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『王立宇宙軍 オネアミスの翼』(おうりつうちゅうぐん オネアミスのつばさ)は、1987年に公開された日本のアニメーション映画。GAINAX製作。
地球とよく似た架空の惑星にあるオネアミス王国を舞台に、王立宇宙軍の士官シロツグが史上初の宇宙飛行士に志願し、仲間とともにロケット打ち上げを目指すというファンタジー・SF作品。
バンダイが初めて制作した映画作品である。
● 物語
1950年代の地球に似ている「もうひとつの地球」にある「オネアミス王国」、正式国名「オネ・アマノ・ジケイン・ミナダン王国連邦」が舞台となる。
「失敗ばかり」「なにもしない軍隊」と揶揄され、オネアミス王国の世間からは落第軍隊として見下されている王立宇宙軍。宇宙軍士官のシロツグ・ラーダットはかつては水軍のジェット戦闘機乗りにあこがれていたが、学業の成績に応じて仕方なく入った宇宙軍で張り合いのない日々を送っていた。ある夜同僚たちと訪れた歓楽街で、シロツグは献身的に布教活動を行う少女、リイクニ・ノンデライコと出会いビラを受け取る。多少の下心を秘めてリイクニの住居を訪れたシロツグだったが、彼女から「戦争をしない軍隊」である宇宙軍をほめられて思わず発奮し、その後将軍から人類初の有人宇宙飛行計画を明かされると宇宙飛行士に志願する。最初は呆れていた同僚たちもシロツグのやる気に感化され、宇宙旅行協会の老技術者たちとともにロケット打ち上げの準備を進める。
落ちこぼれ軍隊の凡庸な軍人から国家的英雄にまで祭り上げられるシロツグだったが、打ち上げ計画の裏事情、多額の税金を使う宇宙開発の是非、開発責任者の事故死などのつらい現実に直面する。さらに計画を妨害するため敵国「共和国」が放った暗殺者に命を狙われ、自己防衛のためとはいえ人を殺めてしまう。シロツグはリイクニに救いを求めようとするが、宗教にひたむきな彼女とはすれ違うばかりで、むしろ彼女と暮らす幼な子マナとの交流に心を癒される。
打ち上げ当日、政治的な思惑から隣国リマダとの国境近くに設けられたロケット発射台を巡り、侵攻してきた共和国リマダ駐留軍と王国軍との間で激しい局地戦が始まる。カウントダウンが一旦中止されるも、シロツグは操縦席の中から仲間たちに発射決行を呼びかける。ロケットは弾丸飛び交う地上を離れて天高く上昇し、敵味方が見守る中、打ち上げは成功を遂げる。衛星軌道上にたどりついたシロツグは、地上の人々に向けた放送を始め、当初の原稿には無い祈りのメッセージを語りかける。
● 概要
◎ 企画
本作の企画母体となったのは、日本SF大会のOPアニメを製作するために組織されたアマチュア映像集団「DAICON FILM」である。当時大学生だった山賀博之・庵野秀明・前田真宏・貞本義行ら主要スタッフは『超時空要塞マクロス』や『風の谷のナウシカ』の制作現場に参加してプロの仕事を学んだのち、次の方向としてオリジナル商業作品の創作に向かった。
当初は製作費4000万円のオリジナルビデオアニメーション (OVA) として企画されていたが、当時EMOTIONレーベルで映像事業に進出していたバンダイの山科誠社長への売り込みが成功し、2時間の長編アニメ映画として製作することになった。本作を制作するためDAICON FILMは解散し、1984年(昭和59年)にGAINAXが設立された。映画製作の進行状況などは月刊モデルグラフィックス誌上において毎月リアルタイムに連載された。
企画がバンダイに来た時、押井守に相談している(世界初OVA『ダロス』監督)。すると押井は宮崎駿を紹介した。宮崎は庵野秀明が『風の谷のナウシカ』でアニメーターをしていたので「きっと面白いだろう」と勧めた、と渡辺繁は語っている。
山賀は当時24歳。アマチュアで名を馳せ、一部のアニメファンには知られた存在だったが、まだ実現には至っていない。
◎ タイトル
