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『魔界転生』(まかいてんしょう)は、山田風太郎の伝奇小説、これを原作とする日本映画・演劇・オリジナルビデオ・アニメ・漫画・ゲーム作品の総称。
小説は『大阪新聞』に1964年12月から1965年2月まで連載され、この時の題名は『おぼろ忍法帖』(おぼろにんぽうちょう)。1967年に講談社で単行本化、角川文庫・富士見時代小説文庫・講談社文庫で再刊されている。題名は作中に登場する秘術の名でもある。
1981年の映画は主演:千葉真一・沢田研二、監督:深作欣二によって製作され、日本では観客動員数200万人・配給収入10億5000万円を記録した。
その後は演劇・漫画・オリジナルビデオ・映画・アニメ・ゲームと、次々にメディアミックスが展開された。
山田自身も一番好きな作品と語っており、その雄大な構想と奇抜な展開で、数多い『忍法帖シリーズ』の中でも最高傑作と云われている。
● 小説
◎ 概要(小説)
作品名は連載時に『おぼろ忍法帖』、次に『忍法魔界転生』、そして『魔界転生』と変遷。1981年の映画化の際に山田自身が改題した。
森宗意軒という怪老人と出会った由比正雪は、紀州の徳川頼宣とともに江戸幕府、将軍徳川家光の天下を奪わんとする企てを進めていた。森宗意軒は自らが編み出した忍法、“魔界転生”によって、剣豪たちを意のままになる部下として生まれ変わらせてゆく。これは人並みはずれた技量と、死の直前になっても自分の人生に悔いを残している強烈な生の欲求を持つ人間が、死の直前に心から愛しいと思う女と交わることにより、新たな肉体と生前より優れた技量を持って生まれ変わる忍法であった。
“魔界転生”で蘇る剣豪達は転生衆、あるいは魔界衆と呼ばれる。天草四郎時貞・荒木又右衛門、居合の田宮坊太郎、宝蔵院流槍術の宝蔵院胤舜、尾張柳生流の柳生如雲斎、江戸柳生流の柳生宗矩、二天一流兵法の宮本武蔵ら名だたる剣豪たちが転生した。しかし、森宗意軒にはもう一人、どうしても魔界転生させたい男がいた。その男こそ柳生十兵衛である。ところが十兵衛は宗意軒の意に反し、関口柔心の息子、関口弥太郎などとともに転生衆と戦うことを選ぶ。
転生衆に倒された剣豪には、田宮平兵衛・関口柔心・木村助九郎がおり、彼らの娘や孫娘を救う、仇をとるというのが十兵衛の動機の一つになっている。小説中では十兵衛が自分一人の力で敵を倒すことはほとんどなく、誰かしらの力を借りているのも特徴である。
1981年の映画で天草四郎を魔界衆の総大将として描いてから、後の映画・演劇・漫画でもこの設定が踏襲された。原作では宗意軒の愛弟子ではあるものの転生衆の1人に過ぎず、中盤で十兵衛によって倒されており、漫画版の一部を除き、派生作品のほとんどが脚色されている。
◎ 登場人物
○ 柳生衆
・ 柳生十兵衛三巌(やぎゅう じゅうべえ みつよし) - 柳生宗矩の嫡男。
・ 磯谷千八(いそや せんぱち) - 柳生十人衆の一人。
・ 逸見瀬兵衛(へんみ せへえ) - 柳生十人衆の一人。
・ 伊達左十郎(だて さじゅうろう) - 柳生十人衆の一人。泣き顔。
・ 北条主税(ほうじょう ちから) - 柳生十人衆の一人。激怒や感激など感情を露わにする。
・ 小栗丈馬(おぐり じょうま) - 柳生十人衆の一人。精悍無比な雰囲気を持つ。
・ 戸田五太夫(とだ ごだゆう) - 柳生十人衆の一人。地味な三十男。
・ 三枝麻右衛門(さえぐさ あさえもん) - 柳生十人衆の一人。朴訥な性格。
・ 小屋小三郎(こや こさぶろう) - 柳生十人衆の一人。最年少の17歳。
・ 金丸内匠(かなまる たくみ) - 柳生十人衆の一人。最年長で40代前半。
・ 平岡慶之助(ひらおか けいのすけ) - 柳生十人衆の一人。のんき者。
○ 魔界衆
・ 森宗意軒(もり そういけん) - 小西行長の遺臣。
・ 天草四郎時貞(あまくさ しろう ときさだ) - 魔界衆の一人。
・ 宮本武蔵(みやもと むさし) - 魔界衆の一人。剣豪。
・ 荒木又右衛門(あらき またえもん) - 魔界衆の一人。鍵屋の辻での仇討ちで知られる。
・ 柳生利厳(やぎゅう としよし) - 魔界衆の一人。尾張柳生の開祖。
・ 田宮坊太郎国宗(たみや ぼうたろう くにむね) - 魔界衆の一人。柳生宗矩の弟子。
・ 柳生但馬守宗矩(やぎゅう たじまのかみ むねのり) - 魔界衆の一人。徳川家の剣術師範。
・ 宝蔵院胤舜(ほうぞういん いんしゅん) - 魔界衆の一人。槍術の達人。宝蔵院流の2代目。
○ キリシタンくノ一
・ クララお品(くらら おしな) - 宗意軒に仕える切支丹くノ一。
・ ベアトリスお銭(べあとりす おせん) - 同じく切支丹くノ一。
