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ボディビル(Bodybuilding, ボディビルディング)とは、筋肉組織の構築を制御ないし発達を目的とした漸進性抵抗運動(Progressive Resistance Exercise)。肉体的強さではなく、あくまで外見が重要であり、重量挙げとは別物である。これに従事する者たちは「ボディビルダー」(Bodybuilder)と呼ばれる。競技に参加するボディビルダーたちは、体躯の調和・均整美、筋骨の強壮さ、筋肉の大きさ、体調を競い、舞台に立つにあたって格付け審査員に向けて構えをきめる。ボディビルダーたちは、脱水とカーボ・ローディング(Carbo-Loading, 炭水化物の摂取を増やすことで、グリコーゲン〈Glycogen〉を体内に貯蓄する食事法)を組み合わせ、競技出場前の最終段階において不要な体脂肪を減らし、最大量の筋肉とその鮮明な輪郭および血管の分布の構築を完遂する。舞台上集中光線を浴びる彼らは明暗を強調する目的から、身体を日焼けさせ、髭を剃る。国際ボディビル連盟が主催する『ミスター・オリンピア』(Mr. Olympia)で優勝した者は、ボディビル界の頂点に立つ存在と見なされることが多い。1950年以来、全米ボディビル愛好協会(The National Amateur Body-Builders' Association)が主催する世界選手権では、アーノルド・シュワルツェネッガー(Arnold Schwarzenegger)を始めとする名の知れた受賞者がおり、これに勝ち残った者は専門職としての運動競技選手になることが多い。
ボディビルにおいては、薬物の服用は禁止である。また、ボディビルにおいては実演よりも外見が重要視される。筋肉の発達や性能を高めるよりも、見た目を重視する目的から、薬物に手を出す者もいる。表向きは「薬物の服用は禁止」であるが、実際には、筋肉増強作用を持つアナボリック・ステロイド(Anabolic Steroid)を服用するボディビルダーは数多い。
ボディビルダーの独自性は比較ができないものであり、ボディビルは個性の構築を主体的に強化する可能性がある一方で、個性の葛藤、不快な経験、自我の危険性をもたらす可能性があることを示唆している。
ボディビルダーたちは、自分たちのやっていることを「運動競技」と考えているが、主流のスポーツ界はそのようには見做しておらず、ボディビルは正当性の危機に直面している。
西洋においては、1880年から1953年にかけて重量挙げが発展し、剛力自慢の者たちは一般大衆に向けて自身の力強さをこれみよがしに見せ付け、互いに競い合った。比重が置かれたのは参加者たちの体格ではなく、彼らの四肢と腹部は大抵は脂肪で太っていた。
インドのタミル・ナードゥ州マドゥライでは、巨大な球形の石を持ち上げる競技が行われていた。古代において、これは結婚前の若い男性の勇気と力強さを試すために行われていた、と考えられている。
◎ ユージン・サンドウ
19世紀末、ドイツ人のユージン・サンドウ(Eugen Sandow)がボディビルの普及を推進した。鍛え上げられた肉体を観衆に披露して楽しんでもらおうと考えたサンドウは、「筋肉展示公演会」と題した催し物を開いた。だが、集まった男たちは自身の肉体の誇示が目的であったり、格闘試合の実演として登場しただけであった。サンドウは、フローレンツ・ズィークフェルト(Florenz Ziegfeld)とともに肉体披露の見世物を主催した。構えをきめる一連の動作が広く受け入れられたサンドウは、自身の名前を商標にした製品を売り出し始め、ダンベル。1950年に全米ボディビル愛好協会(The National Amateur Body-Builders' Association, NABBA)が主催した競技会で優勝したスティーヴ・リーヴス(Steve Reeves)に、A・C・スマイツが受け取った青銅の像と同じものが贈られた。1977年に国際ボディビル連盟(The International Federation of BodyBuilders, IFBB)が開催した『ミスター・オリンピア』(Mr. Olympia)にて優勝したフランク・ゼイン(Frank Zane)に青銅の像の複製品が贈呈されると、それ以降はこの複製品が贈られるのが慣習となった。
