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『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』(ゴジラ モスラ キングギドラ だいかいじゅうそうこうげき)は、2001年12月15日に公開された日本映画で、ゴジラシリーズの第25作である。カラー、シネマスコープ、ドルビーデジタル。併映は『劇場版 とっとこハム太郎 ハムハムランド大冒険』。略称は『GMK』
● 概要
「ゴジラミレニアムシリーズ」の第3作。本作品ではゴジラは第1作のみを踏まえ、前後シリーズとの関係性がなく、それ以後の日本に怪獣はまったく現われなかった設定となっている。主要襲撃地点は、太平洋、孫の手島(架空)、静岡県と山梨県の富士山麓、神奈川県、新潟県、鹿児島県。
本作品でのゴジラは「太平洋戦争で落命した人間の怨念を背負った負の存在」で感情移入を拒む恐怖の対象や悪の権化として描かれ、戦争のメタファーとしての要素が強調されている。ストーリー、設定は、オカルト要素が強いものとなっている。ゴジラの出現により命を落とす犠牲者が多く描かれているのも特徴である。
監督は、平成ガメラ3部作の金子修介が務めた。特殊技術の神谷誠は、平成VSシリーズと平成ガメラ3部作の両方に参加していた。
● ストーリー
日本を襲ったゴジラを防衛軍が撃退してから、半世紀が経とうとしていた。防衛軍はグアム島沖で消息を絶ったアメリカ海軍の原子力潜水艦を救助するため、特殊潜航艇「さつま」に出動命令を下す。現場に向かった「さつま」のクルー・広瀬は、原潜の残骸の近くで青白く光りながら移動する巨大な生物の背びれを目の当たりにする。
一方、新潟県・妙高山の大田切トンネルでは暴走族が突如発生した地震によって落石と土砂の下敷きとなり、鹿児島県・池田湖では盗品でパーティーを開いていた11人の若者が翌日、白い繭に包まれた状態の遺体で発見されるという怪事件が続出する。「BS・デジタルQ」のリポーター・立花由里は、事件の場所が『護国聖獣伝記』に記されている3体の聖獣バラゴン・モスラ・ギドラが眠る場所に一致していることに気づくと、その謎を突きとめるため、民間伝承の著者・伊佐山嘉利に出会う。そこで「ゴジラは太平洋戦争で死亡した人々の怨念の集合体である」と語る伊佐山の姿に、由里は彼がゴジラから日本を守るために護国聖獣を蘇らせようとしていることを知る。
ゴジラは小笠原諸島・孫の手島を壊滅状態にした後、静岡県・焼津港へ上陸し、そのまま東京を目指す。山梨県・本栖湖付近にはバラゴンが現れ、神奈川県箱根町の大涌谷でゴジラに戦いを挑むが、敗れてしまう。そんな中、池田湖ではモスラの巨大な繭が浮上し、富士の樹海の氷穴ではギドラが目覚めようとしていた。
防衛軍もゴジラ迎撃に挑むが、ゴジラに通常兵器は効かず、その進撃を食い止められない。横浜の最終防衛ラインで待ち構える防衛軍の目の前で、ゴジラとモスラ、ギドラの死闘が始まる。
● 登場怪獣
◇ ゴジラ(呉爾羅)
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◇ バラゴン(婆羅護吽)
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◇ モスラ(最珠羅)
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◇ キングギドラ(魏怒羅)
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● 登場人物
◇
: 本作品の主人公。BS・デジタルQのスタッフで、立花泰三准将の娘。20歳。
: 好奇心旺盛かつ食事も庶民的で「女に生まれたくなかった」とぼやくなどサバサバした性格。仕事中は、機動力を重視したパンツルックを好む。
: 妙高山で伊佐山と偶然出会ったことで、ゴジラと護国聖獣との戦いに巻き込まれていく。箱根で負傷し、武田から協力を一度拒否されても、マウンテンバイクで箱根から横浜まで走行しながら危険をかえりみず、ゴジラとの戦闘をリポートする。
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◇ 制作
:: 名前は特撮テレビドラマ『ウルトラQ』のヒロイン江戸川由利子に由来する。
:: 監督の金子修介は、由里について「自由には生きているが、厳しく躾けられた女の子」と評しており、細かい仕草でも育ちの良さが出るようこだわっていた。演じる新山千春は、当初サバサバした男っぽい役作りで臨んだが、金子とのすり合わせで一から作り直したといい、食事シーンでの手つきは何度も撮り直したと証言している。
:: 由里はファッションにはあまり興味がないという想定で、衣裳は動きやすさを重視しつつ、ナチュラルで品があるものとしている。後半に着用しているオレンジのシャツは、汚れやダメージの具合が異なる4種類用意された。金子作品としては初めてミニスカートを履かないヒロインである。金子はパンツルックにした理由について「似合うものを着せただけ」と述べている。
:: ラストの父と再開するシーンでは、号泣しそうだったのを堪えて笑顔を見せることで由里の強さを表しており、新山は泣くのは観客に任せたと述べている。
:: 劇中で母親についての詳細は描かれていないが、金子は報道関係者であったと想定しており、由里もその情熱を受け継いでいるとしている。