・ フランチェスカお蝶(ふらんちぇすか おちょう) - 同じく切支丹くノ一。
◎ 忍法“魔界転生”
森宗意軒が西洋の黒魔術と日本の忍法を混合させ編み出した秘術。呪術者が切り落とした自身の手の指1本ずつを生贄の女性の子宮に宿させたもの(忍体と呼ばれる)を素体に、死の淵に瀕した武芸者を新たな肉体を持った魔人として再誕させる外道の法である。
死の直前になっても自分の人生に悔いを残している、強烈な生の欲求を持つ武芸者を忍体と交合させる。すると忍体は武芸者そのものを身籠り、忍体自体が武芸者の再生のための蛹のような状態となる。再生する武芸者は1か月弱の期間を経て母胎を溶かしながら成長を続け、やがて忍体を押し破り、新しい体を持った本人が生前と同一の姿で再生を遂げる。
魔界転生を遂げた人物は生前と同一の姿、同一の剣技を持ちながら、理性の箍が外れた残忍な人格に変貌し、元がどれほど慈愛ある人格者であっても破壊と陵辱の限りを尽くす魔人と化す。小説における転生衆の顔ぶれは、天草四郎時貞・荒木又右衛門・田宮坊太郎・宝蔵院胤舜・柳生如雲斎・柳生宗矩・宮本武蔵の7名。これに加えて、未遂となった徳川頼宣、そして柳生十兵衛、最後に森宗意軒自身の合計10名が、森宗意軒の10本の指と10人の忍体を介して魔界転生を果たす予定だった。
◎ オマージュ・パロディ小説としての『魔界転生』
小説『魔界転生』には、吉川英治『宮本武蔵』、五味康祐『柳生武芸帳』などの先行する有名な剣豪小説、『寛永御前試合』、ほか立川文庫の講談などのオマージュ、パロディ要素がふんだんに盛り込まれていることが、数多くの文芸評論家、文学研究者によって解説されている。
特に本作の宮本武蔵に纏わる描写には、“吉川武蔵”のパロディ、オマージュとされる要素が多分に含まれている。
小説『魔界転生』は主人公・柳生十兵衛と最強にして最後の転生衆・宮本武蔵の舟島の決闘とその決着を描く最終章「魚歌水心」でフィナーレを迎えるが、この「魚歌水心」という章第は“吉川武蔵”最終巻、武蔵と佐々木小次郎の舟島の決闘とその決着を描く最終章「魚歌水心」と、章第や舞台の地名が同一、かつ勝者と敗者が“吉川武蔵”と完全に裏返しの構図になっている。牧野悠は「柳生十兵衛が頭上から振り落とされる木剣ごと宮本武蔵を両断する趣向は、章題「魚歌水心」とともに、パロディの意図が明瞭である」と言及している。
また、『魔界転生』で武蔵が連れている弟子の少年「伊太郎」の名と立場が、“吉川武蔵”で武蔵が連れ歩いた2人の少年「伊織」と「城太郎」の名前を合体させパロディ化したものと指摘し、『魔界転生』の宮本武蔵は「(“吉川武蔵”で描かなかった)巌流島後の武蔵を語るところから始めた吉川版武蔵のパロディ」と指摘する論もあるなど、”吉川武蔵”が確立した正統派ヒーロー然とした宮本武蔵像に対するアンチテーゼとして、”魔界転生”は「巌流島での佐々木小次郎との死闘を人生の頂点」とし、悪鬼外道の類に堕してでも強敵との戦いを渇望するダークヒーロー、ヴィランとしての「それから」の宮本武蔵像を世に提示する側面があった。
宅和宏は、本作の登場人物のうち荒木又右衛門と田宮坊太郎を立川文庫、宮本武蔵と宝蔵院胤舜を“吉川武蔵”、柳生但馬守宗矩と柳生兵庫介利厳を『柳生武芸帳』からの登場人物と紹介し、パロディの中でもいわゆるドリームマッチ物、当世風に言えばクロスオーバー、二次創作の分類で『魔界転生』を解説している。宅は「そう、これは剣豪小説のパロディなのです。それもかなり上質のもので、柳生の高弟の木村助九郎や田宮平兵衛が七人と対決するくだりは『柳生武芸帳』の五味康祐の文体にそっくり、ラストの船島での十兵衛と武蔵の決闘は吉川『武蔵』の有名なクライマックスに瓜二つでしかも完全な裏がえし、とくるのだからケタケタ笑ってしまう 」と評した、没した時代や全盛期が異なる名だたる剣豪たちを心身ともに全盛期の状態で蘇らせ、夢の対決を行う本作の革新的な発想は、小説の誕生から50年以上が経過した現在もなお多彩な媒体でフォロワー作品を生み出し続けている。
時代伝奇小説家荒山徹は、陰陽師山田一風斎の秘術「擬界転送(まがいてんそう)」によって蘇った12人の幕末志士が明治政府を狙う筋書きの、『魔界転生』とクトゥルフ神話をミックスしたパロディ伝奇小説『大東亜忍法帖』、森宗意軒率いる「神聖ハポン騎士団」の七剣士に柳生十兵衛が挑む『柳生黙示録』、動物に生まれ変わった人間を前世の姿に戻す「前世逆生」という朝鮮妖術が登場し、『魔界転生』や『柳生忍法帖』などと世界観を一にし、またも荒木又右衛門が復活する『竹島御免状』などの『魔界転生』オマージュ作品を上梓している。
柳生宗矩を主人公とした近衛龍春の時代伝奇小説『柳生魔斬刀』は、「平成の魔界転生」というキャッチコピーで出版されている。
