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ソフトボールは、野球と似た球技。野球から派生したスポーツであるが、野球とは投球方法、競技場の規定、使用球、ルールなどが大きく異なっており、野球と比較して狭い土地でも行うことができる。野球が盛んなアメリカや日本などをはじめとする国々で女性を中心に行われている。国際競技連盟は世界野球ソフトボール連盟(WBSC)、かつては国際ソフトボール連盟(ISF)。日本では塁球(るいきゅう)とも呼ばれる。
● 概要
野球と同じく、2つのチームが攻撃と守備を交互に繰り返して得点を取り合い、得点数の多いか少ないかに基づいて勝敗を競う競技である。点数の多いチームが勝利を手に入れる。
4つのベースは、それぞれ一塁(ファーストベース)、二塁(セカンドベース)、三塁(サードベース)、本塁(ホームベース)と呼ばれる。なお、大会やリーグによってルールの細部に相違点がある場合がある。例えば、あらかじめ定めた得点数差以上の一方的展開になった場合に途中で試合を打ち切るコールドゲームの規定などに違いがあり、それぞれの環境に最適と考えられる制度を採用している。
● 歴史
◎ ソフトボールの成立
1887年、アメリカのイリノイ州シカゴにおいてが冬季に野球を練習するためのスポーツとして考案した。当時は屋内で行われていたためインドア・ベースボールと呼ばれていたが、1920年頃には屋外でも行われるようになりプレーグラウンド・ボールと呼ばれた。1926年にコロラド州アマチュアソフトボール協会が設立されたのを機にソフトボールという名称が広まっていった。
1933年のシカゴ万国博覧会と併催で史上初の全国アマチュアソフトボール大会が開催され、直後に現在のUSAソフトボール(USAS)の前身となるアマチュアソフトボール協会(ASA)が設立された。1934年にはソフトボールの統一ルールが作られた。
◎ 世界のソフトボールの歴史
1952年に国際ソフトボール連盟(ISF)が設立され、1965年に初めての世界選手権(現・ワールドカップ)が開催された。1996年アトランタオリンピックからは女子ソフトボールがオリンピックの正式種目として採用された。
2008年の北京オリンピックを最後に、ソフトボールは野球と共にオリンピック競技から除外された。「野球・ソフトボール」としてのオリンピック競技復帰を目指すため、2013年に国際ソフトボール連盟(ISF)は国際野球連盟(IBAF)と統合され、世界野球ソフトボール連盟(WBSC)が成立した。
◎ 日本のソフトボールの歴史
日本における最初のソフトボールは、1921年(大正10年)アメリカ留学から帰国した東京高等師範学校教授の大谷武一や石黒寅次によって、学校体操科の遊戯として紹介されたことにはじまる。1927年(昭和2年)には正式に学校体育の種目に採用された。石黒寅次は、日本初の国際審判員であり、昭和天皇からの勲章をはじめ、総理大臣からも数々の賞を授与された。
第二次世界大戦後、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)は女性解放政策の一環としてソフトボールの普及を推進。1946年(昭和21年)には大阪府で講習会が開かれたほか、日本初の大会が大阪府下の12校の女子チームによって開催された。
1949年(昭和24年)、全日本軟式野球連盟(JSBB)から分離独立する形で日本ソフトボール協会(JSA)が設立。同年、第1回全日本女子ソフトボール選手権大会が開催された(男子大会は1955年)。1952年(昭和27年)には国際ソフトボール連盟(ISF)に加盟。
1968年(昭和43年)に女子ソフトボールによる日本リーグが開幕(男子リーグは1972年)。
・ NPBのパシフィック・リーグ、MLBなどで採用されているDH制を発展させた形で、DP(Designated Player 指名選手)というルールがある。
・ 打撃を専門に行うDPと、DPの守備だけを代わりに行うFP(Flex Player)(DEFO, DEFence Only)をスターティングメンバーに入れる事ができ、その場合は10名で試合を行うことになる。
・ DPを使うか使わないかは任意であるが、スターティングメンバーにDPを使わなかった場合、試合途中からDPを使うことはできない。
・ FP(DEFO)の守備位置に制限はなく、どの守備位置につかせてもよい。
・ DP・FP(DEFO)の選手にもリエントリー(再出場)が認められる。
・ DPの選手はいつでもFP(DEFO)の選手の守備も兼ねることが出来る。また、FP(DEFO)の選手はいつでもDPの選手の打撃を兼ねることが出来る。
