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『千夜一夜物語』(せんやいちやものがたり、, Hezār-o yek šab, 千一夜、, Alf Laylah wa Laylah, 千一夜)は、イスラム世界の説話集。ペルシャの王に、毎夜、妻が物語を語る形式を採る。枠物語の手法で描かれた代表的な物語の一つとしても知られる。1704年にフランスで「千一夜」として出版され、2年後、1706年にイングランドで英語版「アラビアンナイト・エンターテイメント」が出版されたことで世界的に知られるようになった。日本では、千夜一夜物語、アラビアンナイト、千一夜物語(せんいちやものがたり)の名称で知られている。
● 概要
サーサーン朝時代に、ペルシャ・インド・ギリシャなど各地の民話が、公用語の中世ペルシャ語(パフラヴィー語)で記され、「ハザール・アフサーナ」(, Hazār Afsān, 千の物語)として編纂された。アラビア語の題名は「アルフ・ライラ・ワ・ライラ」(, Alf Laylah wa Laylah, 千一夜)。
1704年に、ルイ14世に仕えていた東洋学者アントワーヌ・ガランが、アラビア語の写本からフランス語に翻訳して「千一夜」第一巻を出版した。ガランの翻訳と出版によりヨーロッパ各国で「千一夜」出版ブームが起き。
なお、アントワーヌ・ガランが翻訳に使用した「千一夜」のアラビア語の写本では、夜の数は282夜、結末はない
昔々、サーサーン朝にシャフリヤールという王がいた(Shahryār:物語上の架空人物)。王はインドと中国も治めていた。ある時、王は妻の不貞を知り、妻と相手の奴隷たちの首をはねて殺した。
女性不信となった王は、街の生娘を宮殿に呼び一夜を過ごしては、翌朝にはその首をはねた。こうして街から次々と若い女性がいなくなっていった。王の側近の大臣は困り果てたが、その大臣の娘シェヘラザード(シャハラザード、شهرزاد)が名乗り出て、これを止めるため、王の元に嫁ぎ妻となった。
明日をも知れぬ中、シェヘラザードは命がけで、毎夜、王に興味深い物語を語る。話が佳境に入った所で「続きは、また明日」そして「明日はもっと面白い」と話を打ち切る。シェヘラザードの傍らには、妹のがいて、横から「話がおもしろい」と盛り上げ役を演じる。姉妹による作戦によって、王は話の続きが聞きたくてシェヘラザードを生かし続けて1000日。ついにシェヘラザードは王の悪習を止めさせる。
以上が、物語の大枠であるが、王の悪習を止めさせたとする結末は、後世のヨーロッパ人が追加したものである。1704年に「千一夜」を初めてヨーロッパに紹介したアントワーヌ・ガランが翻訳に使用したアラビア語の写本には結末はない。282夜の話があるだけである。
アレクサンドル・ウラール(Alexandre Ular)はそれぞれの物語を銃器の使用有無やぶどう酒・蒸留酒・コーヒーの出現有無、たった1回だけ煙草が登場すること、多くの病気が登場するにもかかわらず梅毒が登場しないことなどから千夜一夜物語の下限を15世紀から16世紀と結論づけている。
以上を総合すると、おそらくは9世紀もしくは10世紀のバグダードで原型がつくられ、徐々に物語がつけ足されてゆき、15世紀ごろのカイロで最終的なかたちにまとめられたのではないかと思われる。ただし、9世紀頃に出現した「アルフ・ライラ」の原写本はみつかっておらず、初期の物語群がどのような経緯で現在のようなかたちになってきたかについては、いまだに不明確なままである。
ヨーロッパでは、18世紀初頭にフランスのアントワーヌ・ガランが「発見」し、シリア系写本を使ってフランス語訳を行い、広く紹介した。以来、さまざまな翻訳と翻案が積み重ねられ、アラブ文芸の枠に留まらない大きな文学ジャンルと言えるほどの作品となっている。
(1909)は、全体の枠となる物語を分析し、次の3つの説話が原型になっているとした。
