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祭(まつり)は、多義語であり、元の意味は神仏や祖先をまつる行為や儀式を指し、特定の日に供物をささげて祈願・感謝、あるいは慰霊すなわち霊を慰めることなどを行うことを主に指し、この意味では祭祀(さいし)、祭礼(さいれい)、祭儀(さいぎ)とも言うが、現在では映画祭、陶器まつり、着物まつりなど、業界団体や商店街などが祝賀・記念・商売・宣伝などのために定期的に行う催事、あるいは大学で学生が毎年行うことがある大学祭や中学・高校で行われることもある文化祭など、神仏や先祖とは無関係な催事も含めて、広く祭という。
なおまつりの漢字の表記(祀り・祭り・奉り・政りなど)によって、意味合いが異なる(詳細は後述)。当項目ではまず、元の意味、すなわち歴史の古い祭りから説明し、現代的な、神仏や先祖や宗教とは無関係な催事については項目の最後で説明する。
● 概要
祭祀・祭典はあらゆる地域・文化・宗教において行われている。祭祀と祭礼に厳密な区分はなく、便宜的な区分である。
原初の祭は、豊猟や豊穣への感謝・祈りであり、人類のもともとの生き方であった狩猟生活をした時代では、野獣の主、森の主、海の主など、《》、本来は人と同じ姿だが仮装し土地の猛獣として現れているもの、に対する信仰に基づいて行われていたと考えられる。→歴史
現代に行われている祭祀・祭礼の起源、成立や伝播の経緯はさまざまである。
土着的な信仰によって行われる祭りは、狭い地域限定で行われているものが多く、特定の村の中でほそぼそと行われているものまで含めると数え切れないほどあり、当該地域の住民以外にはほとんど知られていないものが多い。ただし例外もあり、ハロウィーンはもとはアングロサクソン人の土着的な信仰が起源でアングロサクソン人にしか知られていなかった祭りだが、アングロサクソン人が近代に北米大陸に大規模に移住しアメリカ文化となり、アメリカ文化が戦後の日本に輸出されたことで、近年では日本人にも馴染みの祭りとなったものである。だがこれは例外である。一方、世界宗教の、キリスト教・イスラム教・仏教は世界に広く広まっているので、それに基づく祭りは通常は世界に広まっており、たとえばキリスト教の復活祭は世界各地で行われているし、イスラーム圏では、東南アジアのイスラム諸国も含めて、犠牲祭が広く行われている。仏教が伝わった場所では降誕会が広く行われている。また世界宗教が広まった各地の土着の信仰や民族宗教が習合して行われるようになった祭もある。また世界宗教に関連しているが、特定の土地、特定の国だけで独自に発生し行われるようになった祭りもある。たとえばフィリピンで行われているブラックナザレ祭(:en:Black Nazarene)は、「触れれば病気が治ったり幸運が舞い込んだりする」と信じられている黒いキリスト像を載せた山車が街を練り歩く、毎年行われる祭りだが、これはフィリピン国内で独自に行われるようになった祭りであり、他の国では行われていない。
祭りの参加者や参観者の多さについて、特に多いのは、上で挙げたキリスト教の復活祭はクリスチャンにとって特に重要な祭りで、世界のクリスチャンの数がおよそ24億人とされ、復活祭は世界の95カ国で毎年祝われ、アメリカでも大人の37%が復活祭の日曜には教会堂に行く予定を立てる(普段あまり教会に通わなくなった大人ですら復活祭には参加する)、というので、参加する人の数が特に多い祭りと見なしてよい。
また近代オリンピックは平和の祭典であり、その開会式を世界の人々がテレビで視聴する。2008年の北京オリンピックの開会式は20億人以上が視聴し、この数は通常より多かったという事情があり、2012年のロンドンオリンピックの開会式は9億人が視聴した。
特定の国で行われる祭りとして最多の参加者の祭りは、ドイツのオクトーバーフェストであり、毎年約600万人ほどの人を集める。
● 歴史
◎ 原初的形態
