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急性灰白髄炎(きゅうせいかいはくずいえん、poliomyelitis)は、ポリオ (Polio) とも呼ばれる、ピコルナウイルス科、エンテロウイルス属のポリオウイルスによるウイルス性感染症。ポリオは、Poliomyelitis(ポリオマイアライティス)の省略形。ポリオウイルスが原因で、脊髄の灰白質(特に脊髄の前角)が炎症を起こす。症例の約75%は無症候性である。 発生する可能性のある軽度の症状には、喉の痛みや発熱が含まれる。 症例の割合で、頭痛、首のこわばり、感覚異常などのより重篤な症状が発症する。これらの症状は通常1〜2週間以内に回復する。一般的でない症状は、永久的な麻痺であり、極端な場合には死亡する可能性がある。 回復から数年後、ポリオ後症候群が発生する可能性があり、最初の感染時に人が持っていたものと同様の筋肉衰弱の発達が遅い。初めの数日間は胃腸炎のような症状が現れ、その後1パーセント以下の確率で、ウイルスに関連した左右非対称性の弛緩性麻痺(下肢に多い)を呈する病気である。 日本では、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律で、2類感染症に分類されている。

● 徴候と症状

  症状   症例比率
  無症状    72%
  軽微な症状    24%
 非麻痺型 無菌性髄膜炎    1–5%
 麻痺型急性灰白髄炎    0.1–0.5%
 — 脊髄ポリオ    麻痺型症例の79%
 — 延髄脊髄ポリオ    麻痺型症例の19%
 — 延髄ポリオ    麻痺型症例の2%
「急性灰白髄炎」の名はポリオウイルスの3つの血清型、いずれの血清型に起因する感染症に対しても使用される。ポリオ感染の症状は大きく2つに分類できる。1つが不全型ポリオとも呼ばれる中枢神経系(CNS)が関わらない軽微な症状、もう1つがCNSの関わる重篤な症状であり、後者は麻痺を伴う場合と伴わない場合がある。正常な免疫系を持ったヒトではポリオウイルスの感染はその約90 - 95%が不顕性である。稀にポリオウイルスの感染が上部気道感染症(咽頭痛、発熱など)、消化器障害(吐き気、嘔吐、腹痛、便秘、稀に下痢)、感冒様症状などの軽微な症状を引き起こす。1000人の感染者の内、1から5人が麻痺型の疾患へと進行し。麻痺の部位に応じ、麻痺型のポリオは脊髄型、延髄型(球麻痺型)、延髄脊髄型(球麻痺・脊髄麻痺型)に分類される。脳自体に感染が及ぶ脳炎は稀であり、かつ基本的に新生児に限定される。脳炎においては錯乱、精神状態の変化、頭痛、発熱、そして稀に発作、痙性麻痺が生じる。

● 病原体
急性灰白髄炎はポリオウイルスとして知られるエンテロウイルス属のウイルスの感染によって生じる。この属のRNAウイルスは消化器系で増殖し、特に咽頭や小腸を感染巣とする。初期徴候、症状までの潜伏期は3日から35日までの幅をとるが、一般的には6日から20日の間となる。構造は極めて単純で、一本鎖の (+) 鎖RNAゲノムとそれを包むタンパク質の殻、カプシドのみによって構成される。3つの血清型全てが極めて病原性が高く、同一の症状を引き起こす、自然感染かポリオワクチンによる予防接種かどうかを問わず、ポリオウイルスの曝露を受けたヒトは免疫を獲得する。免疫を持つヒトの体内には扁桃や消化器系にポリオウイルスに対するIgAが存在し、ウイルスの増殖を防ぐ。また、ポリオウイルスに対するIgGやIgMはウイルスが中枢神経系の運動ニューロンに進入するのを防ぐ。

◎ 感染経路
急性灰白髄炎は糞口経路(腸管が感染源)ないし口口経路(口腔咽頭が感染源)によって感染し、いずれの経路も感染性が高い。流行地域ではほぼ全てのヒトに野生型ポリオウイルスが感染する。温帯気候においては季節性に流行し、夏から秋にかけて新規感染が増加する。ウイルス粒子は初期感染の後、数週間にわたって糞便中に排泄される、特に公衆衛生が整備された衛生的な地域によって観察される、栄養失調、麻痺発症直後の物理的運動、ワクチンや治療薬の接種による筋骨格系の損傷、妊娠がある。、胎児は母体のポリオワクチン接種にも影響を受けないようである。母体の抗体もまた胎盤を通過し、新生児を生後2~3ヶ月に渡りポリオ感染から保護する受動免疫を与える。

