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帝釈峡(たいしゃくきょう)は、中国山地に位置する広島県北東部の庄原市及び神石郡神石高原町にまたがる、全長18キロメートルの峡谷。国の名勝(1923年)に指定されており、比婆道後帝釈国定公園の主要景勝地。
高梁川水系成羽川(東城川)支川の帝釈川(たいしゃくがわ)の一部。
● 概要
日本百景の一つ。三段峡と共に広島県を代表する景勝地として知られ、国内有数の峡谷でもある。地元では日本五大峡の一つと謳っている。五大峡の他の4つは確定していないという説もあるが、広島県道路企画課の公式見解によるとそれらは長門峡(山口県山口市及び萩市)・豪渓(岡山県総社市及び加賀郡吉備中央町)・寝覚の床・(長野県木曽郡上松町)・昇仙峡(山梨県甲府市)である。
神竜湖湖上には遊覧船が就航し、帝釈川ダム付近まで遊覧する。探勝歩道と呼ばれる遊歩道も整備されており、いくつかの橋を渡りながら風景を楽しめる。寄倉岩陰遺跡を中心に、縄文時代から鎌倉時代の遺物も出土しており、神竜湖ほとりに歴史民俗資料館として展示している。観光ホテルや休暇村など宿泊・観光施設も充実している。毎年4月には「帝釈峡湖水開き」が神竜湖で開かれ、湖上でのくす玉割り等が行われ、秋には紅葉祭りが開催される。
◎ 断魚渓
雄橋から300メートルほど下流に向かうと遊歩道の直下に断魚渓がある。帝釈川が輝緑凝灰岩の地層を侵食し、帝釈峡の中でも最も急流をなし魚が遡上できないという意味で断魚と呼ばれる。この輝緑凝灰岩は石炭紀に海底火山が噴火し、その噴出物が堆積したもので、サンゴ、ウミユリの化石が見られ、帝釈峡付近では最も古い地層である。
◎ 鬼の唐門・鬼の供養塔
鬼の唐門は高さ約8メートルの天然橋で、古い鍾乳洞が崩落して入り口だけが残ったものと考えられている。門の上の方に「鬼の窓」と呼ばれる4メートルほどの穴が開いている。
鬼の供養塔は、陰陽二鬼神の供養塔と言われる約10メートルの石柱である。
◎ 白雲洞
雄橋のやや上流にある鍾乳洞。遊歩道より少し登った断崖に入り口があり、200メートルほどが観光化されている。最も広い部分は高さ20メートル幅5メートルの空間がある。内部は平たんで温度も11度前後に保たれている。駐車場より遊歩道沿いに徒歩5分程度。
◎ 幻の鍾乳洞
下帝釈の神石高原町永野にある鍾乳洞で戦後は殆ど忘れ去られていた洞窟。1993年に地元の有志によって再発見され整備された。入り口は50センチメートルたらずであるが、奥行きは長い。人の手が入っていないので、水流模様のフローストーン、つらら石、石筍(せきじゅん)といった造形が豊富に残されている。入り口から740メートルまでが確認されている。途中洞内で30メートルの梯子を登るなどの難コースであり小学生3年生以下は見学不可。見学希望者は、「交流施設・ながの村」までに事前連絡が必要で、ガイド付きの見学となる。
◎ 鬼の岩屋
かつて鬼が住んでいたとされる鍾乳洞。入り口は2m程度だが奥には直径20m高さ30mの空間がある。照明は未整備であり、洞窟までの道も荒れている。
● 神竜湖(帝釈川ダム)
帝釈川ダム(たいしゃくがわだむ)は帝釈峡の峡谷中央部に建設された発電専用ダムである。人造湖である神竜湖の名称の方が有名である。
日本では最も早い時期に建設されたコンクリートダムで、1924年(大正13年)に完成している。当時は日本で最も高い堰堤を持つダムであった。2006年(平成18年)にダム再開発事業が行われ、リニューアルした。11,000キロワットの水力発電を行う発電用ダムである。
ダム及び神竜湖は峡谷のほぼ中央に位置し、比婆道後帝釈国定公園の第1種特別地域に指定されている。
神竜湖に掛かる神龍橋と桜橋は国の登録有形文化財。
● 特記事項
◎ 神竜湖遊覧船沈没事故
神竜湖の遊覧船は1934年3月24日に沈没する惨事が発生した。これは比婆郡田森村(現・庄原市東城町粟田・同市東城町竹森)の粟田尋常小学校と粟田尋常高等小学校の卒業遠足の一行42名が遊覧船に乗船したところ、船が沈没し、児童12名と引率教諭2名が犠牲になった。犠牲になった引率教諭のうち1名はわが子も乗船していたが、他の児童を優先して救助したのち、最期は力尽き親子とも亡くなったという。現在桜橋の袂に慰霊碑が建立されている。
2020年現在も、粟田小学校児童や関係者らの手によって慰霊行事が行われている。
◎ 観光上の問題点
帝釈峡はかつて雄橋や神竜湖遊覧船を目当てに集まる観光客で賑わった。大手観光会社のバスツアーなども盛んであったが、1996年落石が頻発するために遊歩道を閉鎖したところ(上記)。
● 交通
・中国自動車道、東城インターチェンジから車で約20分
● 帝釈峡が登場する作品
◎ 文学作品
・井伏鱒二『廣島風土記』。この他、倉田百三、火野葦平などの随筆にも記載がある。
◎ 映画作品
・「地獄花」(1957年、大映、鶴田浩二主演、伊藤大輔監督)。室生犀星「舌を噛み切った女」の映画化。
「帝釈峡」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』(https://ja.wikipedia.org/)
2024年12月13日15時(日本時間)現在での最新版を取得
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