本作の企画構想時にスタッフが喫茶店で打ち合わせをしていた時、隣の客がロイヤルミルクティーを注文した。山賀はとっさに「ロイヤル・スペースフォース」という語を思い浮かべ、これを和訳した「王立宇宙軍」を企画タイトルにすることを閃いた。「王立〜軍」という言葉は、イギリスの軍組織が「王立空軍 (Royal Air Force)」「王立海軍 (Royal Navy)」などと呼称されることを踏まえたものである。
これではイメージが固すぎるとの考えから、1986年の映画製作発表時には副題を付け、「王立宇宙軍 リイクニの翼」という仮タイトルになった。その後"リイクニの翼"では、観客の意識がリイクニに偏り過ぎるという事で"オネアミスの翼"に変更、さらに配給元の東宝東和の意向で主題と副題を入替え、劇場公開時は「オネアミスの翼 王立宇宙軍」のタイトルとなった。
この入替えは制作サイドからは不評であったため、レーザーディスク化の際「王立宇宙軍 オネアミスの翼」に戻され、以後の映像ソフトでもこのタイトルとなっている。
◎ 制作手法
緻密でリアリティある作画を実現するため、シロツグの初めて体験する飛行訓練シーンでのプロペラ回転始動のカットなど一部にはコンピュータグラフィックスも導入されている。しかし、テクスチャマッピングされた動画にも莫大な時間と費用を要する時代であり、その節約のため、ワイヤーフレームで描かれた線をなぞって手書きの動画に起こす手法が採られた。
主人公のシロツグ・ラーダット役を俳優の森本レオが担当したほか、声優陣はベテラン・中堅の実力派を多数起用している。当時現役日本テレビアナウンサーであった徳光和夫がTVアナウンサー役で、外国人タレントとして人気だったアントン・ウィッキーとオスマン・サンコンはコメディアン(漫才師)役として声をあてている。徳光和夫は映画公開前に日本テレビで放映された今作の特集番組にも出演している。
また、敵対勢力である共和国側の人物の会話は全て架空の外国語によって進行し、その内容は字幕で表現するが、その声優には全て外国人が充てられた。これは、日本人が発音するとどうしても嘘くさくなるため、より外国としての現実感を出すための演出方法として採り入れられたもの。
「戦場のメリークリスマス」で映画音楽を手がけた坂本龍一がアニメーションの音楽監督を担当した唯一の作品である。坂本龍一が全体を統括し、上野耕路、野見祐二、窪田晴男に楽曲を割り振っている。坂本が4種類の基本的なテーマ(プロトタイプ)を提示、それをもとに、坂本を含めた各作曲家がかなり自由なアレンジ(バリエーション)を行っている。また各作曲家オリジナルの楽曲も含まれる。坂本と共に作編曲を担当した上野耕路、野見祐二は『子猫物語』『ラストエンペラー』でも共作している。なお、書籍「坂本龍一・全仕事」(山下邦彦編、1991年)にて『メインテーマ』と『リイクニのテーマ』の坂本本人の作曲時のスケッチを見る事が出来る。
サウンドトラック盤には未収録曲があったが、そのほとんどは、1990年発売のLDのコレクターズボックスと後発の北米版DVDに音声特典で収録された。
作品イメージソングとして統乃さゆみ『オネアミスの翼〜Remember Me Again〜』(CBSソニー。作詞・森生紗都子、作曲・長戸大幸)がビーイングによって制作され宣伝映像に用いられたが、アニメ本編で使用されることはなかった。
◎ その他
公開当時、上映時間の都合からカットされた場面(約1分)があり、「メモリアルボックス」において登場キャラクターの声優である森本レオ・曽我部和恭による追加アフレコを行った上で本編に組み込まれた。その後1997年発売の「サウンドリニューアル版」ではこの場面は特典映像扱いとなり、本編は公開版に戻されている。これとは別に東宝東和側から、一日の上映回数を増やすため40分程度尺をカットするよう求められた際、企画の岡田斗司夫が「フィルムを切るのなら俺の首を切れ!」と啖呵を切り、阻止した。
2007年にバンダイビジュアルがBDソフトの発売に参入するにあたり、本作にちなんだ「HONNEAMISE」がBD用レーベルとして5年間使われることになる。
