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『トラ・トラ・トラ』は、1970年に公開されたアメリカの戦争映画である。
1941年12月の大日本帝国海軍による真珠湾攻撃をめぐる両国の動きを題材に据え、日本との合同スタッフ・キャストで制作された。題名は真珠湾攻撃時、日本の攻撃隊が母艦に送信した奇襲攻撃成功を伝える電信の暗号略号「トラトラトラ(『ワレ奇襲二成功セリ』の意)」に由来する。
1970年のアカデミー視覚効果賞獲得作品。
● ストーリー
1941年12月、日本軍の先制攻撃を傍受していたアメリカ軍はなぜ警戒命令を出さず、ハワイ真珠湾を見殺しにしたのか。戦時中、人の命は駒のごとく「配置」され「使われ」た。勝利を信じた一途な精神と、戦略に長けた者たちの結末とは。アメリカ軍は真珠湾の陥落によって何を得たのか。無明ゆえの人々がおこした残酷な現実を描く哀しみの群像劇。
● スタッフ
・ 製作総指揮:ダリル・F・ザナック (ノンクレジット)
・ 製作:エルモ・ウィリアムズ
・ 製作補佐:オットー・ラング、高木雅行、久保圭之介
・ 監督:リチャード・フライシャー、舛田利雄、深作欣二
・ 原作:ゴードン・W・プランゲ『トラ・トラ・トラ』、$22,500,000(81億円)などといわれたが、公開直前の1970年8月と9月の読売新聞には、$33,000,000(118億8千万円)と記載された。公開時の週刊新潮1970年10月10日号では90億円。当時はアメリカでも$30,000,000を超える映画はこれが最後だろう、と言われ。
◎ 黒澤明と『トラ・トラ・トラ!』
○ 撮影まで
20世紀フォックスは『史上最大の作戦』の成功を、撮影隊を各国のチームに分け、それぞれの国の視点で描かせたことで、3人の監督が客観性を有する結果を生んだことと分析した。本作もその方式が採用され、アメリカ側、日本側双方の場面を別々の監督に演出させ、別個に撮影して組み合わせる方針が決まった。本作は「日米合作」ではなく、あくまで20世紀フォックスが全額出資するアメリカ映画である。日米双方の演出を担当する2人の監督は、20世紀フォックスが任命する単なる雇われ監督であった。日本側シークエンスの監督に誰を起用するかという意見を求められたエルモは迷わず黒澤明の名をあげた。この話を聞いた当時の黒澤はそれほど乗り気でなかったというが、東宝の手を離れて黒澤プロダクション(以下黒澤プロ)を完全に独立させた直後という事情もあり、ハリウッドと組んで大作を撮るという話は渡りに船でもあった。黒澤も当時力をいれて進めていた『暴走機関車』の製作が一時中断になったことから『トラ・トラ・トラ』の製作にのめりこんでいく。
1967年4月28日、東京プリンスホテルで製作発表があり、黒澤、エルモ・ウィリアムズ、源田實参院議員らが出席。エルモから製作スケジュールの説明があり、この時は撮影開始を1968年初め、1968年末に完成し、1969年初めに公開と発表された。つまりここから公開予定が1年半以上伸びたということになる。
1967年5月26日、アメリカ側の監督にドキュメンタリー映画出身で『ミクロの決死圏』『海底二万哩』などで知られるリチャード・フライシャーの起用が決定した。また配役についてスター中心主義をとらず、脇役を強力な俳優で固めるという方針で、6月からロケ地探しを始めると報道された。軍事関係に源田實、外交関係・平沢和重、航空関係・園川亀郎、艦隊関係・渡辺安次、造船関係・福井静夫で、脚本作成に協力した。佐藤がB班監督に抜擢された経緯は、佐藤のデビュー作『陸軍残虐物語』を気に入ったからと噂されるが、佐藤は「確かめたことはない」と話している。佐藤は山本五十六にも真珠湾攻撃にも興味はなく、黒澤と一緒に仕事ができるという理由だけでオファーを受け、東映と本数契約を交わしていたが、会社から「行ってこい」と言われ参加した。また「出演者は無名の一般人を起用する方針で、いま選考中。山本五十六役には応募者が殺到している」と書かれている、黒澤プロの日本側プロデューサー・青柳哲郎も「製作費はまだ正確に算出できない状態。