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『ヤスジのポルノラマ やっちまえ』(英題:DO・IT)は、東京テレビ動画(のちの日本テレビ動画)が制作した谷岡ヤスジ原作の劇場用アダルトアニメ。1971年(昭和46年)9月24日に東映・東急系で公開された。配給は日本初の大人のためのアニメーション映画『千夜一夜物語』を成功させた日本ヘラルド映画(現・KADOKAWA〈二代目法人〉)。2005年ゆうばり国際ファンタスティック映画祭フォーラムシアター部門正式出品作品。2005年ファンタジア国際映画祭正式出品作品。東京国立近代美術館フィルムセンター「発掘された映画たち2018」上映作品。
劇場公開時のキャッチコピーは「サーモンピンクのふくらみにドバーッと鼻血をぶっかけてどぎつく割り込め やっちまえ」「『千夜一夜物語』で女護ヶ島にもぐり込み『クレオパトラ』では世紀の美女をも脱がせた日本ヘラルド映画が“やっちまえ”精神凄まじくヤスジのポルノ・アニメに強烈アタック」「アニメとはいえさすがに女性自身だけはデフォルメされていた ガバッと見せた 開いた あまりのドギツさに鼻血も噴きでる話題の強烈興奮」「オラオラオラ よ~く見いさらせ 本当のポルノはこうヤルんじゃ と異端児ヤスジがアニメ界に乗りだした──メッタメタのやっちまえ精神が今 ポルノラマに爆発する」。
● あらすじ
女にモテない、ついでに金ないチョンガー・プス夫は、赤線も消えた日本でセックスに飢え悶々とした生活を送っていた。そんな彼は、就職先の自動車メーカーの同僚であるユキ子に懸想。彼女に自分を認めさせようとセールスマン稼業に精を出し、下半身も使って女性の顧客を獲得。社内成績をあげたプス夫は紆余曲折を経て(最終的には刺身包丁で脅して)新妻となったユキ子とホテルで結婚初夜にまで漕ぎ着けたが、ついプス夫が旧友に麻雀に誘われている間、ユキ子は窓から飛び込んできたムジ鳥に犯され、恐るべき奇形児ムジ夫を産んでしまう。
このムジ夫、生まれたその日に女を犯してしまう凄まじさで、それからプス夫にとって混迷と倦怠の日々が続いた。さらに一家は田舎から引き取ったプス夫の親父の介護に追われ、女房のユキ子は夫の安月給に不満を爆発させる。そんな意気地のない父親を見かねたムジ夫は、隣家の少女とのアブノーマルなハードプレイをプス夫に見せつけ、自信をなくしたプス夫は、ついにインポになった。
その後、プス夫が病院でインポの治療を行っている間、ムジ夫にそそのかされた親父はユキ子を寝とってしまう。そうとも知らずインポを治して意気揚々と帰宅したプス夫は、不幸にも二人の姦通現場を目撃し、怒り狂ったプス夫はユキ子を日本刀で斬殺してしまう。その上、親父は腹上死しており、枕許には「奥の手を伝えて我は行くなり」という辞世の句が遺されていた。
すべてを失ったプス夫は完全に発狂し、人間社会から逃げるように動物園へと辿り着いた。そこでプス夫は、メスゴリラに誘われるように檻の中に入っていき、人獣の境界を越えた至福の交合を体験する。そしてプス夫は、日本刀で自らの腹をかっさばいた。薄れ行く意識の中、プス夫の精神は男根型のロケットに乗って、宇宙の彼方に飛んでいく。やはり、結婚は諺通り「人生の墓場」だったのだろう。プス夫にとっては……。
● 作品概要
虫プロダクションの『千夜一夜物語』を成功させた日本ヘラルド映画がアニメラマ第2作『クレオパトラ』の後に企画した谷岡ヤスジ原作の長編アニメーション映画にして大衆娯楽路線の最終作。
物語は当時の流行歌手・辺見マリの楽曲名にちなんだ「私生活」「経験」「めまい」の全3章で構成される、映倫からのクレームで11カ所がカット、タイトルバックの修正、結婚という人生の墓場で主人公が割腹自殺を遂げるラストシーンは前年の三島事件を連想させるとのことで全面的に撮り直された。