1903年12月28日から1904年1月2日にかけて、ニューヨークにあるマディソン・スクエア・ガーデン(The Madison Square Garden)にて、大規模なボディビル競技会が開催された。トレロアーは賞金として1000ドルを受け取ったが、これは当時としてはかなりの高額であった。この2週間後、トマス・エディスン(Thomas Edison)は、トレロアーが見せた一連の構えを映像に収めた。エディスンはまた、サンドウの構えも映像に収めている。
◎ 1930年以前のボディビルダー
1930年以前のボディビルダーには、ライオネル・ストロングフォート(Lionel Strongfort)や、第一次世界大戦に従軍して片足を失ったアラン・P・ミード(Alan P. Mead)がいる。俳優のフランセス・X・ブッシュマン(Francis X. Bushman)は、無声映画に出演する前は彫刻の題材にもなっていた。
◎ 1950年代1960年代
1946年、カナダ人の兄弟であるジョー・ウイダー(Joe Weider)とベン・ウイダー(Ben Weider)が、「国際ボディビル連盟」(The International Federation of Bodybuilders, IFBB)を設立した。
1939年7月4日に「全米体操愛好連盟」(The Amateur Athletic Union)が初めて主催した『Mr. America』のような、ボディビル団体が開催する競技会は多数あるが、主流のボディビル団体は国際ボディビル連盟である。
◎ 1970年代1990年代
◎ アナボリック・ステロイドの服用
1970年代になると、媒体を通じて、フランコ・コロンボ(Franco Columbu)、ハロルド・プール(Harold Poole)、デイヴ・ドレイパー(Dave Draper)、フランク・ゼイン(Frank Zane)、ラリー・スコット(Larry Scott)といった複数のボディビルダーの名前が知れ渡るようになった。しかし、筋肉増強作用を持つアナボリック・ステロイド(Anabolic Steroid)を服用するボディビルダーも現われるようになった。トム・プラッツ(Tom Platz)やポール・デメーヨ(Paul Demayo)のように、身体の一部だけが発達しているボディビルダーもいる。
アナボリック・ステロイドは、男性ホルモンの一種であるテストステロン(Testosterone)の合成誘導体(Synthetic Derivatives)であり、筋肉の大きさや筋力の増幅に影響を及ぼす。1960年代、運動競技選手が薬物として服用した初のステロイドの一つであった。1974年、国際オリンピック委員会(The International Olympic Committee)は、ステロイドの服用を正式に禁止した。除脂肪体重、筋力、全体的な運動能力を向上させる目的で、運動競技に出場する選手たちが服用してきた。シュワルツェネッガーは、『ミスター・オリンピア』の称号を七回獲得している
2009年、彼は「ステロイドの服用については後悔していない」と述べた。シュワルツェネッガーはステロイドの服用を認めているが、当時は合法であった趣旨を強調した。
アナボリック・ステロイドについて、セルフィオ・オリバはナンドロロン(Deca-Durabolin)とダイアナボル(Metandienone)を服用していた。ステロイドの服用について、オリバは以下のように語っている。
「これは、人々が大いに関心を示す分野だ。誰がステロイドを使おうが、それ自体は個人の自由さ…その人の人生なんだから。さて、今や誰もがステロイドを入手できるようになった。昔、某有名雑誌で、アーノルドがステロイドの服用を否定している記事を目にしたことがあるが、彼はアメリカにステロイドを持ち込んだ最初の人物だ。昔は誰もが使っていたよ。フランク・ゼイン、フランコ・コロンボ、俺、アーノルド、ラリー・スコット、ハロルド・プール、デイヴ・ドレイパー、スティーヴ・リーヴスもね。これは否定のしようがない。大した問題ではなかったんだ。今のボディビルダーたちほどではないが、服用していたよ。でも、薬の開発は異質なものだ。俺はナンドロロンとダイアナボルを使っていたが、これらは本当に凄い代物でね、ナンドロロンはそれほど悪いものだとは認識されていなかったんだ。「骨を丈夫にするから」って、医者が処方していたくらいだからね。現時点で体重が約91㎏の人が、半年後には約113 - 136kgにまで増える!この場合、その人は、普通ならありえないものを服用しているんだ。「何も摂取してないよ」と言った場合、その人は嘘を吐いてるってことになる」