とにかく『史上最大の作戦』や『クレオパトラ』以上のものになると思う」と話した、しかも3か月から4か月の拘束という悪条件を飲ませたといわれる。大きな話題を呼んだのが黒澤が山本五十六などの軍人役としてプロの俳優でなく演技の素人を大量に起用したことで。主役の山本五十六には高千穂交易の鍵谷武雄社長、宇垣纏参謀長に前防衛事務次官・三輪良雄、黒島亀人参謀に彫刻の森美術館常務理事・牧田喜義、第六艦隊司令長官清水光美中将に東急国際ホテル常務・岩田幸彰、航空隊参謀長大西瀧治郎少将に日本短波放送常務・安藤審、山口多聞に北野建設社長・北野次登、福留繁に青木金属興業社長で日本陸連幹部・青木半治、伊藤整一軍令部次長に八千代製作所社長・南出他一郎、野村吉三郎駐米大使に長野放送専務・小幡康吉、来栖三郎全権大使に伊藤忠商事常務・片桐良雄、喜多長雄ハワイ総領事に東洋エチル常務・永井邦夫、木戸幸一内府に幸一の二男で国際弁護士の木戸孝彦、東郷茂徳外相に日本音楽著作権協会理事長・春日由三(平沢和重代理)などで。この直後、クランクインわずか3週間後の12月24日、黒澤プロの日本側プロデューサーで英語が堪能とされた青柳哲郎との連絡がマズく。東映京都のセットは取り壊しが始まり、20世紀フォックス側の要望で、1968年12月30日に黒澤プロから口頭で再契約を申し入れられた85人のスタッフも『口頭だから契約は成立していない』という理由で一方的に契約を白紙に戻され、残務整理が始まった。これを受け、日本編もアメリカに持ち帰って撮影する可能性が高くなったと報道された。
・ 海軍病院のシーンでカーテンの折りしわがあることに激怒して撮影中止にする。
・ 黒澤が酒に酔った状態で何度もスタジオに現れたこと
・ 黒澤が選んだ素人俳優たちが満足な演技を行えなかったこと。素人俳優には、実際の元海軍軍人、海軍兵学校(海兵)在籍者もいたが、そのひとりに向かって、海軍軍人の演技ができないとして、「貴様、それでも海兵か!」と黒澤が怒鳴ったことが、旧海軍軍人のあいだで問題になったこともあった。
・ 更に20世紀フォックスに対して、撮影所の半分を買い取るようにふっかけたりと無理難題をおしつけた。
スタッフからの不満も常に耳に入っており、現場でも黒澤の状態を確認していたエルモだったが、なんとか黒澤をフォローしながら撮影を続けさせようとした。しかし撮影がほとんど進まなかったため、12月24日苦渋の決断を下し、黒澤に直接会ってその監督降板を伝えた。
「病気による降板」(黒澤の「病気」の問題は後に映画にかけられていた保険の支払いに関する争いにつながる)という形で行われた監督降板劇の真相はいまだに不明な点が多いが、黒澤と20世紀フォックスの間の契約に関する詳細な問題や、撮影方針の食い違い、黒澤が自らの権限に関しての認識が不十分だったことなどさまざまな問題が背景にあったとされている。また、黒澤自身が生前「僕には(軍隊体験、戦場体験がないので)戦争映画は撮れない。客席に弾が飛んでこない限り、あの恐ろしさは伝わらないだろう」と語っていたともいう。この降板劇の経緯から以後日本では、黒澤の「気難しい完全主義者」というイメージが強くなったとも言われる。
この降板と「病気」名目について、土屋嘉男が黒澤本人に聞いたところ、黒澤は真っ先に「山本五十六の長官室に時代劇に使う連判状があったんだよね。怒る方が当たり前だろう?」と情けなさそうに答え、「俺は、いつもの俺のやり方でやったんだよ。俺は病気でもなんでもなく元気だよ。君にはわかってもらえるけど、そんなことも解らない連中がウヨウヨ居るんだよね」と嘆いている。土屋はまた、「場所が京都東映だったのがいけなかった。東宝だったら慣れっこになっているので何の問題もなかったと思う。東映がいけないという事ではなく、黒澤さんのやる事成す事が一つ一つ奇異に見えたに違いない。当然のことである」と述べている。
