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ウィンドサーフィンとは、セイルボード(以降、略してボード)とセイルを接続した専用の道具を使用して水面を滑走するウォータースポーツである。セイルボート(セーリング)とサーフィンを融合・発展させたスポーツである。セーリングの原理を利用する乗り物の一種。 ウィンドサーフィンをする人のことをウィンドサーファーという。
● 歴史
ウィンドサーフィンは、1967年アメリカのカリフォルニアでジム・ドレイク (Jim Drake) とホイル・シュワイツァー (Hoyle Schweitzer) により発案され、1968年11月に初めて試乗がなされた。当初は「ボードセイリング」というのがこのスポーツの名称であったが、2005年にこのスポーツの中心的組織となるPWA (Professional Windsurfers Association) が発足し、その以降は「ウィンドサーフィン」が正式名称となっている。
ウィンドサーフィンの道具(詳細は後述の「道具の構成」を参照)は、開発当初は長さが360cmでサーフィンのロングボードと似た形状で付きのセイルボードと専用リグが一体となった一種類のみで、開発時のプロトタイプは「SK8」、1969年2月には「WINDSURFER」(以下「サーファー艇」)という名称があたえられ、同年9月には販売が開始された。これが現在の「ロングボード」の原形となっている。
ウィンドサーフィンの人気は、発祥地アメリカ本土から1971年1月にはハワイオアフ島に伝わり、後に「カイルア・キッド」と呼ばれる青年団を中心として、また、ヨーロッパでは1972年2月にスウェーデンを皮切りとして広がりを見せ、同年の9月にはドイツのズィルト島でレースが開催されるまでとなる。1974年には日本の鎌倉海岸、ハワイので大会が開催されるまでになった。
1980年にはハワイ・オアフ島のダイアモンドヘッドで、ラリー・スタンレー (Larry Stanley) とマイク・ホーガン (Mike Horgan) がサーファー艇を改良し、波を利用してウェイブ・ライド(波乗り)とジャンプが行えるボードで後にファンボードと呼ばれるボードの原形を創作し試乗に成功する。これが現在の「ショートボード」の原形となっている。
その後、ファンボード開発は革新的に進み、サーフボードと似た外形へと転向していくとともに軽量化が推進していく。また、セイルもボードの軽量短小化による運動性の向上に適応するよう改良され、ヨット同様の風を孕ませる形状で柔らかいダクロン製から、ウィンドサーフィン独自のバテンを配した形状で型崩れが少なく硬いフィルム製へと構造変更がなされていった。
ウィンドサーフィンはこのショートボードという型式が開発されたことにより、水面を滑走する「プレーニング」(詳細は後述)が行えるものとなり、走行速度も格段に向上していった。プレーニングの高速性を利用して能動的に波をとらえる動作幅も拡がり、スピード系統と併せてアクション系統の道具も開発されてゆくこととなる。この後数年間は、スピード系統のファンボードはで、他方アクション系統のファンボードはダイアモンドヘッドを中心として開発が進められた。
現在、セイルボードを中心とした道具類は、世界各国で開催されるワールドカップや国際大会の競技種目に準拠して開発されているが、ショートボードの誕生から現在に至るまで、ロングボードとショートボードは別のカテゴリとして住み分けがされており、各々で組織形成がなされている。
なお、国際大会は、2018年現在ではPWAとIOC(国際オリンピック委員会)の他にIWA(国際ウインドサーフィン協会)・ISAF(国際セーリング連盟)の主催で世界各地を転戦するワールドツアー形式により開催されている。日本における国際大会は、PWAの前身組織であるPBA (Professional Boardsailers Association) の主催で1984年から1993年の間にワールドカップの名称にて静岡県榛原郡御前崎町(現御前崎市)の白羽海岸で開催された。その後、2017年からPWAの主催により神奈川県三浦市、横須賀市の津久井浜にてワールドカップが再開されている。
● 概要
◇進行原理
ウィンドサーフィンはセイルに風を受けて進む
