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『江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間』(えどがわらんぽぜんしゅう きょうふきけいにんげん)は、1969年公開の日本映画。R-18(旧成人映画)指定だったが、ソフト化に伴う再審査の結果、PG-12指定に改定された。吉田輝雄主演、石井輝男監督。東映京都撮影所製作、東映配給。併映『㊙劇画 浮世絵千一夜』(長編アニメーション映画)。カラー99分。
● 概要
石井輝男監督による一連の“異常性愛路線”の最終作で、怪奇色の強いミステリー映画。
当時の東映企画製作本部長・岡田茂(のち、同社社長)が、この年春の段階で、秋の大作として石井に地獄絵図を撮ってもらおうと『地獄』というタイトルでこの枠で製作を予定していた(地獄 (1979年の映画)企画)。これが流れて代わりに製作されたのが本作。岡田から「何か変わったものはあるか」と聞かれ、石井が少年時代から愛読していた江戸川乱歩を提案し製作が決まった『人間椅子』。
● あらすじ
過去の記憶がない主人公の人見広介。医学生だった彼は精神病院に閉じ込められているのだがその理由も分からない。サーカスの少女、初代が歌う子守唄から記憶を取り戻しかけたが、目の前で少女が殺されその犯人にされてしまう。逃亡者となった彼は北陸へ向かう列車の中で自身と瓜二つの菰田源三郎の死亡記事を目にする。広介は埋葬された源三郎が生き返ったように見せかけて源三郎に成りすます。こうして広介は奇妙な生活を送る羽目になる。源三郎の父、丈五郎は生まれながらの奇形で、執事の蛭川に家を任せ、沖にある無人島で島を改造しているという。まもなく、菰田家で源三郎の妻の千代子が殺された。広介は執事の蛭川、遠縁にあたる娘の静子、下男を連れ、島に渡る。
丈五郎は奇形人間を作り島に自らの理想郷を作ろうとしていた。そこでは初代そっくりの秀子という娘が男と人工的なシャム双生児にされていた。広介は源三郎の弟であり、広介が医大に通っていたのは丈五郎が奇形人間の製造を任せるためだったのだ。広介は自らが源三郎ではなく広介だと丈五郎に打ち明け、愛しあうようになった秀子に外科手術を施し、もとの体にしてやる。ところが、秀子には出生の秘密があった。
秀子は丈五郎が浮気を憎んだ妻、ときをせむし男に犯させて生ませた子で、広介と秀子は兄妹だったのだ。丈五郎はピストルを出し、広介に奇形人間製造の協力を求めるが、下男の正体は明智小五郎であり、ピストルの弾はすでに抜かれていた。明智は執事の蛭川が静子と愛人関係にあるうえに丈五郎を裏切り、源三郎を殺そうとして間違って千代子を殺してしまったことなどを暴く。計画の不可能を悟った丈五郎は自殺し、愛し合うようになった秀子と広介は心中、花火となって空中に四散した。
● キャスト
・ 人見広介/菰田源三郎 - 吉田輝雄
・ 秀子/初代 - 由美てる子
・ 菰田丈五郎 - 土方巽
・ 菰田とき - 葵三津子
・ 菰田千代子 - 小畑通子
・ 静子 - 賀川雪絵
・ 蛭川 - 小池朝雄
・ 猛 - 近藤正臣
・ 美枝 - 英美枝
・ みき - 小山陽子
・ 圭 - 木山佳
・ きん - 田仲美智
・ 林田 - 笈田敏夫
・ 女患者A - 片山由美子
・ 女患者B - 金森あさの
・ 男患者A - 宮城幸生
・ 男患者B - 土橋勇
・ 男の狂人 - 阿由葉秀郎
・ 女の狂人 - 三笠れい子
・ 斬り裂かれる娘 - 尾花ミキ
・ 監守 - 高英男
・ 按摩 - 加藤欣子
・ 坊主A - 由利徹
・ 坊主B - 大泉滉
・ 医者 - 上田吉二郎
・ 看護婦 - 桜京美
・ 傴僂男A - 沢彰謙
・ 傴僂男B - 河崎操
・ 事務員 - 岡田千代
・ 明智小五郎 - 大木実
・ 小沢澄江
・ ジョージ・岡部
・ 唐柔太
・ 奥野保
・ 村田天作
・ 山下義明
・ 土方巽暗黒舞踏塾
● スタッフ
・ 監督:石井輝男
・ 脚本:石井輝男、掛札昌裕
・ 企画:岡田茂、天尾完次
・ 原作:江戸川乱歩(講談社版「パノラマ島奇談」より)
・ 撮影:赤塚滋
・ 美術:吉村晟
・ 編集:神田忠男