魔界から蘇った天草四郎が徳川幕府への怨恨と魔王サタンならぬ「邪神アンブロジァ」の導きによって世界を破滅に導こうと暗躍する、島原の乱から150年後の島原の地を舞台に12人の剣士が戦いを繰り広げる和風格闘ゲーム『サムライスピリッツ』シリーズ(SNK)、歴史や伝説に名を残す英雄の写し身を召喚して戦う伝奇ファンタジー『Fate』シリーズ(TYPE-MOON)などのサブカルチャーにも影響を与えている。漫画原作者七月鏡一は、黄泉還った由比正雪を黒幕にした『サムライスピリッツ』本編の前日譚『サムライスピリッツ 魔界武芸帖』は『魔界転生』のオマージュ作品であると公表している」と言及しており、シリーズの原点『Fate/stay night』の製作動機に、学生時代に読んで衝撃を受けたという石川賢の漫画版と 、山田風太郎の原作 、添えた『十 〜忍法魔界転生〜』サイン本を奈須に贈っている。
◎ 書誌情報
・ 「おぼろ忍法帖」講談社(上中下三巻)、1967
・ 「忍法魔界転生」角川書店(上下二巻、角川文庫)、1978
・ 「魔界転生」角川書店(上下二巻、角川文庫)、1981 - 映画化タイトルに合わせる。
● 映画
◎ 1981年
1981年の日本映画。主演:千葉真一・沢田研二、監督:深作欣二、製作:角川春樹事務所・東映。カラー・ビスタビジョン、122分。英語タイトルは『Samurai Reincarnation 』。
○ ストーリー
寛永15年のキリシタン弾圧に端を発する島原の乱で、天草四郎時貞を始めとする2万人近い信者が惨殺された。しかし悪魔ベルゼブブの力により蘇った四郎は、徳川幕府に復讐するべくグリモワールを身につけ、「エロイムエッサイム 我は求め訴えたり (Eloim, Essaim, frugativi et appelavi)」と唱えながら、自分と同じく現世で無念の死を遂げた者たちを魔界衆に引き入れていく。愛していた夫の細川忠興から、火の海に取り残される仕打ちを受けた細川ガラシャ。柳生新陰流、特に将軍家剣法指南の柳生但馬守宗矩と嫡男・柳生十兵衛光厳、この二人を倒すことが悲願だった宮本武蔵。女性への煩悩を断ち切れぬ己を恥じ、自ら命を絶った宝蔵院胤舜。甲賀組頭・玄十郎と甲賀衆に伊賀の隠れ里を奇襲攻撃され、一族もろとも殺された伊賀の霧丸。彼ら4名が次々と四郎の手で現世に蘇った。
久々に霧丸に会おうと伊賀の隠れ里を訪れた十兵衛は、甲賀衆による襲撃により焼き尽くされた里と多くの伊賀衆の亡骸を目の当たりにし、茫然としていた。それでも霧丸ら生存者がいないか探し続ける十兵衛の前に、ただならぬ妖気を放ち、馬にまたがる5人が突如現れる。彼らは四郎が率いる魔界衆であった。その1人である胤舜は駆け出し、馬上から槍で十兵衛に襲いかかる。しかし聳える巨樹に素早い跳躍で躱す十兵衛。胤舜だけでなく、霧丸や先年亡くなったはずの武蔵がこの集団に居たので、十兵衛は驚愕した。四郎はそのまま江戸へ向かうことを十兵衛に宣言し、5名は駆け去っていった。異様で不穏な雰囲気を感じ取った十兵衛は、書状で直ちに宗矩へこの異常事態を伝える。
巫女に化けたガラシャは、日光東照宮に参詣した四代将軍徳川家綱に見初められて大奥入りを果たし、側室・お玉の方となる。だが、お玉の身元に不信を抱いた松平伊豆守は、玄十郎にお玉を暗殺するよう指示するが、その密談の場に四郎と霧丸が突如現れる。霧丸は伊賀の里の復讐として玄十郎を、四郎は島原の乱で命を落とした女たちの髪で編んだ鞭・伴天連秘法髪切丸を武器に、島原の乱鎮圧の総大将だった伊豆守を、それぞれ惨殺し共に遺体を江戸城内に晒した。
やがて、その美貌・肢体と妖しい色香を纏うガラシャに籠絡された家綱は、次第に政に無頓着となっていく。家綱のあまりの変わり様に老中たちが危機感を募らせる中、お玉が魔界衆と睨んだ宗矩は、刀匠村正にお玉を斬るための妖刀を依頼。不治の病に冒されていた宗矩は、次男・柳生左門友矩に、嫡男・十兵衛と連携して魔界衆を倒すことを指示。自らは妖刀を携え、命と引き換えに、乱心を装ってお玉の方を斬ろうと江戸城へ向かう。
入れ代わりに武蔵が柳生家へ現れ、佐々木小次郎を倒した櫂を手にし、宗矩か十兵衛との決闘を望む。柳生家次男である左門が対したものの、武蔵は左門を「未熟」と言い放ち、一撃で頭を叩き割り、撲殺した。一方江戸城へ向かう宗矩の前に胤舜が立ちはだかる。宗矩は胤舜の槍を巧みに躱しながらも僅かな隙をついて一刀のもとに胤舜を切り捨てるが、その直後に吐血し死地を彷徨う。四郎は宗矩を魔界へ誘うが「生涯に悔いなし」と拒む。しかし十兵衛を息子というよりも天才的な剣豪として愛していた宗矩は、一介の剣士として十兵衛と戦いたいという望みを四郎に見透かされてしまった。宗矩は魔界衆への転生を受け入れる。
