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閻魔(えんま)は、仏教の地獄、冥界の主であり、冥界の王として死者の生前の罪を裁く神。閻王ともいう。インドにおける死者の主であるヤマが仏教に入ったものである。
● 名称
閻魔は、サンスクリット語及びパーリ語のヤマの音訳。“縛”は罪人を捕縛する意、“双世”は彼が世中、常に苦楽の2つの報いを受ける意、“双王”は兄妹一対で2人並びたる王の意、また“平等”は罪人を平等に裁くとの意からこれらの和訳がある。
● 東アジアの閻魔
インドのヤマが仏教に取り入られて閻魔天となり、地獄の主と位置づけられるようになった。ただし一説には、本来はヴェーダのという同一尊から二途に分かれていったとも考えられている。その二途とは以下のとおりである。
・ 下界の暗黒世界、すなわち地獄界の王となった。つまり本項の閻魔。
・ 上界の光明世界、すなわち六欲天の第3天である夜摩天、あるいは焔摩天。
◎ チベット
チベット仏教で閻魔は「シンジェ」すなわち「死者の主」と呼ばれる。六道輪廻図では輪廻の輪を閻魔が持っている。タントラ仏教では「閻魔法王」と呼ばれ、水牛の上で明妃のチャームンディーと抱き合い、右手に三叉槍、左手に髑髏杯を持った非常に恐ろしい姿で描かれる。
◎ 中国
中国に伝わると、道教における冥界・泰山地獄の主である泰山府君と共に、冥界の王であるとされ、閻魔王、あるいは閻羅王として地獄の主とされるようになった。
やがて、晩唐代に撰述された偽経である『閻羅王授記四衆逆修生七往生浄土経』(略して『預修十王生七経』)により十王信仰と結び付けられ、地獄の裁判官の一人であり、その中心的存在として、泰山王とともに、「人が死ぬと裁く」という役割を担い、信仰の対象となった。現在よく知られる唐の官人風の衣(道服)を纏った姿は、ここで成立した。そのありさまは『西遊記』の第3回に描かれている。
◎ 日本
『十王経』等においては地蔵菩薩と同一の存在と解され、地蔵菩薩の化身ともされている。
閻魔王の法廷には、浄玻璃鏡という特殊な鏡が装備されている。この魔鏡はすべての亡者の生前の行為をのこらず記録し、裁きの場でスクリーンに上映する機能を持つ。そのため、裁かれる亡者が閻魔王の尋問に嘘をついても、たちまち見破られるという。司録と司命(しみょう)という地獄の書記官が左右に控え、閻魔王の業務を補佐している。平安時代の公卿・小野篁には、閻魔大王のもとで裁判の補佐をしていたという伝説がある(「小野篁逸話と伝説」を参照)。戦国時代の武将・直江兼続にも、閻魔大王宛に死者の返還を求める手紙を書いたという逸話がある(「直江兼続人物・逸話」を参照)。
京都府大山崎町の宝積寺には、閻魔・司録・司命が居並ぶ地獄の法廷を再現した鎌倉時代の木像があり、重要文化財に指定されている。
大阪市浪速区には、閻魔を祀った西方寺閻魔堂(正式には「合邦辻閻魔堂西方寺」。創建は伝・聖徳太子)があり、浄瑠璃の「摂州合邦辻」の舞台にもなっている。
閻魔王の法廷で参照される記録からの連想で、教員が生徒や学生の成績を決めるデータが記録してあるノートが俗に「閻魔帳」と呼ばれている。
「閻魔」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』(https://ja.wikipedia.org/)
2024年9月20日21時(日本時間)現在での最新版を取得
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