無い樹木にも「マツ(松)」の名が充てられることがあり以下にその例を示す。いずれも針葉樹であるがマツ属ではない。同じような事例はスギ(Cryptomeria japonica、ヒノキ科)でも知られる。ヒマラヤスギ(Cedrus deodara)はヒノキ科ではなくマツ科の針葉樹であるし、ナンヨウスギ科(Araucariaceae)という一群も存在するがスギとは遠縁である。
◇ トドマツ Abies sachalinensis
: 漢字表記は椴松。モミ属 (Abies) に属する。マツ属と違い枝は長枝だけしか持たない。球果は鱗片に突起状の構造を持たず樹上で分解するなどの特徴を持つ。種小名sachalinensisはサハリンという意味で分布地に因む。日本では北海道を代表する針葉樹である。
◇ エゾマツ Picea jezoensis
: 漢字表記は蝦夷松。トウヒ属 (Picea) に属する。マツ属と違い枝は長枝だけしか持たない。球果の鱗片には突起状の構造が発達しない。種小名jesoensisは蝦夷という意味で分布地に因む。トドマツと同じく北海道を代表する針葉樹である。アカエゾマツ(Picea glehnii)も同属。
◇ カラマツ Larix kaempferi
: 漢字表記は落葉松で、その名の通り冬に落葉する珍しい針葉樹(マツ属は常緑)。カラマツ属 (Larix) に属する。マツ属と同じく枝は長枝と短枝を持ち、短枝から葉を生やすが枝先の若い長枝にも葉を付ける。この点が短枝にしか葉を付けないマツ属とは異なっている。短枝に付く葉もマツ属とは印象がかなり異なる。球果はマツ属のものによく似ているが鱗片上に突起状の構造は発達しない。長野県を中心とする本州中央部の山岳地帯を原産とするが寒冷地に適する造林樹種ということで北海道や東北地方にも広く植栽されている。樺太や千島列島に分布するグイマツ(Larix gmelinii)も同属。
◇ ラクウショウ Taxodium distichum
: 漢字表記は落羽松。これも冬に落葉する針葉樹で葉が小枝と共に落ちる様子が羽に見えることに由来する。ヒノキ科に属しマツとは科単位で異なる。湿地でも生育できることからヌマスギ(沼杉)の別名を持ち分類的にはこちらの方が近い名前である。アメリカ南東部原産。
◇ ベイマツ Pseudotsuga menziesii
: 漢字表記は米松。アメリカ原産のマツ科針葉樹。ベイマツは主として木材業界における名前であり、分類的にはトガサワラ属 (Pseudotsuga) に属する。アメリカトガサワラと呼ばれることもあり分類的にはこちらの方が近い名前である。日本にも紀伊半島および四国に同属のトガサワラ(Pseudotsuga japonica)が分布する。属名Pseudotsugaはツガ属(Tsuga)に似たという意味で形態的に似ていることによる。枝は長枝しか持たず、球果の鱗片には突起状の構造が発達しない。
また、マツの形態的特徴は樹木以外の生物の名前に使われることもある。たとえば鋭い葉はマツバギク(松葉菊、Lampranthus spectabilis、ハマミズナ科)やマツバボタン(松葉牡丹、Portulaca grandiflora、スベリヒユ科)に使われる。ごつごつした樹皮や球果からマツハダ、マツカサの名前を持つ生物も知られる。
● 人間との関わり
◎ 景観
種類にもよるが、他の樹木が生えないような岩や砂だらけの荒地でもよく育つ。霧に包まれた険しい岩山に生えるマツは仙人の住む世界(仙境)のような世界を演出し、特に中国の黄山や華山の光景は見事である。海岸地帯においても時に優先種となり、白い砂と青々としたマツの樹冠の対比の美しさは白砂青松などと呼ばれる。これは特に日本で親しまれており松島、天橋立、桂浜、虹ノ松原などが有名。
街路樹としても用いられ、並木道を作り出すこともある。厳しい環境でも育つために砂漠や荒地の緑化用として使われる種もある。日本の白砂青松の名所の中には元々は草本しか生えていなかった、もしくはクスノキやタブノキなどの極相林が成立していた所を極相種の伐採利用と飛砂防止などでクロマツの植栽の結果成立したと見られる所も多い。個人の家の周りに防風林や生垣として植えられる(いわゆる屋敷林)としての場合もあり、マツを用いたとくに有名なのものに島根県出雲地方の築地松がある。