柳生屋敷へ戻ってきた十兵衛は、遺体となった左門に対面。弟の前頭部がぐしゃぐしゃに粉砕されていることに気づき、宗矩に城内で何があったのかを尋ねるが、背を向けた宗矩は理由を聞きたくば側へ来いと手招きするのみで不審に思った十兵衛が様子を伺っていると宗矩がおもむろに振り向く、その尋常ならざる雰囲気と面相に異常を察した十兵衛はたまたま現れたもう一人の弟で三男・柳生又十郎宗冬に至急柳生の庄へ帰る様に指示する。宗矩は不気味な笑みを浮かべると同時に十兵衛に苦無を放ち斬りかかってきた。素早く躱し、屋敷から離れる十兵衛は、宗矩までもが魔界衆に加わったことに衝撃を受けていた。
十兵衛は宗矩と武蔵を倒すため、村正の元へ訪れる。そして宗矩と同じく、魔界衆を斬れる妖刀を打ってもらうよう依頼する。だが村正は、宗矩に渡した妖刀で精根を使い果たしており、一旦断る。その時、武蔵が十兵衛と決闘しようと、不意に村正の家へ乗り込む。妖刀もない十兵衛は危機に瀕するが、村正の養女となっていた2代目・おつう(武蔵の恋人・お通の姪)が、村正の指示で笛を奏でると。かつてのお通との思い出が蘇った武蔵は、戦意喪失し、引き上げていく。村正はあのような化物を斬るには自分の刀しかないと考え直し、刀を打つ。そして妖刀の完成と共に、村正は息を引き取ってしまうのだった。
四郎は霧丸を連れ、天領である佐倉の農村で呪詛を行ない、徳川の世を混乱に陥れようと画策。その結果、作物は立ち枯れ凶作になったが幕府は年貢の取り立てを止めようとはしなかった。農民たちは幕府に対し不満と怒りを募らせるが代表者として数名が鹿狩り中の家綱に年貢の免除を直訴するものの捕らえられたうえ磔にされ公開処刑された。四郎は処刑場で彼らの死を悼む農民らを扇動し一揆を起こす。一揆は瞬く間に広がり無数の農民を率いて江戸城へ向かう。この間、霧丸は農民の少女・お光と心を通わせ、悪に染まり切れず苦悩していた。その時、十兵衛と再会し人として生きるように諭された霧丸は、本来の優しさを取り戻しお光と共に脱走を図る。だがそこに、裏切りを知った四郎が立ちはだかり、霧丸はお光の眼前で四郎に鞭で絞殺されてしまう。
十兵衛はおつうやお光と共に、一揆で命を落とした多くの農民や霧丸を葬っていた。四郎たちを倒すことを改めて誓っていた十兵衛は武蔵から決闘を申し込まれ、村正最後の妖刀を身に帯び、舟島へ向かう。おつうは武蔵に優しさを思い出させようと笛を奏でるが、かつてのような動揺はしない。十兵衛と武蔵の戦いが始まった。お互い浜辺を走り回り、幾度となく剣を交え、戦い続ける。そして十兵衛は、武蔵が振り下ろす櫂を躱して、高く飛び上がり、空中から脳天割りで武蔵を叩き斬った。
急ぎ江戸城へ向かう十兵衛。城内では相変わらず家綱がガラシャの元に入り浸っていた。ところがガラシャは寝言で忠興の名を口にしたため嫉妬した家綱ともみ合っているうちに行灯を倒したことで出火し寝所は瞬く間に炎に包まれる。かつて忠興から与えられた打掛が燃え上がるのを見たガラシャは哄笑し錯乱状態となり、火から逃れようとする家綱を忠興と思い込んですがりつく。大奥から城全体に火の手がまわる中、薙刀を振り回し家綱を連れまわすガラシャに誰も対処できず騒然となるなか、突如現れた宗矩が騒ぎに気付いて駆けつけた老中達を切り捨て周囲の旗本達と斬り合いとなる。その隙にお玉は家綱と共に天守へと消えていく。二人きりの天守に現れた四郎は家綱に島原の復讐であることを告げ天草衆の遺髪で束ねた鞭で打つ。直後にガラシャは生前の未練を晴らすべく、家綱を道連れに火中に身を投じて無理心中する。江戸が紅蓮の炎で焼き尽くされていく喜びに四郎はうち震え、江戸城の焦熱は止まらず地獄のような状況で、宗矩は十兵衛を待ち焦がれていた。
猛火に包まれ、崩落する江戸城内に、編み笠を被った十兵衛光厳が父・宗矩の前に現れる。宗矩は十兵衛が笠を外した姿に驚愕。息子は身体を魔除けの梵字で埋め尽くしていた。十兵衛は骨肉を分けた親子が戦わなければならない不条理を嘆き、戦いを避けようと諭すが、宗矩は十兵衛の才能に一人の剣士として戦いたいと強弁したため、十兵衛は魔界衆となった父と望まぬ一騎打ちをすることとなる。同じ流派のため、構えも同じ。壮絶な死闘が始まった。宗矩の尋常ならざる執念と力に苦戦する十兵衛は眼帯を切られ、村正も折られ窮地に追い込まれる、尚も十兵衛に斬り掛かる宗矩。十兵衛は宗矩の村正を、真剣白刃取りで辛うじて受け止める。九字「
○ キャスト
※ 配役表記のある出演者
※クレジットタイトルに表記され、パンフレットに掲載されている順
・ 千葉真一 - 柳生十兵衛光厳
・ 沢田研二 - 天草四郎時貞
※ 上節に該当しない出演者
※パンフレットに配役表記は無く、クレジットタイトルのみに表示