初公開時は佐藤重臣、田山力哉、内田栄一など、ごく一部の映画評論家を除いて黙殺されたが、その先鋭的な内容から後年カルト的人気を集め。
2019年(令和元年)10月2日、作品の版権を事実上取得した幻の映画復刻レーベルDIGから初ソフト化となるHDニューマスター版DVDが発売決定。また同日からレンタルビデオチェーン大手のTSUTAYAやGEOでもDVDレンタルが開始される。
DVD版のキャッチコピーは「日本カルトムービーのレジェンドオブレジェンドが遂に遂に降臨 オンドリャーしまいにゃ世に出んぞ オラオラオラオラ 後に封印作品史にその名を残す伝説の日本テレビ版『ドラえもん』(1973年)を世に送り出すことになる謎多き人物が、1971年に起死回生、一発大逆転の大バクチとして製作・発表するもわずか一週間で打ち切られて激しく散った伝説中の伝説カルトアニメ映画『ヤスジのポルノラマ やっちまえ』が遂に初ソフト化」「カルトムービー史に燦然と輝く伝説中の伝説のアニメ 奇跡&無謀の初ソフト化 幻の日テレ版『ドラえもん』の仕掛け人が放って散った巨大花火」。
● 内容および製作・公開について
◎ 企画・経緯
1970年から1971年にかけて『週刊少年マガジン』で連載されたギャグ漫画『ヤスジのメッタメタガキ道講座』で「鼻血ブー」や「アサー」など数々の流行語を生みだしたナンセンスギャグ漫画の巨匠・谷岡ヤスジの原作をアニメ映画化したもの。東京テレビ動画社長および実質監督かつ製作者である新倉雅美(別名:渡辺清)の最初で最後の劇場製作作品である。ちなみにタイトルはアメリカ合衆国のアナキストであるジェリー・ルービンの著書『DO IT やっちまえ 革命のシナリオ』(都市出版社/1971年4月)から引用された、セル画4万枚・製作人数2万人・製作期間7カ月・制作費7000万円と東京テレビ動画が社運を賭け全精力を注いだ作品であった。なお、実質的監督である新倉雅美がパンフレットに寄稿した「声明文」について、安藤健二は「左翼の活動家のような文体で、とてもアニメ会社の社長のものとは思えない」と評している。
・ また本作では原作に沿ったアナーキーな演出が徹底され、純粋にナンセンスギャグとエログロバイオレンスのみを追求した娯楽作品に仕上がっており、当時は子供向けやファミリー向けとして軽視されていた劇場アニメの枠の中で原作の不条理な世界観やコミカルな動きを忠実に再現したことから原作者の評価も高かった。
・ 映画は3部構成で、第1章「私生活」、第2章「経験」、第3章「めまい」という題が付けられている。第1章「私生活」では主人公プス夫の独身時代のセックスを描き、第2章「経験」では猛烈セールスマンとなってセックスを武器に車を売る。第3章「めまい」は結婚したものの破局を迎え自殺する、テレビアニメ『戦えオスパー』『とびだせバッチリ』『冒険少年シャダー』『モンシェリCoCo』のプロデューサーなどで実績のある東京テレビ動画社長の新倉雅美(本作では本名の「渡辺清」名義で参加)が取り仕切った。
・ 脚色は東京テレビ動画作品の『夕やけ番長』『男どアホウ甲子園』や東京ムービー作品の『六法やぶれクン』『ムーミン』『天才バカボン』『ど根性ガエル』『ジャングル黒べえ』などでメインライターを務めた吉田喜昭が手がけている。
・ 原画には谷口守泰(のちに『装甲騎兵ボトムズ』作画監督)と村中博美(のちに『名探偵コナン』作画監督)を招き、作画監督は日本テレビ版『ドラえもん』作画監督の鈴木満が担当した。なお色彩は基本的に原色を多用しているので全体的にサイケデリックな印象が見受けられる。