2018年4月26日、音楽監督の坂本龍一はニューヨークでのインタビューにて、本作に対しと言及している。なお、インタビュー時は『王立宇宙軍』のタイトルは出さず、アニメ映画の音楽との関わりについてとして紹介した。このインタビューについて、プロデューサーの岡田斗司夫は自身の動画配信にて、アニメーション映画に音楽をあてることについての理解不足・見解相違があり、齟齬が残り続けている旨を語っている。
● 興行成績
公開当時、ハリウッドでのプレミア上映などプロモーションにかかった宣伝費などを含む総製作費は8億円と発表された。この件に関し、山賀は当初バンダイからもらった予算が3億6000万円、坂本龍一の音楽監督起用で4000万円追加され、それでも足りず4000万円オーバーした(=4億4000万円)と具体的な数字を述べている。山科誠(バンダイ社長)は、製作費8億のうち「宣伝費が3億ぐらい。(現場サイドには)実質的には4億ちょっと、5億ぐらいですか」と述べている。
一部でロングラン上映をする館もあったが、まだ一般層にとっては難解かつ、当時のトレンドとは異なった大人向けのストーリー展開のためか興行成績は振るわず、総製作費8億円に対し配給収入は3億4700万円に終わった。GAINAXの次作となるOVA『トップをねらえ』では一転してアニメファンを意識した戦略がとられた。
しかし、その後のビデオ・レーザーディスク(「メモリアルボックス」)は長く好調な販売を記録した。1997年(平成9年)にドルビーデジタル版(「サウンドリニューアル版」)が制作、同年11月2日に公開された。アニメ制作会社の経営者対談の中で、近藤光(ufotable社長)は「オネアミスの翼は15年かかって回収しているんです」と述べている。
2007年7月27日にはブックレット付BOX仕様ブルーレイ版、翌2008年7月25日には通常のブルーレイ版も販売され、各販売サイトで高評価を得て現在も販売が継続されている。
公開35周年を迎え、2022年に4Kリマスター版によるリバイバル上映が行われることが決定し、10月28日の公開が発表された。上映劇場では430ページの「絵コンテ集」が付属するUHD ブルーレイ「4Kリマスターメモリアルボックス」の「特別限定版」が先行販売される。7月から森本レオが35年振りにシロツグのセリフを吹き込んだ、4Kリマスター上映とUHD BD発売を告知するテレビCMが公開された。
● 評価
日本に先駆けロサンゼルスでプレミア上映も行われたが、これは配給サイドによる箔付け的な要素が強く、内容は米スタッフにより大幅に編集されほぼ別物となっていた。作品を見たシド・ミードやマイケル・ビーンらは「素晴らしい映像美」を高く評価した。
◎ 宮崎駿
アニメーション監督の宮崎駿は、金のない無名の若者たちが集団作業で作る姿勢に好感を持って応援し、制作にあたってバンダイを説得するための役を買って出た。完成した作品にもある程度の評価をしているが、劇中のロケット打ち上げのシーンで将軍が簡単に打ち上げを諦めたことや、主人公以外の努力してきた年配者を描かないことを批判。『キネマ旬報』1987年3月下旬号では、山賀とほとんど口論に近い形の対談を行っている。
◎ 安彦良和
漫画家でアニメーション監督の安彦良和は、「全然素晴らしいとは思わない。何のメッセージもない。ただ映像は素晴らしい。誰がやったんだこんなとんでもない作画。そういうことをやって何を言いたいんだっつったら、地球は青かったって言うんですよ。それガガーリンだろ、50年代だろ、ふざけんな(笑)。青いの当たり前じゃない、みんな知ってんだよ。それが物凄い気持ち悪かったんですよね。こんなに無意味なもの、これだけのセンスと技術力を駆使して表現しちゃうこいつら何なの?って」と、厳しい言葉を交えつつも評価している。
◎ 押井守
映画監督でアニメーション演出家の押井守は2016年のインタビューで、「本格的な異世界ファンタジーをちゃんとやりきれたフィルムなんて数えるほどしかない」と述べ、アニメでの例として『風の谷のナウシカ』とともに本作を挙げている。1993年の取材では、初号プリント鑑賞の際に、監督の山賀が作中でドラマ性を否定していることに気づき、その後何度か見直す度に、元からドラマを作る気が全くなかったという確信に至ったという。そして、意図的にドラマ性を排除しても映画は成立することが証明され、それは非常に良いことだと評価している。