○ スタッフ
※ 主要スタッフ
※クレジットタイトルに表記され、パンフレットに掲載されている順
・ 製作 - 角川春樹
・ 原作 - 山田風太郎
・ 企画 - 角川春樹事務所
・ プロデューサー - 佐藤雅夫・本田達男・稲葉清治
・ 脚本 - 野上龍雄・石川孝人・深作欣二
・ 監督 - 深作欣二
※ 上節に該当しないスタッフ
※パンフレットにスタッフ表記は無く、クレジットタイトルのみに表示
○ 製作
※ 経緯
東映京都撮影所(以下、京撮)は、1978年の『柳生一族の陰謀』以降、「これ」という一本を作れずに喘いでいた。そんな折、角川春樹が大作映画の企画を東映に持ち込んでくる。京撮のプロデューサーである翁長孝雄は「東映というのは、困ったときに救いの神が来るんですよ。あの時、角川さんが来てくれたのは大きかった」と証言している。1979年の『闇の狩人』で五社は、エロティシズム・暴力・血しぶきを際立たせる映画を演出しており、角川はその手腕を評価し、本作に適役とオファーしたのだ。
※ キャスティング
千葉真一の柳生十兵衛光厳と、沢田研二の天草四郎時貞は配役の決定事項として進められた。映画『柳生一族の陰謀』(1978年)、テレビ時代劇『柳生一族の陰謀』(1978年)・『柳生あばれ旅』(1980年)に続き、千葉が十兵衛に扮する4度目の作品となった。既に十八番と認知されていた十兵衛を千葉は、本作で決定版とすべく役作りを重ねていく。魔人も計6人に抑え、ストーリーの展開が散漫にならぬようした。その無念を千葉真一の柳生十兵衛と山田の壮大な伝奇ロマンで、深作はリベンジしようと意気込んでいた。宮本武蔵を二刀流ではなく、巌流島で佐々木小次郎を打ち負かした櫂を使って戦わせるというアイデアを、菅原が進言する。このような物語が大好きな深作は、「フィクションをどうリアルに描いていくか」と、楽しそうに本作を仕上げていった。カメラには東宝の長谷川清が招かれていた。しかし宝蔵院胤舜の室田日出男は、菅原俊夫と共に宝蔵院流槍術の道場に通っていたが、槍の練習中に右足首捻挫。通常の映画撮影では安全面を考慮し、火事のシーンで実際にセットを燃やさず、撮影用のバーナーとカメラアングルで、セット全体が燃えているように見せる。京撮の所長・高岩淡以下、撮影所員が総出で消火器を構え、消防車にも待機してもらった。しかもカメラはフィックス(固定)でなく、セットの中にレールを敷き、移動撮影となる。豪火の中で行われた十兵衛と父・宗矩の決闘は、華麗で凄みのある戦いとして劇中最大の山場・名勝負となっている。
原作に漂うエロティシズム・エゴイズム・バイオレンスを、深作欣二のダイナミックでスピーディーな演出で、映画として新たな作品に変身した。原作の「女性の腹を割って出てくる」という“魔界転生”を特撮で描けないことはなかったが、「きれいな絵を作りたい」という深作の意向により、本作では意識的に取り入れていない、公開するや否や東京都の東映直営映画館3館の前に朝早くから長蛇の列ができ、初日と2日目で2万5000人を動員。観客層は6対4で女性のほうが多く、従来の男性客が多くを占める東映とは異なる動員をした、福岡ソフトバンクホークスの監督・秋山幸二は「あなたにとってサムライとは?」という問いに「千葉真一の柳生十兵衛は、生きるか死ぬか究極の真剣勝負というイメージがいい」と評するなど、千葉十兵衛は根強い人気がある。
時代劇専門チャンネルは本作を「千葉真一の殺陣の凄みを最も堪能でき、千葉の殺陣の引き出しの多さに驚かされる。若山富三郎との一騎打ちは、お互いの身体能力をぶつけ合った時代劇史に残る死闘となっている」と紹介している。春日太一は「本来なら、対戦があり得ないはずの剣豪同士の対決が、実現している。全て好カードだが、中でも柳生親子の決闘は、千葉真一が若山富三郎から殺陣を教わっていたので、役者としても師弟対決であり、新旧アクションの名手対決であり、ワクワク要素満載の最高の対戦カードとなっている。決闘の前にお互い必殺技を身につけ、両雄は対峙する。同じ流派なので、刀の構えからタイミングまで、全てが同じ。双方の互角感が映像から伝わってきて、ド迫力の決闘になっている」と、チャンバラの魅力を存分に堪能できる作品と述べている。テレビCMでは四郎が唱える「エロイム・エッサイム」が流され、子供達の間でも流行り言葉になったという、中田譲治は『超獣戦隊ライブマン』の敵幹部、大教授ビアスに扮した際の演技イメージ作りに『ラビリンス/魔王の迷宮』でのデビッド・ボウイと並べて「魔界転生の沢田研二」を取り入れたと語っている。