:: 新山は、由里は武田に対して人として惹かれてはいても恋愛感情はまったくなかったと想定しており、父を超える人物でなければ好きにはならないだろうと述べている。
:: 新山はタバコを苦手としていたため、門倉の登場シーンでは演技の最中にタバコの煙でむせてしまうこともあった。
:: 金子による初期プロットでは荒川由里という名称で、防衛海軍の杉村という恋人がいるが、武田にも想いを抱いているという恋愛模様が描かれていた。その後の検討稿では、役職をスクリプターに改められたが、金子が実際のスクリプターから劇中のような小規模な番組ではスクリプターを雇用しないことを聞き、レポーターを兼業するスタッフとなった。
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◇
: 由里の友人。小説家見習いのサイエンスライター。番組の取材協力のため由里と行動を共にする中、ゴジラと護国聖獣との戦いに巻き込まれていく。
: 軍人である泰三におののいたが、酔いつぶれた由里を自宅まで送ったり、自身の忠告も無視して単独でリポートする彼女に心打たれて再び共に奔走するなど、勇敢で面倒見が良い。
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・ 検討稿では、ホラー小説家の見習いという設定で、武田の自室のシーンは荒木泰平という別の小説家が登場する場面となっていた。横谷昌宏によるプロットでは、科学者という設定であった。
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◇
: BS・デジタルQの企画部長。黒縁メガネにロングヘアが特徴。いつもスルメやタバコを口にしている。
: 普段は自分たちの作る番組を「アホ番組」と自嘲しているが、ジャーナリストとしての信念は確かで、ゴジラの追跡映像を生放送する際には自らが責任をとると名乗り出た。
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・ 検討稿では、由里に対してセクハラを行う上司として描かれていたが、第3稿で改められた。
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◇
: 防衛軍情報管理部大佐。常に落ち着いており、情報管理室でゴジラや護国聖獣の動きを監視する。泰三をひそかに慕っている。
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・ 演じる南果歩は、韓国映画『JSA』をイメージしたといい、衣裳に助けられたところは大きいと述べている。
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◇
: 防衛軍中将。防衛軍きってのエリートで、准将である立花とはライバル関係にある。
: ゴジラの上陸を受け、要撃司令官に任命される。冷静さに欠けた性格で、焼津港にゴジラが現れた報告を受けた際には、御殿場に現れたバラゴンの情報が錯綜したために困惑したり、モスラやギドラが出現したことを知ると取り乱すなど、事態に翻弄される。
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・ 演じる大和田伸也は、金子からゴジラの出現により自信が崩されてしまう空軍のエリートであるという説明を受け、従来のゴジラ映画よりも人間的に演じることを心がけたと述べている。
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◇
: 防衛軍軍令部書記官。50年前に防衛軍の攻撃がゴジラにまったく通用しなかったことを知る、数少ない人物の一人。
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◇
: 防衛海軍中佐。「さつま」で原潜が消息を絶ったグアム島沖の海底を探索中、ゴジラを目撃する。泰三が信頼を置く部下で、彼が横浜の「あいづ」に出向する際にも同行している。
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・ 名称は、日露戦争の軍神広瀬武夫に由来するとされる。さつまの乗組員である女性兵士・杉野も、実在の広瀬の部下である杉野孫七に対応したものとなっており、脚本第3稿および準備稿では最終決戦で広瀬らとともにさつまに登場することとなっていたが、決定稿でカットされた。また、当初は階級が少尉であったが、決定稿で中佐に改められ、立花との関係性が強調された。
:
・ 演じる渡辺裕之は、平成ガメラシリーズで自衛隊員役を演じており、本作品でもミリタリー系の役で起用されたことから自身と金子とのイメージに差がないと考え、同シリーズと同様の演じ方としている。
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◇
: BS・デジタルQのアシスタントディレクターで、由里の同僚。由里に好意を寄せている。酒に弱い。
: 由里から送信されたゴジラの追跡映像を放送した際には、由里を応援しながら番組の司会役を務めており、その際、BS・デジタルQのことを「放送界のゴミ溜め」呼ばわりし門倉に「ゴミ溜めは言い過ぎだろ」と呆れられる。
:
・ 名前は『ウルトラQ』の万城目淳に由来する。