庭木や庭園樹などとしても世界的に親しまれている。後述の通りマツは種類が多く、葉が垂れる種、樹皮の色や割れ方が特徴的な種などが自然に揃っている。もちろん、葉に模様が入る改良品種なども植えられる。日本庭園のマツは害虫駆除のためのこも巻き、さらに積雪地では雪の重みによる折損防止のための雪吊された姿を秋から春にかけて見せることが多い。鉢に植えて盆栽として楽しむにも人気の樹種である。厚い樹皮 (bark) がバークチップとして用いられることがある。樹皮(バーク)を発酵させて炭素率を低くし堆肥化させたバーク堆肥は、土壌改良材として使用される。ただし、これはマツだけでなく他の樹種も用いられる。
◎ 木材
二・三葉松類と五葉松類でやや性質が異なっており、二・三葉松類の材は一般にやや黄色みを帯びており硬いことから、英語ではhard pine(硬いマツ)やyellow pine(黄色いマツ)などと称される。これに対して五葉松類は白く柔らかいことから、white pine(白いマツ)やsoft pine(軟らかいマツ)と呼ばれる。比重も二葉松類が0.55程度に対して、五葉松類は0.45程度とやや軽いことが多い。
強度があり木造建築などにも用いられるが、一般にスギやヒノキと比べてに劣るとされており使いどころを選ぶ。一般に二葉松は建材として柱や梁に用い、より軟らかい五葉松類の材は水道用木管、木型、曲物、塗物の下地など柱と比べて高度な加工が必要なものに用いられるという。樹脂が多く心材色の濃いものはと呼ばれて珍重され、羽目板や床の間など直接目に触れる箇所に使われるという。
1940年、戦時色が強くなった日本では、特定の樹種の木材について用途指定がなされたが、マツの小丸太の用途は軍需用のほか坑木、パルプ、包装用資材とされていた。また、鉄道の枕木としても使われていたが、日本の場合防腐処理をしない場合の寿命は3 - 5年だといい、耐朽性のあるクリ(7 - 9年)などと比べると半分程度の寿命しかなかった、とされている。
◎ 食用
マツの種子は一般に無害であり松の実と呼ばれ多くの種で食用となる。特にチョウセンゴヨウ (P. koraiensis) やその近縁種、イタリアカサマツ (P. pinea)、北アメリカ西部に生える英名Pinyon Pinesと呼ばれるグループの種子は大きく経済的価値が高い。なお、松の実を食べた直後から数日後に一過性の味覚障害を生じることがあり、欧米ではpine mouth(和名未定、直訳するとマツの口)と呼ばれている。原因は分かっていない。
表皮のすぐ下の皮である形成層も食用となる。日本では松皮餅などが知られ、北欧のサーミ人などは春に木から剥がし乾燥させ保存できる状態にしたものをシチューやバークブレッドなど様々な形に加工し、アメリカ先住民も他の木の形成層と共に食用としてきた。
ジンの香りづけのネズミサシ、杉樽で作る日本酒のようにマツ類も香料としての利用がされる。中国の紅茶の正山小種は、タイワンアカマツなどの木材や樹皮で燻して独特の香りを付けて作られる。朝鮮半島には松葉と共に蒸すことで香りをつけた餅「松片(송편、ソンピョン)」があり、秋夕、いわゆるお盆の時期に食べる風習がある。花粉もクッキーなどに混ぜられて食べられる。マツ類の若葉を砂糖水中に浸しておくと、葉に付着している細菌が炭酸ガスを発生させサイダーになる。サイダー自体への香りづけした飲料も日本や韓国で見られる。葉を煮出して松葉茶として飲まれる。英語ではpine teaやtallstruntと呼ばれる。若葉で茶を作ればビタミンAとCに富む。ロシアでは球果がまだ未成熟なうちに収穫したものを砂糖で煮付けてヴァレニエにする。
樹脂である松脂も香料として使うこともあり、フランスなどではマツの香りのする飴が作られており、ギリシャではレッチーナ(Retsina, ギリシア文字:Ρετσίνα)と呼ばれる着香ワインが作られている。Retsinaはワインを発酵させる樽が発明される前からあり、松脂はアンフォラと呼ばれる壺に入れられたブドウ果汁が酸化しないようにふたの役目をしたという。