・ DPの選手とFP(DEFO)の選手が完全に入れ替わり、DPだった選手が守備のみを、FP(DEFO)だった選手が打撃のみを行うことはできない。
・ DPはいつでもFP(DEFO)以外の選手の守備も兼務する事が出来る。但し、兼務でのスタートは認められない(プレイボール直後の申告は認められる)
・ DPが守備を兼ねた選手は打撃だけを行う。(この選手を打撃専門選手(OPO/OFFENSIVE PLAYER ONLYと呼ぶ))つまり試合から退く(打順表から抜ける)ことはなく、打順が来れば打席に立つ。
・ DPがFP(DEFO)の守備を兼務した場合はFP(DEFO)は試合から退き、試合に出場している選手は10人から9人になる。
・ FP(DEFO)がリエントリー(再出場)する場合は、10人目の守備専門選手に戻る(出場選手は9人から10人)か、DPの打撃を兼ねる(出場選手は9人のまま)かのどちらかとなる。
・ DEFOという呼称は2006年からISF(国際)ルールではフレックスプレイヤー(Flex Player)と改められた。
・ 日本でも2010年のJSAルール改正でフレックスプレイヤーと改められた。
◎ ページシステム
オリンピックやワールドカップ(旧・世界選手権)などで採用されているトーナメント方式。
・ 準決勝は予選の(A)1位と2位、(B)3位と4位が対戦し、(A)の試合の勝利チームは自動的に決勝戦へ、(B)の試合の敗者はその時点で負け抜けとなる。
・ 翌日、準決勝(C)として、(A)敗者と(B)勝者が決勝戦進出のもう1つの枠をかけて対戦し、その勝者が準決勝(A)勝者と優勝を争う。
・ 2004年のアテネ五輪では、準決勝3試合を8月22日の1日で一括して開催し、その翌日(23日)決勝を行った。
:また2006年世界選手権(北京)では予選リーグの上位8カ国(各組4位まで)が出場しているため変則な方式が採用されている。
:
・(準々決勝)
::A1位vsB2位(A)、B1位vsA2位(B)→それぞれの勝者は自動的に準決勝進出。
::A3位vsB4位(C)、B3位vsA4位(D)→それぞれの勝者は前者はAの敗者と(E)、後者はBの敗者と(F)それぞれ敗者復活戦を行いそこで勝てば準決勝進出。
::準決勝進出チームは成績上4位以上確保のため北京オリンピック出場権獲得
:
・(準決勝)
::Aの勝者vsBの勝者(G)→勝者は自動的に決勝戦進出。
::Eの勝者vsFの勝者(H)→勝者はGの敗者と3位決定戦(I)を行い、勝てば決勝戦進出。
:
・(決勝戦)
::Gの勝者vsIの勝者による対戦で優勝を決める。
::なお、中華人民共和国は当大会と北京五輪のホスト国であるため、ベスト4に入った場合には規定により準々決勝敗者復活戦におけるEの敗者vsFの敗者による5位決定戦(勝者が北京五輪出場)を行う。
● 用具
◎ ボール
競技名と同じ「ソフトボール」と呼ばれる。野球同様、本来は皮革を縫い合わせたものを使用する。いくつかの大きさがあるが、国際大会などで使用されるのは12インチのものである。色は、皮革部分、縫い糸とも白色が一般的であるが、2002年より国際ソフトボール連盟(ISF)主催の国際試合などでは、皮革部分:黄色、縫い糸:赤のものが使用されるようになった。内部の芯にはコルクやカポック繊維、発泡ポリウレタンが用いられる。
日本ではそのほかに、ゴム製のものが公式球として認められており、
・ 3号球:一般用。大きさは12インチのボールと同じで周囲が30.5 cm
・ 2号球:小学生向け。周囲は28.6 cm
・ 1号球:小学生・低学年向け。周囲は26.7 cm。小学生の体力テストの「ソフトボール投げ」はこのボールを使用している。小学生の陸上競技大会では2016年からジャベリックボール投げに変更されている。
ゴムボールも白色が基本だが、全面を黄色とするものは練習球として市販されている。実業団では革製のボールを使用しているため、グローブで受ける際ゴムよりも痛みを感じやすい。
1号ボール(ゴム)
26.70 cm ± 0.32 cm 141 g ± 5 g
2号ボール(ゴム)
28.58 cm ± 0.32 cm 163 g ± 5 g
3号ボール(ゴム)
30.48 cm ± 0.32 cm 190 g ± 5 g
3号ボール(革)
30.48 cm ± 0.32 cm 187.82 g ± 10.63 g
◎ バット
ソフトボールは野球と比較すると、野球より細いバットで打つ。
国内では、ボールに対応する3種のバットがあり、使用するボールに対応したバットを使わねばならない。
・ 3号バット:3号球を使用する場合にはこのバットを使わねばならない。なお、革ボール対応のものと、ゴムボール専用のものの区別がある。