ステロイドの服用の撲滅と、国際オリンピック委員会への加入を目論む形で、国際ボディビル連盟は、ステロイドや違法薬物に対する薬物試験を導入することにした。しかし、競技に出場するにあたり、薬物を服用するボディビルダーは後を絶たない。
1990年に制定された規制物質法(The Controlled Substances Act)にて、アメリカ連邦議会は「一覧表III」にアナボリック・ステロイドの名前を登録した。「ステロイドで強化された競技選手は、ステロイドを服用していない選手よりも有利であり、不公平である」という懸念があった。1988年、短距離走者のベン・ジョンソン(Ben Johnson)が、違法薬物を摂取したのを理由に金メダルを剥奪されたとき、精鋭競技は、努力や公正さよりも、「誰がより良い薬を持っているか」という様相を呈するようになった。時の上院議員、ジョー・バイデン(Joe Biden)は、議会が懸念していた事柄について、以下のように発言した。「…今後数年間で、オリンピックに出場する選手から、大学での運動競技、職業選手に至るまで、アメリカにおける運動競技に対する、一般市民からの強い反発が見られることでしょう。怒りの感情が高まりつつあり、それがどのような形で作用するのかは見当もつきません」。
アナボリック・ステロイドの副作用として、痤瘡(にきび)、脱毛、心臓病発症の危険性の増加、腎臓と肝臓の機能不全、高血圧、性的不能が報告されている。
ウイダー兄弟は、IFBBに所属する選手に対し、「WBFに加盟した者は、IFBBが主催する競技会において即座に失格とする」「新たな団体に加盟した場合、IFBBに戻ることは決して許可しない」と述べた。
ソ連崩壊後の東ヨーロッパにおいて、消費や娯楽の様式が広まるにつれて、ボディビルが普及するようになった。
ソ連においては、スティーヴ・リーヴスが主演した映画『ヘラクレス』が公開され、リーヴスの肉体が映し出されると、多くの男性がそれに影響され、身体を鍛えるようになった。1973年の春、国家競技委員会(ソ連競技省)の会議にて、当局者の一人は「ボディビルだって?筋肉を鍛えて、鏡の前で構えをきめる?我がソ連国民は、そんなことをしてどうしようというのだ?鏡に映った自分の姿を見て褒め称えるつもりか?」と述べた。ソ連において、ボディビルは公式に禁止となった。
◎ オリンピック
国際オリンピック委員会は、ボディビルを「運動競技」とは見做していない。ボディビルダーたちによる薬物乱用の問題が基本的な焦点となっている。主流のスポーツ界も、ボディビルを「運動競技」とは見做していない。出資者と契約を結べば、金銭面で援助も受けられる。
◎ Natural
費用、健康問題、服用の違法性に対する懸念から、ボディビル団体の多くは、筋肉増強剤の服用を禁止とする「Natural」(「自然体」)と題した部門を設立している。アイヴァン・ブラスケス(Ivan Blazquez)は、「重要なのは、体調を整えることだ」と力説している。
◎ Men's Physique
2012年に初めて導入された。体型、均整美(釣り合いの取れた美しさ)、筋肉質、身体の健康状態が審査の対象となる。
1990年代に現われたドリアン・イェイツ(Dorian Yates)は、均整美を犠牲にして筋肉の大きさを追求した。このころから、細身と均整美よりも、体調と筋肉の質量が追求されやすくなった。アーノルド・シュワルツェネッガーは以下のように述べ、ボディビルの審査について苦言を呈している。