◎ 演出
・ 演出担当の三輪孝輝は『まんが日本昔ばなし』の演出などで知られる旧虫プロダクション出身の演出家・アニメーション作家で、過去に手塚治虫の実験アニメーション作品『展覧会の絵』で演出と原画を担当した実績がある。一方でアフレコ演出の高桑慎一郎は日本語版ハンナ・バーベラ作品の多くで軽演劇系の役者を声優に起用して日本風にローカライズした異色の音響監督として知られた人物であった。
・ メインキャストの鈴木やすし、大塚周夫、雨森雅司、南利明、関敬六、コロムビア・トップ等はいずれも高桑演出作品の常連声優であり。なお作品のラストは「結婚は人生の墓場」という教訓を比喩するシーンとなっており、事実、結末は救いようのない悲劇的なものとなっている。結局、本作は興行的にも作品的にも全く評価されず、制作会社の東京テレビ動画も本作の公開直後に活動を停止してしまい、これが結果的に旧虫プロの倒産を招いた。
これら一連のポルノアニメ映画の失敗はアニメ業界や映画業界に大きな禍根を残すことになり、オリジナルビデオアニメ(OVA)が盛んに作られるようになる1980年代半ばまで日本製のアダルトアニメは約11年もの長きにわたり市場から姿を消すことになった。
一方の日本では制作会社の東京テレビ動画(後の日本テレビ動画)解散後、原版フィルムを始め資料が散逸し、同時に著作権の帰属先も宙に浮いた状態となってしまったため、長らく失われていた幻のアニメ作品となっていた。
その後、当時現像を行った東洋現像所(現・IMAGICA)から日本テレビ動画版の『ドラえもん』後半16話分のネガフィルムと共にネガの原版が再発見され、谷岡作品の版権を管理している有限会社谷岡プロに寄贈された。このネガは同社代表取締役の谷岡まち子(谷岡ヤスジの未亡人)の意向でニュープリントに焼かれ、2004年に川崎市市民ミュージアムで行われた「谷岡ヤスジの世界展」で一度だけ再上映された。
この原版フィルムから改めて作成されたニュープリント版は、2018年1月30日から同年3月4日にかけてフィルムセンターで開催された「発掘された映画たち2018」で2月6日と3月3日の2度にわたりリバイバル上映され。しかし、原作者周辺や上映原盤管理者周辺、映画製作や配給に関わった当時のスタッフ、その他の関係者などに連絡を取るも、すでに東京テレビ動画が解散していることもあり、ついに著作権者(製作会社およびその代表)の行方は判明せず、本作がいわゆる許諾に係る協議が整わない孤児著作物であることが明確になったを出稿するなど、DVD化にあたって著作権法第67条1項「著作権者不明等の場合における著作物の利用」に係る裁定制度の必須要件である「相当な努力」を行った。2017年12月7日には文化庁長官の裁定を受け、当初は2018年後半にDVDをリリース予定であったが音沙汰なく、その後しばらく経った2019年6月21日に発売予告が解禁、同年10月2日にDVDが発売された。また発売に先立って石野卓球、宇川直宏、大槻ケンヂ、掟ポルシェ、町山智浩、玉袋筋太郎などサブカル界の著名人らが好意的なコメントを寄せている。
こうして本作は初公開から約48年の歳月を隔て完全にその封印が解かれる形となった。
◇ 映像ソフト
:
・ DVD『ヤスジのポルノラマ やっちまえ』 - 発売元:DIGレーベル(株式会社ディメンション)/発売協力:ピカンテサーカス/販売元:ハピネット・メディアマーケティング/DIGS-1068/1971年日本/映像:16:9LBビスタサイズ/カラー/約96分/片面1層/1枚組/画質:480p(標準画質映像)/音声:日本語 ドルビーデジタル2.0ch モノラル/特典:プレスシート縮尺再編集版封入/2019年10月2日発売
