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『将軍家光の乱心 激突』(しょうぐんいえみつのらんしん げきとつ、幕府風雲 激突、Shogun's Shadow)は、1989年の日本映画。主演:緒形拳、監督:降旗康男、アクション監督:千葉真一。「ザ・痛快・時代劇」「命がけだからおもしれぇ」をテーマにし、アクション・サスペンスを盛り込み、異なる戦闘・戦術のプロフェッショナルである7人の浪人が、徳川幕府から放たれた剣豪・大軍と壮絶な死闘を展開する作品。映画の最も面白い要素の一つ、ある者を巡って繰り広げられる攻防に、浪人たちの奇抜な戦闘・戦術が描かれている。
● ストーリー
三代将軍・徳川家光の後継者である竹千代は、乳母の矢島局と共に渓谷の湯屋で保養していたが、老中阿部重次の命を受けた伊庭庄左衛門が指揮する根来忍者集団に襲撃される。そこに家光の傅役・堀田正盛が雇った石河刑部とその配下である多賀谷六兵衛・砥部左平次・祖父江伊織・郡伝右衛門・土門源三郎・猪子甚五右衛門らが現れ、刺客たちを蹴散らした。竹千代と矢島局は刑部たちに無事救出され、堀田家に保護される。竹千代を討ち漏らした阿部は堀田家を訪れ、「5日後に竹千代の元服式を行うので、江戸城に来るように」という家光の命令を伝えたが、この会合で阿部はかつて家来の物頭(ものがしら)であった刑部と再会。阿部は自らの立身のために刑部の妻だった妹を家光の側室・お万の方として差し出していた。竹千代を警護する用心棒の刑部とその暗殺を企む阿部。両者の因縁は断ち切れないものになった。
翌朝、正盛は罠と知りつつ竹千代を伴い江戸に向かうが、その晩に伊庭軍団に襲撃され殺害される。しかし、正盛の一行は伊庭を欺くための囮であり、竹千代は石河たちと共に山中を江戸に向かっていた。伊庭は山中を捜索するが、矢島が竹千代を温めようと火を起こしたため煙で居場所が発覚し、竹千代・矢島・正盛の嫡男で警護していた堀田正俊が捕まり鉱山に監禁されてしまう。刑部ら7人は鉱山に侵入して竹千代ら3人を救出し、伊庭のアジトである鉱山を爆破。伊庭は古河藩にも協力させ、その藩兵を動員した山狩りを行う。
激流の河に飛び込み渡り、滝を登り、渓谷に縄を掛けて伊庭軍団の追撃から幾度となく逃れるが、源三郎が「貰った金の分は十分の仕事をしたから、手を引くべき」と刑部へ訴えるほど、この山狩りで絶体絶命となる。山中にいたある晩、煌々と照らす敵の軍勢を見た竹千代は「余の命を狙うのは父上」と悟る。矢島は命を狙われる理由が、精神に異常をきたしていた家光が「竹千代は自分に似ていないから」という理由で阿部に暗殺を命じたことを刑部らにその事情を語る。矢島は竹千代が世継ぎにならなくてもいいと考え、竹千代と共に将軍家を去ろうとするが、竹千代は父・家光と対決することを決意した。刑部らは理不尽な理由で竹千代を殺そうとする家光への怒りと、それに立ち向かう竹千代に意気を感じ、竹千代の警護を最後まで請け負うことを誓い、江戸城へ向かう。
馬を奪った刑部たちは一気に江戸へ向かおうとするが、伊庭軍団の追撃により仲間は次々に討たれていく。生き残った竹千代・矢島・正俊と刑部・六兵衛・伝右衛門の6人は寂れた宿場町に追い詰められた。竹千代を引き渡すように求める伊庭に対し、刑部は一騎打ちを申し込む。斬り合いの末に刑部は伊庭に勝つが、軍団は躊躇なく突入してきた。伝右衛門は隠れていた油屋にあった油樽に点火。火は次々燃えうつり、宿場町を火の海となった。混乱に乗じて江戸城へ向かおうとするが、銃撃された刑部は落馬。竹千代は刑部を助けようと頭に巻いていたえんじ色の紐を竹千代へ投げた刑部は「走れ・・走れっ ただ真っ直ぐに走れっ 」と叱咤し、竹千代・矢島・正俊に江戸城へ帰還するよう促す。周囲には圧倒的な人数で武装した軍団がいるなか、刑部は両手に刀を持ち単身、飛び込んでいった。