「審査の基準を変えないといけない。筋肉が多いだけで見た目が美しくない人間に報酬を与えるのは、もう止めるべきだ。スティーヴ・リーヴスが優勝したころの時代を見ればいい。彼の肉体を目にした者は、『こんな身体になりたい』『この男の美しさを見よ』と言ったが、現在の大会で優勝するような人たちは、そんなことは言わない。私が審査員に伝えたいのは、あらゆる要素を見る必要がある、ということなんだ。お腹が膨れている選手が多いんだよ…。昔はV字型の身体が美しい、とされていたが、今は違う。正当な人にこそ、報酬が与えられなければならない。然るべき人に報酬を与えれば、美しい肉体を手に入れるための鍛錬を、誰もが開始するだろう」。1978年、オハイオ州カントンにて、アメリカ女子体格選手権(The U.S. Women's National Physique Championship)が開催された。専門職の女性のボディビル向けとしては、これが史上初の大会と見做されている。1980年には、『Ms. Olympia』(『ミズ・オリンピア』、当初は『Miss Olympia』)が開催された。
イーデス・コナー(Edith Conner)のように、75歳でボディビル大会に出場した女性もいる。
スターリング大学(The University of Stirling)の研究者は、筋力鍛錬に従事する女性と面談し、その動機について調べている。
● 競技会
◎ 構え
舞台に上がったボディビルダーたちは、「審美的に美しい」身体を提示しようとする。ボディビルダーたちは、舞台に立った際に、以下の構えをきめる。
国際ボディビル連盟が定めた指針に基づく形で、審査員は、筋肉の発達に関連する特定の基準、「均整美と自然な審美に関連する筋肉の大きさ、形状、密度、皮膚の表面の細長い窪み、鮮明度」に従い、決定を下すにあたって明確な根拠を示す必要がある。「体格の均衡、輪郭、全体的な『雰囲気』の質、上半身と下半身の発達の均衡、身体の左右の調和を重視する」場合、審査が主観的になることは無い。「膨満した腹部や歪んだ筋肉は、体格全体に悪影響を与える」、あるいは「調和と自然な美しさを犠牲にした大きさの筋肉は好ましくない」と定められていれば、主観の入る余地はほとんど無い。
一方、ボディビルダーのように、減量と増量を何度も繰り返していると、体内で分泌されるホルモンや、長期的には、将来的な体重減少に負担をかけることになる。
○ Clean Bulking
『Clean Bulking』とは、「余分な脂肪を増やさないようにしつつ、筋肉と筋力を付けるために、管理された食事法」を指す。カロリーだけでなく、「どんなものをいつ食べているか」も意識する必要がある。これは、より長い時間をかけて、その人が求める体脂肪と筋肉量の割合を達成するための方法である。脂肪を減らし、筋肉量を多く保つため、摂取カロリーが多い日と少ない日をそれぞれ設け、増量と減量の均衡を維持する。
○ Dirty bulking
栄養摂取の指針を考慮せず、できるだけ沢山食べて摂取カロリーを増やす行為を指す。「禁止の食べ物は無い」が、この食事法では肥満になる。
・ 筋力鍛錬
・ 鍛錬を終え、筋肉が損傷し、エネルギーの貯蔵が枯渇した際には、筋肉の再合成および再構築のために必要なものを摂取する
・ 充分な休息と回復に専念する。これを怠ると、筋肉の成長と回復は低下し、疲れやすくなり、意欲も低下する
◎ 筋力鍛錬
身体への負担が激しい筋力鍛錬を行うと、筋肉に微細な裂傷が生じる。これは「遅発性筋肉痛」(Delayed Onset Muscle Soreness)と呼ばれ、運動を終えたあとに生じる痛みの原因となる。この微細な裂傷を修復させることにより、筋肉の成長に繋がる。運動を終えて二日以内に発生するが、筋肉が鍛錬に馴致するにつれて、痛みは減少していく傾向にある。
筋肉肥大は全てのボディビルダーの目標である。筋形質と筋原線維、この二種類の肥大を促進することにより、筋肉の成長と構築を完遂する。より大きな筋肉をもたらすのは筋形質の肥大である。筋形質の肥大は反復回数の増加で、筋原線維の肥大は重いものを持ち上げることでもたらされる。筋形質の肥大は筋肉を大きくするが、筋力は増えない。筋原線維の肥大は、筋力を向上させるために筋原線維が増加するが、筋肉量についてはわずかに増えるのみ。ボディビルダーが目的とするのは筋形質の肥大であるのに対し、筋原線維の肥大を目的とするのは運動競技選手や重量挙げの選手である。筋形質が肥大すると、筋肉細胞が貯蔵グリコーゲン(Glycogen)を多く蓄えるようになる。ボディビルダーにとって、グリコーゲンの生産量を増やすことは重要であり、そのためにはより多くの炭水化物を食べる必要がある。重量挙げの目標は最大重量のベンチ・プレスを持ち上げられるようにすることであり、ボディビルの目標は筋肉を最大限に増やし、体脂肪を可能な限り減らすことを重視する。
