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チェス(、 / šaṭranj シャトランジ)は、二人で行う盤上競技の一種であり、盤は縦横とも八列の市松模様で。
非常に古い歴史を持つゲームであり、
チェスの起源には諸説があるが、一般的には古代インドの戦争ゲーム、チャトランガが起源であると言われている。
「ルールは将棋とほぼ同じだが、取った駒を再び使うことはできない。
ゲーム理論では、二人零和有限確定完全情報ゲームに分類される。
チェスプレイヤーの間では、その文化的背景などからボードゲームであると同時に「スポーツ」でも「芸術」でも「科学」でもあるとされる、ゲームで勝つためにはこれらのセンスを総合する能力が必要であると言われている。
強豪国は、アメリカ合衆国、インド、中華人民共和国、ロシア、ドイツ、アゼルバイジャン、ウクライナ、ハンガリー、フランスなどである。
● 用具
最低限必要な物
・ チェスボード:縦横8マスずつに区切られた、64マスの市松模様の正方形の盤。「チェス盤」とも呼ばれている。
・ チェスピース:6種類の動き方が異なる駒の総称。全体の駒の数は、白黒あわせて32個。公式戦では、イギリスのジャック・オブ・ロンドンが販売したことで定着したスタントンチェスセットと呼ばれる駒が使用される。各人、キングx1、クイーンx1、ビショップx2、ナイトx2、ルークx2、ポーンx8、あわせて16個をもつ。敵味方の識別はその色で行う(将棋のように駒の向きではない。また、チェスの駒の向きは関係ない。例のナイトの駒は左向きであるが特に意味は無い。)。
公式戦などで必要になる物
・ チェス・クロック(対局時計):主に公式戦で指す場合に使用する。
・ スコアシート(棋譜用紙):公式戦では、互いのプレイヤーが駒の動きを一手一手記録する必要がある。
● チェスの遊び方(概略)
・ ゲームは2人のプレイヤーにより、チェスボードの上で行われる。
・ 白が先手、黒が後手となる。
・ 双方のプレイヤーは、交互に盤上にある自分の駒を1回ずつ動かす。パスをすることはできない。
・ 味方の駒の動ける範囲に敵の駒があれば、それを取ることができる。
・ただしポーンだけは、敵の駒を取れる範囲が通常の移動範囲と異なる。
・ 敵の駒を取った駒は、取られた駒のあったマスへ移動する。
・ これはポーンも同じだが、ポーン同士によるアンパッサンは例外である。
・ 取られた駒は盤上から取りのぞき、以降そのゲームが終わるまで使用しない。
・ ナイトと、キャスリング時のキング・ルークを除き、駒は他の駒を飛び越して移動することはできない。
・ キングは、敵の駒が利いている(直後の手で取られるような)場所には移動することができない。
・ 相手のキングに、自分の駒を利かせて取ろうとする手を「チェック」と呼ぶ。
・ この状態では、相手側は次の手ですぐにキングの安全を確保しなければならない。
・ キングが次の手で絶対に逃げられないように追い詰めたチェックのことを「チェックメイト」と呼び、この手を指したプレイヤーの勝ちになる。
・ 以下の場合はすべて引き分けとなる。
・ ルール上動かせる駒がなくなったがチェックにはなっていない状態「ステイルメイト」になった場合
・ どちらもチェックメイトができなくなるほどにコマを失った場合
・ 永久王手など、同一の局面が3回生じる千日手が指摘された場合
◎ 駒の動き
各駒は白丸の場所に動くことができる。
● チェスの歴史(概略)
・ チェスの起源は紀元前、古代インドのチャトランガだと言われている。ただしチャトランガがどのようなゲームであったかについては論争がある。詳細は「チャトランガ」を参照。
・ ペルシアに伝えられてシャトランジと名を変え、さらにヨーロッパに伝わっていった。
・ 8世紀にはロシアに伝えられ、約100年遅れて西ヨーロッパへ伝わる。
・ 15世紀末、ルイス・デ・ルセナによるヨーロッパ最初のチェスの本、「チェスの技術」が出版された。
・ 16世紀、ほぼ現在と同じルールに固定された。「アンパッサン」、「ツークツワンク」、「キャスリング」などの用語がヨーロッパ各地の言語で生まれていることからもわかるように、ヨーロッパ各地でルールが発展していった。
・ 17世紀には、チェスは娯楽として普及。資産家をスポンサーとして競技されるようになる。
・ 1749年、フィリドールが『フィリドールの解析』を著し、「ポーンはチェスの魂である」との言葉を残す。