・ 2号バット:2号球を使用する場合に使われる。
・ 1号バット:1号球を使用する場合に使われる。
材質は、木が基本で竹製なども認められているが、現在市販されている公認バットはほぼ全てアルミ等の金属製品やセラミックス製品で、グリップ部分には安全用のテープを巻くことになっている。
1号バット
78.8 cm以内 5.08 cm以内
+ 0.79 mm 1.08 kg以内 23.1 cm以上
34.6 cm以内
2号バット
81.3 cm以内 23.8 cm以上
35.8 cm以内
3号バット
86.36 cm以内 5.72 cm以内
+ 0.79 mm 25.4 cm以上
38.1 cm以内
このように各号のバットについては下限規定がない項目が多い。従って、極端な場合ではあるが、例えば長さ78.8 cm、最大直径5.150 cm、質量700 g、安全テープが34 cmのバットは1 - 3号のいずれにも適合する。無論、同一バットが複数の号の認定を受けることは出来ない。しかし、小学生の場合には現実に1号にも適合するバットが2号バットとして販売されていることが多い。従って、購入時には号数よりも長さや質量に注意して、自分に合ったものを選択することが肝要である。
● 各地域のソフトボール
アメリカ大陸のアメリカ合衆国・カナダ・プエルトリコ・キューバ・メキシコ・ベネズエラ、アジアの日本・中国・台湾・フィリピン、オセアニアのオーストラリア・ニュージーランド、ヨーロッパのオランダ・イタリア、アフリカの南アフリカ共和国・ボツワナなどで女性を中心に行われている。特にアメリカではレクリエーション・スポーツとして認識され、ソフトボール専用のフィールドも存在する。
● 国際大会
◎ オリンピック
夏季オリンピックでは、1996年アトランタオリンピックにて、女子のみが男子野球と共に正式競技になった。当初はアトランタ大会限定とされたが、その後2008年の北京大会まで開催された。
しかし、「五輪の肥大化に歯止めをかける」との国際オリンピック委員会(IOC)の方針により、2012年ロンドン大会では、野球と共に正式競技から外された。このため、関係者は2016年大会での復活を目指し、除外決定直後からPR活動を続けたものの、IOCは2009年8月13日、2016年大会の開催競技には加えないことを決定した。
これらの過程では、女子が盛んでない野球のジェンダー批判を低減するためソフトボールとの統合した国際競技連盟WBSCがつくられ統合競技「野球ソフトボール」として扱われている。競技からの除外については、共に日米などの一部主要国以外の国々(特に欧州)で普及度が高いとはいえないこと、さらに野球でメジャーリーグ選手の出場がなく、世界最高レベルの競技が行われていないことが理由とされている。復活が成らなかったのも同じ理由とされたが、当該決定において追加候補とされたゴルフは既に様々な“頂上決戦”が存在するのに、ソフトボールにとって頂上決戦は五輪しかなく、五輪で行われることによってより普及が図れるとして、関係者から異論が出された。2020年東京オリンピックでは、野球男子とソフトボール女子の1競技2種目が追加種目として、2008年北京大会以来の復帰が決定した。また、2024年パリオリンピックでは実施されないことが決定した。
◎ ワールドゲームズ
IOC後援国際競技大会のワールドゲームズでは、第1回大会のワールドゲームズ1981では男女の2種目が実施され、その次のワールドゲームズ1985では女子1種目が実施された。オリンピックから除外されたのちのワールドゲームズ2009、ワールドゲームズ2013では女子種目が公開競技として実施された。ワールドゲームズ2022では女子種目が正式競技として実施され、ワールドゲームズ2025では男女の2種目が正式競技として実施される。
◎ WBSC女子ソフトボールワールドカップ
世界野球ソフトボール連盟(WBSC)が主催している国際大会。旧称「世界女子ソフトボール選手権」。U-18(18歳以下)、U-15(15歳以下)の大会もある。
1965年に初開催は例年2-6月にかけて開催される。2-5月にかけて各カンファレンス大会を実施後、64チームが5-6月に開催される全国大会に駒を進める。そこで勝ち残った8チームが、6月上旬にオクラホマシティにあるアメリカソフトボール殿堂博物館に隣接するデヴォン・パークで行われるウィメンズ・カレッジ・ワールドシリーズ(WCWS)に進出する。伝統的にUCLAとアリゾナ大学が好成績を収めているが、近年はオクラホマ大学も台頭している。
◎ 日本の大学ソフトボール
○ 女子
