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ワレモコウ(吾亦紅、吾木香、吾妹紅)は、バラ科・ワレモコウ属の植物。日当たりのよい草原などに生える1メートル以下の草で、秋に枝分かれした先に穂をつけたような赤褐色の花をつける。薬草として、根は生薬になる。
● 名称
源氏物語にも見える古い名称である。漢字表記においては吾木香、我毛紅、我毛香、我妹紅など様々に書かれてきたが、「〜もまた」を意味する「亦」を「も」と読み、「吾亦紅」と書くのが現代では一般的である。「吾木香」については、キク科の植物で線香の原料にもなるモッコウ(木香)と似た香りを連想することから、「わが国の木香」という意味だといわれるが、実際にはワレモコウからあまり香りはしない。
名の由来には諸説あり、はっきりしていない。植物学者の前川文夫によれば、木瓜文(もっこうもん)を割ったように見えることからの命名という。一説には、「吾もまた紅なり」とワレモコウ自身が唱えたことが名の由来であるといわれている。このほか、中国の皇帝がこの花の匂いを気に入り、「吾も請う」と言ったことに由来するのではなど、様々な俗説もある。
別名に酸赭、山棗参、黄瓜香、豬人參、血箭草、馬軟棗、山紅棗根などがある。英語ではgreat burnet、garden burnet、中国語では地楡(ティーユー、dìyú)と呼ぶ。
● 分布・生育地
北海道から九州までの日本列島、朝鮮半島、中国大陸、シベリアなどに分布しており、アラスカでは帰化植物として自生している。
山野で普通に見られる。日当たりのよい草地に生える植物で、草地の草刈りが行われるところで見ることができるが、近年の日本では草刈りが行われる草地が少なくなり、しだいにその姿を消している。
● 形態・生態
多年生の草本。地下茎は短く、やや肥大する。茎は直立して上部で分岐し、根出葉は長い葉柄があり、奇数羽状複葉、小葉は5 - 15個で細長い楕円形か卵状楕円形、鈍頭。長楕円形の小葉には細かい鋸歯がある。
花期は晩夏から秋にかけて(7月 - 10月)。茎を伸ばし、細かく分枝したその枝先に円筒状の穂状花序ができ、暗紅紫色の花弁のない可憐な花を密につける。4枚の萼と4個の雄しべがあり、雌しべは小頭状である。山地には、雄しべが長い類似種がある。開花時は萼もピンク色で黒い葯が目立ち、穂(花序)の上部から咲き始め、次第に下に移っていく。ワレモコウの楕円形の花序は、一般的なバラ科植物の花とは似つかない形をしており、小さな花が沢山集まって形作られている。その一つ一つの花は、花弁がない代わりに4枚の萼片が色づいている。虫媒花であり、ハナバチなどの昆虫を呼び寄せて花粉を運ばせている。
密集した穂状花序を持つため、果実も複合果状になる。果実は痩果で、萼筒に包まれており、先端に暗紅紫色の4枚の萼片が残っている。
冬になると地上部のみ枯れる。
性質は強健で、土地を選ばずに茂る。繁殖は、秋頃に行う株分けと、春に種子を蒔く実生によって可能である。痩果は長さ2.5mmでやや角張った楕円形をしており、稜がある。
● 利用
根茎を乾燥したものは地楡(ちゆ)という生薬になり、秋に葉が枯れてから掘り上げて水洗いし、茎・細根を取り除いて天日乾燥して調製される。タンニンやサポニン多くを含み、収斂薬や、止血や火傷、湿疹の治療に用いられる。漢方では清肺湯(せいはいとう)、槐角丸(かいかくがん)などに配合されている。
民間療法では、地楡5 - 10グラムを水300 ccで半量になるまで煎じて、3回に分けて服用する用法が知られている。扁桃炎、口内炎に冷ました煎液を使ってうがい薬とする。
同属別種のオランダワレモコウ(サラダバーネット、学名S. minor Scop.)は、観賞用だけでなく若葉を食用とする。
● 近縁種
・ ナガボノシロワレモコウ
・ ハッポウワレモコウ - 八方吾亦紅、学名:Sanguisorba x takahashihideoi 、飛騨山脈唐松岳の八方尾根(長野県北安曇郡白馬村)に分布し、本種とカライトソウとの雑種と考えられている。
「ワレモコウ」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』(https://ja.wikipedia.org/)
2024年4月19日11時(日本時間)現在での最新版を取得
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