・ 1857年、ポール・モーフィーが、アメリカのチェス大会で優勝。翌年ヨーロッパに渡り、ここでも圧倒的勝利を収めている。
・ 1886年、ヴィルヘルム・シュタイニッツがツケルトートを破り、「公式」な世界チャンピオンとなる。
・ 1927年、アレヒン(ロシア出身だがロシア革命でフランスに亡命しフランスに帰化)がホセ・ラウル・カパブランカに勝利し世界チャンピオンになる。飲酒などで一旦タイトルを失うが1937年にタイトルを奪回、1946年に死去するまでチャンピオンの地位にあった。このアレヒン以降は、ソ連-ロシアのプレーヤーがチャンピオンを保持し続ける時代が長かった。
・ 1972年、ボビー・フィッシャーが、ボリス・スパスキーを破ってチャンピオンの座に就く。フィッシャーは「米国の英雄」とも呼ばれたが、1975年防衛戦の実施方法を巡ってFIDEと対立。タイトルを剥奪された。
・ 1997年、FIDEは国際オリンピック委員会(IOC)の勧告を受け入れ、挑戦者制をトーナメント制に改めた。
・ 2000年、インドのアナンドが優勝。初めてチェス発祥の地にチャンピオンが誕生した。
● 戦い方
チェスの戦いは、基本的に「戦略(Strategy)」と「戦術(Tactics)」の2つの面で考えられる。「戦略」は、局面を正しく評価し、長期的な視野に立って計画を立てて戦うことである。「戦術」は、より短期的な数手程度の作戦を示し、「手筋」などとも呼ばれる。戦略と戦術は、完全に切り離して考えられるものではない。多くの戦略的な目標は戦術によって達成されること、戦術的なチャンスはそれまでの戦略の結果として得られることが多いからである。
◎ 駒の配置
ゲームの目的は、相手のキングを詰めることである。したがって、まず有利な局面を作ることが目標とされる。局面の優劣を評価する上で重要な要素は、駒を得すること(マテリアルアドバンテージ)と、駒がよい位置を占めること(ポジショナルアドバンテージ)である。
○ マテリアルアドバンテージ
取られた駒を永久に排除されるチェスにおいては、相手より駒が多いか少ないかが重要な意味をもつ。駒の価値は目安として、ポーン = 1点、ナイト = 3点、ビショップ = 3点強、ルーク = 5点、クイーン = 9点とされ、合計点数が1点でも違うと、特に終盤では大きな差となる。合計点数が多いことを、マテリアルアドバンテージ(material advantage)をもつという。多くの場合ポーン(P)を1個多く奪われることは、勝敗に大きく影響する。終盤では、ポーンがクイーンになるプロモーションの争いとなることが多いからである。このため、7段目に進んだポーンを3点に評価する考え方もある。またビショップは盤上半数のマスには進めないため、自分にだけ2つのビショップが揃っている場合は6点ではなく7点近くに評価する考え方もある。これをツービショップ、またはビショップペアという。
○ ポーンの形
・ ポーンは後退できない駒なので、前進には慎重さを要する。動きの制約が最も大きく狙われても容易に逃げることができないので、ポーンが狙われにくい配置であることが重要である。
・ ポーンによってキングを安全にし、他の駒のための空間を確保し、重要なマスを支配することも大きな要素である。
◎ 戦術
戦術は、1手から数手程度で完結する短期的な戦い方の技術である。戦術では「先を読む」ことが重要で、コンピュータが得意とする分野である。戦術においてよく用いられる基本的な手段としては、フォーク(両取り)、ピン、ディスカバードアタック、スキュア(串刺し)、ツークツワンクなどがある。戦術のなかでも、駒の犠牲を払って優位な形やチェックメイトを狙うものは、「コンビネーション」と呼ばれている。
◎ ゲーム全体の流れ
チェスの1局は、序盤・中盤・終盤の3つの局面に分けて考えられることが多い。序盤 (Opening) は多くの場合、開始10手から25手程度を指し、対局者が戦いに備えて駒を展開する局面である。中盤 (middlegame) は多くの駒が展開され、局面を優位にコントロールするために様々な戦術が用いられる。終盤 (endgame) は、大部分の駒が交換され盤上から無くなった局面で、キングが戦いにおいて重要な役割を担う。盤上の駒の数がゲームの進行に伴って不可逆的に減少するチェスにおいては、駒の数が減った場合における完全解析のプロジェクトが進行しており、2018年までに「白黒双方のキングと残り5駒を加えた盤上7駒」までの状況について完全解析が完了し、「テーブルベース」としてデータベース化されている。