日本体育大学(2023年時点でインカレ優勝20回(歴代最多))、東京女子体育大学(優勝15回)、園田学園女子大学(優勝8回)が強豪校として知られており、日本代表選手も多く輩出している。これらに加え、中京大学、環太平洋大学(IPU)、日本文理大学などの卒業生が近年多くJDリーグに在籍している。
○ 男子
日本体育大学(2009年度インカレ優勝-最多優勝回数28回)、国士舘大学(優勝4回)、早稲田大学(優勝4回)の3校がずば抜けた実力を持っている。
近年では中京大学、中京学院大学なども力をつけてきている。
・ 関西リーグ
・ 京都産業大学、立命館大学、神戸学院大学、同志社大学、関西大学が他を圧する実力を持っているが、他の地域に比べ中堅層(大阪体育大学、四天王寺大学、京都大学など)が厚い。
以下は順不同、2008年(平成20年)3月現在の状況。
・ 東海リーグ
・ 15大学参加、2部制リーグ。近年、中京大学、中京学院大学がほかの大学を圧倒。次点に岐阜聖徳学園大学などが続く。
・ 1部:中京大学、中京学院大学、岐阜聖徳学園大学、日本福祉大学、愛知大学、愛知学院大学
・ 2部:名古屋大学、静岡大学、愛知教育大学、名古屋商科大学、中部大学、常葉大学、南山大学、名城大学、東海学園大学
・東京都リーグ
・ 日本体育大学、国士舘大学、早稲田大学の3校を擁し、大学では最もレベルが高いリーグとされている。以下は2023年時点での順位である。
・ 1部:日本体育大学・早稲田大学・国士舘大学・中央大学・日本大学・桜美林大学
・ 2部:慶應義塾大学・東京大学・成蹊大学・帝京大学・明治大学・立教大学・東洋大学・東京学芸大学
ほかに関東リーグがある。
● 高校ソフトボール
◎ 日本の高校ソフトボール
○ 女子
1980年代から2000年頃にかけては夙川学院(兵庫)、星野女子(埼玉)、厚木商業(神奈川)などが全国的な強豪校として知られていた。特に夙川学院は1987年から1991年にかけてインターハイを5連覇するなど圧倒的な力を持っていたが、2018年を最後に廃部となった。
近年では、星野(星野女子から改称)、厚木商業に加え、花巻東(岩手)、木更津総合、千葉経済大附属(千葉)、目黒日本大(東京)、東海学園、星城(愛知)、京都西山(京都)、兵庫大須磨ノ浦(兵庫)、創志学園(岡山)、福岡大若葉(福岡)、佐賀女子(佐賀)、神村学園(鹿児島)などが有力校としてあげられ、多くの卒業生が日本代表やJDリーグで活躍している。
○ 男子
2000年以降、大村工業(長崎)が全国的な強豪校として知られている。
● 主要大会一覧
・ オリンピック
・ ワールドゲームズ
・ WBSC女子ソフトボールワールドカップ(U-18・U-15)
・ WBSC男子ソフトボールワールドカップ
・ アジア競技大会
・ 女子ソフトボールアジアカップ
・ 男子ソフトボールアジアカップ
・ 全日本総合女子ソフトボール選手権大会
・ 全日本総合男子ソフトボール選手権大会
・ 全日本実業団女子ソフトボール選手権大会
・ 全日本実業団男子ソフトボール選手権大会
・ 全日本クラブ女子ソフトボール選手権大会
・ 全日本クラブ男子ソフトボール選手権大会
・ 全日本大学ソフトボール選手権大会
・ 全日本高等学校ソフトボール選手権大会
・ 全国高等学校ソフトボール選抜大会
・ 全国中学校ソフトボール大会
・ 国民スポーツ大会
・ USAソフトボール・インターナショナルカップ
・
・ ジャパンカップ国際女子ソフトボール大会
・ 日米対抗ソフトボール
● ソフトボールを題材とした作品
◎ 漫画
・ ウインドミル(橋口たかし)
・ しまっていこー(伊藤実)
・ スローステップ(あだち充)
・ ソフトボールは好きかしら?(中村かなこ)
・ 千秋しまってこー(重野なおき)
・ 美晴♥ライジング(大谷じろう)
・ ライジング(わたべ淳)
・ 高校デビュー(河原和音)
◎ 映画
・ ソフトボーイ(2010年公開)
・ 私たちの時代(2011年公開)
・ ソフテン(2014年公開)
◎ テレビアニメ
・ ふたりはプリキュア Splash Star(日向咲)
◎ テレビドラマ
・ 初森ベマーズ(2015年)
◎ ノンフィクション
・ 回れ、風車(山際淳司)
● ソフトボール経験のある著名人
● 符号位置
記号UnicodeJIS X 0213文字参照名称
「ソフトボール」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』(https://ja.wikipedia.org/)
2024年12月8日17時(日本時間)現在での最新版を取得
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