また、マツを直接食べるわけでないが、マツ林に生えるキノコは多く、中には食用になる種もある。キノコの中にはマツの根とキノコの菌糸が結び付きマツと栄養のやり取りを行う種もあり、これらのキノコを食べることは間接的にマツを食べているともいえる。我が国ではその名にもマツ(松)が入るもマツタケ(松茸)やショウロ(松露)といった種が特に有名。マツと共生関係を結ぶ種は多く複数の科に渡って知られる。
◎ 薬用
長野県開田村地方には松脂を油で溶いて、あかぎれ薬にする伝統がある。花粉は、中国で肌の防乾湿、防汗、止血、伝染性膿痂疹、びらんなどに使用される。
フランスカイガンショウ (P. pinstar) の樹皮から抽出されるピクノジェノール (Pycnogenol) を多く含むエキスは、サプリメントに利用されている(しかし、コクラン共同計画では有効成分のエビデンスが不十分であるとの報告がある)。
松の皮や脂は、傷口を覆う止血に用いられた。そのため、日本の城で植えられる例が多い。中国でも松皮散として止血に使用された。
◎ 花粉症の原因植物として
症例数は少ないが花粉症の原因植物となることが報告されている。
◎ 樹脂
マツの樹脂はと呼ばれる。樹木の樹脂は樹脂道という特殊な組織で生産され、昆虫や病原菌から植物を守る。マツ類は他の針葉樹に比べて樹脂道を多く持ち、枝や葉を折るだけでも多量に滲み出る。Strobus亜属の種では球果にも多量にこびり付くことが多い。生成当初は透明から淡黄色で流動性に富むが、揮発成分が減少するにつれ粘り気が増え固化し、色も酸化によって黄色や茶色に変わる。
松脂はテルペン等の揮発成分を大量に含み水には溶けない。松脂の揮発成分は特有の芳香があり前述のように香料に利用されることもある。また、松脂を蒸留するとロジン、テレピン油、ピッチなどの成分が得られ、燃料、粘着剤、生薬、香料、滑り止め、紙の添加剤などに用いられる。ロジンは、マツの根などからも得ることができる。詳細はロジン、テレピン油を参照。
経済的な採取は幹に切り込みを入れる方法で行われ、現在は中国などのアジアを中心に行われる。マツの他にも針葉樹を中心に多くの樹種で樹脂は利用されるが、マツ類に比べて滲出量が少なく世界的に広く利用される種は無い。
◎ 文化
○ ギリシア神話
ギリシア神話では、大地の女神レアーが羊飼いに恋をした、という逸話が残る。羊飼いに恋人がいたため恋は叶わず、女神レアーは悔しさから羊飼いをマツに変えてしまう。しかし女神レアーは自分の恋心を変えることができず、毎日、羊飼いが変貌したマツの木の下で、悲しみ過ごしたという。
また、牧神パーンに愛を迫られた妖精ピテュスが、松の木となって逃れたという話しもある。パーンは彼女を忘れられず、いつも松の枝で作った冠を頭上に飾っていたというがあるので興味がある方はそちらも参考にされたい。
◎ Pinus 亜属
一般に二葉松と呼ばれるグループである。針葉は二葉、アメリカ大陸には三葉のものも多くごく一部であるが五葉のものも見られる。葉断面を観察すると維管束が2つあることから複維管束亜属と呼ばれることも多い。樹皮はStrobus亜属やDucampopinus亜属に比べるとよく発達し、派手に裂けるのが一般的。火災発生後や荒れ地でいち早く成長するものが多く、先駆種としてのマツのイメージのあるグループ。晩生球果の性質を持つものはなく、イタリアカサマツ(P. pinea)を除き球果は成熟時に開くようになる。
○ Pinus 節
※ Pinus 亜節
アカマツやクロマツなどの日本でなじみの深いマツを含むグループ。針葉は2葉。大半がユーラシア地域に分布し、アメリカ大陸に分布するものは僅かである。
◇ P. densata
: 中国南西部の雲南省や青海省の山岳地帯に分布。樹高は10-15m程と小型で針葉は2葉、中国名は「高山松」
◇ アカマツ P. densiflora
: 朝鮮半島と日本に分布。和名は樹皮の色からきていると思われ、その名の通り赤茶色である。樹高30m程度の中型種。針葉は2葉で柔らかい。主に防災機能を重視されるクロマツに対して、木材生産を目的とした植栽も多い種。アメリカからの侵入病害であるマツ材線虫病(松くい虫)に弱い。マツタケの採れるマツとしても有名。種小名densifloraは「密集した花」の意味。