チェスの戦い方を表す格言として、「序盤は本のように、中盤は奇術師のように、終盤は機械のように指せ」という言葉がある。これは序盤を既に確立された序盤定跡に忠実に従うことを「本」、中盤以降は記憶に頼ることが難しくなるため、そこで要求される巧みさや機転を「奇術」にたとえている。終盤の「機械」とは、特にチェックを意識する最終盤における読みの深さ、ミスを犯さない冷静沈着な精神などを指す。
◎ 形勢判断
前述の通り、形勢判断に最も重要な要素は、残存戦力、すなわち残っている駒の数である。次いで駒の働き、キングの安全性が判断材料となる。
◎ 序盤
・ 序盤定跡
・ 序盤定跡については、Batsford Chess Openings 2 (BCO2) や、Modern Chess Openings(MCO) が詳しい。
・ 序盤の原則
・ 中央支配
・中央を支配することは要点の一つである。中央を支配することによって陣地が広がるので、自分の駒は移動の選択肢が増え、相手(敵)の駒は移動の選択肢が少なくなる。
・白の二つのポーンが d4 と e4 に並ぶか、c4, d4 または e4, f4 に並ぶファランクスは白にとって一つの理想であり、最初の数手はこれをめぐる争いであることが多い。定跡 Queen's Gambit Declined (1. d4 d5 2.c4 e6) の 2.c4 (gambit) は、もし黒が 2.… dxc4 と取れば 3. e4 としてファランクスを作る意図であるし、そうしない 2. … e6 (declined) は、中央を守ろうとするものである。
・ マイナーピースの展開とイニシャティブ
・数多くのマイナーピース(ナイトとビショップ)を早く中央寄りに繰り出すことも重要である。最初の位置よりも中央寄りであるほうが、利きが及ぶ点が多く、駒の力を活かすことになる。
・さらに、敵の駒に利きを及ぼすことによって、敵の手が制限されてくる。狙われた駒が守られていない駒ならば、それを守る手が必要になるし、狙われた駒が既に守られている駒であっても、その駒を守っている駒が動かせなくなるという制限を受けることになる。つまり、敵の手の選択肢が減ってくる。このような状態をイニシャティブを取った状態という。
・Ruy Lopezの 1. e4 e5 2. Nf3 Nc6 3. Bb5 という動きはこれらの原則の典型である。
● 競技人口
2018年現在、世界全体でルールを知る人は推定約7億人とされ、もっとも広く親しまれているゲームのひとつである。世界チェス連盟 (FIDE) 所属の登録競技者数は2018年現在で36万人である。
● チェストーナメント
チェス・トーナメントは勝者となる個人またはチームを決定するために競技形式で行われる一連のチェス対局である。
1851年にロンドンにて開催された最初の国際チェス・トーナメント以来、チェス・トーナメントは競技者らが真剣に競うための標準的な競技形式となった。
現在、個人競技として最も広く認知されているチェス・トーナメントはCandidates TournamentおよびTata Steel Chess Tournamentである。チーム戦として最大規模のチェス・トーナメントはチェス・オリンピアードであり、選手らはオリンピックの競技のごとく、自国の代表として競技に臨む。
ほとんどのチェス・トーナメントは、世界チェス連盟(FIDE)のハンドブックに掲載されている大会運営に関する指針と規則に基づき組織、運営されている。チェス・トーナメントは主に、総当たり方式、スイス式トーナメント方式、あるいは勝ち抜き方式のいずれかによって開催され、勝者を決定する。
1960年代以降、時折チェス・コンピュータが人間のトーナメントに参加することもあったが、今日ではそれは稀である。
:チェストーナメント英語版参照
::en:List of strong chess tournaments(世界最強のプレーヤーが集った歴代のトーナメントのリスト)も参照。
● レーティング
チェスのレーティング(chess rating)はプレイヤーの棋力を数値で表現するものであり、過去の棋戦での成績に基づき他のプレイヤーと対戦した時の予想される成績を数値で表現するものである。
最も広く使われているのはEloレーティングシステムである。高い数値ほど棋力が高いことを示し、一般的に400から2000代の数値で表現される。CHESS POWERによると、2800が世界チャンピオンのレベル、2500がグランドマスター(GM)、2400が国際マスター(IM)、2300が国内マスターのレベルである。