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◇
: 防衛軍少佐。情報管理部に所属する情報検索分析の達人。妙高山の大田切トンネル事故現場に出向き、トラック運転手から事情聴取を行う。
: 幹部の中では年若く生真面目な好青年だが、聖獣たちに命名することを三雲に提案するなど、マニアックな一面も持つ。
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・ 演じる葛山信吾は、人が大勢死んでいる状況で怪獣の命名などを楽しんでいるというニュアンスのさじ加減が難しかったと述べている。
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・ 当初は名字のみ設定されていたが、インターネット上で熱心な葛山のファンからの質問を受け、金子が命名した。階級も当初は中佐という設定であったが、衣裳を着た葛山の姿が若々しく、広瀬とのバランスも考慮して少佐に改められた。
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◇
: 防衛軍中佐。巡洋艦「あいづ」副官で、CICを統括する。
: 情熱的な人物で、立花を絶対的に信頼している。
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◇
: 防衛軍大佐。巡洋艦「あいづ」艦長。
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◇
: 『護国聖獣伝記』の著者で、不思議な雰囲気の老人。
: 古い社を荒らした容疑で本栖警察署に留置されているが、その間もなぜか護国聖獣の眠る地に姿を現している。面会した由里に、護国聖獣こそゴジラを倒すことができる唯一の存在だと語る。
: 後の丸尾の調査で本当は50年前のゴジラ上陸時に行方不明となっており、その当時ですでに75歳だった。さらに、由里らが撮ったテープも彼の映っている部分だけ消えていた。
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・ 衣裳のポーチは、演じる天本英世がスペインで購入した私物を用いている。
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◇
: 防衛軍の准将で由里の父。50年前のゴジラ東京襲撃により家族を失っており、妻もすでに他界している。
: 職務に対しては厳格だが、普段は娘想いな父親である。普段は防衛軍の官舎に住んでいるが、時折由里のマンションを訪れ、食事を供にしている。目が弱いため、サングラスを愛用している。
: ゴジラとの戦闘では巡洋艦「あいづ」から作戦指揮を執り、終盤では特殊潜航艇「さつま」で単身ゴジラに立ち向かう。ゴジラの体内からD-03を発射して命がけで傷口から脱出に成功する。
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・ 演じる宇崎竜童は、軍人役を演じたことはなかったためなぜ自身が起用されたのか疑問であったといい、衣裳を着ても軍人らしい佇まいにならず、どうすればそれらしく見えるか悩んでいたと述懐している。
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・ 金子による初期プロットでは、陸海合同軍令部長立花大佐として登場しているが、由里とは無関係な人物であった。その後、脚本制作の過程で、長谷川圭一により由里の兄が軍人と設定されるが、金子が父娘とすることを提案し、両案それぞれの設定で検討稿が書かれた結果、父娘の設定が採用された。長谷川は、中年男性よりも若者が飛び回る方が勢いがあるのではと考えていたが、宇崎が起用されたことにより肯定的に考えられるようになったことを述べている。
● 登場兵器
◎ 架空
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◇ 防衛海軍巡洋艦あいづ
: 防衛海軍所属の最新鋭汎用巡洋艦。
: 劇中では戦闘指揮所の様子も描写されており、イージスシステムの中核たるAN/SPY-1フェーズドアレイレーダーの意匠も備わる。一方、VLSを持っていないため、各種誘導弾は通称アスロックランチャーとも呼ばれるMk112八連装発射機(Mk 16 GMLS)に混載される。SH-60 シーホークなどのヘリコプターだけでなく、特殊潜航艇さつまも3隻搭載できる。
: 同型艦も存在しており、劇中ではあこう(DDH-148)が登場している。立花准将がゴジラ迎撃作戦の陣頭指揮をとるために乗り込んだあいづは、横浜沖で防衛陸軍部隊ならびに怪獣との対ゴジラ共闘の旗艦となる。だが、あこうはゴジラの熱線により爆破され、あいづも被弾する。
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・ 本艦が巡洋艦であることは劇中テロップでも明示されているが、劇場パンフレットでは汎用駆逐艦と書かれており、艦種記号も「DDH-147」となっている。
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◇ 制作
:: 命名は監督の金子修介によるもので、会津藩に由来する。薩摩藩に由来するさつまと合わせ「いがみ合っている者同士が力を合わせる」ことに掛けている。