◇ P. fragilissima
:
◇ P. heldreichii
: ヨーロッパのバルカン半島の標高1500-2000mの山岳地帯に分布。樹高は30mを超えることもある。若い球果は青紫色を呈する。樹皮はうろこ状に細かく割れ、ドイツ語名Schlangenhaut-Kieferは「蛇皮のような松」の意味、種小名はドイツ人植物学者にちなむ。
◇ P. henryi
: 中国西部の山岳地帯に分布。
◇ P. hwangshanensis
: 中国にある険しい岩山である黄山に分布する。
◇ カシヤマツ。最大樹高25mに達するが、台風が多いために12mを超えるのは稀だという。樹皮の色はクロマツに、葉の軟らかさなどはアカマツに似る。葉の長さは最大20cmに達し、日本産種では長め。クロマツよりも早く成長し潮風・乾燥によく耐える。マツ材線虫病に弱く枯死が問題化している。種小名は沖縄の古い呼び名「琉球」に由来。沖縄ではマチ、マーチなどと呼ばれる。
◇ バビショウ P. massoniana
: 秦嶺山脈以南の中国各地からベトナム、台湾にかけて分布。樹高40mに達する大型種で針葉は2葉。漢字では馬尾松と書き、その名の通り生枝の先が馬の尾を思わせる形。中国のマツ類の中では大型になるため治山だけではなく木材採取などの経済目的での植林も盛ん。
◇ モンタナマツ P. mugo
: ムゴマツと呼ばれることもある。日本でいうハイマツに相当する地位を占める種でヨーロッパの高山に分布。
◇ ヨーロッパクロマツ P. nigra
: 地中海沿岸諸国のうちトルコ、バルカン半島、スペインなどに分布。いくつかの亜種・変種に分けることが多い。樹高は20mから最大50mに達する中大型種。種小名nigraは黒色を意味する。
◇ レジノーサマツ P. resinosa
: アメリカ合衆国東部・カナダ原産。針葉は2葉でアメリカ大陸のマツとしては非常に珍しく、他にP. tropicalisが知られるのみ。英名はRed Pine(赤いマツ)でその名の通り、樹皮の赤みが強い。種小名resinosaは樹脂のあるの意味 P. taiwanensis
: 台湾の標高700-3000mの山岳地帯に分布。樹高30mに達し現地では重要な林業用樹種である。日本が台湾統治中は在来クロマツの3倍という松脂の採取量が多いことで注目されていた。アジア産種でありながらマツ材線虫病に極めて強いという。
◇ クロマツ P. thunbergii
: 日本原産。樹高30m程度の中型種。樹皮はアカマツよりも赤みの無い茶色。針葉は2葉でアカマツよりも太く長く硬い。沿岸部の防風・防砂のために江戸時代から植栽された記録が残る。アカマツに比べて耐塩生は高いという報告が多い。このため海岸のマツというイメージがあるが、三陸海岸のようにアカマツの方が優勢な地域や北海道の海岸のようにマツ類ではなく、広葉樹のカシワ (Quercus dentata) を用いる地域もある。マツ材線虫病(松喰い虫)には非常に弱く。
◇ アレッポマツ P. halepensis
: 地中海地域原産。球果は緑色から赤く染まり、最終的に赤茶色になる。
◇ P. latteri
: インドシナ半島の標高400-1000m程度の丘陵地帯に分布。樹高は最大40m、直径1.5mを超える大型種で、針葉は二葉。
◇ メルクシマツ P. merkusii
: インドシナ半島、およびフィリピンとインドネシアに分布。分布域は赤道を僅かに越え、南半球に天然分布する唯一のマツとされる。樹高は40m以上になることもあり、大きい部類に入る。
◇ フランスカイガンショウ P. pinaster
: 地中海西部地域、特にフランスからイタリアにかけての一帯と、対岸のアルジェリアからモロッコを原産とする。フランス語名Pin maritimeは海岸のマツの意味で和名もここから来てるが、海岸だけでなく分布南限では標高2000mの山岳地にも生える。樹皮は赤く、針葉は2葉で非常に太く長さも20cm以上になる。原産地では有用な林業用樹種で製材用として広い範囲で植栽されている。また、樹皮に含まれるポリフェノールの一種は健康食品の原料として利用される。南アフリカやオーストラリアにも移入され、移入先で生態系の破壊を起こしており、世界の侵略的外来種ワースト100にも指定されている一方で、原産地ではアメリカからの侵入病害であるマツ材線虫病(松くい虫)による枯死が問題となっている。