さらに土屋は、「当時東映ではヤクザ映画を撮っており、本物のヤクザに偽物のヤクザが、撮影所内にウロウロしていた。黒澤さんの最も忌み嫌うヤクザ。そんな最悪の環境の中で、一段と自己を貫こうとしたに違いない。しかも、身内と思い込んでいた日本側の製作者等にも裏切られ、かつてない傷心を一人味わったことと思う」と黒澤に一定の理解を示している。東映京都は東宝スタジオに比べれば、レンタル料が安いこともあったが、黒澤自身に、当時「東宝でなくても仕事はできる」ということを公に見せたいという考えがあり、東宝からあえて離れようとしたしたことが悲劇の一因となってしまった。東映京都のスタッフとも上手くコミュニケーションは取れなかった。
当時東映と契約し、東映京都でヤクザ映画を撮っていた大木実は「ヤクザ映画を撮影している中で、黒澤さんが何とか海軍流の威厳を保とうとしていたことは、端から見ても気の毒なほどでした」と、同じく東映の俳優・唐沢民賢は「黒澤さんが撮影所に入って来られたとき、ヤクザ屋さんが門のところでタクシーを止めて『誰や?』。黒澤さん怒って帰ってしまいました」と証言している。
当初、吉田善吾海軍大臣を演じる予定だった宮口精二は、最初の撮影に参加し、すぐに撮影が中止されて、自宅で待機していたら、黒澤から電話があり「絶対に再開するから、待っていてくれ」などと涙声で1時間半以上電話を切らなかったと話している。「そんな電話なんて一度ももらったことなかった。こりゃあ、異常事態だと思ったね」などと証言している。
後任監督を引き受けた舛田利雄は黒澤降板の理由を「思想的なことだとか、金銭的なものだとか、そういうことではなく、メンタルな問題と聞いた」と述べている。同じく後任監督の深作欣二は「[黒澤さんは]きっと素人の演技が思ったようにうまくいかないんでキリキリしていたんだという話を、東映サイドで付いたプロデューサーに聞いたことがありました。「やくざ」のこともあってイライラが積み重なり、予定どおり進まないなかで、夜、突然セットの窓ガラスを木刀で叩き破っちゃったとか。そんなこんなでスケジュールも遅延して、向こうの心配したプロデューサーと話をするんだけど、[……]話をすればするほどこじれていったというような話を聞きましたね。(角カッコ引用者)」と述べている。東映プロデューサー・日下部五朗は「東映京都の正門前に赤絨毯を敷いて、毎朝、すでに扮装を済ませた軍人役の俳優たちがそこを通ってスタジオ入りするんです。山本五十六役が立派な車に乗って到着すると、門の脇に水兵の恰好をした男が『軍艦マーチ』をラッパで吹く。何とも荘厳で珍妙な騒ぎでしたね。ある朝、撮影所に行くと、窓ガラスが軒並み割られていまして、深夜、慣れない東映での撮影にストレスが昂じた黒澤さんが暴れてやった仕業と聞きました」などと話している。
押川義行は「このようなケースは欧米ではそう珍しいケースでもないが、日本映画界の国際的信用と"天皇"クロサワのメンツは今後どうなるかが問題だ。ハリウッドの内情に詳しい日本ユナイト映画宣伝総支配人・水野晴郎氏の説明によれば、アメリカ式契約は合理主義に徹していて、食事のカロリーのパーセンテージからトイレの個数や状態といったような日常生活の問題など細かく契約文書に書き込まれ、監督は演出者としてのパートを受け持つだけで編集に立ち会う権利もないのが普通という。『トラ・トラ・トラ』の場合も決して例外ではなかったはずで、黒澤監督がこれに対してどこまで妥協しどこまで抵抗したのか、今後の為にもはっきりさせておかなければならない。『トラ・トラ・トラ』の製作発表当時、20世紀フォックスは1969年度大作として『ハロー・ドーリー』と他にジーン・ケリー演出作品を予定していたが、『ハロー・ドーリー』がバーブラ・ストライサンドの前作『ファニー・ガール』の揉めごとで製作開始が遅れに遅れため、製作期間に関する契約上の厳しいシワ寄せが『トラ・トラ・トラ』に集中したことは容易に察せられるし、黒澤監督の"完全主義"が例によって日数オーバーの危機をはらんだことも、20世紀フォックス側にとっては見逃せない重大事であったに違いない」などと評している。
1969年1月21日、黒澤が久しぶりに報道陣の前に現れ、赤坂プリンスホテルで記者会見。過度の疲労という理由で降ろされたとされる事情を説明した。今回の事件はプロデューサーの責任と権限の重大性が大きくクローズアップされた。