● 病態生理
ポリオウイルスは口から体内に侵入し、最初に咽頭か小腸粘膜の細胞に感染する。細胞への感染においては細胞表面に発現し、ポリオウイルス受容体としても知られる免疫グロブリン様受容体、CD155分子に結合することで細胞内へ進入する。細胞内へ侵入したウイルスは宿主細胞のセントラルドグマを乗っ取り、複製を開始する。ポリオウイルスはおよそ1週間で消化器系の細胞内で増殖し、そこからさらに扁桃(特に扁桃の胚中心にいる、濾胞樹状細胞)、パイエル板のM細胞を含む腸管リンパ組織、および頸部ないし腸間膜リンパ節へと感染を広げ、その場で十分に増殖を重ねる。そしてウイルスはさらに血流へと進入する。 ウイルス血症として知られる血流へのウイルスの拡散により、ポリオウイルスは全身へ拡散する。ポリオウイルスは血中およびリンパ液中で長期間生存、増殖可能で、17週間にわたり循環することがある。少数の症例においてはウイルスが褐色脂肪、細網内皮系、筋などの他の組織でも増殖する。この持続的なウイルスの増殖は重度のウイルス血症を招き、軽微な感冒様症状の発展につながる。稀にこれがさらに進行し、ウイルスが中枢神経系へ侵入、局所的な炎症反応を誘起する。中枢神経系にウイルスが侵入してもなお、多くの症例では脳を包む層状の組織、髄膜に炎症が限局し、これは非麻痺型無菌性髄膜炎と呼ばれる。ウイルスがCNSへと広がる方法はほとんど理解されていないが、基本的には偶発的であるようで、感染者の年齢、性、社会経済学的地位はCNSへの移行の有無にはほとんど影響しない。 麻痺型ポリオ発症の期待値は年齢と共に増加し、麻痺の範囲も同様である。小児においてはCNSに感染した症例でも非麻痺型髄膜炎に帰結する事がほとんどであり、麻痺は1000件当たりでわずか1件においてのみ発生する。一方で成人の場合、麻痺型は75件当たり1件の頻度で発生する。5歳以下では片方の脚の麻痺が最も多い。しかし、成人では胸部および腹部を冒す広範な麻痺が四肢にも影響する(頸髄損傷)事がより多くなる。麻痺型の頻度は感染したポリオウイルスの血清型によっても変化し、一番高い1型では1/200、一番低い2型では1/2000の頻度でそれぞれ麻痺を生じる。
○ 脊髄ポリオ
脊髄ポリオは麻痺型ポリオで一番多い型で、前角、すなわち脊柱の腹側にある灰白質の運動ニューロンにウイルスが侵入した結果として生じ、この運動ニューロンは胴部、四肢、肋間の筋肉を含む、筋肉の運動を支配する。ウイルスの侵入は神経の炎症を生じ、運動ニューロンの神経節の損傷と破壊に繋がる。脊髄の神経細胞が死ぬと、ワーラー変性が発生、死んだ神経細胞が元々支配していた筋肉は弱ってしまう。神経細胞の破壊によって被支配筋は脳や脊髄からの信号を受け取れなくなり、神経刺激を受け取らなくなった筋は萎縮、弱った筋肉は制御困難になって最終的に完全な麻痺に至る。 脊髄麻痺の範囲は影響を受けた神経の領域に依存し、頸部、胸部、腰部の各領域に影響が及ぶ可能性がある。ウイルスの影響が体の両側におよぶこともあるが、多くの場合、麻痺は非対称的である。

● 診断
患者が急性に脱力麻痺を一本ないし数本の四肢において発症し、他の明らかな原因無しに麻痺した四肢の腱反射が減衰ないし消失し、かつ知覚や意識の消失が無い場合、臨床症状から麻痺型ポリオが疑われる。 通常、実験室的な診断は糞便試料か咽頭拭い液からポリオウイルスを分離することによって行われる。ポリオウイルスに対する抗体にも診断的価値があり、発症初期の試料とそれから3週間後の試料を比較し、力価が4倍増加した場合はポリオウイルス感染が示唆される。ただし、入院時には既に多量の抗体を検出することがあり、力価の増加は必ずしも検出されない。野生型ポリオウイルスによって生じる麻痺型ポリオ症例一件につき、200から3000人の感染性を持つ不顕性キャリアが存在すると算出されるため、ウイルスの感染源を明らかにするのは重要である。