・ 音楽:鏑木創。前述のように最初は、閻魔大王と首切り浅があの世で残酷対決をする岡田企画の『地獄』が予定され、充分な予算も与えられていたが、さらに金がかかり過ぎるとこれはボツ企画となった。石井が江戸川乱歩を提案し、本来は、これら9本のエログロ映画は、岡田茂企画製作本部長が提唱した五つの路線から成る(東映ポルノ石井輝男エログロ映画)。岡田は「路線が確立しなければ単発で当てても儲からない」という考えを持っていた。石井は当時はフリーで、東映とは本数契約だった。当時エロ映画への風当たりが強くなり、警視庁は婦人団体からエロ映画の取締りを強化するよう突上げを食らい、「江戸川乱歩の有名な原作を中心に他の作品も加味する。こうしたものは松竹がすでに丸山明宏で手がけたことがあるが、単なる幻想ではなく、もっとリアルな内容にする」と説明した、石井監督は「エロとグロの極致を追及する」と意気軒高だったといわれる。奇形人間の造形は石井がイメージを伝えたものだが、土方からも「これどうですか」みたいなアイデアが出た。ほとんどは毒々しい白塗りのペインティングや衣装を身にまとっているだけで、体型の異形を表現するようなギミックや着ぐるみなどは用いられていない。白塗りの人たちは土方の弟子と土方が京都でナンパして連れてきた学生がほとんど。土方は気に入らないと石を拾って彼らに投げつけ、石井もビックリしたと話している。土方はすごくのって10メートルくらいの波が立つ岩からの登場など命懸けでやってくれたという。
「仁義なき戦いシリーズ」やコロンボ刑事の声としても知られる小池朝雄が、女装をし、また“人間椅子”の中に入って恍惚となるなど、体当りの演技をみせている。小池は当時は主に舞台で活躍していたが「映画出たかったもん。ギャラはいいし(笑)、その頃の映画ってしっかりしててね。"刺激路線"の頃は、批判や反発も耳に入りました。当時は着流し路線(任侠路線)も曲がり角の頃でね。確かに石井監督のはグロテスクで、"着流し"とはまるで違う美意識だったからね。ボクは両方やってたからよく解るけど、全然正反対の美意識のモノを演るのもこれ又面白いわけで、もっともソレばかりじゃ困るけど、バカバカしい位の面白さがあったね。石井監督も、一体何が出来てくるのかと、興奮するところがね。何で東映がこんなの撮るんだって、今のポルノやってるみたいな声あったよ。進んでいる人とそうでない人ってのは、常にいるわけでね。ま、どっちが進んでるのか、わかんないけど(笑)」などと述べている。掛札は「後世こんなに評価されるとは夢にも思わなかった」と述べている、『読売新聞』夕刊1970年3月7日付けの『現代の映画とセックス』という記事で、“性愛路線”が下火になったとするインタビューに答え、「続けてやっているとどうしてもグロになってしまうもんだから。でも映画にエロチシズムの要素は残しておく必要があると思う。お客の要求にこたえる意味でもね。石井輝男も当初ハダカはユーモアとして表現したんだが、連続して作っていると、ハダカの表現には制約があるから、サド、マゾ、ホモの異常性愛に傾き、グロテスクな方向に進まざるを得なかった。そんなときに『江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間』と『㊙劇画 浮世絵千一夜』に対して警視庁の取り締まり強化宣言と映倫への警告があった。われわれが自主規制の建て前として作った映倫を追い込んではいかん。それは意識します。だから今度作るとなると初心に帰って一から始めることが必要だ。ユーモアのある艶笑ものですな。ただこれは力のある監督でないと出来ないんだ」と“性愛路線”を終了させた理由を話した、東映はカットに応じたが。「あんなもん江戸川乱歩じゃない」と言われたり。
● ソフト化
日本でのソフト化は困難とされ、各地の名画座やミニシアターの特集上映、及び後述の海賊版などでしか鑑賞はできなかった。1980年代のビデオバブルの時代に、ソフト化が予定されサンプル(シロバコ)が一部マスコミに配られたが、土壇場でビデオ発売は見送られ、東映上層部は「『恐怖奇形人間』を今後ソフト化することは絶対にない」と決定した。告知から1年近くが経過した2007年8月に、ようやく、Horrors of Malformed Men のタイトルで全米発売され、オンラインDVD販売サイトなどで売り上げランキング1位を記録。日本でも逆輸入品として一部の店舗で販売された。日本国内でも販売されると告知されたが、直前になり中止された
「江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』(https://ja.wikipedia.org/)
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