。飛行機の翼は水平だから垂直方向に揚力が働くが、ウィンドサーフィンはセイルを立てているので水平方向に揚力が働く。ヨットは、船体に対して大きな比率のキールを備えられるため抗力が大きく、風上方向45度に走行できるのに対して、ウィンドサーフィンはフィンが小さくボードも(軽くて)横から見た水中の面積が小さいため抗力が小さく、横流れする割合が大きいため、風上方向への上限角度は小さくなる傾向がある。風上方向への上限角度は、技量、使用する道具、風波の状態などの様々な条件に影響を受けるが、初心者〜中級者向けの教科書ではおよそ15〜30度程度が目安との解説がなされている。入門者は風に対して90度方向に走行することも困難な場面もあるので、風下方向へ漂流してしまうことへの注意が必要である。
進行方向に対しての名称:風に対して垂直方向「ウィンド・アビーム」、風上方向45度「クローズ・ホールド」、風下方向45度「クウォーター・リー」、風下方向「ランニング」、風上から45度「デッドゾーン」→詳細は:en:Points of sailを参照。
◇ウインドサーフィンの走行性
ウィンドサーフィンは、ある程度以上のスピード(約25km/h)に達するとボード全体が浮上し滑走するプレーニングができる。中級者以上になると容易に50km/h以上のスピードで滑走する高速感を体験できるのがこのスポーツの最大の魅力となっている。
なお、ウィンドサーフィンにおける世界の最速記録は、フランスのアントワン・アルボー (Antoine Albeau) が2015年に500m間で53.27kts (98.66km/h) 、2023年に1海里間で44.12kts (81.71km/h) を記録し、World Sailing Speed Record Council (WSSRC) による公式記録として認定登録されている。
◇オリンピックでのウィンドサーフィン
オリンピックでは、競技者全員が「One Design」と呼ばれる認定登録された共通の道具を使用して競技が行われる。オリンピックでは、1984年第23回ロサンゼルス大会からセーリング競技の一種目として登録されており、2008年第29回北京大会では「RS:X-Windsurfer」という名称で競技が行われ、第30回ロンドン大会では、Neil Pryde社製のRS:X艇が使用された。
● 道具の構成
ウィンドサーフィンに使用する道具は、ユニバーサルジョイントにより接合させるボード部とリグ部、身体に装着する装具の3つに分類される。
詳細は以下のとおり。
◎ ボード部
ボード部は道具を水面に浮かべた状態においての下位部分のことで、セイルボード、フィン、ユニバーサルジョイントによって構成される。中・上級者はボード部のことを通称で「ボード」と呼ぶこともある。
◇ セイルボード :水上における唯一の浮体物であり走行時の移動主体となるもの。サーフボードと似た形状の合成板であるが、より強度の高い構造設計でデッキ部の中央にはジョイントボックス、後方にはフットストラップが付帯される。形成された発砲素材にグラスメッシュ、カーボンメッシュを貼りつけたものをエポキシ、ポリエステル素材で覆っている。ボードはダガーボード付属の有無によりロングボードとショートボードの2種に区分され、ダガーボードが付属されるエントリーボード、ロングレースボード、オールラウンドボードはロングボードにそれ以外はショートボードに属する。ダガーボードを使用すると横流れが少なくなるため、風上方向(アップウィンド)への走行性能が向上するが、水面抵抗が大きくなるため旋回性能と直進スピードは低下する。ボードは原則として自身の体重およびリグ重量を支えるのに必要な浮力を計算し、その浮力を確保できる体積(リットル (L) =船舶での「排水量」にあたる。)のものを選択するが、入門段階ではより浮力が大きく安定性の高いものを、中級者以上では体重とリグ重量の条件に加えて風況・海面状況と乗る目的に応じたものを選択する。ボードは様々な体積と使用用途に対応させるため、幅50〜110cm、長さ220〜390cmのものが製造販売されている。
◇ フィン :ボードのボトム部後方に接続するひれ状のもの。水中で水との抵抗となり横滑りを抑制することで直進性を保持し、自体に揚力を発生させてボードの推進力を促すもの。サーフィンと同様の固定する型式で船やヨットのような可動して舵を取る機能はない。G-10(エポキシ樹脂)、ポリエステル素材のものが主流となっている。真っ直ぐな形状のものは直進安定性に湾曲した形状のものは回転運動性が優れる。レースボード、スラロームボード用のものは真っ直ぐで長く、ウェイブボード用のものは湾曲して短い。フリースタイルボード用のものはその中間的な形状となっている。フィンはボードに内蔵されるフィンボックスの数により、シングルフィン(1本)からクアッドフィン(4本)(例:ツインフィン(2本)、トライフィン(3本))まで存在するが、ウェイブボード以外のボードはシングルフィンのみとなっている。ウェイブボードは波のコンディションに合わせたボードの運動性能が求められることから、ボードの特性を好みに応じて選択できるよう多種のものが開発されている。特徴はシングルフィンは直進安定性と高速性が優れ、ツインフィンは回転運動性に優れる。トライフィンやクアッドフィンはその中間的な運動性能である。