:: デザインは美術の清水剛が担当。現実のイージス艦とは異なり、艦橋部がせり上がった形状になっているが、画面上の迫力を出すために長門型戦艦や空母エンタープライズの艦橋を参考にしている。
:: 造形物は、1/35と1/57スケールのものが作られた。初登場シーンでは、オープンセットでブルーバック撮影されたミニチュアモデルをCGの海面に合成している。船上のワイヤーが細かすぎて合成で処理しきれず、マスト部分をCGで作り直している。
:: 本編では、CICのセットが制作された。清水は、イージス艦のCICを制作するのは日本映画で初めてであるため本作品で一番やりたかったものであると述べている。コンソール系は、防衛軍司令室のセットと共用している。
:: 『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』には、巡洋艦「あいづ」のプロップ(撮影用のミニチュア)を改装した海上自衛隊所属の護衛艦DD-147「あいづ」が登場する。
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:{{機動兵器
名称=特殊潜航艇さつま
全長=6m
基準排水量=880t
速度=
乗員=2名
}}
◇ 特殊潜航艇さつま
: 防衛海軍所属の潜航艇。原子力潜水艦の沈没事故での作業を想定して開発されたため、放射能遮蔽機能を有している。巡洋艦あいづやむらさめ型DDなどの艦艇に搭載可能。また、操舵室にはサーモグラフィーを備えている。
: 必要に応じてMk17魚雷または推進式削岩弾D-03を搭載可能。
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◇ 制作
:: デザインは清水剛が担当。金子は、ソユーズ宇宙船やボストークなど社会主義圏の兵器のような丸みのあるデザインをイメージした。清水は、『ゴジラ2000 ミレニアム』でしんかい6500のセットを手掛けた経験から、実際に水圧に耐えられるような球状のデザインとしている。また、本編で喫水線上部の実物大造形物を制作するため、上下で分かれた形状としている。
:: 造型はアップアートが担当。造型物は1/1、1/10、1/33サイズが作られた。そのほか、東京現像所による3DCGでも描写された。
:: 全長6メートルの1/1サイズは、ボディがFRP製で、内部に鉄骨を仕込んでいるものの軽緑化に務め500キログラム程度となっている。撮影は東宝撮影所のプールで行われ、クレーンで搬入された。金子は実際の海で撮影することを要望していたが、そのためには本物と同程度の強度で作らなければ波に耐えられないため実現には至らなかった。立花役の宇崎によれば、ハッチの中は狭い箱になっており、中で縮こまって待機していなければならなかったため、ハッチから出てくるシーンは実際に開放感を得ていたと述べている。
:: 操縦席のセットは、下部が球状になっており、両端についた木の棒をスタッフが動かすことでセット全体が揺れ、水中での動きを表現している。通常、2人乗りの船舶は横に並んで操縦する形だが、終盤では立花が1人で出撃することを考慮し、操縦者が前後に並ぶ構造となった。
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◇ 自走式ミサイル発射砲
: 8輪の装輪式自走式ミサイルランチャーで、所属は防衛陸軍。推進式削岩弾D-03発射用ランチャー車で、2基のD-03を装備している。
: 劇中では妙高山で発生したトンネル崩落事故(引き起こしたのはバラゴン)の救助活動に参加したほか、横浜に来襲したゴジラを防衛海軍と共に迎え撃っている。
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・ デザインは清水剛。デザインはBM-30がベースになっている。
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・ 造型はビーグルが担当。プロップは8分の1と25分の1の2種類が制作された。
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◇ 推進式削岩弾D-03
: 防衛軍が開発した特殊削岩弾。ミサイルの先端に装着して発射され、命中前に推進起動部と装甲が分離。標的に命中した後、高速回転するドリルによって標的の内部に進行し、破壊する。大鵬のほか、対艦ミサイルやさつまにも搭載可能な利便性の高い兵器である。全長256センチメートル。
: 大田切トンネル事故現場での救出作業で使用された後、横浜での対ゴジラ戦で実戦導入された。あいづやあこう、大鵬が発射したものはゴジラに多数命中したものの、分厚い外皮を貫通できず無力化された。キングギドラの攻撃で負傷したゴジラの傷口を追撃すべく、立花准将と広瀬中佐が搭乗するさつまが搭載して出撃するが、広瀬が発射した一発は盾にされたキングギドラを誤射する結果に終わる。しかし、立花がゴジラの体内へ突入して発射した最後の一発は体内から肩の傷口を貫通、ゴジラに致命傷を与える。
:
・ デザインは清水剛による。先端部はトンネル工事などで用いられる削岩機を参考にしており、後部は本体を回転させるため推進機を斜めに設けている。
:
・ 造形物は、1/10と1/33.3サイズの2種類が制作された。ミサイルでの発射・展開シーンは、CGで描写された。