漫画では平野耕太が漫画『ドリフターズ』第3巻のカバー裏オマケで天草四郎をキャラクター化し、映画『魔界転生』のラストシーン同様、自分の生首を脇に抱え哄笑する首無し武者のデザインで描いているが、脇に添えられたキャラ解説は「ジュリー版とクボヅカ版で強さが100倍違う」「真田広之逃げて、超逃げて」「サニー千葉 with ムラマサで、やっとどうにかなるレベル」と、平野が何の補足説明もなく1981年・2003年の映画『魔界転生』の感想を綴る内容になっていた。青山剛昌は少年剣士・鉄刃が妖怪じみた老翁・剣聖宮本武蔵に弟子入りし、悪鬼に呑まれたライバル剣士や現代に蘇った佐々木小次郎、柳生十兵衛、天草四郎や風魔小太郎に松尾芭蕉、沖田総司の6代目子孫、果ては地底人や宇宙人など古今東西の強敵と戦う少年漫画『YAIBA』のインスピレーション元になった映画として本作を挙げている。
ゲームソフトでは青山剛昌がキャラクターデザインも行い、本作フォロワー描写を登場させた1994年の『ライブ・ア・ライブ』幕末編、ゲーム『装甲悪鬼村正』の続編漫画『装甲悪鬼村正・魔界編』、ゲーム『サムライスピリッツ』に登場する天草四郎、などサブカルチャー分野でもフォロワーを生んでいる。2013年の『真・女神転生IV』に登場する天草四郎時貞モデルのキャラクター「英傑トキサダ」の自分の生首を脇に抱えたデザインなど、映画のラストシーンで妖刀村正を携えた柳生十兵衛との決闘で刎ねられた自分の頭部を脇に抱え哄笑する天草四郎のヴィジュアルをパロディしたフォロワー作品もある。アニメ版『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』島原編の天草翔伍のデザインは、和月伸宏が本作のファンという事もあり、『サムライスピリッツ』版の天草四郎の流れを受けたデザインになっている。
○ サウンドトラック
・ 魔界転生 オリジナル・サウンドトラック(2020年12月30日/CINEMA-KAN/規格番号CINK-113)- 映画本編では未使用のイメージ曲も収録されている。
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◎ 2003年
○ ストーリー(2003年)
島原の乱で死んだ天草四郎時貞が従者のクララお品を従え、堕天使のごとく復活した。10年ほど後、3代将軍徳川家光の時代、徳川幕府滅亡を志す四郎は鷹狩りに来ていた野心家の徳川頼宣を挑発する。彼に秘術を使って蘇らせた配下の現世に無念を抱く魔界衆荒木又右衛門、宮本武蔵、宝蔵院胤舜を差し向ける。又右衛門の襲撃を期に柳生十兵衛を始めとするお雛、伊達小三郎の柳生衆は秘術の生贄に誘拐されたおひろを追って戦いに参加する。戦いで魔界衆を破られた四郎はさらにクララお品の身体を使い徳川家康までも転生させる。
○ キャスト(2003年)
○ スタッフ(2003年)
・ 製作 - 「魔界転生」製作委員会(東映、角川書店、日本テレビ放送網、TOKYO FM、讀賣テレビ放送、日本出版販売、東映ビデオ)
○ 製作(2003年)
1981年版で特撮を担当した矢島信男の弟子である佛田洋が特技監督を務めた。視覚効果統括の橋本満明は合成会社でのアルバイト時代に1981年版に携わっている。デジタル技術の向上により、1981年版では描写されなかった原作のシーンが映像化されている。
原作の魔界転生をCGで再現しており、性的描写はないが女の身体が割れて魔界衆が誕生する様子が描写される。佛田は原作に寄せるというコンセプトから性的描写を構想していたが、監督の平山秀幸に却下された、2003年4月26日・27日の全国週末興行成績(興行通信社)には観客動員数8位で初登場する。やや期待外れの出足であり、『RED SHADOW 赤影』(2001年)の興収7億円前後を目指すスタートとなった。最終興行収入は6.4億円となった。
● 演劇
◎ 1981年(演劇)
タイトルは『柳生十兵衛 魔界転生』。同年の映画を演劇化した作品で、「天草四郎は女であった」と新たな設定が加わり、志穂美悦子が演じている。同時上演は『スタントマン物語』(演出:千葉真一、企画監修:深作欣二、脚本:青井陽治、出演:真田広之・志穂美悦子)。千葉・志穂美・真田はこれが本格的な演劇出演であり、公演も第1回JACミュージカルと銘打たれていた。千葉はこれ以降ミュージカルを毎年企画・演出・主演し、1982年・1983年・1984年には『ゆかいな海賊大冒険』、1985年には『酔いどれ公爵』を上演していく。
○ キャスト(演劇)
・ 千葉真一 - 柳生十兵衛光厳
○ スタッフ(演劇)
○ 上演日程
・ 公演期間:1981年7月3日 - 7月28日
・ 公演会場:新宿コマ劇場
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◎ 2006年