竹千代は江戸城へ到着するが、それを聞いた家光は激怒し、阿部に暗殺するように命じる。しかし阿部は「城内での暗殺は大名たちに隠し切れない」と拒否し、家光はお万の方に暗殺を命じる。お万は竹千代を毒殺しようとするが、矢島が遮る。お万は矢島の持つ仕込み小刀を見て、それが夫だった刑部の物と気付き、毒殺を止めて竹千代を家光に引き合わせる。乱心した家光は竹千代を斬り捨てようとするが、竹千代を守ろうと身を乗り出した矢島が斬られ、彼女は仕込み小刀で家光を刺し、刃先に塗られた毒が身体に回った家光は苦しみ悶える。裏切りをなじる家光に対し、お万は「愛する者を奪った」と積年の恨みをぶつけ、家光の死体を前にして狂喜する。事態を知った阿部は「上様は急の病で亡くなられた」と公表し、竹千代が次期将軍に選ばれる。家光の葬儀が執り行われる中、竹千代は家光の位牌に抹香を投げつけ、阿部は全ての責任を負って切腹する。
葬儀後、竹千代は石河から受け取ったえんじ色の紐を手にしながら、助け支えてくれた7人たちに思いを馳せていた。
● キャスト
◇役名表記
・ 千葉真一 - 伊庭庄左衛門 ※キャストロールには表記されず、スタッフロールにアクション監督として役名と共にクレジット。
◇その他
◇ジャパン・アクション・クラブ
・ 栗原敏 - 伊庭庄左衛門の家来の侍A
・ 関根大学 - 伊庭の家来の侍B
・ 崎津隆介 - 伊庭が率いる根来忍者A
・ 甲斐道夫 - 伊庭が率いる根来忍者Bと、石河刑部と戦う伊庭(一部)、1987年のNHK大河ドラマ『独眼竜政宗』も好評を博していたことから岡田茂東映社長が、高岩淡東映専務兼東映京都撮影所長に「時代劇を久方ぶりに一本やれ」と指示した、岡田は「時代劇の場合、やっぱりスーパースターがいる。どう生み出してゆくか。京都撮影所でやると必ず往年の感覚に逆戻りする。時代劇はこういうものです。ジス・イズ・ザ・時代劇、染みついちゃってるから、本もこう、監督もこう、役者組んだら古い顔ぶれが並ぶ。チャンバラの新しいスターを作るなら、役者など追っかけないで剣道のいま達人といわれる若い人の中から、顔もよくてセリフを喋れるような、フレッシュな素材をスカウトしてこい。テレビの時代劇が視聴率を獲ったといっても映画でやるなら、そんなの捨てなきゃダメ。新しいモノを生み出さない限り、時代劇は息を吹き返さない」などと話し。
岡田と日下部五朗・佐藤雅夫プロデューサーの三人でプロットが練られ。日下部は「ほとんど私がアイデアを出した」と話している、「アクション物に徹してくれ」と指示があった。シナハンを繰り返したがコース設定に難航するなど脚本に9ヵ月かかった、10年経って映画を取り巻く環境がガラリと変わり、当時は逆に外部提携をしない、他社のように積極的に外部と組ませない。メディアの多様化が進展し、家庭用ビデオレコーダーの普及で、レンタルビデオ店が急増し、当時で全国1万5000店ともいわれ。ところが東映など大手映画会社はビデオ収入やテレビ放映料などの二次使用で、劇場配給以外の収入が大きくなり、まったく損をしていなかった、電通の木暮剛平社長は、岡田の東大同期の親友でもあり、電通の映画担当者・入江雄三常務とは、日本アカデミー賞を創設するなど古い付き合いで、スポンサーはいくらでもあり、超大作の製作も可能ではあった。
岡田は「情勢が非常に厳しいときにあまり冒険はしたくない。損をしない映画を確実に作っていく体制を敷かざるを得ない。映画というソフトをテレビに、あるいはビデオに売るにしても版権が他社のものではどうにもならない。当社自身が作って、版権を持っているからこそ、映画が他のメディア市場に拡大し伸びてゆく。東映グループが成長を続けているのは版権を持っているからです。ビデオが儲かっていると言っても、この主力は映画であり、しかも100%東映がこの版権が握っているから成り立っているんです」などと話していた。
1988年1月5日に岡田の年頭挨拶で、1988年の東映ラインアップの発表があり、この時タイトルが改められ、『激突』に変更された。また公開予定は1988年秋と変更され。
緒形拳は『楢山節考』と同じプロデューサーから、「千葉さんと組んで時代劇を撮ってみないか」と言われて出演を承諾したと話している。
◎ アクション
千葉真一はアクション監督を引き受けるにあたり、日下部プロデューサーにアクション・シーンの全演出とそのシーンの編集を自身が行うことを条件に付けた。当然、降旗康男監督にも了解を得られなければならないが、時間はかかったがOKが出た、多くのアイデアを出した。