● 治療
ポリオには特異的な治療法は無い。治療の焦点は、対症療法による不快症状の緩和、回復の補助、合併症の予防に置かれてきた。支持療法は萎縮した筋の感染を防ぐ抗生物質、痛みを緩和する鎮痛薬、軽い運動、栄養療法を含む。ポリオの治療はしばしば長期に渡るリハビリを必要とし、作業療法、理学療法、運動療法、装具装着、靴型装具装着などが行われ、そして整形手術が行われる事もある。 他にも歴史的ポリオ治療法として水療法、電気療法、マッサージと受動運動、腱伸長法や神経移植などの外科療法などが行われた。脊髄ポリオ患者の半分は完治し、四分の一が軽度の障害を持ち、残りの四分の一は重度の障害が残る。急性期の麻痺も生涯にわたる麻痺も、その重篤度はウイルス血症の度合いに比例し、かつ免疫の強度に反比例するようである。麻痺型ポリオ患者全体で5 - 10 %の患者は呼吸筋の麻痺が原因で死に至る。致命率は年齢によって異なり、小児で2 - 5%、成人で15 - 30%までの患者が死亡する。間欠性陽圧呼吸器が利用できれば致死率は15%まで低下しうる。

◎ 回復
急性灰白髄炎の麻痺は多くの場合一時的なものである。感染後12から18ヶ月後に筋力がわずかに回復する事もあり得るが、麻痺が1年経過してもなお継続する場合は永続的な麻痺になるようである。新しい分岐はポリオ感染の急性期に神経支配を失った筋繊維に再び神経刺激を与える事ができ、筋繊維は収縮能力を回復して強度を改善できるようになる。終末端の発芽は数本の著しく肥大した運動ニューロンを生み出し、肥大した運動ニューロンは以前の4から5倍の仕事をこなす。 以上のような生理学行程に加え、生体は麻痺の後遺症を持っていても機能を維持するために代償機構を数多く持っている。代償機構には弱い筋を本来の収縮能力を超えて用いたり、元々あまり使われない筋の運動能力を成長させたりする事が挙げられる。患者によってはポリオの影響を受けた脚の成長が阻害され、反対側の脚が正常に発育する事もある。結果的に一方の脚がもう一方の脚に比べて短くなり、患者は片側に傾きながら脚を引きずる。そして脊椎側彎症のような脊椎の変形に至る。肺や腎臓、心臓に関する長期の不動性による後遺症としては肺水腫、誤嚥性肺炎、尿路感染症、腎結石、麻痺性イレウス、心筋炎、肺性心などが含まれる。この状態はポストポリオ症候群(PPS、ポリオ後症候群)、ポストポリオ後遺症として知られる。ポストポリオ症候群の症状は麻痺型ポリオの回復期に形成された過剰に肥大した運動単位の失調が関与していると考えられている。ポストポリオ症候群のリスクを増大する寄与因子には運動単位の喪失を伴う加齢、急性期からの回復後に残った後遺症の存在、神経の過剰使用と無使用の両者が含まれる。ポストポリオ症候群はゆっくりと進行する病気で、これに対する特異的な治療法は存在しない。 野生株によるポリオ感染が無くなった地域・国家では、麻痺を起こさない、より安全な不活化ワクチンへ移行している。 日本では、2012年(平成24年)9月1日に生ポリオワクチンの定期予防接種は中止され、単独の不活化ポリオワクチンが導入され、2012年(平成24年)11月1日からは、四種混合ワクチン(ジフテリア・百日咳・破傷風・不活化ポリオ)が導入された。不活化ポリオワクチンは、初回接種3回、追加接種1回、合計4回の接種が必要である。 ポリオは、1988年の世界保健機関(WHO)総会において、2000年までの根絶が決議されたが、2019年現在で1型と3型ポリオは根絶されていない状況である。WHOの推奨では、この追加接種は、経口生ポリオワクチンか不活化ポリオワクチンの接種を3回完了していることが前提である。 また日本では、1975年(昭和50年)から1977年(昭和52年)に生まれた人は、ポリオ3型に対する免疫(抗体)を持つ割合が他の年齢層に比べて低いため、国立感染症研究所は流行地域の渡航に関わらず再接種を勧奨しているが、ワクチン接種は自由診療の任意接種である。