妻の裏切りに絶望したある男が、他の高貴な人物が自分と同様に不幸であったことを知って、心の悩みから免れる話
超人的存在でも女の裏切りはふせぎ得なかったという話
説話の名人がその妙技をもって自分やその父の危機を脱する話
である。このような構成には、他にも『屍鬼二十五話』、『ヒトーパデーシャ』、『パンチャタントラ』などインドの説話集が知られており、インド起源の説話がまずペルシアに伝わって風土化し、のちにアラブ人に伝わって成立したとする。また、成立後も様々な作家によって新たに挿話が付け加えられ、原典であっても複数のテキストが存在する、現在ではこれが「千一夜」の原型を保った最良のものと評価されている。マフディーの研究によると、最初期の「千一夜」は、夜の数にしてせいぜい二百数十夜の物語集であり、ガランが翻訳に使ったシリア系写本とほぼ同じ内容であったらしい。また、これらの物語は一定の意図のもとに編集がおこなわれ、文学的にも完結しているというのがマフディーの見方である。
◇ チュービンゲン写本
: 15世紀初期に書かれた可能性があるとされる写本。283夜から542夜の部分が残っている。
◇ トルコ写本(カイセリ写本)
: トルコのカイセリに伝わる写本で、16世紀に作られたとされる。カイセリ写本とも言われる。枠物語の結末が書かれた最古のものとされ、それによれば、シェヘラザードに子は生まれておらず、ブーラーク版、カルカッタ第二版とこの点において異なっている。
◇ マンチェスター写本
: イギリスのマンチェスター大学ジョン・ライランズ図書館が所蔵する写本で16世紀前半に作られたとされる。255夜から始まっている。
◇ マイエ写本
: 17世紀後半に成立したと考えられている写本。冒頭部分から905夜までが収録されている。1702年にフランスのエジプト総領事ベノワ・ド・マイエ(Benoît de Maillet)が購入したものである。
○ 1704年以降の写本
1704年にヨーロッパで初めて発行されたアントワーヌ・ガランのフランス語版「千一夜」以後に作られた写本の主なもの。これらの新しい写本は数が多く、ヨーロッパの影響を受けているものもあるとされる。
◇ マカン写本
: アレクサンドリアのイギリス総領事 (1780年-1827年)が所持していたもので、彼の死後にターナー・マカン少佐(1792年-1836年)に渡り、最終的にはカルカッタ第二版の作成に使用された。しかし、現在、マカン写本の所在は確認されていない。
◇ ゾータンベールのエジプト系写本(ZER)
: 1704年以後にエジプトで多数作成された写本群で互いに良く似た内容となっている。写本研究者エルマン・ゾータンベール(1836年–1894年)により分類されZER(Zotenberg Egyptian Recension)と呼ばれている。ブーラーク版の主な典拠となった。
◇ ラインハルト写本
: 1831年から1832年に作成された写本で、ドイツのエジプト副領事ラインハルトがエジプトからもたらしたものである。この写本の結末では、シェヘラザードが意図的に冒頭の枠物語を語り始め、途中でシャフリヤール王が自分たちの話なのだと気づき、すべてを悟って前非を悔いるという構造になっている。
○ 偽写本
1704年に、アントワーヌ・ガランが初めてヨーロッパに紹介したフランス語版「千一夜」は、当初は1001夜に満たない形で刊行されたため、1001夜まで物語はあるはずだと信じたヨーロッパ人により、ガランが翻訳の際に使用したアラビア語の写本以外の写本探しが活発化した。また、ガランの写本には存在しない「アラジンと魔法のランプ」「アリババと40人の盗賊」の写本探しも行われた。しかし、そのような写本は見つからず、これに伴い偽写本が作られるようになった日本の図書館の所蔵状況。フサイン・ハッダウィー(Husain Haddawy)が1990年に、これを英語に翻訳した(後述)。
◎ 欧州言語の翻訳版