◎ 栄養摂取
一般には、ボディビルダーは筋力鍛錬と筋肉量の増加に向けて、多くのカロリーを摂取する。炭水化物、タンパク質、脂肪の摂取比率は、ボディビルダーによって異なる。
○ 炭水化物
炭水化物を摂取すると血糖値が急上昇し、その上昇した血糖値を下げるため、膵臓からインスリン(Insulin)が分泌される。インスリンとは、膵臓のランゲルハンス島にあるβ細胞(Beta Cells)から分泌されるペプチド・ホルモンである。細胞によるブドウ糖の取り込みを促進し、炭水化物、脂質、タンパク質の代謝を調節し、分裂を促進する効果を通じて細胞分裂と成長を促し、正常な血糖値を維持する。インスリン抵抗性(Insulin Resistance)とは、インスリンが肝臓、脂肪組織、骨格筋といった抹消標的組織において、インスリンの機能が損なわれたり、弱まったり、機能を発揮できない状態を指す。インスリン抵抗性は、2型糖尿病の発症にも関与する極めて重要な病因因子である。
インスリンには、アナボリック・ステロイドと同じく、筋肉の成長と増幅を促進する同化作用(Ababolism)がある。インスリンの存在無くしてタンパク質の合成の促進は不可能であり、インスリンの分泌を刺激する炭水化物とタンパク質を摂取しない限り、筋肉量を増やすことは不可能である。ボディビルダーがタンパク質と炭水化物を大量に摂取するのはこれが理由である。
GI値(Glycemic Index)が低い炭水化物や、消化に時間が掛かる炭水化物を食べる場合、デンプンを多く含むものよりも安定した形でエネルギー源にできる。精製された炭水化物は高血糖を惹き起こし、インスリンの分泌を強力に刺激し、身体は脂肪を蓄積しやすい状態になる。しかし、運動前、運動中、運動を終えた直後に、消化の早い炭水化物(純粋なブドウ糖か、マルトデキストリン)を摂取するボディビルダーもいる。これは、筋肉内に貯蔵グリコーゲンを補充し、筋肉細胞においてタンパク質の合成を刺激する意図がある。
グリコーゲン1gにつき、脱水状態の筋肉内に最低でも3 - 4gの水分が蓄えられる。炭水化物の摂取による負荷に水分補給が組み合わされると、最大で17gとなる。競技会に向けて、ボディビルダーが炭水化物の摂取量を増やすと、競技会の当日に、上腕二頭筋の厚さが増加したことが確認された。
○ タンパク質
ボディビルダーは、体組成の維持および改善のため、総摂取カロリーの25 - 30%をタンパク質から取ることが推奨されている。肉・魚・卵・乳製品といった動物性食品や、ナッツ、種子、豆類はタンパク質を豊富に含む。タンパク質を摂取することにより、筋肉の成長と筋力鍛錬後の回復の際にアミノ酸が供給される。
カゼインやウェイは牛乳に多く含まれ、市販のプロテインに混ぜられることも多い。また、ウェイはインスリンの分泌を強力に刺激し、カゼインを摂取したときの2倍の量のインスリンが分泌される。
大豆には植物性のエストロゲン(Phytoestrogen)が含まれるが、これの濃度が高い場合、の部位にて、男性の体内で分泌されるエストロゲン(Estrogen)と競合し、エストロゲンの作用は阻害される。過剰な量のエストロゲンは排泄され、脳下垂体の機能は阻害される。男性のエストロゲン受容体の数は、女性のそれに比べると少ない。グルカゴンは、膵臓のランゲルハンス島にあるα細胞(Alpha Cells)から分泌されるペプチド・ホルモンである。グルカゴンの分泌を最も強力に刺激する要因は低血糖である。グルカゴンには、肝臓におけるブドウ糖の産生を刺激し、それによって正常な血糖値を維持しようとする作用がある。グルカゴンは、肝臓における脂質とアミノ酸の代謝にも関係し、安静時のエネルギー消費量を増加させる作用がある。「一日二食」と「一日七食」を比較しても、身体のエネルギー消費量や、食事誘発性熱産生には、有意な変化は観察されなかった。
○ 栄養補助食品
筋肉の構築と体脂肪の減少において、栄養の摂取は重要な役割を果たす。ボディビルダーはさまざまな栄養補助食品を摂取することもある。筋肉量を増やし、脂肪減少を促進し、関節の健康状態を改善し、男性ホルモンの一種であるテストステロン(Testosterone)の産生量を増やし、鍛錬の質を強化し、栄養不足の防止を目的に、さまざまな製品が出ている。
◎ 薬物