● 疫学と各国の状況

国 野生種 状況
     12      
     21      
  合計   33   
一般には、脊髄性小児麻痺(略して小児麻痺)と呼ばれることが多いが、これは5歳以下の小児の罹患率が高い(90%以上)ことからで、成人でも感染しうる。 季節的には、夏から秋にかけて多く発生する。1961年から、ポリオワクチンの予防接種が実施されている。日本では、1980年に野生株によるポリオ感染が根絶され、その後は定期接種で行われる経口生ポリオワクチン(OPV:Oral Polio Vaccine)からしか発症していないが、世界では、パキスタンとアフガニスタンが流行地域である。 ポリオは1988年には世界125カ国において年間35万症例が発生していたが、日本を含む国際社会の真摯な取り組みにより、2009年には約1600症例にまで減少した。その後の推移は2010年1349例、2011年650例、2012年は223例、2013年は385例、2014年は359例、2015年は71例、2016年は37例、2017年22例、2018年は33例となっている。 2020年現在、ポリオの常在国はパキスタン、アフガニスタンの2カ国のみ。2012年2月、12ヶ月間新たなポリオの発生がなかったインドは、正式に常在国から削除され、大きな前進である。 2014年3月27日には、WHOにより以下の地域を含む東南アジア地域におけるポリオの根絶が宣言された:インド、インドネシア、スリランカ、タイ、朝鮮民主主義人民共和国、ネパール、バングラデシュ、東ティモール、ブータン、ミャンマー、モルディブ。これらの地域が追加されたことにより、世界人口の80%がポリオの根絶された地域に住んでいることになる。また、アフガニスタンとの国境地帯における大規模な人の移動による、度重なる再感染が課題である。パキスタンでのワクチン接種は紛争及び組織的な問題によって妨げられている。2013年から2014年にかけて合計66人のワクチン接種を行う医療関係者が殺害された。アラブ首長国連邦による1000万人の子供に対する4.4億ディルハムの支援および軍事的な状況の変化、医療関係者への襲撃者の逮捕により、2015年においては発生率が70%低下している。
◇アフガニスタン :2010年には25症例、2011年は80症例が報告された。紛争のため子どもたちへのアクセスが困難なヘルマンド州、カンダハール州とウルーズガーン州における13の地域が流行の中心。アフガニスタン紛争の主たる交戦勢力はいずれもポリオワクチン接種の支援を行っており、ポリオの発生率は急速に低下している。

◎ 2010年代以降の根絶国
なお、長年にわたって常在国リストだった国家に、インドとナイジェリアがある。
◇インド :2010年には42症例の報告があったが、2011年は1症例が報告されたのみであった。ウッタル・プラデーシュ州とビハール州が流行の中心であるが、mOPV1(1型単価ポリオ生ワクチン)の集中使用により2008年は3型ポリオが主に流行している。そのため、mOPV1に加えてmOPV3(3型単価ポリオ生ワクチン)を使用し流行の阻止を図った。2010年からは、1型、3型の2価ポリオワクチンbOPVが用いられている。2012年2月、1年間新たな患者の発生が無いことが確認されたことから、WHOは、インドを常在国リストから外した。その後、2014年3月27日には根絶が宣言された。その後、ナイジェリアでポリオが再発生し他の数か国に広まった。2010年には21症例、2011年は62症例が報告された。2013年にはポリオワクチンの管理を行っていた9人の医療関係者がバイクに乗ったガンマンによって襲撃され、殺される事件がカノで発生した。これは最初で最後の襲撃であった。現地の伝統的・宗教的な指導者やポリオ生存者がポリオワクチンの接種運動の再開のために貢献し、ナイジェリアでは2014年7月24日以来ポリオは発生していないとみなされ、ナイジェリアは2015年9月26日に常在国リストからいったん除外された。もしも新たなポリオの発生がなければ、2017年にはポリオ根絶が宣言される予定であったが、2016年にボルノ州にて2名の新規患者が発生。根絶宣言は事実上先送りとなった。しかしながら以降の発症例は報告されず、2020年8月25日、世界保健機関はアフリカでポリオが根絶されたと宣言した。