● 主な登場人物・声優
(括弧)内はLDメモリアルボックス添付のブックレットに記載されていた名称。
◎ 主要人物
◇ シロツグ・ラーダット
:声 - 森本レオ
:宇宙軍士官第2期生で、階級は中佐(劇中で昇進し大佐)。宇宙飛行士候補。21歳。身長171cm、体重62kg。
:中流家庭で平凡に生まれ育つ。学業の成績から水軍パイロットへの夢は諦め、仕方なく入った宇宙軍で漫然と過していた。
:歓楽街でリイクニから宗教勧誘のビラを受け取ったのをきっかけに宇宙戦艦パイロットへ志願し、様々な訓練やトラブルを乗り越えながら史上初の宇宙戦艦(有人人工衛星)パイロットとなる。
◇ リイクニ・ノンデライコ
:声 - 弥生みつき
:17歳。身長165cm、体重52kg。B78・W61・H88。
:不仲な両親にないがしろにされ、熱心な宗教家の祖母に育てられた。祖母が外国系のクォーター。
:親族が所有する郊外の一軒家でマナと暮らしていた。しかし親族が借金をしていたせいで家が取り壊されてしまい、その後は近くの教会に身を寄せる。
:心の在りようを現実世界ではなく、外国系の宗教の信仰に置いており、歓楽街の路上でビラを配って布教活動を行っている他、劇中でも数度祈りを捧げるシーンがある。信心深いが浮世離れした性格の持ち主でもあり、欲情して自身を押し倒したシロツグを殴って気絶させてしまった際には、怒るどころか逆に自省の弁を語り、却って彼を困惑させてしまう。
:シロツグがロケット発射場へ向かう直前、行先を告げずに「行ってきます」と笑顔を見せる彼を、同じように笑顔で見送った。
◇ マナ
:声 - 村田彩
:5歳。身長108cm、体重22kg。
:リイクニと共に暮らす無口で無表情な女児。不仲な夫婦の娘で、夫婦の経営する飲み屋の洗い場で働いていたリイクニが、喧嘩の絶えない家庭環境を見かねて、強引に引き取り同居させている。そうした生い立ちからか人見知りが激しく、人と付き合う術を知らず、シロツグとリイクニの言い争いを見て泣きだすこともあった。
:あまりに無口であるため、シロツグは最初男の子と勘違いしたが、徐々に懐いてゆき、宇宙へ赴く彼を笑顔で見送った。
:初期設定では活発な男児とされていた。
◎ 宇宙軍
◇ マティ
:声 - 曽我部和恭
:宇宙軍中佐。第2期生。21歳。身長176cm、体重68kg。
:シロツグの親友。要領が良く女にももてる。バイクマニアにしてカーマニア。繁華街に顔が広く、なじみの酒場女もけっこういるらしく、その女性からは「とんちゃん」と呼ばれている(その愛称の由来は初期設定の名前が「トンデン」である事から)。
:ロケット打ち上げでは発射管制を担当。
◇ カロック
:声 - 平野正人
:宇宙軍中佐。第3期生。23歳。身長183cm、体重70kg。
:ロケット推進機関の専門家。冷静だが一旦怒ると手が付けられず、「瞬間湯沸かし器」のあだ名を持つ。
◇ ドムロット
:声 - 鈴置洋孝
:宇宙軍中佐。第1期生。21歳。身長170cm、体重58kg。
:実家が地方豪族の名家で、プライドが高い。唯一残った第1期生。
:自分のことは棚に上げて他人の無責任さを嫌っており、「宇宙軍一の無責任男」と呼ばれる。
◇ ダリガン
:声 - 伊沢弘
:宇宙軍中佐。第3期生。25歳。身長167cm、体重60kg。
:宇宙軍一の秀才で、レンズが側面まで伸びた眼鏡をかけている。趣味でSF小説を執筆し、雑誌に投稿しているが、掲載誌が必ず廃刊になるジンクスがある。
◇ チャリチャンミ
:声 - 戸谷公次
:宇宙軍少佐。第3期生。20歳。身長160cm、体重65kg。
:周囲との交友が少なく、愛猫と戯れている。風呂に入らず不潔、目つきと口が悪い。
:ロケット発射時は、グリア天文台で観測を行った。
◇ ネッカラウト
:声 - 安原義人