原作寄りの内容だが、魔界衆の総大将は2006年以前の映画・演劇・Vシネマ同様に天草四郎としている。
○ キャスト(2006年)
○ スタッフ(2006年)
○ 上演日程(2006年)
・ 公演期間:2006年9月2日 - 9月26日
・ 公演会場:新橋演舞場
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◎ 2009年
劇団キリン食堂第6回公演。
○ キャスト(2009年)
○ ゲスト
○ スタッフ(2009年)
○ 上演日程(2009年)
・ 公演期間:2009年12月2日 - 12月6日
・ 公演会場:俳優座劇場
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◎ 2010年
俳優集団・志道塾第8回プロデュース公演。
○ キャスト(2010年)
○ スタッフ(2010年)
○ 上演日程(2010年)
・ 公演期間:2010年4月24日 - 4月25日
・ 公演会:座・高円寺2
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◎ 2011年
劇団ヘロヘロQカムパニー第25回公演。敵方の総大将を天草四郎にする流れを踏襲しつつ、オリジナルの解釈が加えられている。
○ ストーリー(2011年)
時は徳川家光の時代。「島原の乱」終結に端を発し、徳川への復讐に燃える天草四郎の手によって、忍法「魔界転生」で名だたる剣豪たちがよみがえり、稀代の剣豪と言われる柳生十兵衛と柳生七人衆が迎え撃つ。紀州和歌山を舞台に、両陣営の血で血を洗う戦いが繰り広げられる。
○ キャスト(2011年)
○ スタッフ(2011年)
○ 上演日程(2011年)
・ 公演期間:2011年6月14日 - 6月19日
・ 公演会場:吉祥寺前進座劇場
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◎ 2013年
Rooter公演。
○ キャスト(2013年)
○ ゲスト(2013年)
○ スタッフ(2013年)
○ 上演日程(2013年)
・ 東京公演(2013年3月27日 - 3月31日、新宿シアターモリエール)
・ 大阪公演(同年4月5日 - 4月7日、大阪市立芸術創造館)
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◎ 2018年
日本テレビの開局65周年を記念しての公演 であり、同じくマキノノゾミ脚本・堤幸彦演出の『真田十勇士 (2014年の劇作品)』の続編的な要素が満載の作品となっている。
○ キャスト(2018年)
○ スタッフ(2018年)
○ 上演日程(2018年)
・ 福岡公演(2018年10月6日 - 10月28日、博多座)
・ 東京公演(同年11月3日 - 11月27日、明治座)
・ 大阪公演(同年12月9日 - 12月14日、梅田芸術劇場メインホール)
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○ 2021年
2018年版の再演 。再演にあたって、メインスタッフはそのまま、キャストは変更もあるが続投もいる。
※ キャスト(2021年)
※ スタッフ(2021年)
※ 上演日程(2021年)
・ 愛知公演(2021年4月7日 - 4月11日、刈谷市総合文化センター)
・ 福岡公演(同年4月16日 - 4月28日、博多座)
・ 東京公演(同年5月18日 - 5月28日、明治座)※当初の予定は5月4日 - 28日だったが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言を受け、16日までの公演が中止された。17日は予定休演。
・ 大阪公演(同年6月2日 - 6月4日、6月7日 - 6月10日、新歌舞伎座)※当初の予定は6月2日 - 10日だったが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言の延長による土日無観客要請を受け、6月5日 - 6日の公演は中止された。
● Vシネマ
◎ 解説
オリジナルビデオとして製作された。The ARMAGEDDONというサブタイトルがつき、2部構成となっている。第1部の正編に続き、第2部の魔道変まで、魔界衆・妖怪たちとの対決を描く。映画版と違い、森宗意軒は登場しないが由比正雪が首領で、原作と同様に天草四郎は配下の一人となる。撮影は長谷川清が1981年の映画に引き続き、参加している。第1部は1996年4月26日発売、85分。第2部は同年10月4日発売、83分。
◎ ストーリー(Vシネマ)