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・ 検討稿では、立花が対ゴジラ用に開発した兵器という設定であった。
:
◇ F-7J
: 防衛空軍の戦闘機で、厚木基地から緊急発進して丹沢山中でゴジラに誘導弾で攻撃するも全く効果が無く、全機撃墜される。
: 搭載していた誘導弾は、アメリカ製のレーザー誘導爆弾ペイブウェイ。
:
・ 造形物はなく、CGで描写された。デザインは、ロシア製の艦上戦闘機Su-27をモデルとしており、配色は航空自衛隊のF-15J要撃戦闘機と同じ制空迷彩色としている。
:
・ 特殊技術の神谷誠によれば、絵コンテでは出番が長く設けられていたが、全体のバランスを考慮し短いシーンとなった。
◎ 実在
◇ 防衛軍
・ 73式中型トラック
・ 73式大型トラック
・ 業務トラック
・ 73式小型トラック
・ 1/4tトラック
・ 業務車4号
・ 61式戦車
・ 74式戦車
・ 90式戦車
・ M2ブラッドレー歩兵戦闘車
・ 82式指揮通信車
・ 87式対戦車誘導弾
・ 88式地対艦誘導弾
・ はるしお型潜水艦「わかしお」(名称のみ)
・ UH-60汎用ヘリコプター
・ SH-60B哨戒ヘリコプター
・ M16A2自動小銃
◇ 警察
・ ニューナンブM60回転式拳銃
◇ アメリカ軍
・ オハイオ級原子力潜水艦
◇ 民間
・ ベル205 B
● 設定
◇ 護国聖獣
: 古代王朝の時代には狛犬や鳳凰、ヤマタノオロチの伝説の基になった3頭の怪獣、バラゴン(婆羅護吽)、モスラ(最珠羅)、ギドラ(魏怒羅)が存在した。彼らは退治された後、その霊を慰めるために神としてまつられると同時に、それぞれ妙高山・池田湖・富士樹海へ封印され、「護国聖獣」と呼ばれるようになった。同胞を殺した敵を神と崇める日本独特の風習は、大和朝廷にも引き継がれた。
: 聖獣を封印した「聖地」には石像が設置されており、劇中では石像に危害が加わった直後に聖獣たちが目覚めたが、石像が封印の役割を担っていたのかは不明である。由里と武田は、富士樹海で拾ったこの石像の破片が倭人たちの霊魂を封じ込めたもので、「くに」をゴジラから守る際に霊魂を開放し、聖獣に乗り移らせて対抗させようとしたと推測する。しかし、聖獣たちが守るのはあくまで山や川といった大自然を含んだ「くに」であるため、それらを荒らす者は人間でも容赦なく抹殺する。
: 伊佐山はこれらの伝説を独自に研究してまとめ上げ、『護国聖獣伝記』として出版している。
:
・ 検討稿ではヤマト聖獣という名称で、大音響により目覚めるという設定になっており、青木ヶ原樹海では自殺志願の男ではなくカルト集団が登場していた。
:
◇ BS・デジタルQ
: 由里たちが勤務する新参のBS放送局。スローガンは「Q〜ッと絞りたてデジタルQ」。超能力や宇宙人などをとりあげる、やらせの低俗なオカルト番組ばかり放送していると、放送局に対する世間からの評判はよくない。しかし物語後半では、『ヒバゴンの謎』という番組を急遽中止してゴジラの生中継番組を放送し、多くの人々の注目を集める。
:
・ ロケは赤坂にある企業のオフィスで行われた。社員役のエキストラには、助監督や合成スタッフなどが参加している。
:
◇ 防衛軍
:
● キャスト
・ 立花由里:新山千春
・ 立花泰三:宇崎竜童
・ 武田光秋:小林正寛
・ 門倉春樹:佐野史郎
・ 江森久美:南果歩
・ 三雲勝将:大和田伸也
・ 日野垣真人:村井国夫
・ 広瀬裕:渡辺裕之
・ 宮下:布川敏和
・ 丸尾淳:仁科貴
・ BSデジタルQディレクター:モロ師岡
・ 小早川時彦:葛山信吾
・ 崎田:中原丈雄
・ 伊佐山嘉利:天本英世
・ 防衛軍将校:石田太郎
・ 官房長官:津川雅彦
・ F-7Jパイロット:村田雄浩
・ 杉野:杉山彩子
・ 初老の漁師(焼津港の初老漁師):中村嘉葎雄
・ 和泉村の村長:上田耕一
・ 自殺志願の男:螢雪次朗
・ 老店主:高橋昌也
・ 焼津の釣り人A:村松利史
・ 焼津の釣り人B:一本気伸吾
・ 報道ヘリのディレクター:徳井優
・ 報道ヘリのカメラマン:西岡竜一朗
・ 震える運転手:笹野高史
・ 焼津のスーパーの店員:山本東
・ 清水のスーパーの買い物客:水木薫
・ テレビプロデューサー:山寺宏一
・ 助役:山崎一
・ 田舎のホステス風:種子
・ ウェッブ担当の警官:松尾貴史
・ 本栖警察署の警官:野口雅弘
・ 大涌谷のカップル:近藤芳正、奥貫薫
・ ロープウェイの男:翁華栄
・ ロープウェイの女:佐伯日菜子
・ 中国系の住民:チューヤン
・ 中華街の若者:峯村リエ
・ 横浜守備隊部隊長:角田信朗
・ ヒロキ(池田湖の大学生):塚本高史
・ 防衛軍士官A:佐藤二朗
・ 防衛軍参謀:坂田雅彦
・ 焼津の若い漁師:加瀬亮
・ 小学校の先生:かとうかずこ
・ 民宿「鯨見」の宿泊客:竹村愛美
・ 民宿の女B:篠原ともえ
・ トラック運転手:河原さぶ
・ 小用の男:温水洋一
・ 暴走族隊長:木下ほうか
・ ケバ女:鴻口可南
・ 池田湖の大学生:小山雅也、山口翔吾
・ 池田湖のリポーター:野中美里(当時テレビ神奈川)
・ 池田湖の警官:北原万誠
・ 民宿「鯨見」の女将:鈴木ひろみ
・ 富田:真由子
・ 5才の立花:春山幹介
・ 長野気象台観測員:金子奈々子
・ モスラを見上げる姉妹:前田愛、前田亜季
・ 入生田中央病院の少年:池田恭祐
・ 大田切トンネルの防衛軍隊長:大久保運