◎ 日本
日本におけるポリオは、全国各地で流行がみられ、1910年代、1920年代、1930年代後半から1940年代後半、1951年1月から6月には、半年で1500名の患者が出た。このことから厚生省(当時)は1951年中に、法定伝染病に指定している。この時点では、死亡率は約二割とされている。 1960年春には北海道を中心に5,000名以上の患者が発生する大流行となった。そのため1961年にソビエト連邦から経口生ポリオワクチン(OPV)を緊急輸入し、一斉に投与することによって流行は急速に終息した。引き続いて日本産OPVが認可され、1963年からは日本産OPVの2回投与による定期接種が行われていた。1981年以後野生株のポリオの発生が見られず、2000年にWHOに対しポリオの根絶を報告した。 ただしOPVはごくまれ(数十万~数百万回に1回)に手足の麻痺が生じる。この為、日本と同じように野生株のポリオウイルスの流行していない国々では、ワクチンによる小児まひを防ぐために、1990年代後半から経口生ワクチンを不活化ワクチンに切り替えてきた。 日本では、野生株による麻痺性ポリオ患者の発生は、1980年を最後にみられないが、経口生ポリオワクチンを接種することで稀に麻痺性ポリオを発症することがあるほか、ワクチン株由来のウイルスによる小児以外の患者発生も報告されている。この経口生ポリオワクチンによるポリオ発症が問題視されて、不活化ワクチンの再導入を求める民間の声が上がった。 こうした事態を受け、2012年4月19日に厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会が開催され、承認申請が行われている不活化ワクチンのうち1種について製造販売を行なっても問題ないとの結論に達し、2012年9月1日に生ポリオワクチンの定期予防接種は中止され、単独の不活化ポリオワクチンが導入され、2012年11月1日からは、4種混合ワクチン(ジフテリア・百日せき・破傷風・不活化ポリオ)が導入された。不活化ポリオワクチンは、初回接種3回、追加接種1回、合計4回の接種が必要である。の経験を生かし、世界におけるポリオ根絶イニシアティブにおいても先駆者として貢献してきたが2011年8月、日本国政府はビル&メリンダ・ゲイツ財団との官民パートナーシップの下、革新的な手法を用いて約50億円のポリオ根絶支援を実施することを発表した。 これは、パキスタン政府によってポリオ根絶事業が一定の成果を出すことができれば、ビル&メリンダ・ゲイツ財団がパキスタン政府に代わって日本国政府に債務を返済するという「ローン・コンバージョン」と呼ばれる手法で、これによってパキスタン政府のポリオ根絶に向けたより一層の努力を引き出しつつ、最終的にパキスタン政府に債務負担を課すことなく、ポリオ根絶対策を支援することが可能となる。

● 類人猿
ポリオは大型類人猿に感染する。1964年に当時アメリカのフロリダ州にあったで流行した。1966年にはタンザニアのゴンベ渓流国立公園で野生のチンパンジーにポリオが流行した。約60頭の集団のうち10頭が罹患し、うち4頭が死に、残る6頭に障害が残った。ゴンベでの流行は、近隣地区での人の間の流行の後のタイミングであることから、人からの感染を疑われている。

● 歴史
ポリオの医学的な記載は、1840年のドイツのシュトゥットガルト郊外の医師によるものがはじめてであり、1887年にはスウェーデンの小児科医によってポリオのストックホルムでの流行について詳細な報告がなされたことより、ヨーロッパでは当初「ハイネ-メディン病」と称されたこともあった。 フランクリン・ルーズベルトは、後遺症により下半身はほぼ麻痺してしまったことから、みずからの障害体験を通して障害者支援には積極的で、大統領就任後、ポリオ対策のために国立小児麻痺財団(the National Foundation for Infantile Paralysis) を設立して募金活動を行い、ワームスプリングスには彼の死後、が建てられた。それによれば、39歳という壮年に達してから発症したことや、彼の症状8項目のうちの6項目がギランバレー症候群に特徴的な症状を示し、ポリオを示す症状は2項目にすぎなかったことから、ギランバレー症候群であった可能性が高いということである。ワームスプリングスのポリオ病院も、今日ではリハビリテーション施設に変わっている。生ワクチン輸入については、のちに松山善三監督の映画『われ一粒の麦なれど』の主題ともなっている。 日本では、こうして世界にさきがけて徹底した全国一斉投与(NID)をおこなって、それが実をむすんで患者数は1963年(昭和38年)には100人以下に激減して、1981年(昭和56年)以降は集団的なポリオの発生は確認されていない。日本政府は2000年(平成12年)にWHOに対し、ポリオ根絶を報告している。 近年、日本ではポリオ感染による障害者の数が増加し、深刻な問題となっている。生ワクチンの投与は、上述のように、大流行時の緊急使用には際だった効果を有した実績があるものの、このワクチンによる免疫獲得率の低い世代が親になったこんにち、生ワクチンがむしろ小児麻痺の主な原因となっており、生ワクチンに使用されたウイルスが強毒化する事態も発生している。被害者からは医療行政への抗議とともに不活化ワクチンへの切り替えを求める声が出ており、2012年4月19日、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会が開催され、承認申請が行われている不活化ワクチンのうち1種については製造・販売を行なっても問題ないとの結論が出て、同年9月1日よりポリオの定期接種は生ワクチンから不活化ワクチンに切り替えられた。

「急性灰白髄炎」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』(https://ja.wikipedia.org/
2024年7月24日20時(日本時間)現在での最新版を取得

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