:宇宙軍少佐。第3期生。20歳。身長173cm、体重65kg。
:変わり者で異常に新しい物好きなため、享楽的・派手好きな国民性のオネアミス王国にあっても、周囲からは特異視されている。軍の公用車を私物化して乗り回している。
◇ ヤナラン
:声 - 島田敏
:宇宙軍少佐。第3期生。20歳。身長190cm、体重105kg。
:中小企業の会社社長子息として育ったため、大柄な体格に似合わぬお坊ちゃまな性格。しかし空軍下士官たちとの乱闘では、数人を相手に立ち回りを演じた。手先が器用で、発射基地では電気関係を担当。
◇ マジャホ
:声 - 安西正弘
:宇宙軍少佐。第3期生。19歳。身長152cm、体重52kg。
:メンバー最年少ながら老け顔であるため、子供がいるとの噂がある。実家はパン屋で、宇宙軍にも差し入れのパンが届いた。
:ロケット発射時は、チャリチャンミとともにグリア天文台で観測を行った。
◇ カイデン・ル・マシーレ
:声 - 内田稔
:王立宇宙軍将軍(司令官)。53歳。身長166cm、体重59kg。
:宇宙軍の創設者にして最高責任者。王室にも通じるコネクションを生かし、有人衛星打上げに情熱を注ぐ。
:裏金調達のための手段として、本来は軍人には禁じられている私企業(ダミー会社)を所有している。
:もともとは歴史家を目指していたが、戦争が起き、祖国を救おうと軍隊に入った過去を持つ。
◇ 指導官
:声 - 飯塚昭三
:王立宇宙軍訓練指導官。41歳。身長185cm、体重70kg。
:学位や資格もない叩き上げ軍人の典型。あだ名は「脳味噌筋肉」。「給料分の〜」が口癖。
:ロケット発射時はカイデン将軍を補佐した。
:宇宙軍における身分は軍人ではなく嘱託である。
◎ 宇宙旅行協会
◇ グノォム博士
:声 - 大塚周夫
:宇宙旅行協会リーダー。51歳。
:他の協会員とは違い、話の分かる頼れる存在。希代のプレイボーイ、冒険家でもある。シロツグをのぞいたロケット構成部品のそれぞれに、野生生物などの名前を借りて「責任をもって命名」している。
:ロケット燃焼実験の時に爆発事故が発生し、シロツグは軽傷だったがグノォムは搬送先の病院で死亡。美貌の夫人がいた。
◇ デクロ
:声 - 及川ヒロオ
:宇宙旅行協会に所属する7人の博士の内の1人。目が大きい。打ち上げ地変更を「(国防)総省の命令(だから逆らえない)」と語った。
◇ ロンタ
:声 - 槐柳二
:宇宙旅行協会博士。車椅子を使用している。まだ完成していない水素エンジンをロケットに組み込もうとした。
◇ 老人D(ドンカン)
:ポケットに手を入れてふわふわさせている仕草が可愛い。ロケット打ち上げの際に一段目切り離し成功を確認した。
◇ 老人E(エエガー)
:突っ立っているだけで生きているか死んでるのかよくわからない。ロケットの発射場所がカネアに移ったのを知ったマティが声をかけるが無反応。
◇ 老人F(フォンマ)
:いつもニコニコしていて、いつも何か食べている。
◇ 老人G(ゴイル)
:松葉杖をついている。水素エンジンに反対したカロックに対して「後から来たくせに、ごちゃごちゃ抜かすな」と怒鳴り散らした。
◇ 老人H(ハンパ)
:度の強い眼鏡をしている。ロケット打ち上げの際に上昇高度の読み上げを担当した。
◎ 王国貴族
・貴族A(トクロ・マヤウリ=モノヤ):声 - 納谷悟朗
・貴族B(オコウ・セノウミ=マゴ):声 - 寺島幹夫
・貴族C(ヨス・スイタリ=カシア):声 - 梶哲也
将軍の提唱する宇宙戦艦計画の説明を受けた3名。うち1名は国防総相。すでに宇宙軍そのものを見限っており、真剣に説明する将軍に向かって「(宇宙軍設立について)我々は10年も前に後悔を済ませた。あとはどうやって忘れるか、だ」と価値を認めなかった。ロケットの発射場をあえて隣国リマダ(共和国の衛星国)国境との「緩衝地帯(恐らく地球での非武装地帯)」ギリギリに変更し、故意にそれを奪わせて外交交渉の材料とするつもりだった。
◎ 王立空軍
・ 空軍パイロット:声 - 沢りつお
・飛行訓練に来たシロツグを同乗させ、複座型の練習戦闘機を操縦する。
・ 管制官:声 - 石井隆夫