・ 防衛軍隊員:飯尾英樹、山内健嗣
・ 講義を聞く防衛軍兵士A:本田大輔
・ 講義を聞く防衛軍兵士B:水橋研二
・ 本巣警察署の囚人1:玄海竜二
・ 防衛軍通信兵C:小松みゆき
・ ゴジラ / モスラを見上げる姉妹の後ろの男:吉田瑞穂
・ キングギドラ / 焼津漁協の事務員:大橋明
・ バラゴン / 焼津漁協の事務員:太田理愛
・ バラゴン:佐々木俊宜
・ アナウンサー:佐藤陽子(鹿児島テレビ放送)
・ お天気お姉さん:森麻緒(テレビ神奈川)
・ 病院内の特別番組のアナウンサー:竹内朱実(静岡第一テレビ)
・ カーナビのアナウンサー:細野俊晴(静岡第一テレビ)
・ ラーメン屋内のテレビアナウンサー:田辺稔(静岡第一テレビ)
・ 臨時ニュースのキャスター:笠井信輔(フジテレビ)
・ 防衛軍将校:川北紘一、手塚昌明
● スタッフ
・ 監督:金子修介
・ 脚本:長谷川圭一、横谷昌宏、金子修介
・ 撮影:岸本正広
・ 美術:清水剛
・ 録音:斉藤禎一
・ 効果:佐々木英世、伊藤進一、柴崎憲治
・ 照明:粟木原毅
・ 編集:冨田功
・ 助監督:村上秀晃、熊澤誓人、清水俊文、會田望
・ 製作担当者:前田光治、川田尚広、金澤清美
・ 音楽:大谷幸
・ ゴジラテーマ曲、怪獣大戦争マーチ:伊福部昭
・ スタントコーディネーター:阿部光男
・ アソシエイトプロデューサー:鈴木律子
・ 特殊技術
・ 特殊技術:神谷誠
・ 撮影:村川聡
・ 美術:三池敏夫
・ 照明:斉藤薫
・ 特殊効果:久米攻
・ 造型:品田冬樹
・ 操演:根岸泉
・ 助監督:菊地雄一、岡元洋、吉田至次、田口清隆
・ 視覚効果
・ ビジュアルエフェクト:松本肇
・ 視覚効果プロデュース:小川利弘
・ ロケ協力:東京ロケーションボックス、横浜フィルムコミッション、指宿市商工観光課、航空宇宙技術研究所、都留市教育委員会 ほか
・ 制作協力:東宝映像美術、東宝サウンドスタジオ、東宝ミュージック、東京現像所、東宝スタジオ、東宝コスチューム、光映新社
・ プロデューサー:本間英行
・ 製作:富山省吾
● 製作
◎ 企画の変遷
監督の金子修介は、以前よりゴジラ映画の監督への登用を東宝プロデューサーの富山省吾へ打診しており、従来のシリーズではプロデューサー主導で準備稿が完成してから監督が起用されていたが、本作品での金子は企画段階から参加している。スタッフの人選も金子に委ねられており、平成ガメラ3部作やその他の金子作品に携わっていた人物が多い。金子へのオファーは、金子が東宝映画で監督を務めた映画『クロスファイア』の完成直後に行われた。
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金子による最初の案では、対戦相手は自身の息子が好きなキャラクターであるカマキラスであったが、前作『ゴジラ×メガギラス G消滅作戦』で同じく昆虫モチーフであるメガギラスが登場していたことから実現には至らなかった。続く案では、宇宙線を浴びた宇宙飛行士が怪獣化するというもので、怪獣化した父と娘の交流が主軸となっていたが、悲劇にしかなりえず正月映画にふさわしくないとの判断から、3大怪獣を登場させるものへ改められた。金子によれば、本作品のコンセプトは『三大怪獣 地球最大の決戦』におけるキングギドラのポジションをゴジラに置き換えたものである。
当初、護国聖獣はバラゴンとアンギラス、バランだったが、前作『×メガギラス』が興行的に苦戦し、有名な怪獣を出すことによる集客効果を狙った営業上の理由で、最終的にバランがモスラに、アンギラスがキングギドラにそれぞれ変更となった。かなり制作準備が進行した段階での変更だったため、ムックなどにおけるスタッフインタビューでは、「完成した作品に思い入れはあるが、当初の予定のままやりたかった」という発言が散見される。一方で、後年のインタビューでは、結果的にモスラとキングギドラを登場させたことで画面が華やかになり、シリーズを継続することもできたのでベストな選択であったとも述べている。
防衛軍の設定は、武器の保有を認められている組織とすることで、対ゴジラへの出動をスムーズに描写することを意図している。また、自衛隊ではなく防衛軍が設定されたことで、自身が監督した平成ガメラシリーズのようなリアルな作風ではなく、正月映画としてのお祭り要素を重視したと述べている。プロットでは、国自体を「日本民主共和国」という架空の世界観とする案も書かれていた。長谷川は、世界観については金子による裏設定に基づいて描いたと述べている。
3大怪獣のプロット第2稿では、海底軍艦轟天の登場も予定されていたが、富山が3大怪獣に加え防衛軍との戦いも大々的に描くと収集がつかなくなることを危惧し規模を縮小することとなり、脚本を担当した横谷昌宏がゴジラの口の中に入って倒すことを提案し、特殊潜航艇さつまと推進式削岩弾D-03という形に改められた。
アメリカ版『GODZILLA』への言及は最初期プロットから存在していた。金子によれば、同作品が不人気だと聞いて思いついたギャグであるというが、結果として世界中に怪獣が存在しておりその対策が必要であるという設定を補強するとともに、複数の怪獣が登場することにも説得力を持たせている。
金子は幼少期からモスラに思い入れがあり、本作品で爆散したことや小美人を出せなかったことなどが心残りであったと述べている。
従来の作品では、兵器類などのデザインは専任の担当者が起用されていたが、本作品では美術の清水剛がこれらのデザインも手掛け、作品全体のビジュアル統括を行った。