原初の祭は、一つの信仰に基づいていたと考えられる。すなわち、豊猟や豊穣への感謝・祈りであり、ジェームズ・フレイザーの『金枝篇』では、生命の死・再生を通して考察された。非常に古くから存在する狩猟社会では、狩猟儀礼という獲物を捧げ豊猟を祈願する儀礼があり、熱帯の密林でもサバンナでも寒帯の森林でも氷原でも、共通するのは野獣の主、森の主、海の主など、《主(ぬし)》に対する信仰である。《主》は野獣界を支配しており、野獣を狩猟者のもとへ派遣して狩らせており、猟の成否は《主》の意向にかかる、と考え、《主》の多くは熊、ヒョウ、大蛇などそれぞれの土地の猛獣の形をとるが、それは仮装した姿にすぎず、本来は人間と同じ姿形で人間同様の生活を送っているとされ、人間は《主》に直接話しかけることができると信じ、万物に物質的実体と霊があり、野獣にも肉体と霊があり、肉体は死して滅びるが霊は不滅だと考える。
◎ 神道の祭
神道の祭で説明。
◎ ユダヤ教の祭
ユダヤ教では年間を通じて様々な祭りがある。
角笛吹きの祭り、贖罪の日は大祭日である。過越祭(ペサハ)と七週の祭り(シャブオット)、仮庵の祭り(スコット)は三大祭である。
+ユダヤ教の祭り
◎ キリスト教の祭
キリスト教においては、毎週日曜日をはじめとした教会の定める祭日(教会暦において、日曜日は主日と呼ばれる祭日である)に礼拝が行われ、賛美や祈祷とともに主の晩餐に基づくパンとワインの分かち合いが行われる。これを正教会では聖体礼儀、カトリック教会ではミサ(聖体祭儀)、聖公会やプロテスタントでは聖餐式と呼ぶ。これらはキリスト教の祭の一種であるが、キリスト教では「祭祀」という言葉は用いられない。また主の晩餐を伴う礼拝の他にも、様々な礼拝・祈祷がある。
ただしキリスト教においても、降誕祭にはクリスマス・パーティ、受難節にはキリストの道行きを再現するパレード、復活祭には卵探しなどのイースター・パーティーが行われるなど、祭の局面は礼拝・儀礼・祈祷に限定されない。正教においては、斎が解かれた後の祭(降誕祭や復活大祭など)に御馳走を用意してこれを皆で食べるパーティを行ったり、十字行と呼ばれる行進を街中で行ったりする習慣もある。
復活祭・降誕祭などの重要な祭日名をはじめとして、司祭・聖体祭儀などの表現にも「祭」の概念・表現がみられる。
日本語訳聖書中においても、旧約聖書・新約聖書の両方に「祭」の翻訳がなされている。ただし、日本聖書協会の口語訳聖書では「祭」と表記されているが、新共同訳聖書においては「祭り」と表記されている。
正教会(ギリシャ正教)の一員たる日本正教会は、日常用語においても各種著作物においても、「祭」(まつり)もしくは「お祭」(おまつり)との言葉を単独で使う事を全く避けない。祭と斎(ものいみ)、祭日(さいじつ)と斎日(ものいみび)というように、喜ばしい時(祭)と、自らを喜ばしい時に備える時(斎)とを対比させるリズムは正教会の伝統に組み込まれて日常生活の規範となっており、これを説明する際に「祭」の語・概念が多用される。代表的な例として、正教会で最大の祭である復活大祭と、それに自らを備える期間である大斎(おおものいみ)がある。
同様のリズムの伝統は正教会に限らず、西方教会(カトリック教会・聖公会など)においても復活祭と大斎の形などにみられる。しかしながら殆どのキリスト教諸教派においては、日常用語として「祭」(まつり)という言葉は単独ではあまり用いられない傾向がある。「祭」の語を単独で用いる傾向が強いのは一部の例外を除き、殆ど日本正教会のみとなっている。
◎ イスラームの祭
イスラームでは、カーバ神殿に対して礼拝するサラートがある。
日を定めたものとしては、ムハンマドの生誕を祝う預言者生誕祭、ラマダーン終了後のイド・アル=フィトル、イブラーヒーム(アブラハム)が息子を犠牲に差し出そうとした日を祝うイード・アル=アドハー(犠牲祭)などがある。
イスラームの祭祀はほぼこの2つしか存在しない。四季があり、神道と日本仏教の影響を受けていることから数多くの祭祀が存在する日本と比べると、一神教の祭祀に対する関心は薄い。