アナボリック・ステロイドや、ホルモン前駆体を服用することで筋肉肥大を目指すボディビルダーもいるが、アナボリック・ステロイドの服用の副作用として、肝臓の障害(肝毒性)、乳房の肥大、痤瘡、男性型脱毛症の早期発症、テストステロンの産生量の低下、精巣(睾丸)の萎縮が惹き起こされる可能性が指摘されている。ヒト成長ホルモン(Human Growth Hormone, HGH)は、「女性的な容姿を維持しつつ」、大きな筋肉を付ける目的で、女性のボディビルダーが服用する。高齢者においては、加齢に伴う生物学的な老化により、成長ホルモンやテストステロンの濃度が低下し、筋肉の発達に不利な代謝変化が多く生じるため、若者に比べて筋肉の成長が難しくなる。臨床研究によれば、ヒト成長ホルモン欠乏症が認められる成人に対する、少量のHGHを投与した治療は、筋肉量の増加、体脂肪の減少、骨密度と筋力の増加、心血管媒介変数の改善、重大な副作用を伴うことなく、生活の質に影響を与えることにより、身体組成が変化することが示された。齧歯類においては、金属結合性タンパク質遺伝子(Metallothionein Gene)の発現を単離すると、「AKT信号伝達経路」が活性化し、筋管体積の増大、IIb型繊維(Type IIb Fiber)の肥大、ひいては筋力の向上が観察された。
○ 筋肉細胞への油の注入
ボディビルダーの中には、筋肉を膨張させる目的で、筋肉細胞に合成油脂を注射して取り込む者もいる。合成油脂を上腕二頭筋に注射した場合、一回の注射で約2.5cm膨らませる作用がある。1990年代、ドイツ人のクリス・クラーク(Chris Clark)が、この合成油脂(Synthol)を開発した。
ボディビルにおいては外見が重要視される。筋肉の発達や性能を高めるよりも、見た目を重視する目的から、薬物に手を出す者もいる。世界重量挙げ連盟会長、マウロ・ディ・パスクワレ(Mauro Di Pasquale)は、筋肉に油を注入する行為について、「筋肉を大きく見せる作用こそあるが、実際には筋肉の弱体化に繋がる」と述べた。
○ 禁忌
筋肉の外観を良くする目的で油を注入する行為は、ボディビルダーの間では一般的なものとなっている。1899年には廃れていたが、ステロイドの代替手段としてボディビルダーが再び使うようになった、脳卒中。
稀な事例ではあるが、筋肉のさらなる損傷を避けるため、死亡事故を防ぐため、外科治療が必要となる場合がある。筋肉にごま油を注射し続け、重度の筋肉痛と紫斑で入院したボディビルダーの身体は、血管炎のようなアレルギー反応が起こっていた。油を注入して膨らませた筋肉は、実際には発達しておらず、重力に負けて筋肉が垂れ下がって変形してしまい、そのせいで組織が炎症を起こす場合もある。重いものを持ち上げると、筋肉組織が壊れて裂ける。筋繊維が成長し、再び重いものを持てるようになるためには、筋繊維が完全に治癒して回復した状態に戻る必要がある。回復手段として、鍛錬を終えたのち、按摩を行うボディビルダーもいる。
◎ 過剰鍛錬
運動は身体に有益な効果をもたらす可能性があるが、精神衛生に悪影響をもたらす可能性も指摘されている。
「Overtraining」(「過剰鍛錬」)とは、好ましくない水準に至るまで鍛錬を段階的に増やす行為を指す。運動依存症(Exercise Addiction)とは、身体、心理、精神に損壊をもたらす可能性のある、運動に対する過剰で不健康な依存状態を指す。運動に励む者たちは、自分の限界に挑戦し、向上を目指す傾向にあるが、このような欲求は、依存症に繋がることもある。これは、肉体的にも精神的にも多くの問題を惹き起こし、非常に深刻な結果をもたらす恐れがある。多くの場合、このような状態を生み出すのは、硬直した希薄な社会的美学である。過剰鍛錬は、運動療法による生理的な欲求が、身体の調整能力を上回っている状態でもある。過剰鍛錬の影響は全身に亘り、神経内分泌系、免疫系、心血管系、筋骨格系、生理学的な器官に悪影響を及ぼす。
高強度の鍛錬が頻繁である場合、中枢神経系が刺激されることでアドレナリン(Adrenaline, 緊張状態に晒されると、副腎から分泌されるホルモン。心拍数、血圧、血糖値を上昇させる)が亢進し、安定した睡眠が妨害される原因となる。
筋肉異形症(Muscle Dysmorphia)は、男性のボディービルダーが陥りやすい。「自分の筋肉量は不充分である」と感じており、鍛錬施設で何時間も過ごしたり、効果の無い補助食品に多額のお金を費やし、食事様式が異常になり、薬物の乱用に走ることがある。