・ 空軍士官A(ストイ・ネジーレ=ヤン):声 - 村越伊知郎
・ 空軍士官B(ディロ・カサイキン=ヤン):声 - 山下啓介
・ 空軍士官C(キート・ロ=グリアン):声 - 林一夫
・宇宙軍士官達を挑発し、乱闘になってしまう。
・ スピーカーの声:声 - 八代駿
・ デンタ:声 - 山崎哲也
◎ 共和国
◇ ネレッドン
:声 - ウィリー・ドーシー
:共和国の政治局次官。宇宙戦艦計画の阻止を図り、ロケット発射場への侵攻の指揮を執る。
◇ 書記官(デッサラ・ザーリ)
:声 - フェイザンキー・ベロット
:ネレッドン付の書記。
◇ 殺し屋
:打ち上げ計画阻止の時間を稼ぐため、シロツグを暗殺する目的で共和国警察局からオネアミス王国に送り込まれた。周囲に怪しまれないよう老婆に化けていたが、実は男性。
・ 作戦室アナウンサー:声 - スティーブ・フェルバー
・ 交信者:声 - ドン・ウィットヤー
・ 給油機交信者:声 - ウィアム・ロバーツ
・ 司令官:声 - ジェリー・マッケーリック
・ 共和国アナウンサー:声 - ドーラ・コートレル
なお、映像としては登場していないが、共和国の最高指導者のカン大統領は公開当時の書籍に設定画が記載されている
◎ その他
・ 読経老婆:声 - 牧野和子
・ 酒場の男:声 - 後藤敦
・ 酒場の女、記者:声 - 勝生真沙子
・ 娼婦:声 - 小林優子
・ 記録映画ナレーション、テンズ・コビク准尉:声 - 瀬能礼子
・ 漫才師(コメディアン)A:声 - アントン・ウィッキー
・ 漫才師(コメディアン)B:声 - オスマン・サンコン
・ TVアナウンサー:声 - 徳光和夫
・ トネス殿下:声 - 熊倉一雄
・オネアミス王国の王。
・ 国防総省前の衛兵:声 - 赤井孝美(ノンクレジット)。それまで失敗続きだったため、軍上層部としては実質的な成果よりも政治の道具として用いようとする動きが強かった。
:
・第1号ロケット - 銀色に塗った植木皿の打ち上げに成功。
:
・第2号ロケット - 発射台上で爆発。
:
・第3号ロケット - 推力が不足し弾道軌道に終わる。
:
・第4号ロケット - 有人宇宙飛行に挑む。全長:35.3m、重量:385t。
:
◇宇宙軍・宇宙戦艦
:対外的な示威として付与された勇ましい呼称と裏腹に、人ひとりを宇宙に飛ばしてまた戻ってくる機能しか持たない軌道宇宙船。あえて武装を挙げるとすれば斧を1本備えており、これは着水後にハッチが開かなかった時などの非常脱出用である。
:宇宙飛行士に志願したシロツグは、宇宙戦艦の内部を再現した地上シミュレーターで操作訓練を受ける。そのシミュレーターは予算承認前だったため、裏金を用いて調達されたものであった。
:作中では人間工学という概念はまだ生まれていないが、宇宙戦艦の什器はグノオム博士の経験にもとづいて、容易に操作できるように配置されている。
◇宇宙軍・公用車
:前2輪後1輪の3輪式。自動車は一般にまだ手の届かない乗り物で、王室と癒着があるといわれるミグレン社が提供したからこそ、宇宙軍メンバーはこれに乗ることができる。もとは地味な色だったが、女性に受けがいいようにとネッカラウトが勝手に黄色に塗った。
:
◇空軍・第3スチラドゥ
:前翼型・推進式の戦闘機で、エンジンにはターボチャージャーを装備。プロペラは二重反転式で、プロペラブレードにはくの字型の後退角が付けられている。単座型と複座型を基本に電子測距儀を装備した夜間戦闘機などのバリエーションもあるとされる。本機はレーダーこそ未装備だが、飛行性能は水軍のジェット機を凌ぐほど高く、空戦速度では共和国軍のジェット戦闘機にもまだまだ対抗できるため、世界大戦が終わってから20年以上経過した劇中の時点でも最前線での配備が継続している。実戦機は臙脂色、練習機は青色に塗られている。
:
◇水軍・航空母艦