◎ ヒンドゥー教の祭
ヒンドゥー教には、ホーリー祭、ダシェラ祭(en:Dussehra)、ディワーリー祭(:en:Diwali)という三大祭がある。
◎ 仏教の祭
仏教各宗派共通で行われているものとしては、降誕会、成道会、涅槃会がある。
日本仏教で行われている祭については、日本仏教の祭の節で説明。
● 各国の祭
それぞれの国における祭の詳細を説明する。
◎ 中国の祭
・ 春節 - 旧暦の正月。旧暦は太陰暦なので太陽暦上の日付は毎年変動し、1月後半から2月前半あたり。実家に戻るなどして家族・親族が集い、爆竹を派手に鳴らし、花火を打ち上げる。花火や爆竹で大きな音を出すと邪気を追い払えると考える。春節では赤がラッキーカラーとされ、街中の建物の入り口には赤い対聯が飾られ、道路にも赤い提灯が掲げられる。旧暦の大晦日の夜12時前に家族で水餃子を作り始め、年を越し深夜1時ごろの子の刻に食べるという風習がある。春節の日に餃子を食べるとその年に富がもたらされると信じられており、餃子の中に1つだけ硬貨を入れておき硬貨が当たった人はその1年金運に恵まれる、とされている。北京の寺院では、春節の元旦から(旧暦の正月15日)まで縁日が開かれる。
・ 関帝誕 - 関帝の生誕を盛大に祝う祭。旧暦(農暦・太陰暦)の6月24日。これは関羽が6月24日に誕生したと伝承されているため。
・ 上海桜まつり - 毎年4月ごろ。上海の顧村公園などには、10,000本を超える桜の木がある。また上海の同済大学では古い桜の木を鑑賞できる。
・ 洛陽の牡丹花祭り - 4月1日から5月5日まで。洛陽には牡丹園が多く、国立牡丹公園(中国国家牡丹园)、王城公園などで牡丹を鑑賞できる。
・ 香港の龍船祭り - 旧暦5月5日。中国の特別行政区香港で開催される伝統行事。ニ千年以上前、腐敗した政治に抗議して川に身を投げた屈原の死を記念する祭り。儀式と催事から成る。儀式では屈原や神々に香を捧げる。次に催事として漁師たちの舟のレースが行われる。に龍の頭、船尾に龍の尾がついた舟に漁師たちが乗り込んで漕ぎ、川岸では歓声と太鼓の音が響く。人々はちまきを食べる。
◎ 日本の祭
○ 日本列島での祭りの歴史
◇縄文時代の祭り
縄文時代の日本列島には縄文人が住んでおり、縄文人は主に狩猟・採集で生きていたと考えられている。
縄文人はムラの広場や聖なる場所で土偶を使った祭りを行っていたという。山梨県に残る縄文時代の遺構には保存状態が良いものがあり、200以上の土偶に加えて石剣や、丸石、翡翠製のなどの遺物が発見されており、さらにシカやイノシシなどの動物の焼けた骨も多数出土しており、どれも祭りに関係があるものと考える人がいる。
縄文社会ではイノシシは「神の使い」として重要なシンボルだった。だから縄文土偶にいち早く描かれ、多くの動物土偶のモデルがイノシシとなった。そしてアイヌはもともとは主に狩猟・採集をする人々だったことが分かっている。アイヌは、本来の日本列島の住民である縄文人の流れを、遺伝的にも、文化的にも一番汲んでいる存在なのである。
アイヌの他の祭りにもここで触れておく。アイヌは8月に「ふるさと祭イチャルパ」、9月に「フンペ(鯨)祭イチャルパ」、11月に「ししゃも祭」という3つの祭を行っており、これをアイヌ三大祭と呼んでいる。
◇弥生時代の祭り
弥生時代の紀元前9世紀-紀元前8世紀ころに、大陸から(主に、現在の中国南部あたりから。あるいは一部は大陸から朝鮮半島経由で)組織的水田耕作と金属器の文化を持った人々が北九州や本州西部(中国地方の北側。現在の山口県や島根県など)に渡来し始め、在来の縄文人と混血しながら、ゆっくりゆっくりと周辺(近畿あたりまで)に広がった。これが現代の日本に住んでいる人々を形成した過程の始まりであった。農耕にともなう祭りは弥生時代になってから渡来人が米作りとともに伝えたものである。