● キャスト
・ プス夫 - 鈴木やすし
・ ユキ子 - 鈴木弘子
・ ムジ鳥/ムジ夫 - 南利明(特別出演)
・ プス夫のオヤジ - 雨森雅司
・ 社長 - コロムビア・トップ(特別出演)
・ エリート部長 - 大塚周夫
・ 公園の痴女/自動車の顧客/空港の金髪女性 - 増山江威子
・ 隣人の痴女/浅丘ルリ子 - 小原乃梨子
・ 七味借り先の女の夫 - 相模武
・ 新婚旅行の見送り人 - 加藤修
・ 社員部隊 - 肝付兼太・立壁和也・里見たかし
・ 公園のナンパ男/チリ紙のない隣人男 - 納谷六朗
配役不明(順不同)
・ 田中亮一
・ 此島愛子
・ 沢田敏子
・ 渡辺典子
・ 渡辺知子
・ 浅井淑子
・ 関敬六(友情出演)
・ 桜京美(友情出演)
・ 国坂伸
・ 武川信
・ 細井重之
・ 高田竜二
・ 岡部政明
・ 芝田清子
・ 松崎静子
・ 島木綿子
・ 森ひろ子
・ 川口由美子
・ 井上弦太郎
・ 中島喜美栄
● スタッフ
・ 製作:渡辺清
・ 原作:谷岡ヤスジ
・ 企画:吉沢京夫・土橋寿男
・ 脚色:吉田喜昭
・ 演出:三輪孝輝・高桑慎一郎
・ 演出助手:腰繁男・岡迫和之・伊藤敏弘・山田正人・西村宏
・ 制作:植村恒有・岡部常夫・佐々木一雄
・ 進行:吉野悟・高橋勝征・伊部史夫
・ 作画監督:鈴木満
・ 原画:谷口守泰・村中博美・池田順一・島崎修
・ 動画:竹松一生・斉藤起己・吉田利喜・藤巻隆一・坂井秀昭・荒井政良志・清野信夫・鈴木茂男・佐藤徹・伊藤明彦・石川孝雄・佐藤政史・小千田一・江部敏春・塩谷和子・松川路子・岩村久美子・高橋和子・坂牧夏枝・渋谷きよ子・丸山裕子・高橋典子・畑真智子・白井博子・黒田正子・小野美夜子・斉藤恵美子
・ 撮影監督:森泉正美(スタジオビック)
・ 撮影:守屋徳二・池田建一・伊吾田利男・大石誠・伊藤富佐雄・中村英雄
・ 美術監督:半藤克美
・ 色彩設定:梅野紀一
・ 効果:大野美信
・ 音響調節:森武
・ 編集:石村武朗
・ 音楽:橋場清
・ 主題歌:キャニオン・レコード
・ 作詞:島村葉二
・ 作曲:橋場清
・ 唄:ザ・ラニアルズ・杉かおる・沢田敏子
・ トレス:山本泰彦・高井和子・早川純子・中谷真里子・大橋敬子・宮川信子
・ 彩色:江口マキ子・小出カオル・長井満智子・込山久美子・椛沢真理子・土橋京子・坂井雅子・田辺綾子・田中香・風間栄子・本田道子・小林順子・阿部和子・鈴木礼子・大串文子・井田厚子・石川由美子・渡辺久美子
・ 背景:平林茂・小杉光芳・手塚健・高野正道・南部時男・渡辺加代子・小野広子
・ 録音:太平スタジオ・TEAスタジオ
・ 現像所:東洋現像所
・ 制作:東京テレビ動画
・ 配給:日本ヘラルド映画
● 主題歌
1971年にキャニオン・レコードから本作の主題歌2曲を収録したオリジナル・サウンド・トラック盤が発売されていた。2020年現在は廃盤となっている。
◇「ドバ・ドバ・ソング」
:キャニオン・レコード
:作詞:島村葉二 / 作曲:橋場清 / 浪曲部担当:沢田敏子 / 曲師:吉野静 / 歌:ザ・ラニアルズ
◇「ロンリーブルース」
:キャニオン・レコード
:作詞:島村葉二 / 作曲:橋場清 / 歌:杉かおる
◇挿入歌
:
◇「私生活」
:作詞:安井かずみ / 作曲:村井邦彦 / 歌:辺見マリ
:
◇「経験」
:作詞:安井かずみ / 作曲:村井邦彦 / 歌:辺見マリ
:
◇「めまい」
:作詞:安井かずみ / 作曲:村井邦彦 / 歌:辺見マリ
:
◇「海ゆかば」
:作詞:大伴家持 / 作曲:信時潔
● 補遺