◎ Elo算出法
Eloレーティングシステムは、対戦相手のレート、ゲームの結果、K-factorなどの要素を考慮し、プレイヤーの新しいレートを算出する。対戦相手のレートが高いほど、勝った場合に得られるポイントが多く、負けた場合に失うポイントが少ない。また、新しいプレイヤーはK-factorが高いため、レートが速く変化する。
算出のための数式は次のとおり である。日本では、ICCF公認のJCCA(日本通信チェス協会) が管理している。
・ JCCAは、以前はJPCA(日本郵便チェス協会) と呼ばれていた。
・ インターネットが普及する以前は郵便でのやりとりが多かったため、日本では「郵便チェス」の名で親しまれていた。現在はEメールやWebサーバを使用しての対局が多くなり、変更された組織の正式名称にあわせて「通信チェス」と呼ばれている。
◎ 通信チェスの特徴
対局は同時刻に行われず、双方が一手一手異なる時間帯にプレイする。
持ち時間が時間 (Hour) ではなく、日数 (Day) 単位で規定されている。
ゲームの対局中でも、書籍やデータベース・ソフトの利用が公認されている。
● コンピュータ・チェス
機械類にチェスをさせるという試みは、いわゆるコンピュータが発明される以前から行なわれており、コンピュータが発明されてからはコンピュータのソフトウェアにチェスを指させるコンピュータチェスが考案された。
◎ コンピュータ・チェスの考案
機械にチェスを指させることは、コンピュータが発明される以前から人々の目標となっていた。
1769年にハンガリーのヴォルフガング・フォン・ケンペレンはトルコ人という名の人形を製作した。この人形は、熟練者級のチェスの腕を持ち、ナイト・ツアーをこなすこともできた。しかし、実際にはトルコ人は中に人間が入って操作するイリュージョンであった。チェスを指す人形を題材にしたイリュージョンは、他にもやなど様々なものがあった。
1840年代に数学者のチャールズ・バベッジは、機械にゲームをプレイさせるためのアルゴリズムを考案した。しかし、チェスのような複雑なゲームをプレイさせることは現実的ではないとして、チェスのアルゴリズムの考案を断念した。
1912年、スペインの技術者レオナルド・トーレス・ケベードが、世界で初めて自動でチェスをプレイする機械「エル・アヘドレシスタ」の開発に成功した。エル・アヘドレシスタは、3種類の駒のみで構成されたエンドゲームをプレイすることができた。一方、初期配置からチェックメイトまでを通してプレイするためにはコンピュータ科学の発展を俟たなければならなかった。
1936年に数学者のアラン・チューリングが抽象的なコンピュータの概念であるチューリングマシンを考案すると、これを機に様々なアルゴリズムが整備されるようになり、1945年にドイツのコンラート・ツーゼがチェスプログラムのアルゴリズムについて世界で初めて言及した。1949年、ベル研究所のクロード・シャノンが評価関数や探索木などの概念を確立し、チェスのアルゴリズムの大枠を完成させた。1951年にはチューリングがチェスのアルゴリズムに基づき、初期配置からチェックメイトまでのプレイができることを示した。もっとも、これらのチェスアルゴリズムは、電子的に実装されたものではなく、アルゴリズムの手順に従って紙と鉛筆を使って手計算を繰り返すことで、チェスのプレイが可能であることを示したものである。
1945年に数学者のジョン・フォン・ノイマンがノイマン型コンピュータを考案し、チューリングマシンを具体化する方法を提示すると、電子回路によってコンピュータを実装することが可能になり、1950年代前半にかけて、コンピュータが次々と製作された。コンピュータが制作されたことでツーゼ、シャノン、チューリングらが考案したチェスアルゴリズムを電子的に動作させることができるようになり、1956年、ロスアラモス研究所がコンピュータ上で6×6のミニチュアボードでチェスをプレイするプログラムを実装した。これにより、コンピュータ・チェスが確立した。
◎ コンピュータ・チェスの発展
