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薙刀(なぎなた)は、日本の長柄武器の一種で、平安時代に登場した武具である。
● 概要
柄先に反りのある刀身を装着した武具で、当初は「長刀」(“ながなた”とも読まれた)と表記されていた。しかし「刀」に打刀という様式が生まれると、「打刀」と「短刀」を区別するための呼称「長刀(ちょうとう)」と紛らわしく、区別のため「薙刀」と表記されるようになった。このページでは便宜上、時代にかかわらず薙刀で統一する。
類似の武器に「長巻」があるが、長巻は長大な太刀を振るい易くするために柄をそのまま長く伸ばした“柄の長い刀”であるのに対し、薙刀は刀の柄をただ長くしただけではなく、刀身及び柄の形状共に斬撃に特化させた「長柄武器」である。
欧米では、日本の薙刀はヨーロッパの長柄武器であるグレイブ、パルチザン、ハルバード。しかし、南北朝時代には馬上での槍や薙刀の使用は一般的ではなかったとする説もある。南北朝時代においては馬上の武器としては太刀、大太刀、槍、鉞なども使われたが、槍や鉞よりも薙刀の方が一般的であった。
リーチが長く、斬るだけではなく、刺突や石突を使用した打突、また柄での打撃が可能な薙刀は騎射技術を失った南北朝時代や室町時代の武士たちにとって重要な武器であった。南北朝時代の戦場において、豪勇の者が薙刀を振り回して、敵をなぎ倒す派手な様子が太平記などの軍記物に描かれている。それだけ兵器として強大な威力を発揮したということである。また、味方の騎馬の後ろについて進軍し、敵の騎馬の足を攻撃して落馬させるなどの攻撃方法もあった。
槍や鉞、薙刀といった木の柄の武器は大太刀より折れやすいことから、対策として柄は大太刀ほど長くしないため、南北朝時代に最も有効な白兵戦武器は大太刀であったとする説もある。
薙刀の使用が盛んであったのは源平時代の頃から室町時代(戦国期除く)にかけてであり、鎌倉時代にも騎馬武者の配下として徒歩で戦う下級武士たちの間では薙刀を主要な武器とし、予備として刺刀を持つのが流行した。一方で「矛」から発展した長柄武器として槍が登場し、また室町時代の長巻の登場によって薙刀が戦場で用いられることは戦国時代以降徐々に少なくなっていった。応仁の乱の頃より戦闘の主流が足軽による集団戦に変わると、振り回す武器は密集した隊列を組んで行う戦闘において不便であり、やがて槍に取って代わられていった。
しかし、戦国時代末期になっても薙刀が戦場で使われることが珍しくなかったとする説もあり、歴史学者の近藤好和は、槍が薙刀よりも多用されるようになるのは戦国時代の後半ごろからという説を唱えている。
江戸時代になると、薙刀術は槍術や剣術とともに武芸としての地位を確立した。薙刀を扱う武術流派も増え、各藩で稽古が行われた。また、薙刀術は武家の女子の教養や護身術としても受容され、「薙刀は女性が主に使う武器の一つである」というイメージが生まれることとなった。なお、「武家の女子が扱うようになったため必然的に薙刀全体が小振りな造りになっていった」という趣旨の説が存在するが。
● 形状
薙刀は長期に渡って用いられているため、刀身や柄の形状は多岐に渡っている。
なお、薙刀に「号」をつける場合は女性の名をつけるのが慣しである(例外もある)。
◎ 刀身
刃身は一尺から二尺(約30〜60cm)程度のものが標準的であるが、三尺(約90cm)を超える長さのものも多く知られている。鎺(はばき)と切羽が付き、概ね先反りで「菖蒲造り(しょうぶづくり)」もしくは「冠落造り(かんむりおとしつくり)」の刀身形状を持ち、「薙刀樋(なぎなたひ)」と呼ばれる刀身の中程までの樋を掻いている。茎(なかご)は刀に比べると長く、刀身と同程度の長さがあることが通常だが、槍に比べれば短く、槍のように茎が刀身長の何倍もの長さを持つことは稀である。銘は刀銘が常とされる。
遺物から分類する限り時代が下るにつれて次第に刀身が長大になり、反りが浅くなってゆく傾向にあるが、必ずしも時代と形状は比例しない。刀身の身幅が細く反りが少ないものを静御前にちなんで「静型(しずかがた)」、身幅が広く反りの大きいものを巴御前にちなんで「巴型(ともえがた)」と呼ぶ。現存する薙刀で拵と共に現存するもののうち、柄の短いものの刀身は殆どが巴型である。巴型は反りが大きいために、少ない力で斬り付け易く、馬上で用いるものや体格の小さいもの(婦女子含め)が使うことに有利であったためと考えられているが、斬り付け易い代わりに操法が難しくなるため、馬上用、体格の小さい者用としての形状であるという説には異論もある。