:劇中世界の「地球」では、陸地と海の面積比が1対1で、その反面で陸地には広大な内水がある。王国は大陸の内陸国で、国境線が走る巨大な湖「ピッポウ湖」に面している。このため、王国の水上戦力は海軍ではなく水軍と呼ばれる。水軍は、湖の上に滑走路を作ることができる空母の運用に熱心で、砲撃による艦隊戦はあまり想定していない。作中の空母は発艦と着艦を効率的に行うための二段式の飛行甲板を持ち、離艦用にはスチームカタパルトを備えており、カタパルトのシャトルと航空機の主翼基部を締結する「ブライドル・ワイヤー」、そしてそれが離艦後に水中に落下するところも描かれている。レーザーディスク同封のブックレット等によると「ミナダンの王子様号」という名称とされる。
◇水軍・ジェット戦闘機
:シロツグの少年時代に配備が始まった前翼型のジェット戦闘機。これに乗るには水軍に入るしかないため、彼の憧れであった。オネアミス王国で開発・生産されたものではなく、外国からの輸入品。ジェット技術が生まれたばかりの時代の産物で、総合性能ではプロペラ機に劣る。しかしこの世界では推進式プロペラ機が主流のため、急角度の離着艦でもプロペラを甲板に摺る心配がないことと、スクランブル発進に必要な加速度があることにより、あえて艦載機として採用された。第4号ロケット時代における配備の状況は不明。
:
◇陸軍・戦車
:無限軌道式の戦車。機動的な共和国の装甲車とは好対照の重厚なスタイルを持つ。車体と砲塔は空軍戦闘機と同様の臙脂色に塗られている。作中では主に待ち伏せ用の砲台として用いられた。また、敵兵站をできるだけ浪費させるため、この戦車に似せたデコイが多数配置された。
◇水軍・情報収集艦
:外観は漁船に偽装しているが、通信アンテナを多数備えている。ロケット奪取を狙う共和国側の動向を探っていた。
◇蒸気機関車
:進行方向に対して、先頭に流線形の炭水車が配置され、その後ろに運転台と機関車がある。現実世界の蒸気機関車でいえば「逆機(キャブ・フォワード型蒸気機関車)」の姿勢にあたる。
◎ 共和国
◇空軍・ジェット戦闘機
:前翼型ジェット機。亜音速性能を持つ。翼下にロケット弾24発を懸下可能なパイロンを備え、そのため増槽は翼の上に追いやられている。デッドウェイトになった場合は飛行中でも増槽のパージが可能。また空中給油装備を持ち、もともと航続距離の長くない本機の作戦行動力を大きく高めている。
:
◇空軍・空中給油機
:この世界には珍しい翼の前にプロペラを持つトラクター方式の機体。これは給油時にプロペラが邪魔にならないよう配慮されているためである。空中給油はプローブアンドドローグ方式で行われ、複数機に対して同時に給油できる。作中のブリーフィングの場面では「空中要塞」と呼ばれていた。
◇陸軍・装輪装甲車
:高い渡河能力と軽快な機動力で電撃戦の中心を担う。タイヤはソリッドゴムであるためパンクしない。1個分隊の兵士を同乗させることができる。
◇陸軍・ホバークラフト
:不整地・沼地での作戦に用いられる兵員輸送装備。現実世界における同種の兵器の配備は1980年代になってからということもあり、この作中で表現されるところの「最新兵器」のひとつであると思われる。
◇陸軍・ロケットランチャー
:兵士が一人で携行できるロケット弾発射筒。現実世界のRPG-2に類似したデザイン。作中の描写では、いったんロケットブースターに点火してから弾体が撃ち出されている。
◇静音拳銃
:シロツグを襲う暗殺者が使用。連発式で、静音効果を高めるために、排莢・次弾装填は手動で行われる。現実で言うところのウェルロッドのような火器だが、銃把のレバーを操作することで排莢・装填を行えるため、銃を保持した片手だけで操作できる。
◇テレビ受信機
:共和国ではカラーテレビ放送が始まっているのに対し、オネアミス王国で普及しているのはまだ白黒テレビ止まりである。
:なお、オネアミスでのテレビ放送は放送局が少なく、放送も一日数時間のみなので、メディアの主流はラジオである。
● 文字
オネアミスで使用されている文字は表音文字で、ア行、カ行、サ行、タ行、ハ行、マ行、ラ行の各ア・イ・ウ・エ・オと、撥音の「ン」を表す文字があり、日本語のカナ文字と同じ体形を持っている。また、ナ行は「ン」+母音、ヤ行は「イ」+母音、ワ行は「ウ」+母音の合字として存在する。濁音は元の文字の右下にヒゲを一画追加した文字で、半濁音は元の文字の右下にヒゲを二画追加した文字で表記する。なお、バ行とパ行は、同じ両唇音であるマ行の濁音と半濁音の扱いである。