◇ ユニバーサルジョイント :リグ部とボード部を接続するためのものであるが、ただのつなぎではなく、セイルが受けたパワーをボードに伝える部分である。ボードのデッキ部に取り付けウレタン、ラバー部分が360°曲がることでリグ部を動かしたい方向に自由に操作できる構造になっている。ユニバーサルジョイントとジョイントベースで構成され、接続と取り外しがワンタッチで簡単に行える。以前は金属製でメカニカルな構造であったが、近年ではウレタン、ラバー素材の簡素な構造のものが主流となっている。このユニバーサルジョイントの存在がウィンドサーフィン独自のもので、ヨットと区別される所以となっている。:ユニバーサルジョイント(自在接手)には、ウレタン・テンドン(tendon、腱)、ラバー・テンドン等がある。テンドンの破断に備えて、安全のためのシートが付いているものの、常に点検し、使用期限に留意したい。ジョイントとマスト・エクステンションの結合の仕方には、ピンロック式とユーロピン式の二種がある。
◎ リグ部
リグ部は道具を水面に浮かべた状態においての上位部分のことで、セイル、ブーム、マスト、マストエクステンション、ハーネスラインで構成される。中・上級者はリグ部のことを通称で「セイル」と呼ぶここともある。
◇ セイル : 風の力を推進力に変える部分。帆。風を受ける主要部分(パネル)はフィルム素材、マストとバテンを通す部分(スリーブ)はクロス素材による複合設計で構成されている。近年のものはセイルが風を受ける力を効率よく推進力とするために空気力学を取り入れた飛行機の翼と似た形状設計(バテン、キャンバー・インデュサーの内蔵等)が施されており、風の強弱に対応して常に安定した推進力が得られるよう微風時には風を全面で受け止め、中・強風時にはセイル上部にねじれを生じさせて過分な風を逃がす調節機能の向上が図られている。中級者以上では複数の面積のものを所持した上で、プレーニング走行を前提とするその風況に適応する面積(m2)のものを選択するが、入門段階ではより面積が小さく軽いものを使用することが望ましい。セイルは様々な風速に対応させるため、数々の面積のものが製造・販売されており、小さいものでは子供用の1.0m2から、大きいものは大人用の9m2以上のものまで。リグの引き込みを補助する。ハーネスには3つの種類があり、ベスト型のチェスト・ハーネス、腰に巻くウェストハーネス、両足を通して穿くパンツハーネス(ヒップハーネス)となっている。スクールならば技術指導・道具・ゲレンデがそろっており心配がない。それらは (1) 反対タックの原則、 (2) 風下優先の原則、 (3) クリアスターン・クリアヘッドの原則(=追突防止) である。数多くのプロ・ウィンドサーファーがいるが、このスポーツの歴史を考慮すると「キング・オブ・ウィンドサーフィン」と呼ぶにふさわしい人物が2人いる。ひとりはウィンドサーフィンの誕生期から15年間も全てのタイトルを独占したロビー・ナッシュ。もうひとりはPWA及び前身のPBAワールドツアーで総合12連覇を達成し、圧倒的な強さを見せたビヨン・ダンカーベックである。
五十音順に記載
(男性)
・ アントワン・アルボー
・ ヴィクター・フェルナンデス・ロペス
・ カウリ・シアディ
・ ケビン・プリチャード
・ ジェイソン・ポラコウ
・ ジョッシュ・アングロ
・
・ ビヨン・ダンカーベック
・
・ フランシスコ・ゴヤ
・ ホセ・ゴリート・エストレド
・
・ ロビー・ナッシュ
(女性)
・ イバラ・ルアノ・モレノ
・ サラキタ・オフリンガ
・ ダイダ・ルアノ・モレノ
・アラン•キャディッツ
● ワールドカップ等で活躍する日本人ウィンドサーファー
五十音順に記載
(男性)
・ 飯島夏樹
・小木曽稔
・ 牧野秀紀
(女性)
・ 今井雅子
・ 佐藤素子
「ウィンドサーフィン」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』(https://ja.wikipedia.org/)
2025年2月12日1時(日本時間)現在での最新版を取得






























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