英語・およびフランス語に翻訳・出版したものでは、以下が著名である。なお、は、1886年に『』誌で「ガランは子ども部屋に、レインは図書館に、ペインは書斎に、そしてバートンはドブに」と特徴づけている。
◇ガラン版(フランス語)
:1704年から1717年にかけてアントワーヌ・ガラン(1646年-1715年)の翻訳によりフランス語で出版された。35編の物語と1つの物語の半分、つまり271夜分が収録されている。は、「ハッダウィーによる訳は正確な上に読んでいて楽しい。さらにハッダウィー訳の底本となったマフディー版原典には巧みに語られた部分がたくさんあるのだが、これらはカルカッタ第二版やブーラーク版では失われている。アラビアン・ナイト物語の本当の味わいを得たい者には、ハッダウィーの訳を強く推薦する。」と評価している。
:マフディー版またはそのハッダウィー英訳版の日本語訳は未刊である。
:なお、ハッダウィーはガラン写本に含まれていない、「orphan tales」=いわゆる「孤児の話」の英語訳を1995年に出版している。こちらの日本語訳も未刊である。
◎ 主な日本語訳
・『アラビアン・ナイト』(全18巻・別巻1) 前嶋信次・池田修訳
・ 平凡社〈東洋文庫〉、1966年-1992年、ISBN 4-582-80071-8。アラビア語(カルカッタ第二版)からの原典訳
・『千夜一夜-完訳アラビアンナイト』 大宅壮一訳、バートン版からの重訳
・ 中央公論社(全12巻)、1929-30年。訳者代表
・ 集英社(全13巻)、1967-68年(改訳版、最終巻は詩集選で大木惇夫編訳)、カバー普及版も刊行
・『完訳 千一夜物語』(全13巻)、豊島与志雄・佐藤正彰・渡辺一夫・岡部正孝訳(装画多数)
・ 岩波書店、1982-83年/岩波文庫、1988年 ISBN 4-00-327801-1 - マルドリュス版仏訳からの重訳
・『千一夜物語』 佐藤正彰訳、新版・ちくま文庫(全10巻)、1988-89年 ISBN 978-4-480-02211-0 (電子書籍で再刊、2010年)
・ 旧版・筑摩書房〈世界古典文学全集〉全4巻 - マルドリュス版から重訳
・『バートン版 千夜一夜物語』 大場正史訳、ちくま文庫(全11巻)、2003年
・ 装画古沢岩美。ISBN 4-480-03841-8 - バートン版英訳からの重訳
・ 『千夜一夜物語 バートン版』 由良君美訳/『千夜一夜物語 ガラン版』 井上輝夫訳
・ ホルヘ・ルイス・ボルヘス編、国書刊行会〈バベルの図書館 15・24〉、1989-90年、〈-新編6〉、2013年- 各・抜粋訳
・『ガラン版 千一夜物語』(全6巻)、西尾哲夫訳
::岩波書店、2019年7月‐2020年5月、ISBN 9784000287739。アントワーヌ・ガランによるフランス語訳版からの重訳
・ ケイト・D・ウィギン、ノラ・A・スミス編 『アラビアン・ナイト』 坂井晴彦訳
・ W・ハーヴェイ他画、福音館書店〈福音館古典童話シリーズ〉、1997年 - 児童書
・『アラビアン・ナイト』 ディクソン編、中野好夫訳、岩波少年文庫(上下)、新版2001年 - 児童書
・『アラビアンナイト』 川真田純子訳、講談社〈青い鳥文庫〉全7巻、1987-92年 - 児童書
● 千夜一夜物語に関する事件
2010年4月21日、エジプトの弁護士団体「制限なき弁護士団」が「公序良俗に反する」として出版者の逮捕と同書の押収を当局に要求し、これに対して作家や人権団体などの反発が起こった。5月8日、エジプトの検察当局は弁護士団体の申し立てを却下した。同説話には性的表現も含まれるため、「反イスラム的」として標的にされたと言われている。
● 派生作品
「千夜一夜物語」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』(https://ja.wikipedia.org/)
2024年10月11日14時(日本時間)現在での最新版を取得
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