・ 本作の半年前に日活が公開した谷岡ヤスジ原作の実写映画『谷岡ヤスジのメッタメタガキ道講座』も興行的には失敗に終わっている。監督の江崎実生は映画が失敗した理由について「大当たりした映画『ハレンチ学園』も、見直してみると、ブラックユーモア、スラップスティックに徹していないで、原作より『泥臭め』につくってある。当時も、そして今でも、日本人はあくまでも『寅さん』のような湿っぽさを含んだ笑いを好むのであって、まだまだ完全に乾いた笑いを許容する文化は育っていないんですね。その点を見誤ったというか、早合点をしてしまったのが敗因だったと思います。『これを機会に、日本でもブラックユーモア、スラップスティック映画の文化を定着させてやろう』と肩に力が入り過ぎて、逆にお客さんはシラけてしまう…こんな風に熱意が空回りしてしまったんでしょうね。ともかく早すぎる作品を撮ってしまいました。こういうのを、まさに『若気の至り』というんだと思います」と後に語っている。
・ 吉川惣司の証言によると1972年1月頃、旅行で立ち寄った青森の映画館で深夜に2本立て(いわゆるグラインドハウス映画)の1本で本作が上映されており、それを偶然見たという。吉川はスタッフロールに旧虫プロ時代の同僚である鈴木満のクレジットを見つけ、鈴木が新潟のアニメスタジオに移ったと聞いていたため、帰路に鈴木のいるスタジオを訪れた。吉川は帰京後、TBSプロデューサーの忠隈昌に「男子バレーのアニメを作るのにいい会社はないか?」と聞かれ、日本テレビ動画を紹介した。その結果、大隅正秋(現・おおすみ正秋)監督/吉川惣司演出の『アニメドキュメント ミュンヘンへの道』を日本テレビ動画が制作することになったというに寺山修司原作の劇場版アニメ『新宿千夜一夜』の制作を着手させた。同作は寺山修司作・宇野亜喜良美術の戯曲『千一夜物語 新宿版』ないし小説版『絵本・千一夜物語』を原作としており、脚本と監修に寺山修司を、原画には宇野亜喜良を招き、監督には杉井ギサブローが抜擢されていた。実制作は杉井、出崎統、吉川惣司らが設立したアートフレッシュが担当する予定で、実際に約6000枚の原画と5分程度のパイロットフィルムも完成していたといたというが日の目を見ることなく、1968年に日放映は活動を停止した、頓挫した『新宿千夜一夜』との間で受け渡しがあったかのような構図となっている。
○ 東京テレビ動画『性蝕記』
東京テレビ動画はこれまで『やっちまえ』を公開した直後に活動を停止したとされてきたが、2019年2月に有志の調査で1971年秋以降に宮谷一彦の劇画『性蝕記』を東京テレビ動画の成人向劇場アニメ第2弾としてアニメ化する企画を立ち上げていたことが判明した。
『性蝕記』は劇画雑誌『ヤングコミック』1970年4月28日号に発表された公害の汚染魚による家族の破滅と兄妹同士の近親相姦を描いたアダルト劇画で、原作者の宮谷は監督・演出・出演・アニメーション作画の一人四役を担当する予定であったという。この情報は虫プロ商事の『COM』1971年12月号「漫画かわら版」に掲載されたもので、詳細は次号に掲載される予定であったが、同誌が今号限りで休刊したため詳細は不明のままである。
なお、宮谷の原作は新東宝興業が1981年に公開したピンク映画『歓びの喘ぎ 処女を襲う』(原題:死に急ぐ海)で実写映画化されている。監督は高橋伴明で助監督は周防正行。また音楽は周防義和が担当し、兄妹役に下元史郎(現・史朗)と山地美貴が出演している。
● 評価・分析
◇ 谷岡ヤスジ
: へぇ、奇想天外に動きますねぇ。僕自身が作品を描いているときは随分画面の飛躍と動きを意識しているつもりですけど、映画になってみると予想外の効果が出てくる。それに映画になると一段とエロですねぇ。
◇ 田山力哉