◎ 配役
主演の新山千春は、ゴジラ映画ヒロインとしては最年少であった。立花泰三役の宇崎竜童は、軍人らしくない人物として起用された。
伊佐山嘉利役の天本英世は、金子が脚本段階から配役を想定していた。
本作品では、ワンシーンだけ登場する知名度のある俳優・タレントが多いのも特徴である。金子によれば、自らゴジラへの出演を希望する人物が多く、贅沢な使い方ができたと述べている。官房長官役の津川雅彦もその1人であり、さらに当時津川と同じ事務所であった前田愛・前田亜季姉妹や笹野高史らも出演が叶うこととなった。部隊長役の角田信朗は、バラエティ番組『笑っていいとも』のコーナー「テレフォンショッキング」へゲスト出演した際にゴジラへの想いを語ったところ、それを観ていた東宝の製作サイドからオファーがあったという。
◎ 撮影
撮影スケジュールの切迫によるポストプロダクションへの負担を軽減するため、ビジュアルエフェクトの松本肇からの提案により合成カット数を300カットに納めることが目指された。これは近年のゴジラシリーズでは大幅に少なく、その分内容を濃いものとしているが、現場でイレギュラーなカットが増え最終的には340カット程度となった。
民宿がゴジラに破壊されるシーンでは、窓の内側を本編で撮影し、特撮班で撮影したミニチュアに合成するという手法をとっている。合成用のセットは窓枠部分のみ制作された。民宿の本編セットは、下にスプリングを組んでフォークリフトで持ち上げており、これを落としてゴジラの接近による振動を表現している。振動で跳ねるピンポン玉は、床の下からトンカチで叩いている。
ゴジラが上陸する焼津港は、第五福竜丸の母港であったことから舞台に選ばれた。漁協組合の窓ガラスが割れるシーンは、セットを組んで撮影している。
本栖警察署の撮影はロケだが、バラゴンによって生じる建物のヒビは合成ではなく、ベニヤで造形したものを建物に貼り付けている。留置所部分はセットで撮影された。
キングギドラが封印されている氷穴は、キングギドラのサイズに合わせるとスタジオに入らないため、本編セットと特撮のミニチュアを合成している。本編セットは、壁を移動式とすることで広さを表現している。自殺志願の男が落ちる穴もセットで撮影された。ミニチュアセットでは、位置確認のため天本や螢らの人形が制作された。
横浜のロケでは、当時空き地であった横浜税関前の土地にオープンセットを組んでいる。ゴジラに吹き飛ばされる防衛軍兵士は、ブルーバックで撮影された。
横浜スカイウォークの展望台はセットが制作され、窓側れるシーンはテンパーガラスを実際にセットで割って、新山を合成している。清水によれば、現地で撮影するには照明を作業船のクレーンで吊らなければならなかったと述べている。新山は、後ろ向きに落下するのが難しく、自身が高所恐怖症であったことも相まって苦労した旨を語っている。終盤の岸辺は、東宝撮影所のプールに本物と同様にコンクリートで制作したテトラポットを組んでいる。ラストシーンは、習志野市茜浜で撮影された。
立花の回想シーンは、都内の古い倉庫で撮影しており、道路の舗装を砂で隠している。同シーンに登場する映画『さらばラバウル』のポスターは、東宝宣伝部で保管しているマイクロフィルムから起こしたものである。そのほか、細かな小道具類も昭和20年代のものを再現している。
官房長官の会見シーンは、日本青年館で撮影された。
横浜中華街のシーンは同地での撮影が予定されていたが許可が降りず、鶴見銀座商店街(ベルロードつるみ)で撮影が行われた。同じく鶴見の本町商店街では、由里が自転車で走るシーンも撮影している。
モスラを見上げる少女のシーンは、八王子駅前ユーロードで撮影された。
◎ 特撮
特殊美術の三池敏夫によれば、本作品では予算が減額されたがミニチュアの出物の数は増えており、さらにミニチュアを大きくリアルに作ろうという方向性であったため、予算としては破綻していたと述べている。当初は、ゴジラをvsシリーズと同程度の大きさにしようという案も存在したが、当時のミニチュアは現存しておらず、1/50スケールのミニチュアをすべて新造することは難しかったため、前作までのミニチュアを流用できる1/25スケールとなった。それでも、シーンによっては1/10から1/12スケールの大きいミニチュアが用いられている。ゴジラに踏み潰される孫の手島の民宿のミニチュアは、瓦1枚まで作り込んだものが制作された。また、平成ガメラシリーズと同様にカメラのフレーム範囲内で組まれたミニチュアセットも多い。スタジオでの撮影は、移動ややり取りの手間をなくすため第9スタジオでほとんど行っているが、疑似海底の撮影のみスケジュールの都合により第2スタジオで行われた。
特撮班は、2001年5月15日に大涌谷のシーンからクランクインした。大涌谷のミニチュアセットは、当初は実在しない広場のようなところでゴジラとバラゴンを戦わせる予定であったが、ロケハンで実際の土地を訪れた神谷が特徴的な地形を活かそうと考え、背景を山肌で埋めた高低差のある構造となった。1/25スケールでは、スタジオ内で山並みをすべて表現することはできないため、セットにキャスターを設置して移動できるようにし、1カットごとにセットを飾り替えている。予算の都合により、当初の予定から山の数が減っており、発泡スチロールで急増したもので補っている。岩肌から立ち込める白煙は、理髪店で用いられるスチーム器具で発生させている。あおりのカットはオープンセットで撮影された。