『キネマ旬報』1969年5月上旬号に当時の白井佳夫『キネマ旬報』編集長が真相究明として調査した黒澤解任の事実という記事が掲載された。それによると黒澤の撮影中に20世紀フォックスの弁護士から正式な契約書が黒澤のもとに入り、黒澤が初めて見たところ、編集権について「世界配給プリントの最終編集はフォックスが行う」と書かれていたという。それは日本側の編集権は黒澤が持つが最終的に、いかなる編集も変更も、20世紀フォックスが単独に決定しうる独占的権限であった。つまり黒澤は下僕で、さらに黒澤を驚かせたのは、旧黒澤プロの青柳哲郎プロデューサーがシナリオの著作権を持っていることが判明したというものだった、「東宝には監督の意向を先読みして動ける気心の知れたスタッフやキャストがいたが、東映の京都撮影所に単身乗り込んだが進め方が異なり大混乱した。また黒澤にはかつては本木荘二郎のような台本も読め、ちゃんと意見も言え、黒澤に献身的に奔走する有能なプロデューサーがいたが、現場を知らない若いプロデューサーを信用したのが裏目に出た。この失敗が黒澤の限界を証明した」と評している。20世紀フォックス本社では、黒澤解任が伝わると「後任監督はケンジ・ミゾグチで」と既に故人になっている巨匠を指名してくるほど日本映画を知らず。
黒澤解任後、20世紀フォックスは最初に東宝から独立し自身を社長とする三船プロダクションを立ち上げた三船敏郎に話を持って行った。三船は1969年1月23日、三船プロ製作の『風林火山』の試写会後、帝国ホテルでの記者会見で『トラ・トラ・トラ!』問題について正式な説明を行った、20世紀フォックスが一度解任した黒澤を再び起用することは考えられず、慌てた三船はすぐに黒澤を訪ね誤解を解き、「再起第一作を是非。明日からでもOKです」と申し入れ黒澤を喜ばせた、1969年2月15日、「黒澤さんに対する道義的な気持ちとスケジュールの調整困難」などの理由で20世紀フォックス側に辞退を伝えた。また共同演出には深作欣二が内定したと1969年2月19日に報じられた、エルモが「(1969年)3月3日から撮影を再開したい。監督については舛田利雄をチーフに、深作欣二監督をスクリーン・プロセスの監督に起用したい」と深作の貸し出しを正式に申し入れ、深作は東映と専属の本数契約を結んでおり、監督同士で勝手に日活や東映作品でもない映画の監督は決められない。
○ 日本側キャスティング
20世紀フォックスは、黒澤プロと契約した出演者は白紙に帰ったと判断し、監督の人選と並行して職業俳優の中から選ぶという前提条件で秘かに人選を進めた。続いて山村聡が有力候補に絞られ、山村の横浜の自宅に舛田監督と高木プロデューサーが訪問し出演を申し入れ。山村は専用のかつらを装着し『あゝ忠臣蔵』と同時並行で撮影に臨んだ。
山村と田村は鹿島建設の出資、東映配給による超大作映画『超高層のあけぼの』にそれぞれ出演が決定し、田村は第一部の主役だったが、真珠湾攻撃撮影シーンの本番に備え、1968年11月から真珠湾フォード島を拠点にリハーサルが始まり。真珠湾攻撃を再現するためで、陸海空三軍の現役、予備役、民間航空関係者のパイロット経験者から希望者を選抜したが、ジェット機の経験者が多く、クラシックプレーンの操作にまごつき、訓練中、2人死亡者を出した。零戦12機を含む計30機は米軍の戦時中の軍用機を改造したものをハワイに運び込んだ(詳細は後述)。1968年12月7日に野村吉三郎駐米大使がコーデル・ハル国務長官と会うシーンのワシントンロケがあり、1969年3月以降、カリフォルニア州サンディエゴで航空シーン、ハリウッドでミニチュアによる特撮などを行い、1969年6月4日クランクアップを予定した。記者会見も行われ、エルモがマスメディアの前に姿を現したのは2か月半ぶり。エルモから「フォックスとして、金と時間と労力と人間をつぎ込んだ大作である」と強調し。1969年4月9日、東映京都撮影所でスタジオ撮影に入った。フィルムは使い放題で、この発言が『ニューヨーク・ポスト』や『デイリーニューズ』『ワシントン・スター』など各紙に報道され。