◇ イタリアカサマツ P. pinea
: カサマツとも呼ばれ、傘を広げたような石を掲げたような独特の樹形になる。球果は受粉の翌年から成長を始めるものの、その年には熟さずに受粉から3年目に熟す。大きな種子は翼を持たず、食用でイタリアではパスタのソースなどに使う。種小名pineaはマツの意味。独立のpinea亜節とすることもある。
◇ ヒマラヤマツ。晩生球果の性質を持つものが一部にある。
◇ P. caribaea
: カリブ海沿岸諸国原産。東南アジア等でも移植栽培されている。東南アジアの栽培地では、横枝が出ないまま主軸ばかりが数年間にわたって伸び続ける現象が報告されており、まるでキツネの尾のように見えることからFoxtailingなどと呼ばれている P. serotina
: 和名は英名Pond pineの直訳。アメリカ合衆国南東部原産でリギダマツより南に分布する。リギダマツに酷似しており、別種ではなく亜種と考える学者もいる。球果はリギダマツ同様樹上に永くとどまるが、開く条件がリギダマツよりも厳しく、晩生 (serotiny) であり火災などに乗じて開くという。種小名もこれに由来。
◇ テーダマツ P. taeda
: 比較的水辺を好むマツといわれ、英名Loblolly PineのLoblollyは湿地を指すという。樹高50 m以上まで非常に大きくなる種で、製材やパルプを目的とした林業用の樹種としてもよく用いられる。球果は細長く種鱗には鋭い刺を持つ。日本で流行しているマツ材線虫病に強く。いずれも北米大陸に分布。球果は晩生の性質を持ち、火災時に開くものが多く、成長時も極めて耐陰性が低い。
◇ バンクスマツ P. banksiana
: 主にカナダ東部と中央部に分布。分布の一部は北極圏にかかり、アメリカ大陸のマツとしては最も北に分布する種類である。樹高は10m程度と低め、針葉は2葉で5cm未満と非常に短い。球果もマツ属の中で最も小さい。球果は晩生で成熟後も樹上から落ちず、また開かずに残り、山火事の強熱で開く特性がある。マツ材線虫病に強い。学名の clausa はclosedと同義で
◇ P. reflexa
: 北米アリゾナ・ニューメキシコに分布。上記P. flexilisと同種または変種ともみなされる場合もある。
◇ サトウマツ(White Pine Blister Rust) に弱い。
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◇タイワンゴヨウマツ P. cembra
: ウクライナからフランス・イタリアにかけて分布する五葉松、球果の大きさや葉内の樹脂道の数を除いてP. sibricaと酷似しており本種とは別種ではなく亜種や変種に当たるのではないかと考える学者もいる。
◇ チョウセンゴヨウ P. koraiensis
: シベリア・中国東北部、朝鮮半島にかけてと日本に分布。樹高30mに達する。シベリアではカラマツ属やトウヒ属の樹木とともに森林の主要な構成種であるが、日本では比較的まれな種である。木材採取を目当てに伐採される他、種子は食料として利用される。種小名koraiensisは朝鮮半島周辺を示す「高麗」に由来。シベリアでは違法伐採が後を絶たないことなどから、2010年(平成22年)10月付でロシア産の本種がワシントン条約附属書に記載され取引の監視が強化された。マツ属としては初である。
◇ シベリアマツ P. sibirica
: シベリアに分布。
◎ Ducampopinus 亜属
Pinus亜属とStrobus亜属の中間の形態を示す小グループ。アメリカ西部からメキシコにかけての一帯と、東アジアに分布するが日本には一種も分布しない。葉断面の維管束は一つなのでStrobus亜属と同じく単維管束亜属に含まれることもあるが、葉の数・葉の付け根の鞘の取れにくさ・球果の形や硬さなどはPinus亜属に近く、Strobusとは別グループとして認めることが多い。
○ Parrya 節
※ Nelsonianae 亜節