伊庭庄左衛門役の千葉真一のクレジットタイトルもキャストロールではなくスタッフロールに表記されており、千葉率いるジャパンアクションクラブ (JAC ) の甲斐道夫に伊庭の演技を一部吹き替えさせ、スタント全てをJAC が受け持つようにし、彼らのハードアクションが全編に満載されている、危険なシーンの連続であったために俳優・スタントマンに掛けられた保険金は総額4億円に及んだ。千葉は西部劇『ワイルドバンチ』、映画『明日に向って撃て』、山田風太郎の伝奇小説など。
海外からもスタッフ・俳優を招聘。映画『タワーリング・インフェルノ』『炎の少女チャーリー』で、炎に焼かれる人々を手がけたファイアースタントコーディネーターのジョージ・フィッシャーは千葉真一の立ってのリクエストで招かれ、終盤の「人馬もろとも、火だるまになりながら疾走する」というアクション効果を担当した。
● 音楽
東映京都の若手プロデュースの推薦で、THE ALFEEの「FAITH OF LOVE」が起用された。主題歌・挿入歌を担当した高見沢俊彦は映画『魔界転生』の天草四郎の格好で宣伝したが、本作と内容の繋がりはない。
● タイトル
タイトルは最初が『忍びの者たち』で、その後『激突』と変更されたが“将軍家光の乱心”を岡田社長が付け加えた。劇場予告をした時にはタイトルが『激突 将軍家光の乱心』と表示されている。
● 製作費
製作費は5億円だったが、アクションに凝ったために足りなくなった分をTBSが2億円出して、7億円を計上していると日下部は話しているが。
高岩は「通常の倍」。
・ 高岩淡は「製作費は通常の倍をかけたが、若年層がくると思って期待していたら、平均年齢は34~35歳と高くなり、一番心配した方向に行ってしまって、若者が振り向かなくなったのは企画のせいもあるでしょうけど、映画離れして、ビデオに走ってしまったのが原因があると思う」などと話している。
・ 朝日新聞は「東映久しぶりの時代劇『激突―将軍家光の乱心』は、アクションが見せる。仕掛けの大きさといい、工夫といい、スピードといい、日本映画にはかつてないすごさだ。アクション監督・千葉真一の手柄だろう。ところが、お話の方はいただけない。将軍職をめぐって、竹千代擁立派の緒形拳一派と千葉らの刺客団が激突するが、人物の描き方が半端だし、道中のサスペンスはさっぱりだし、エピローグはしらけさせるし、といった塩梅だ」などと評している。
・ 日本経済新聞は「『将軍家光の乱心・激突』は、日本映画としては久しぶりに『どうしたら面白い活劇を見せられるか』という作り手たちの意気込みが画面から伝わってくる作品だ。目論見が全部成功しているといは言えないかも知れないが、意気込みが伺えるだけでも最近の邦画では珍しい。立ち回りから活劇シーンへ移る物語のテンポも快調で、チャンバラ映画というよりアメリカの冒険アクションに近いノン・ストップ感覚を備えた作品になっている。もっとも家光の乱心の模様など江戸城内の描き方がマンガ的なのをはじめ、登場人物の人間描写は奥行きに欠けるが、アクションに徹したこの映画にそれを求めるのは無理というものだろう」などと評した。
● 媒体
国内公開直前にメイキングビデオ
・
が販売され、その後作品はVHSと、2002年7月21日と2009年10月21日のDVDがそれぞれリリースされている。
日本公開の同年に原作小池一夫、作画小島剛夕で勁文社よりコミックが、2009年1月には小池書院から再版された。
・ 勁文社版 - 『激突』上下巻
・ 小池書院版 - 『徳川家光の乱心・激突』全1巻 ISBN 978-4862254054
・ グループ・ゼロ版 - 勁文社版を底本とした電子書籍版
● 参考文献
: ※異なる頁を複数参照をしている文献のみ。発表年順。
・
「将軍家光の乱心 激突」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』(https://ja.wikipedia.org/)
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