数字は12進数で1から12までに対応する数字が存在するが、慣例的に使用されている単位以外は10進法が標準である。位取りを記数する場合は数字の12をゼロとして用い10と11の数字は使用されない。なおゼロの字形は「Z」を斜めにしたような文字であるが、カウントダウンのシーンで使用されているニキシー管のような表示器では、表示フォーマットの都合から、円の中央に小さな縦棒が入った文字で代用されている。
● スタッフ
・ 監督・原案・脚本 - 山賀博之
・ エクゼクティブ・プロデューサー - 山科誠
・ 企画 - 岡田斗司夫、渡辺繁
・ プロデューサー - 末吉博彦、井上博明
・ キャラクターデザイン・作画監督 - 貞本義行
・ 作画監督 - 庵野秀明、飯田史雄、森山雄治
・ 美術監督 - 小倉宏昌
・ 撮影監督 - 諫川弘
・ 撮影スーパーバイザー - 八巻磐
・ 編集 - 尾形治敏
・ 音響監督 - 田代敦巳
・ 効果 - 柏原満(オリジナル版) / 倉橋静男(サウンドリニューアル版)
・ 録音 - 林昌平(オリジナル版) / 名倉靖(サウンドリニューアル版)
・ 音楽監督 - 坂本龍一
・ 音楽 - 坂本龍一、上野耕路、野見祐二、窪田晴男
・ 助監督 - 赤井孝美、樋口真嗣、増尾昭一
・ 脚本協力 - 大野木寛
・ 設定スーパーバイザー - 野田昌宏、江藤巌
・ オープニング・エンディングイラストレーション - 大西信之
・ スペシャルエフェクトアーチスト - 庵野秀明
・ 現像 - 東京現像所
・ 企画協力 - DAICON FILM、GENERAL PRODUCTS
・ 制作 - GAINAX
・ 製作 - 株式会社バンダイ
● 関連商品
◎ ソフト
・ VHS、LDは廃盤。
・ 【DVD】王立宇宙軍 オネアミスの翼 1998年7月25日発売
・ 【DVD】王立宇宙軍 オネアミスの翼 <通常パッケージ版> 1999年8月25日発売
・ 【DVD】EMOTION the Best 王立宇宙軍 オネアミスの翼 2009年12月22日発売
・ 【HD DVD】王立宇宙軍 オネアミスの翼 2007年7月27日発売
・ 【Blu-ray】王立宇宙軍 オネアミスの翼 <ツインパック> 2007年7月27日発売
・ 【Blu-ray】王立宇宙軍 オネアミスの翼 2008年7月25日発売
・ 【4K UHD Blu-ray & Blu-ray】王立宇宙軍 オネアミスの翼 <4Kリマスターメモリアルボックス>
・ <特別限定版>(絵コンテ集 430P 付属)2022年10月28日 上映劇場先行販売 / 11月4日 A-on STORE、EVANGELION STORE限定販売
・ <通常版> 2022年11月25日発売
◎ 小説
◇オネアミスの翼-王立宇宙軍 I・II
:ソノラマ文庫より1986年(昭和61年)、1987年(昭和62年)に発売。内容の大筋は同じながら映画では描ききれなかった多くのエピソードが加筆されている。著者は飯野文彦。
◇オネアミスの翼 王立宇宙軍
:ソノラマ文庫版の合本版。2010年(平成22年)に朝日新聞出版の朝日ノベルスレーベルで刊行。
◎ その他
◇オネアミスの翼-王立宇宙軍 ドキュメントファイル
:映画公開時にバンダイビジュアルから発売されたメイキングビデオ。当時のスタッフも出演している。現在に至るまで他媒体(LD、DVD、BD)での映像特典などでの収録及び単体発売はされていない。
「王立宇宙軍 オネアミスの翼」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』(https://ja.wikipedia.org/)
2024年3月19日10時(日本時間)現在での最新版を取得
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