古い絵巻物などに描かれている薙刀は反りが極端に大きく描かれていることが多いが、これらが絵画的な誇張表現であるのか、それとも実際に時代の古いものには反りが大きいものが一般的であったのかについては研究者によって意見が分かれる。実際に戦場で用いられていたと伝えられるものには柄長に関わらず反りが小さいものが多いため、「静型」「巴型」の区分と併せ、反りの大きな「巴型」は主に祭事用、儀礼用であったのではないか、との考察もある。
◎ 柄(拵)
通常、柄の長さは三尺から六尺(約90〜180cm)、鍔があり、槍とは違い柄の断面が楕円形をしているのが常形とされている。戦場では刀身は剥き出しであるが、平時には刀身には鞘が被せられていた。槍と違い石突を地面に突き立てることはほぼ無いため、石突は先尖形ではなく半月形など石突側でも「斬り付ける」用途に向いた形状をしているものが多い。また、「水軍用(薙刀)」と呼ばれる船上で使うためのものがあり、これらは柄が短く、艪としても用いられるように石突が翼状の形状をしていることが特徴となっている。
実戦で使われていたものは必要最低限の金具を嵌めて漆塗を施したのみの簡素な拵えがほとんどであるが、「熨斗付薙刀(のしつきなぎなた)」や「銀蛭巻ノ薙刀(ぎんひるまきのなぎなた)」のように、柄に装飾を施したものも高位の武士の所有するものとして記録されている。鍔は小振りなものが主流だが、鍔を持たないものも存在する一方、大太刀のように大型の鍔を持つものもあり、これら大型の鍔の付いたものには「鍔付薙刀(つばつきなぎなた)」の呼称もある。
江戸期に入ると武士の間では薙刀は嫁入り道具として定着したことから美術品としての需要が高まった。このような薙刀は名工による刀身を用い、拵は金梨子地、蒔絵、螺鈿などの細工を施し、鞘も実用を外れた特異な形状や豪華な仕上げなことから、刀身のみならず拵や鞘も合わせて文化財指定された薙刀もある。これら江戸期の鞘には、形状に関わらず家紋が入れられていることも特徴的である。
南北朝時代には大きめの太刀と大太刀と共に流行したが、南北朝時代の20数年間で流行は終わっている。大薙刀は大太刀に対抗するように出現し、同じように流行が終わっている。
初期の薙刀は刃長は60cm前後のものが多かったが、鎌倉後期から室町時代になるといわゆる「大薙刀」が登場する。
太平記には「柄五尺、刃五尺の備前薙刀」という柄と刀身が同じ長さの大薙刀が描かれているや、豊臣秀頼が差料にしていた脇差「名物 鯰尾藤四郎」が有名で、いずれも粟田口吉光の作と伝えられる。
◎ 薙刀直し造り
薙刀を造り直して刀としたものではなく、作刀時から薙刀直しであるかのような形状として造られた刀もあり、それらは「薙刀直し造り(なぎなたなおしつくり)」と呼ばれる。
薙刀直しと薙刀直し造りの相違点は第1に茎の形状で、薙刀直しが「薙刀の茎を切り詰めた」ものであるのに対し、薙刀直し造りは茎が最初から「刀の茎としての形」をしていることであるが、必ずしもそうであるとは限らず、茎の形状も含めて“最初から薙刀であったかのような形状”で作刀される例もあり、伝来や銘で確かめられない場合、判別は困難なものもある。また、直し造りではなくとも、冠落造りもしくは鵜首造りに薙刀樋もしくは腰樋とした、薙刀に刀身形状の似た短刀や脇差もあり、これらも伝来や銘で判断できない場合、判別が難しいものもある。
薙刀直し、薙刀直し造り共に、拵は通常の打刀拵や短刀拵とされているものがほとんどであるが、稀に、薙刀用の縁金具や筒金を用いて、薙刀の柄を切り縮めたかのようなものとして仕立てられている変わり拵があり、これらを「薙刀造の拵」と呼ぶことがあるが、呼称としては一般的ではない。
● その他の薙刀
◎ 鍵付薙刀
鍔の代わりに鍵(鉤)の付いた薙刀。薙刀本来の動作に加え、鍵で引っかけることが可能。戸田派武甲流薙刀術が使うことで知られている。
◎ 筑紫薙刀
筑紫薙刀(つくしなぎなた)とは、室町時代に九州で流行した特異な形状の長柄武器で、九州の筑紫地方で多く用いられたためこの名がある。通常の薙刀とは違い茎を柄に挿して目釘で固定するのではなく、刀身の後端部、通常の刀であれば茎に相当する部分の峰側に櫃(ひつ)と呼ばれる輪状の金具を持ち、この部分に柄を挿込んで固定する、日本の武器としては珍しい方式の武具である。
個性が強く、戦闘力も高い薙刀である。
◇大薙刀 但馬国法城寺派作
:刃長80cm
:千葉県立中央博物館大多喜城分館(千葉県夷隅郡大多喜町)が所蔵。
◇大薙刀 銘備州長船兼光一振
:長さ4尺6寸、身幅1寸5分、厚さ4分半
:法善寺(山梨県南アルプス市加賀美)が所蔵。
◇権藤鎮教
:長さ69.0cm、反り1.8cm
:福岡市博物館所蔵
「薙刀」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』(https://ja.wikipedia.org/)
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