黎明期の1950年代のチェスプログラムはとても弱く、人間の頭脳で判断すればすぐに愚かなものだと判断がつくような手を連発するものが多く、人間の中級者(どころか初心者)でも簡単に打ち負かすことができるようなマシン(プログラム)ばかりであった。最も強い部類でもMac Hack VI(マックハック)でせいぜいレーティングは1670と言われる程度にすぎなかった。当時、果たして将来的にでも人間の一流プレーヤーを破ることができるようなプログラムができるのか、という点に関して非常に疑問視されていた。1968年にはインターナショナル・マスターのデイヴィッド・レヴィは「今後10年以内に自分を破るようなコンピュータは現れない」というほうに賭ける賭けを行い、実際1978年に当時最強の<チェス4.7>と対戦し、それに勝った。ただし、当時レヴィは遠くない未来に自分を越えるコンピュータが現れるかもしれない、との感想を漏らした。そして、レヴィがエキシビションマッチでディープ・ソートに敗れたのは1989年のことであった。
コンピュータと人間の力関係の象徴的なものとして世界中の注目を集め、そして結果として人々に深い印象を残したのは、IBMのディープ・ブルーとガルリ・カスパロフの対戦であった。1996年に両者の対戦が行われたところ、6戦の戦績として、カスパロフ(人間の世界チャンピオン)の側の3勝1敗2引き分けで、人間側の勝利であった(人間の世界チャンピオンの頭脳のほうが、世界最強のチェスマシンよりも強いことを知り喜んだり快く思う人、「ほっとした」人も多かった)。ただし、コンピュータチェスを推進する人々からは、初めて人間の世界チャンピオンから1局であれ勝利を収めた、という点は評価された。1997年、ディープ・ブルーが再度ガルリ・カスパロフと対戦し、ようやく初めて世界チャンピオンに勝利を収め、コンピュータチェスの歴史に残る大きな節目(あるいは人類の意味の歴史の一こま)として大々的に報道された。勝利したIBM側は、格好の宣伝材料としてこの出来事を利用し、すぐにディープ・ブルーを解体してしまい、それとの再戦(リベンジ戦、名誉回復戦)はできない状態にしてしまった。
その後のコンピュータと人間の対戦の際立ったものを挙げると、2002年10月に行われたウラジーミル・クラムニク(露)とコンピュータソフト「ディープ・フリッツ」とのマッチでは、両者が引き分け、2003年01月26日から2月7日までニューヨークで行なわれたカスパロフと「ディープ・ジュニア」とのマッチも、1勝1敗4引き分けで両者引き分けに終わり、2003年11月11日から11月18日まで行なわれたカスパロフと「X3Dフリッツ」のマッチも、1勝1敗2引き分けで両者引き分けに終わったこと、また2006年10月に統一世界チャンピオンとなったクラムニクとディープ・フリッツとの6ゲームマッチが、2006年11月25日から12月5日までボンで行なわれ、ディープ・フリッツが2勝4引き分けでマッチに勝ったことなどが挙げられよう。
こうして、今日では人間のチャンピオン対コンピュータの対戦もよく行われている。また上記のような特殊なチェス専用マシンでなくても、市販のPCやスマートフォン上で走るチェスプログラムも強力となっており、対戦して楽しんでいるファンも多い。
● チェスのゲーム学的特性、数学的特性
ゲーム理論では、チェスのようなゲームは二人零和有限確定完全情報ゲームに分類される。理論上は完全な先読みが可能であるこの種のゲームでは、双方のプレーヤーがルール上可能なあらゆる着手の中から最善手を突き詰めた場合、先手必勝、後手必勝、ないし引き分けのいずれかの結果が最初から決まってしまうことがエルンスト・ツェルメロによって証明されている。
チェスの盤面状態の種類は10程度、ゲーム木の複雑性は10程度と見積もられている。
他のゲームでは、盤面状態の種類は、チェッカーが1020程度、リバーシが1028程度、シャンチーが1048程度、将棋が1071程度、囲碁が10170程度 となっており、チェスは、囲碁、将棋の次に大きな値である。
同様に、ゲーム木複雑性は、チェッカーが1031程度、リバーシが1058程度、シャンチーが10150程度、将棋が10226程度、囲碁が10400程度となっており、チェスは囲碁、将棋、シャンチーの次に大きな値である。
チェスの初手から最終手までにルール上可能な着手は、1950年にクロード・シャノン によって10と試算されている。
● 各国の状況
国別のランキングはFIDEにより、その国の上位10名のチェスプレイヤーの平均レートを元に比較、決定されている。
◎ アメリカ
アメリカは現在、世界ランキング1位である。
2022年7月現在、アメリカには101人のグランドマスターがいる。
アメリカはチェス人口の裾野が広く、2024年第四四半期に行われた調査に回答した米国内の人々の56%がチェスを楽しんでいる。アメリカではチェスは学校の公式の授業で教えられることもある。また学校の放課後に教えられたり、コミュニティーセンターなどでも教えられている。