魔界からの使者、由比正雪は覇権を狙う徳川頼宣のもと、天草四郎時貞、宝蔵院胤舜、荒木又右衛門、柳生宗矩、宮本武蔵などの7人を魔界衆として復活させる。柳生十兵衛がその陰謀に挑む。
◎ キャスト(Vシネマ)
・ 和泉史郎、郷田ほづみ、白部由起夫、浦野眞彦、加藤陵子、伊藤紘、栗原敏、豊島稔、崎山凛、新井兼二、徳留英人、長谷川健、城谷光俊、大道寺俊典、河本由彦、山宮近司、高崎隆二、日吹現、立原友香
◎ スタッフ(Vシネマ)
● 漫画
◎ 魔界転生(石川賢)
作画は石川賢で、自ら山田風太郎原作で描きたいと角川に打診し、『甲賀忍法帖』を希望したところ、過去に角川で映画化された本作を指定されたという。山田からの要望による縛りが一切無かったことから、石川賢の個性的なアレンジで全くの別物に仕上がっている。主な相違点として、魔界衆は幕府転覆も目論むが、真の目的は魔界と魔王サタンの現世への召喚である。そのため、天草四郎がサタンの一部分という設定で魔界衆の首魁になっている他、原作では転生しない徳川頼宣が転生し、柳生如雲斎の登場がない。魔界転生の素体となる女たちも、クララお品とベアトリスお銭は登場せず、ベアトリスお品とクララお清となり、役回りにも違いが見られる。
◎ 魔界転生(とみ新蔵)
作画はとみ新蔵。前半は原作を踏襲した漫画化。後半よりオリジナル展開。
◎ 魔界転生―夢の跡(鳥羽笙子)
全2巻。2003年版の映画に合わせて角川系列の少女漫画誌で連載された。導入と終盤こそ1981年版映画をベースにして天草四郎を首魁にする流れを踏襲しているが、森宗意軒と由比正雪が天草四郎に随伴しているなど原作要素も取り入れられている。
魔界衆の中で一人だけ人の心を残したまま魔界衆になったというオリジナル設定のもと田宮坊太郎を主人公に据え、江戸城本丸の決戦まで坊太郎を生き残らせるアレンジが加わっている。
天草四郎側に付く小西行長の血筋の子供「お類」(名は『魔界転生』原作版田宮坊太郎の想い人と同一だが、名前以外は完全に『夢の跡』オリジナルキャラクター)が天草四郎・田宮坊太郎とおひろ・十兵衛それぞれに関わる。坊太郎とお類の交流は1981年版映画における伊賀の霧丸とお光のそれを彷彿させる描写になっている。
お雛とおひろの役割も原作と大きく異なり、おひろは生前の坊太郎の想い人(本編では既に故人)・お雛はおひろに生き写しの実妹という役回りになっている。
◎ 魔界転生―聖者(ベアト)の行進(九後奈緒子)
全1巻。2003年版の映画に合わせて角川系列の少女漫画誌『月刊ASUKA』で連載された。全3話の短期連載のためか、登場する魔界衆は天草四郎、宮本武蔵、柳生宗矩のみの超ダイジェスト版。掲載誌のカラー故か森宗意軒と天草四郎、天草四郎と柳生十兵衛の間にボーイズラブ調の脚色が加わり、男性キャラクター同士の執着と愛憎劇が主体になっている。
◎ 十 〜忍法魔界転生〜
原作をほぼ踏襲し、漫画化された。
● アニメ
1998年、アミューズビデオによりOVAとしてアニメ化。「地獄篇 第一歌」「地獄篇 第二歌」の2作が発売されている。当初は全4巻の予定だったが、製作取り止めとなったため、未完となっている。
十兵衛が公儀隠密として島原の乱に参加しており、城に乗り込んできた彼に対して、四郎は自らの首級と引き換えに城の女子供たちの助命を依頼。
快諾する十兵衛だったが、宗意軒の策略により決裂、壮絶な死闘の末に十兵衛に敗れた四郎は怨嗟の言葉を遺して死亡するという、四郎と十兵衛との間に個人的因縁を生じさせる独自の展開になっている。
◎ キャスト(アニメ)
◎ スタッフ(アニメ)
● ゲーム
ローグライクゲームで、2003年7月31日にPS2専用ソフトとして発売された。開発はタムソフト、販売はディースリー・パブリッシャー。発売に際し日枝神社にて、厄除け祈願が行われている。2003年版映画がベースになっており、秘術の生贄に誘拐されたヒロイン・おひろを救出するため戦いに身を投じた柳生十兵衛を操作し、ゲームを攻略していく。魔界衆を統べる首魁が天草四郎とクララお品のカップル、おひろとお雛が双子の姉妹になっているなどの独自アレンジが加わっている。
◎ キャスト(ゲーム)
● イベント
・ 魔界転生
・ 魔界転生 再誕(リバース)- 2003年の映画を基に製作された、東映太秦映画村に在ったお化け屋敷
「魔界転生」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』(https://ja.wikipedia.org/)
2024年4月24日1時(日本時間)現在での最新版を取得
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