インドで行われ、中国で大々的に行われるようになったあと日本に伝わり、日本で最初の花祭りは西暦606年に奈良県の元興寺で行なわれたものだとされている。この2日間、十条と東十条の間の、普段は閑静な住宅街の道路の両脇約400メートルに多くの露店が出店する。そして平成2年(1990年)からふじよしだ観光振興サービスは富士講の歴史と吉田口登山道のPRのために「富士山開山前夜祭」の中で「富士講パレード」を実施しており、伝統的な行衣を身にまとった富士吉田連合婦人会の女性たちや富士保育園の園児、各地より集った富士講講社の人々がパレードに参加し、パレード終了後に神社で富士登山の安全祈願の神事が行われ、本殿西の鳥居に設えられたしめ縄をが木槌で断つ「お道開き」の儀式を行い、富士登山の開始を告げる。
・ 横浜中華街の祭り。横浜の元町に中華料理店が集中し、大規模な中華街が形成されており、春節の祭(旧暦の正月の祭)など、一年に数度、中国の伝統の祭が開催される。
・ 特定の企業が、特定期間に集中的に行うセール、値引き販売、販売推進活動。感謝祭などと命名されることもある。
・ Amazonプライム感謝祭 - 毎年夏にプライム会員限定を対象に行われる特別なセール。
・ 楽天大感謝祭 - 毎年12月に行われる、ポイントが当たるゲーム、タイムセール、割引クーポンなどがあるイベント。
・ ヤマザキ春のパンまつり
・ 地域まつり、都市まつり。「-まつり」「-フェスティバル」などと命名されているものが多い。
・ 浜松まつりや博多どんたく、YOSAKOIソーラン祭り、浅草サンバカーニバル、ひろしまフラワーフェスティバルなど。
・ 文化施設においてのまつり
・ Bunkamura、水戸芸術館など。
● 比喩、転用 等
・ インターネットスラング
・ 一部の電子掲示板で、特定のスレッドが異常な盛り上がりを見せ、流れが通常よりも速くなっている状態を(お)祭りという。その他のインターネットスラングとしての「祭り」は炎上といわれるものがあり、特定の団体や個人による不祥事や不穏当発言などに対する、中傷や非難や批判が多いが、ネットいじめ(祭り上げられる)といった悪意の迷惑行為、または社会に対する不安や批判などの発露であり、それに呼応したり尻馬に乗るなどの野次馬や、一家言を持つ人々がインターネット上の様々な場所で、意見や議論を拡散・増大させ、いわゆるネット上の「祭り」といわれる状態に更になっていく様をいう。
・ 魚釣り
・ 隣り合った釣り人の、仕掛け、糸などが絡まることをお祭りという。他人の糸、仕掛けに関係なく自分自身の糸、仕掛けがからまってしまう事を手前祭りという。
・ 子作り・子宝
・ 性交を指す例え。江戸時代の浄瑠璃の一節や柳樽(やなぎだると読み、柳多留とも表記する)という雑俳(巷から集めた俳句)の書籍のなかに「祭り」を男女の性行為の例えとして用いている表現がある。また古神道においては、子宝・子作り信仰と言われるものがあり、子作りは、新しい氏子の誕生の場であるところから、性行為を「祭り」と言うようになったともいわれる。古神道には、常世(とこよ)と現世(うつしよ)という世界観があり、常世は神域や神の国をあらわすが、一説には常世は床世(床は性行為の意味もある)であり、性行為は神域で行われる(若しくは神域へ誘う)神聖なものとする考え方がある。
● 季語
季語としての祭(まつり)は、夏の季語(三夏の季語)である。分類は行事/人事。季語「祭」の初出は、野々口立圃によって寛永13年(1636年)に刊行された俳諧論書『はなひ草』(「花火草」「嚔草」とも記す)においてであった。古来、夏は疫病が発生しやすく、それをもたらす元凶と信じられていた怨霊を鎮めたり祓ったりすることは人々の切実な願いであり。
「祭」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』(https://ja.wikipedia.org/)
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