アメリカ合衆国チェス連盟(United States Chess Federation, USCF)がFIDE加盟のアメリカ代表チェス団体。アメリカ合衆国チェス連盟(以下USCFと表記)は、110,000人のメンバーを擁し、USCFに加盟しているチェスクラブやチェス組織は1,300を数える。USCFのもとで、一年あたり10,000のトーナメントが開催され、約50万試合が行われている。
All India Chess Federation(AICF)がFIDEに加盟しているインドの公式チェス団体である。1951年設立。2024年現在で、3万5千人を超えるアクティブでFIDEレートを持つチェスプレーヤーが所属している。AICFには30以上の州協会も加盟しており、10の特別会員も所属している。
インドはチェスの前身となったチャトランガを6世紀のグプタ朝期に生んだ国であり、チェスとの関係が深く長い。なお、18世紀や19世紀のインドでは、Indian chessという、現代世界で広くプレイされているチェスとは異なる、インド独特のチェスがプレイされていた。インドではチェスはポピュラーである。インドの親は子供がチェスに熱中していると、知的に優れ学校の試験でも高得点を取るようになると見なし応援する傾向がある。インドの学校では、放課後の活動としてチェスをしている子供も多く、多くの学校が定期的にチェストーナメントを開催している、普及が難しい。
両者は基本的なルールが似ていることから、チェスは西洋将棋または国際将棋と訳されることがある
。
FIDE加盟の日本のチェス団体は日本チェス連盟(NCS)で、会員数は937名(2025年)。
日本国内はチェスに関してまだまだ発展途上の状況であり、日本国内在住の日本人に今(2025年現在)のところグランドマスターはいない。
個人の世界ランキングとしては、2019年3月時点で羽生善治(将棋九段)が世界3295位、2020年11月時点で小島慎也選手が世界2553位。
2020年のレーティングは、ベトナム出身で日本籍のチャン・タン・トゥーが2546、小島慎也が2490、青嶋未来が2471、山田弘平が2116。
なお、同年のFIDEによる「日本人非アクティブプレーヤー部門」のレーティングでは、羽生善治(将棋九段)が2399、森内俊之(将棋九段)が2310。
2024年の日本のランキングは84位の状態で、日本代表チームには、ベトナム出身で日本籍で日本ランキング最上位のチャン・タン・トゥーのほか、南條遼介、小島慎也、山田弘平、さらに将棋棋士の青嶋未来が加わり、それぞれグランドマスターに勝った経験もあり、今までで最強のオープンチームでオリンピアードにのぞむことになり、大いに盛り上がった。
なお、日本国外に移住した日本人、すなわち日系人の子や孫にはグランドマスターが何人もいる。→日系人の状況
● 各民族のチェスの状況
◎ ユダヤ人とチェスの関係
ユダヤ人とチェスの関係については論文も執筆されている。
ユダヤ人は、ユダヤ系ハザール人を通じてチェスの拡散に関与した。中世スペインにはユダヤ人のチェスに関する著述があり、チェスの中世ヨーロッパにおける発展にユダヤ人が一定の影響を及ぼした可能性を示している。さらに、ヘブライ文学にはチェスへの言及ならびにそれに関する歴史的背景資料も残されている。
主要な典拠のひとつの著者にユダ・ハ・レヴィがおり、彼は著作『ハ・クザリ』において、ヨーロッパにおける最初期の重要なチェスへの言及を残している。また、『ディシプリナ・クレリカリス(Disciplina Clericalis)』は、11世紀から12世紀にかけて、ユダヤ人がチェスをヨーロッパへ伝播する過程で果たした役割の一例である
ジョエル・ローティエ(Joël Lautier) - フランスの元チャンピオン。カスパロフにも勝利した経験がある。カナダ出身で、母が日本人、父がフランス人。
● 各言語のチェス情報
英語やドイツ語やフランス語などヨーロッパ諸語による情報が圧倒的に豊富である。日本語の情報はきわめて少ない。
◎ 英語
英語でチェスについて書かれた本は数万点以上ある。英語圏で英語のチェス本を購入できるインターネット通販には、有名どころとしては、Amazon.comのほかAbeBooksのネット通販サイト、 バーンズアンドノーブル Barnes & Nobleのネット通販サイト 等々がある。
例えばAmazon.comで、書籍のみ選びチェス盤などを避けるために、検索窓左側の商品種にBooksを選択し、キーワード「Chess」で検索すると、該当し購入できるチェスの本は4万種を超える。