編集権は完全にアメリカ側にあったが、舛田は契約のときの条件として、総合的に作品そのものの編集に立ち会い、編集は舛田のOKを得るという条項を入れていた。このためプレビューをチェックした上で同意するというスタイルが取られた。舛田は「きちんと日米のパートが配分されていて、僕が撮った部分もちゃんと使われて、均等だったので良かった」という感想を持った。1969年10月27日帰国し、29日に今後の予定等を話し、「上映時間は178分にまとめ、1970年1月から音楽を入れはじめ、1970年秋に公開を予定している。完成作品の5分の2を日本側の撮影シーンが占める。また天皇の命令が真珠湾攻撃艦隊出撃後、下されるという微妙なシーンは観客に混乱を招くという理由でカットになったが、日本編には組み込むよう要望した」などと話した。
◎ 作品の評価
本作は真珠湾攻撃にいたる日米両国の動きを描き、日本では高い評価を受けて熱狂をもって受け入れられた。しかし、開戦前の米国側の危機管理の甘さが強調されていることや、日本軍が圧倒的に優勢であること、また長尺である割にアクションシーンが最後だけであるため、米国での興行成績は振るわなかった。この反省を踏まえた1976年の『ミッドウェイ』は米国中心視点で製作されることになった。
真珠湾奇襲を防ぐことができなかった原因を、ワシントンの政府上層部の責任として描いていることも当時としては斬新であった。それまで奇襲攻撃を許した責任の多くを問われていたウォルター・ショート司令官やハズバンド・キンメル提督は、大統領をも情報共有から除外したワシントンの隠蔽体質のために有効な対処手段をとることができなかったというように描かれている。
また、製作当初は事実関係が未確認であった空襲開始前の駆逐艦ワード(ウォード)による日本海軍特殊潜航艇甲標的への砲撃および撃沈シーンが描かれている(ワード号事件)。映画内では、甲標的への攻撃行動とその報告が握りつぶされるまでの過程が描かれており、アメリカ側の怠慢を示すシーンになっている。このような劇場公開当時一般にあまり知られていなかったエピソードを映画に取り入れている点も高く評価されている。
深作欣二は「日本でくらいは当たったんじゃないですか。アメリカではどうだったのかな。同じダリル・F・ザナックが『史上最大の作戦』(62)の東洋版だといって企画したといっても、たかだか真珠湾の話ですし、こちらの日本の騙し討ちだけの問題ですから、話がつまらないですよね。面白くなるわけがない。」「政治なら政治のね、入って行けないところを押さえて、いわゆる“らしさ”、戦争直前の“らしさ”というのは絶対に描かなければいけないはずなのが、全然脚本に設定されてない。」「海軍の山本五十六をめぐる平和主義的神話を黒澤さんは信じていたんですかね。それは神話でも何でもなくて、結局は無責任思想の現れで、あのころの日本の政治家や高級軍人が等し並に持っていた無責任思想の現れであって[……]やっぱりそうだったと思いますよ。」などと話している。
『毎日新聞』は「前半はやたらシークエンスの積み重ねでだけで、全然盛り上がってこない。後半は一時間余にわたって真珠湾の実録の再現。破壊に次ぐあくなき破壊は確かに大変な見もののスペクタクル大作ではある。しかしそれとても戦争の持つ悲惨さを伝えはしない。まるっきりゲーム化されて、しかも日本のワン・サイドだから、単純な民族感覚からいえば悪い気はしないけれど米人には不愉快な映画だろう。それにしても実録なら当時の日米記録映画を繋ぎ合わせれば済む。再現するなら、こんな飛行機だけに凝って、プラモデルマニアあたりが満足するような、全く無思想の映画では困るのである」と評している。
三島由紀夫はこの映画を賞賛し「傑作だった。」「日本側とアメリカ側を交互に写していくパラリズム。その写す時間がだんだん短くなっていく。あれはすばらしい。」などと語っている。
● 日本公開版
国際的に公開された「アメリカ公開版」(インターナショナル版)とは別に、日本でのみ劇場公開された「日本公開版」が存在する。「アメリカ公開版」との主な違いは、オープニングクレジットと「アメリカ公開版」ではカットされた2つのシーンが「日本公開版」には追加されている点である。