◇ P. nelsonii
: メキシコ原産。樹高10 m程度の小型のマツ。針葉は3葉であるが基部では、癒着しておりまるで1葉のように見える。球果はカプセル型の独特の形で、長い柄を持つ。他のマツに比べると受粉後極めて速く受精に至り、球果は受粉同年に成長を開始し翌年に熟す。種子は食用。
※ Krempfianae 亜節
◇ P. krempfii
: ベトナム原産。マツ属の中で唯一、扁平の葉を持つ。
※ Gerardianae 亜節
◇ シロマツ P. bungeana
: 中国原産。漢字表記は白松で、音読みからハクショウと呼ばれることも多い。針葉は3葉。樹皮は滑らかでマツとは思えない装いである。成木の樹皮は名の通り、白色になる。種小名bungeanaは中国やシベリアの植物を調べたAlexander Bungeに由来。
◇ P. gerardiana
: ヒマラヤ地域に分布。種子は食用でインド北部では「neje」や「chilgoza」と呼ばれる。
◇ P. squamata
:
※ Rzedowskianae 亜節
いずれもメキシコに分布。種子が大きく食用とされ、英語でPinyon pineと呼ばれるグループで特にこのグループは大きな球果を付ける。
◇ P. maximartinezii
: 西シエラマドレ山脈に極めて局地的に分布。絶滅が危惧されている。
◇ P. pinceana
:
◇ P. rzedowskii
:
※ Cembroides 亜節
何れの種もアメリカ南西部からメキシコにかけて分布。この地域はロッキー山脈の南端、さらにそれに続く東西のシエラマドレ山脈からなる山岳地帯であり、乾燥した気候である。種子が大きく食用とされ英語でPinyon pineと呼ばれるグループ。
◇ P. cembroides
: メキシコの中部から北部にかけての山岳地帯、特に西シエラマドレ山脈に沿って広く分布する。樹高は10-20m程度の小型種で針葉は二葉と三葉がよく混ざる。気孔は葉の両面にある。球果は3cm程度と小ぶりなものの、中の種子は大きく自然界では鳥が好み、我々人間の食用としても広く用いられる。英名はMexican Pinyon。
◇ P. culminicola
: メキシコ東部の標高3000mを超す高山地帯に極めて局地的に分布。匍匐性を示し樹高は1-5mの小型種。針葉は五葉で青っぽく短い葉を付ける。絶滅が危惧されている。
◇ P. discolor
: 種小名discolorは「色が違う」の意味。
◇ P. balfouriana
: 和名未定の種。英名foxtail pine(キツネの尾のようなマツ)。
◇ P. longaeva
: 非常に長寿のマツとして知られており、1964年に伐採された「プロメテウス」と呼ばれる個体の年輪を数えたところ4800を超えていた。本種の形態はP. aristataと酷似しており、当初は同種と考えられていた。和名には現在も混同が見られる。ちなみに屋久島の縄文杉は樹齢7200年という説が存在するものの、中心部分が腐って消失しており年輪を数えることができずに推定値となっているため、本種のプロメテウスが証拠のある中では最高齢の樹木となっている。プロメテウスの伐採によって年輪年代学の発展もあったものの、長寿の樹を伐採したことには批判も多かった。同種には「メトシェラ」と名付けられたプロメテウスとほぼ同樹齢の個体の他何本か長寿の個体が見つかっているが、破壊を防ぐためもあって正確な位置は公表されていない。
● 松の病気と対策
・ マツ材線虫病 - 松枯れを起こしているマツの病気。
・ 五葉マツ類発疹さび病 - アメリカのマツに激害をもたらしているマツの病気。
対策
・ こも巻き - マツカレハの幼虫を駆除するために、冬に行っていたが、効果が無いため廃止している地区がある。
「マツ」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』(https://ja.wikipedia.org/)
2025年1月30日21時(日本時間)現在での最新版を取得
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