Amazon.comで 「Chess Strategy」(チェスの戦略)というキーワードに該当する本は7,000種を超える。「Chess Opening」(オープニング、序盤戦)に該当する本は5,000種以上、「Chess Middle Game」(中盤戦)に該当する本が330種以上、「Chess Endgame」(終盤戦)に該当する本が1000種以上購入可能である。「Chess Puzzle」(詰めチェス)に該当する本も10,000種を超える。
「chess beginner」(初心者)に該当する本は4,000種を越え、「Chess, Advanced」(上級者)に該当する本は2,000を超える。
◎ ドイツ語
ドイツ向けアマゾンAmazon.deで商品種にBooksを選択し、キーワード「Schach」(チェス)で該当する本は3万種を超える。
「Schach Eröffnung」(チェス オープニング)に該当する本は910種、「Schach Mittelspiel」(チェス 中盤戦)が133種、「Schach endspiel」(チェス 終盤戦)が300種。
◎ フランス語
フランス向けアマゾンAmazon.frで商品種にLivre(書籍)を選択しキーワード「échecs」(チェス)に該当する本は3万種を超える。
◎ 日本語
日本語のチェス文献はかなり乏しい。羽生善治は将棋9段のトッププロ棋士で趣味でチェスを指しFIDEマスター位を有する日本国内屈指の強豪であるが、羽生は2005年の著書『上達するヒント』の中で、「私は趣味でチェスをするのですが、日本ではプレイする人が少ないので、母国語(日本語)のチェスの本はほとんど出版されていません。ですから、海外で将棋を愛好する人達が母国語の将棋の本がとても少なく、情報が少なくて物足りない気持ちは十分理解できるつもりです。」と記した。
実際、日本国内向けのアマゾンであるAmazon.co.jpの日本語本の検索で「チェス」と入力・検索して表示される本はわずか440弱しか無い。中小の出版社による書籍や自費出版の本で、一部は電子書籍化されたものである。
紀伊国屋書店のインターネット通販サイトで「和書」を選択した状態で「チェス 戦略」で検索されるのは172件、「チェス 戦術」で検索されるのはわずか14件前後。「チェス オープニング」で検索されるのはわずか2件、「チェス 中盤戦」でわずか1件、「チェス 終盤戦」でわずか6件である。
日本語の書籍はこのような状況であり、とりあえず初心者、あるいは中級者程度になるための情報はあるものの、ランキング国内上位や世界で戦うレベルを目指す上級者の人々にとっては、羽生の言葉を借りれば"物足りない"状態(もっと率直に言えば、全然足りない状態、世界と互角に戦うための情報を全く提供できない状態)に見えており、上級者向けの戦略・戦術など深堀りした知識や近年の国際トーナメントの棋譜も踏まえた新しい戦略・戦術的知識を日本語で得ることは諦めざるを得ず、上級者は英語のチェス本を収集することが一般的である。たとえば将棋九段で2020年にチェスのレーティングが2310となった森内俊之も、天井に届きそうな背の高い本棚全部がチェスの戦術書で埋められ、そのほとんどが英文のものとなった
○ チェスの場面がある作品
・ 第七の封印(1957年のスウェーデン映画)
・ 007 ロシアより愛をこめて(1963年)
・ 2001年宇宙の旅(1968年) - 宇宙船を制御するコンピュータである「HAL 9000」が船員を相手にチェスを指す場面がある。チェスで人間を負かす程の知能を持つHAL 9000は、後に船員に対して反乱を起こす。
・ 華麗なる賭け(1968年、アメリカ映画)
・ チェスをする人:en:The Chess Players (film)(1977年、インド映画、サタジット・レイ監督)
・ ブレードランナー(1982年、アメリカ映画)
・ 美しき獲物 (1992年)- 原題はKnight Movesで、チェスの世界選手権大会が行われている島で発生した連続殺人事件を描いたサスペンス・スリラー。なお007シリーズの『美しき獲物たち』とは異なる。
・ ショーシャンクの空に(1994年、アメリカ映画) - 受刑者がチェスの駒を作る。ただし、その出来上がりを示すシーンで、チェス盤の配置が90度ズレている。
・ ハリー・ポッターと賢者の石(2001年、イギリス映画) - 原作小説、および映画のクライマックスで、敵対者の元へ向かうため主人公らが人間を駒に見立てたチェスを行う場面がある。