: 面白いこと無類。出し惜しみなくセックス描写をどしどし見せてくれる。たっぷり楽しませる大人の大娯楽アニメ。また、主婦連のPTAというどうしようもない連中が、定りきった文句で柳眉を逆立てるであろう光景が目に浮かぶよ。かまわないから、やっちまえ。
◇ 佐藤重臣
: 柄の悪さで日本一、バンカラポルノで世界一。と、フレコミ以上に凄い。ナマの裸のオンナがあえぐよりもポルノ度がずっと凄い気がする。
◇ 内田栄一
: 主人公は「やっちまえ」と突進する。限界を感じ、向こうの果てまで攻撃しつくせないのを知りながら、当面、噴き出す鼻血を止めるためにも目の前やら手近にいる女と“やる”ことの実現に集中する。そこで理解できるのは、やることや性の遊びやその変化のしかただけに集中するような、そしてそのことを〈文化的〉に高いところで評価してもらおうと、いわば〈上昇志向〉にあふれている俗流ポルノのもろもろとは違って、やったり遊んだりすることが谷岡ヤスジの作品においては少しも完結の目標になっていないということだろう。(中略)そしてそのような一切のリクツを抜きにしても、ワイドのスクリーンいっぱいに何度も出てきて拡がるなつかしいオマンコマーク、それを目撃することができるだけでもぼくらは感動してしまうに違いない。少なくともぼくの経験した範囲で言えば、それは地上最大のオマンコマークであり、それを見るだけでも谷岡ヤスジの作品世界との、攻撃的で破壊的な気配を持っている〈共犯関係〉が成立するような気がする。
◇ 石野卓球
: 萌えでもエロでもなくお色気。僕がこの作品を知ったのは『日本アニメーション映画史』(山口且訓・渡辺泰、1977年)だった。「いつかは観たい」どころか「一生観る機会はないだろう」と思っていた作品だった。内容はかなり無茶苦茶。作り手は意図して無茶苦茶なものを制作しているはずなので、これは悪口ではない。中盤からクライマックスにかけて「ええっ」と驚く展開がいくつもあった。この作品を自分の中でどう位置づけすればいいのかはまだ分からない。
◇ 眠田直
: 珍品。まさに珍品としかいいようがない。「幻の名作」ではないので、谷岡ヤスジのファン以外は無理して観る必要は無いよ
◇ 金田益実
: 映画が始まって数分「おい、これで全編いくの?」という不安と期待 壮絶なラスト 想像の遥か上を行く長編カルト漫画映画。
◇ 豊田夢太郎
: これ相当なカルト作品なので半端な気持ちで観ると火傷するど。
◇ 新倉雅美
: われわれの製作意図は、既成の歪んだエロティシズム、つまり、支配者が目論んだ性の管理統制だ。(中略)映画配給会社との契約決定もないまま、製作していた。このDo it宣言に最初の共鳴、支持をよせたのが日本ヘラルド映画であった。まず、製作期間はまる六ヶ月を要した。これに投入された延人数は二万一千六百人になる。(中略)東京テレビ動画は、常に未来にむかって前進しています。エロス革命の戦士として活躍するヤングウーマンを控えて、未来にむかってとどまることを知らない会社─は、きっと若者の真の解放を達成することでしょう。
・ 父ちゃんのポーが聞える/潮騒 - 同日公開の日本映画。現在は未DVD化のため両作品ともに視聴困難な作品となっている。
・ アメリカン・ニューシネマ - 1960年代後半から1970年代半ばにかけてアメリカ合衆国で製作されたアンチ・ヒーローやアンチ・ハッピーエンドが特徴的な映画作品群の呼称。鬱屈した世相を反映した反体制的な若者の心情と壮絶な破滅が主に描かれている。
「ヤスジのポルノラマ やっちまえ!!」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』(https://ja.wikipedia.org/)
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