度が過ぎる運動はミトコンドリア(Mitochondria)の機能障害を惹き起こし、耐糖能(Glucose Tolerance, 上昇した血糖値を下げる、血糖値を正常に保つ能力)も低下させてしまう。
雑誌『Muscle & Fitness』内の記事「Overtrain for Big Gains」では、「過剰鍛錬は短期間であれば有益である」と主張している。休息から再生する局面において、埋め合わせのために、意図的に過剰鍛錬に励むもので、「急性超微細循環」と呼ばれ、ソ連の競技選手たちがこの方法を採用していた。
● ボディビルダーとインスリンの乱用
2017年8月8日、アメリカ合衆国のボディビルダー、リッチ・ピアーナ(Rich Piana)が、散髪の最中に突然倒れた。ピアーナは意識不明の状態が2週間以上続いたまま、8月25日に死亡した。ピアーナの死因については剖検で公式に「不明」とされているが、インスリン(Insulin)の過剰摂取を疑う声がある。
インスリンは膵臓のβ細胞で産生されるペプチド・ホルモンであり、身体における同化作用を持つホルモンとみなされている。インスリンは細胞内へのブドウ糖の取り込みとブドウ糖による代謝を促し、それに伴って血糖値が低下する。
ハーヴァード大学医学校(Harvard Medical School)の精神科教授で医学博士のハリスン・ポープ(Harrison Pope)によれば、ボディビルダーたちの間でインスリンの使用が増加しているのは確かであるという。筋肉を肥大させる目的から、糖尿病を患っていなかったとしてもインスリンを服用しているボディービルダーもいる。インスリンはその受容体と結合し、インスリン受容体基質(Insulin Receptor Substrate)のタンパク質のリン酸化反応を惹き起こし、AKT信号伝達経路の活性化を刺激する。この過程は、運動を終えたあとにインスリンを投与することで強化され、筋肉細胞におけるインスリン感受性を、最大で24 - 48時間高める。
インスリンは脂肪の合成と貯蔵を促進し、体内における脂肪分解を徹底的に抑制・阻害する最大のホルモンである。
インスリンは脂肪の蓄積を強力に促進し、空腹感を高め、体重増加を惹き起こす。たとえカロリーを制限したところで、インスリンを注射された動物には過剰な量の体脂肪が蓄積する。脂肪分解を抑制・妨害する作用は、インスリンにおける最も敏感な代謝作用である。空腹時でもインスリンの濃度がわずかに上昇すると、脂肪細胞における脂肪分解作業は阻害される。
『ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・スポーツ・メディスン』(British Journal of Sports Medicine)に掲載された論文「Insulin as a drug of abuse in body building」(『ボディビルダーたちによる乱用薬物としてのインスリン』)では、
・ 「インスリンの人体での半減期は4分であり、短時間で消失し、検出は非常に困難である。たとえ検出されたとしても、本人の体内から分泌されたインスリンとの区別は不可能である。それゆえ、インスリンはボディビルダーにとって非常に魅力的かつ潜在的に危険な薬物である」
・ 「ボディビルダーたちによるインスリンの乱用はますます問題となっており、医師による監督下に無い状況でインスリンを乱用する人に降りかかる可能性のある潜在的な危険を浮き彫りにしている」
・ 「致命傷を与えるだけの潜在能力を秘めたこの薬物は、知識が無くとも秘密裏に服用され、そのせいで診断と治療が遅れれば重大な結果を惹き起こす」
・ 「インスリンの乱用は低血糖症につながり、昏睡や死につながる」
と述べ、筋肉を肥大させる目的でのインスリンの服用行為は非常に危険である、と結論付けている。
「ボディビル」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』(https://ja.wikipedia.org/)
2023年12月2日5時(日本時間)現在での最新版を取得




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