横浜は、『ゴジラvsモスラ』でも舞台となったため、本作品では横浜みなとみらい21のミニチュアは制作せず商店街や市街地などが中心となり、後半は海中での戦いとなった。モスラに潰される商店街は、都橋商店街をモデルとしている。海中での戦闘シーンは、第1スタジオでの疑似海底で撮影された。浮遊感を出すため怪獣のスーツを人が入ったまま吊っており、セッティングもそのまま行わなければならないため、神谷はスーツアクターや操演部には苦労をかけたと述懐している。崩壊したベイブリッジは、実景の橋を消してマット画を合成している。
あいづの5メートルサイズのミニチュアの空撮では、当時日本一の高さまで上げられるクレーン「スカイキング」が用いられ、遠隔操作で地上からカメラを操作している。
海中の魚はCGで描写しているが、原潜捜索時はキンメダイ、横浜ではマアジやマイワシなど、場所によって種類を描き分けている。
平成VSシリーズと平成ガメラシリーズの双方に携わっていた三池は、東宝では予算をかけて人海戦術により短期間で仕上げるという体制であったが、ガメラでは時間をかけてじっくり撮影するという方向性であったと比較している。大涌谷のミニチュアセットでの撮影では、ガメラと同様に1カットごとに飾りかえを行うという手法をとったところ、東宝特美スタッフは撮影開始早々に力尽きてしまったという。また、東宝では絵コンテは画作りの参考程度という扱いであったが、ガメラでは本編・特撮ともコンテ通りであったと証言している。三池は、ガメラ方式は本編と特撮のつながりをしっかりとすることで最大の効果を発揮するが、本作品では準備期間が短かったため、無理があったと述懐している。
特撮B班として、手塚昌明、菊地雄一、江口憲一らがノンクレジットで参加している。
◎ 音楽
音楽は、平成ガメラシリーズも手掛けた大谷幸が担当した。
平成ガメラシリーズでは、管弦楽による壮大な楽曲としていたのに対し、本作品では電子楽器を前面に出している。当初、大谷は武満徹のような日本的な世界観をイメージしていたが、脚本を読んで合わないと感じ、自身がその前に手掛けていた映画『ショコキ』と同じテクノ調とした。ガメラシリーズとの類似性を指摘されないよう似通ったフレーズは意図的に排除していった。
大谷は、ゴジラと護国聖獣は対立していても想いの根本には共通性があると感じ、各怪獣のテーマの音階をAマイナーで統一し、ゴジラはトロンボーンやコントラバスなどの低音、モスラは女声コーラス、キングギドラは男声コーラスといった性格付けを行っている。3種類の怪獣のテーマに加え、父娘のテーマもあったため、バラゴンはあえてテーマを設けていない。
ゴジラのテーマでは、大谷は大涌谷でのゴジラとバラゴンの戦いの映像を観ながら最も合う音楽が自然に出てくるまで作業を繰り返したといい、最終的には5000種類程度の音色を試作したと述べている。
モスラやキングギドラのテーマでのコーラスは、当時桐朋学園大学の作曲科に通っていた大谷の娘を通じて集められた20人の学生による。大谷は、神話を歌うのには経験を積んだプロよりも新鮮で汚れのない声が合っていたと述べている。
防衛軍のテーマは、ゴジラのテーマ候補として書かれた3曲のうちの1つを流用している。
● 映像ソフト化
・ DVDは2002年8月21日発売。
・ トールケース版DVDは2008年6月27日発売。
・ 2005年4月22日発売の「GODZILLA FINAL BOX」に収録されている。
・ 2014年5月14日には「ゴジラ60周年記念版」として期間限定の廉価版が発売。
・ 2016年6月15日、東宝DVD名作セレクション版発売。
・ BDは2009年11月20日発売。
・ 2014年6月18日には「ゴジラ60周年記念版」として期間限定の廉価版が発売。
● その他
・ 『とっとこハム太郎』との併映は、本作品の製作中に『ハム太郎』の映画化が決定し、「巨大な怪獣ゴジラと、小さなハム太郎のカップリングならなかなか面白いのではないか」ということで決定された。併映は興行不振対策によるものであったともされる。
・ 本作品の公開に伴い、当時「ゴジラ」の愛称で親しまれていた松井秀喜が応援メッセージの中で語った「ぜひ来年はゴジラ君と共演したい」 という一言により、次作『ゴジラ×メカゴジラ』への出演が決定した。
・ 次作『ゴジラ×メカゴジラ』公開記念に『木曜洋画劇場』で放送されたバージョンはラストシーンにゴジラの復活を予期させる文字テロップを重ね、『×メカゴジラ』の予告編へとつなげている。ソフト化はされていないが、2016年8月7日にBS日テレでもこのバージョンが放送された。
● 評価
観客動員数は240万人を記録し、ゴジラミレニアムシリーズ中で最高の動員数となった。興行収入は27億1,000万円(2002年度邦画映画興行収入第3位)を記録した。富山によれば、人気怪獣が登場していたこと、監督が知名度のある金子であったこと、『ハム太郎』の動員に助けられたことなどがヒットした要因として分析され、次作の製作はすぐには決定しなかったと証言している。
◎ 受賞歴
・ 第20回ゴールデングロス賞優秀銀賞
「ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』(https://ja.wikipedia.org/)
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