・ キューブ ゼロ(CUBE ZERO)(2004年、カナダ映画)
・ デスノート(2006年、日本映画) - 映画版には、自分自身が黒幕であることを隠して警察に協力する主人公と、それを暴こうとする好敵手が、チェスで勝負を繰り広げる場面がある。
・ デスノート the Last name
・ 相棒 -劇場版- 絶体絶命 42.195km 東京ビッグシティマラソン(2008年、日本映画)
・ ご注文はうさぎですか?(2017年、日本映画)
◎ テレビ
○ チェスを主題とした作品
・「屋台でうまれた“チェス王子”-インドネシア ブカシ-」(2009年放映、NHKのドキュメンタリー「アジアンスマイル」の一話)
・ クイーンズ・ギャンビット - 2020年のNetflixオリジナルドラマ
○ チェスの場面がある作品
・ End game〜天才バラガンの推理ゲーム〜 - 主人公がチェスの前チャンピオン。
・ スパイ大作戦(シーズン2)「王手」
・ 刑事コロンボ第16話「断たれた音」
・ スケバン刑事II 少女鉄仮面伝説第13話「白銀の決闘 スキー場は大パニック」 - 主要登場人物の矢島雪乃がチェス大会に出場する。
・ 相棒 - 主人公・杉下右京の趣味として随所に登場。特にシーズン14のオープニングには対局シーンが使われている。
・ CSI:科学捜査班(シーズン14)第16話「破滅の王者」
・ コールドケース 迷宮事件簿(シーズン2)第19話「チェス」
・ NUMBERS 天才数学者の事件ファイル(シーズン4)14話「死のチェックメイト」
・ メンタリスト(シーズン2)「赤い鼻の恐怖」
・ クリミナル・マインド FBI行動分析課(シーズン5)第12話「人形の館」・(シーズン7)第11話「天才vs.天才」・(シーズン8)第12話「ツークツワンク」~第24話「レプリケーターの正体」 - シーズン8後半はツークツワンクというチェス用語がキーワードになる。また主要キャラにチェスを得意とするキャラが2人おり、これら以外でもチェスをしているシーンが多い。
・ 明治開化 新十郎探偵帖(2020〜2021年、NHK BSプレミアム)
◎ 漫画
○ チェスを主題とした作品
・ 雪リコ『チェックメイト』
・ 磯見仁月『クロノ・モノクローム』
・ 若松卓宏『盤上のポラリス』
○ チェスの場面がある作品
・ 山本亜季『HUMANITASヒューマニタス』第2章「冷戦下・旧ソ連のチェス王者・ユーリ」
・ 三条陸(原作)、稲田浩司(作画)、堀井雄二(監修)『DRAGON QUEST -ダイの大冒険-』 - 大魔王が嗜んでいるほか、作中ではチェスの駒をもとに、ハドラー親衛騎団と呼ばれる五体の金属生命体が生み出される。アニメ放送期間中にはファン向けにシルバー製チェスセットが数量限定販売された。
・ さいとう・たかお「ゴルゴ13」
・「チェックメイト」(第117話)マフィアのボスが棋譜を読みながら駒を進めたり、来客者と対局を楽しむ描写がある。
・「メイティング・マテリアル」(第269話)投資会社の社長がボディガードとの対局やインターネットでの対局(作品が描かれたのは1987年で当時はチャットで対局を行っていた。)を行う描写がある。
◎ アニメーション
・ カウボーイビバップ(Session14「ボヘミアン・ラプソディ」)
・ コードギアス 反逆のルルーシュ - 主人公の特技はチェスという設定があり、作戦行動をチェスの戦局に例えるなど、様々な場面でチェスの用語やチェスセットが象徴的に登場する。対局の場面もある。
・ ダーティペア(テレビ版)第24話
・ ノーゲーム・ノーライフ
・ ルパン三世 - ルパン三世 (TV第2シリーズ)でチェスを行うシーンが多い。22話ではコンピュータチェスとルパン三世が対決するシーンがある(ルパンの負け、コンピューターはルパンによってスクラップに)。ほか57話でもハンター教授がコンピュータチェスで対戦している他、ルパンが「泥棒とチェス(勝負)は終わってみるまでわからない」というシーンもある。
・ ペンギン・ハイウェイ
・ 涼宮ハルヒの憂鬱
「チェス」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』(https://ja.wikipedia.org/)
2025年7月1日16時(日本時間)現在での最新版を取得
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