・ 「日本公開版」のオープニングクレジットは追加されたシーンに出演している俳優がキャストクレジットに追加表記されていることと、監督のクレジット表記が「アメリカ公開版」では〈日本側監督→アメリカ側監督を表示〉だった順番が「日本公開版」では〈アメリカ側監督→日本側監督を表示〉に変更されている。
・ 山村聰演じる山本五十六長官が「出師の表」拝受の為に宮中に参内し、天皇(姿は見せず玉座のみ)に拝謁する前に芥川比呂志演じる木戸幸一内大臣と語り合うシーンが追加されている。
・ 渥美清と松山英太郎演じる炊事兵が厨房で日付変更線について会話する、本作の中でも数少ないコメディーシーンが追加されている。
なお、ハリウッドでの編集作業には舛田も同席し完成作品にも反映されているが、本作に「アメリカ公開版」(インターナショナル版)と「日本公開版」の2種類が存在することは、当時舛田には知らされていなかった。
● ソフト状況
この「日本公開版」は日本での劇場公開後、テレビ放送やビデオソフトが普及し始めた時期に発売されたVHSビデオとレーザーディスクが1980年代に市場に出回って以降は長らく公開される機会がなかったが、2008年に発売されたDVDボックス『トラ・トラ・トラ!コレクターズボックス(3枚組)』の特典ディスクにテレビ放送された素材(画面サイズが4:3)のものが収録され(発売当時、「日本公開版」の上映フィルムが日本国内では所在が確認できなかったため)販売用コンテンツとしては久々に日の目を見ることとなった。初回放映時も含めてテレビ放映では従来よりほとんど「日本公開版」が放映されている。
その後2009年に、製作40周年記念としてハイビジョン画質で収録されたBlu-ray Discが4,000セット完全生産限定で発売された。その際Blu-ray版には新たに発見された劇場公開当時の「日本公開版」がシネスコ画面の完全な形で収録されている。その他には日本語吹替や多数の映像特典も収録されている。2015年3月には製作45周年記念版(Blu-ray Disc)が発売されている。
現在では「日本公開版」の他、上記と同内容の映像特典を収録したレンタル盤Blu-rayもリリースされている。
● テレビ放送日
・ ゴールデン洋画劇場(1972年12月1日・8日、フジテレビ)
・ プレミアムシネマ(2022年10月4日、NHK BSプレミアム)
● 備考
・ 日本側シークエンスが京都の太秦にある東映京都撮影所での撮影されたことから、20世紀フォックスと東映の合作、と勘違いしている説が存在する。以前のWikipediaの記事「真珠湾攻撃」もそのようになっていた時代がある。
・ 劇中で日本海軍の下士官が部下のパイロット達に対して艦影の描かれたパネルを見せ、その艦種を言い当てさせる訓練をする場面がある。この中で、あるパネルを見せた時に部下が即座に「エンタープライズ」と答えるが、下士官は「ばかもん、赤城だ、自分たちの旗艦だぞ」と叱るシーンがある。この時パネルに描かれていたシルエットは実際の空母赤城とはまったく異なる艦形で、実は撮影で赤城として使用された米国海軍のエセックス級空母のシルエットが描かれていた。そのため、作中では「間違えている」というシーンであるが実際においては正しい、という転倒した表現のシーンとなっている。これは後に実際に画面中に登場する艦のシルエットと合わせることで、劇中においては矛盾を生じさせない(ここでパネルの絵として登場する艦影と後のシーンで登場する実際の艦影が異なると、観客が混乱してしまう)ための処置である。
・ 作中の真珠湾攻撃においてP-40が地上で他機と衝突炎上し米軍兵が逃げ惑うシーンが存在するが、これはラジコン操作の撮影用プロップが浮かび上がってしまい制御不能になって発生した撮影事故によるものであり、逃げ惑うシーンは演技ではない。
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